人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!! 作:なちょす
ここからようやく始まる(?)勘違い要素。おせーよホセ。他トレーナー達から見たロリコンも徐々に増やしていけたらなと。こいつには気付いた時にドえらい尾ひれが付いてて右往左往して欲しい。
私事ですが、3月頭からメンタル面に不調を来たしまして、現在も臨床心理士の方と仲良くさせて貰ってます。会社生活で騙し騙し溜め込んでた物が破裂しました。
こんなに急に来るものかと驚きつつ、先ずは作品の投稿と兄貴たちの感想への返信にも1ヶ月以上掛かってしまい申し訳ないです⋯⋯。
まだ落ち着いてはいませんし、今後も睡眠不足が続いたり、コメディーを書けるような精神状態じゃない時は間が空いてしまう事も多々あるかもしれないので、誠に勝手ながらこの場で報告をさせて頂きました。新社会人兄貴達も、ベテラン社会人兄貴達も、自分が悪かったと言い聞かせ続けるのは止めようね♡寝れないのは本当に辛いから。
「樫本トレーナー、どうですか?」
「⋯⋯強いて言うならば、彼は普通では無い、と言うしかないでしょう。」
ビターグラッセの言葉に、机上の資料を数枚渡しながらそう答えた。
7月末の模擬レース。"勇者御一行"とのチーム対抗戦。まずは合宿1ヶ月を終えた段階での成果を確認したいと、彼はそう言っていた。
だが⋯⋯彼のチームを調べれば調べる程に、勇トレーナーの人となりは謎に包まれるばかり。
短距離には、1度とは言えあのサクラバクシンオーに勝ち越したカレンチャンに、無敗の怪物マルゼンスキー。それから療養中のヒシアケボノ。
マイルにおいては現絶対王者、チームのエースにして距離もバ場も問わないオールラウンダーのアグネスデジタル。
中・長距離には変幻自在の脚質を持つ天才マヤノトップガンと、姫野トレーナーから預かったというミホノブルボン。
そして本格的に指導を始めだしたと言うゼンノロブロイ。
それだけでは無い。ルーキーの2人や夏合宿中の仮契約であるスイープトウショウ、キングヘイローに託されたというカワカミプリンセス、"ポラリス"の円トレーナーに預けられたキタサンブラック⋯⋯初日にして、彼女達とは既に一定の信頼関係を構築しているようにも見える。
極めつけは、彼が今夜のバーベキューに連れて来た───
初めに担当として3年を共にしてきたアグネスデジタルならまだしも、途中参加である他の面々があれ程までに心を許すと言うのはまず難しい。ましてやメジロラモーヌ程の傑物を相手になど⋯⋯出来たとしても相応の時間が掛かるでしょう。その信頼関係はつまり、相手の考えの奥底を読み取り、夢への理解を行動で示し、手を差し伸ばしてようやく築けるものなのですから。
勿論アグネスデジタルと言う前例の無い担当が居れば興味は引けるし、実績を紐付ければ期待の眼差しや一時的な信頼は生まれる。だがそれも最初の内、信頼は継続しなければ意味が無い。
見た所彼女達はそれぞれが類まれなる才能を持っている⋯⋯が、自分達のやりたい事が明確に分かりきっている以上、波長を合わせるのは並大抵の事では無い。それは弱点、或いはチームとしての体を成す際の短所にも成り得る。
"ファースト"はやりたい事は違えど、彼女達の本質は皆同じ。他者と足並みを揃える事を苦手とし、しかし強さを望む心だ。"勇者御一行"はそうでは無い。
だからこそ、それらの舵取りを一人で担っている以上、底知れないと感じてしまうのも仕方ないのかもしれないが⋯⋯。
「ココン、君はどうだ?」
「⋯⋯何が。」
「私が話したのはトレーナーの方だ。ミホノブルボン⋯⋯彼の担当しているウマ娘と話したのは君じゃないか。我々は間違い無く強者。驕りでは無く事実だ。君から見たあのチームのウマ娘の事を、樫本トレーナーにも聞かせて欲しい。」
蹄鉄の手入れをしていたココンが小さく溜息をこぼし、私の方へ向き直った。
「⋯⋯強いです。ワケの分からないモノマネをされて聞き流してましたが、ミホノブルボンがすれ違いざまに言っていました。『貴女に私の影は踏ませない』⋯⋯と。その眼に迷いは無いようにも見えました。」
「実際トレーナーの方も、最初こそふわふわしてると思ってましたが⋯⋯どうにも言葉の端々には自信と闘争心が篭っています。こちらと向き合っているようで煙に巻き、
「まるで、アイツ───ライスみたいな。」
ライスシャワー。
姫野トレーナー率いるチームのステイヤーにして、"黒い刺客"。元々繊細で気弱な面が強かった彼女は、アオハル杯でその真価を発揮した。
いや⋯⋯元よりあった才能を昇華させたと言った方が良い。純真であるが故に。繊細であるが故に。植え付けられた闘争心は自分を肯定したトレーナーへの恩返しという形でより強固な物に成った。
彼は、ミホノブルボンをそのレベルまで引き上げたという事だろうか。姫野トレーナーが、"自分の全てを掛けてでも勝たなくてはならない相手"と言っていたトレーナー。グラッセの言葉通り、我々は強い。それは自信を持って言える。
なら⋯⋯昼間、彼が言っていた言葉の意味は───。
『樫本さん。
「練習⋯⋯か。」
「樫本トレーナー。」
「どうしました?ココン。」
「あのトレーナーが、もし本当に"ポラリス"のトレーナーと同じレベルなら⋯⋯間違い無くこちらの2手、3手先を読んできます。そうじゃなくても、単純な実力プラスで奇策や搦手は考えておいた方がいいかもしれません。」
「我々はどんなメニューでも乗り越えます。必ず勝ちましょう!」
「⋯⋯分かりました。ココン、グラッセ。メンバーを集めて下さい。ミーティングを開き、今後の練習メニューを見直します。」
『はいっ!』
彼女達が着実に成長している事に嬉しさを感じる。少し前ならば、自分達からこんな言葉を掛けてくる事は無かった。
アオハル杯に向けた日々⋯⋯そして発破を掛けた姫野トレーナーの存在。それらがあったからこそ、彼女達は前を見据えている。
ならば私もトレーナーとして、チーム"ファースト"を導かねばならない。
アオハル杯決勝では"ハーバー"に全員がペースを乱された。
模擬レースを頼んだ"ポラリス"には、純粋な実力でねじ伏せられた。
彼女達に敗北は似合わない。だからこそ、相手が格上だったとしても勝たねばならない。
勇トレーナー⋯⋯受けて立ちましょう。
こちらこそ、良い練習相手になって貰います。
◇◆◇◆◇
「あの⋯⋯カレンちゃん⋯⋯。」
「大丈夫だよマヤちゃん。悪い人じゃないから。」
初日恒例のBBQが終わって、マヤ達は皆でこれからの事を話そうかなって思ってた。勿論トレーナーちゃんの事とか、ちゃんと合宿での練習の事とか。今回はメンバーも多いし、それぞれ得意分野でこなした方がトレーナーちゃんの負担も少ないよねってお話で。
デジタルちゃんが居なかったのが気になるけれど、すぐ戻るって言ってたからあまり気にしないようにはしてたんだ。
でも⋯⋯そんな時、マヤ達の居る部屋にお客さんが来たんだよね。凄くダンディーな声をした男の人⋯⋯多分誰かのトレーナーさん───あっ、これマーちゃんのトレーナーさんか。
今はそう⋯⋯物凄く大きなアストンマーチャン着ぐるみさんが、ギチギチにドアに詰まってた。ギッチギチに。誰も出られないし、入れないくらいには。何で横向きに入ってこなかったんだろう。そしてこれ、どうしたらいいんだろう。
「⋯⋯お疲れ様です。勇者御一行の皆さん。」
「ヤスさんも、お疲れ様でーす♪」
「えっと⋯⋯?」
「この人はヤスさん。姫野さんの同期で、見ての通りアストンマーチャンさんの担当⋯⋯を、予約されてるトレーナーさんなの。」
「そっか⋯⋯じゃあ昼間マヤが見たのは幻覚じゃなかったんだね。トレーナーちゃんには見えてないのかと思っちゃった⋯⋯。」
海辺に佇んでマヤの方に手を振ってたのも、その後マルゼンちゃんみたいなダンスを踊ってたのも、ニコニコのカレンちゃんに全速力で追いかけ回されてたのも、ピッチ走法でバタバタ走って逃げた数秒後に転んで波に攫われかけていたのも、全部本当の事で良かった〜っ!!
とはならないんだけどね?それはそれで、"何で?"ってお話なんだけどね?こんなに濃いのに何ひとつ分かってないんだもんマヤ。
「その⋯⋯先輩に用事があったのですが⋯⋯。」
「あ〜ゴメンなさい!お兄ちゃん今居なくて⋯⋯多分トレーナー棟だと思いますよ?」
「そうですか。すみません、ありがとうございます。では⋯⋯では⋯⋯。」
『⋯⋯⋯⋯。』
「スゥー⋯⋯ではっ!ふんっ、ハァッ!!」
「ねぇヤスさん、マヤ達が手伝おっか?」
「いえッ!皆さんの手を煩わせるだなんてそんな事はッ!!」
「でも⋯⋯さっきからマーちゃんの手がパタパタしてるだけだし⋯⋯。」
「全ては自分のミスが招いた事⋯⋯これで皆さんに負担を掛けて、明日以降のトレーニングに支障が出るような事があれば⋯⋯自分は⋯⋯先輩に顔向け出来ません⋯⋯。」
困ったマヤの耳元に顔を寄せて、カレンちゃんがこっそり囁いた。
「こういう人なの。根が真面目過ぎる、お兄ちゃんのファン⋯⋯。」
「トレーナーちゃんの周りって濃い人しか居ないね⋯⋯。」
「うふふふっ。でしたら私にお任せあれ!プリファイの様に可憐で優雅に美しく──そしてパワフルに。ドタマぶち抜いてやりますわよ♡」
「アンタは下がってなさいカワカミ。中身出たらどうすんの。」
「そんな事致しませんっ!」
「ふーん、どうかしら。キタサン、アンタは何か無いの?」
「⋯⋯わっしょい?」
「は?」
「ロロ、ロブロイさぁんっ!!」
「えぇっ!?あ、や、あの⋯⋯せっ、石鹸でも塗りましょうか!?それか⋯⋯っ、ブルボンさんお願いします!」
「結論。着ぐるみの周りに潤滑剤を塗布、その後扉を外して救出し、再び扉を修理して"わっしょい"する事が最善かと。提案。潤滑剤でしたら、丁度ここに自然薯が。」
それしまってブルボンさん。
「皆さん⋯⋯すみません⋯⋯ありがとう、ございます。本当に⋯⋯うっ⋯⋯。」
「も〜、ヤスさんってば泣かないで下さい♪困った時はお互い様じゃないですか。」
「そう、ですね⋯⋯グスッ⋯先輩に似て、皆さん───。」
「そ〜⋯───れっ!!☆」
ポンっ、て言う音が聞こえそうな勢いで。
それか、バラエティー番組だったら3カメ入りそうな感じで。マーちゃん着ぐるみが扉から飛び出して来て、部屋の中で転がって⋯⋯動かなくなっちゃった。
「ふふっ、どう?どう?お姉さん張り切っちゃった♪」
「マルゼンちゃん⋯⋯。」
「⋯⋯あら?あらら⋯⋯?え〜っと⋯⋯もしかし、て。張り切り過ぎた感じ⋯⋯??」
「いえ、心配なさらないで下さいマルゼンスキーさん。こんな事も有ろうかと、中のクッションにはかなりこだわりました───アドマイヤベガさんが。」
それでもスイープちゃんの前でモゾモゾした着ぐるみさんは、今度は仰向けになって動かなくなちゃった。本当に大丈夫かな⋯⋯結構な勢いに見えたけど⋯⋯。
「⋯⋯あっ、スイープトウショウさん。中身は有りません。安心して下さい。」
「喋ってるし、中のクッションって今自分で言ったじゃない。何今更思い出したみたいにマスコット根性出してんのよ。バカじゃないの?」
「何も言えません⋯⋯ご指摘に感謝し、精進します。」
「⋯⋯ねぇ。あたしはこれから使い魔のとこ行くけど、アンタも来る?用があるんでしょ?」
「使い魔⋯⋯先輩ですか。是非、ご一緒させて下さい。」
「今度はちゃんと横向きに出る事!良いわね!行くわよキタサン!」
「ちょわっ!?あたしもですか!?あっ、ちょ、スイープさぁん!!」
手を引かれ、途中扉で引っかかりそうになったヤスさんと3人で、スイープちゃん達は部屋を後にした。何か嵐が過ぎ去ったみたい。
「ヤスさん⋯⋯変わってるね。」
「うん。でもお兄ちゃんがべた褒めしてるくらい可愛がってる人だから、悪い人じゃ⋯⋯無いかな?何か、"恋人に選ぶならああいうタイプ"って言ってたもん。」
「トレーナーちゃんってばそういう事サラッと言うんだからぁ⋯⋯。」
『ね〜。』
「あっ、そうそう!恋人で思い出したけれど、トレーナー君にミチコさんの事聞いたわよ。何かね⋯⋯ふふっ。男の人なんですって!」
『⋯⋯⋯⋯えっ。』
マルゼンちゃんの言葉の意味が全然理解出来なかった。えっ?待って待って待って⋯⋯ミチコちゃん、男の人?
告白したミチコちゃん=男の人。
恋人にしたいヤスさん=男の人。
この2人の特徴を表した式はつまり、男の人+男の人=男の人。分かんない。ハヤヒデさんどうにかして。
⋯⋯トレーナーちゃん、もしかしてそういう事?そういう⋯⋯えっ!?そうなの!?!?!?今物凄い勢いでマヤ分かっちゃってるけどそういう事なの!?本当に!?デジタルちゃんが青ざめてたよっぽどの事ってこういう⋯⋯そっ、かぁ⋯⋯そうなんだぁ⋯⋯。
「昔からの付き合いだ〜って言ってたし、そういうのって何か良いわよね。ふふふっ♪」
「マルゼンちゃんは⋯⋯大人、だねぇ⋯⋯大人⋯大人って、なんだろう⋯⋯。」
部屋の中には、どうしたらいいか分からない空気だけが残っちゃった。助けてデジタルちゃん。
◇◆◇◆◇
目の前でニコニコと微笑むベーグル──ローレルに、俺は今恐怖心すら覚えている。や、確かにワケあって呼んだのは俺なのだが⋯⋯急に部屋にあったクソデカハリセンを持ち出して何されるかと思ったら、正座させられて本当に何されるか分かったもんじゃねぇ。俺は何かお説教でもされるのだろうか⋯⋯。
「あっ、別にそういう訳では無いです。」
「心まで読んだらいよいよ無敵だぞお前さん。」
「また口に出てましたよ?ふふっ───恐怖心?ベーグル?」
「ヒェッ。ご、ごめ───!」
「ビクトリー♪」
ハリセンが頭に飛んできた。この真顔やり出したら死ぬしかない。そもそも真顔なのにその声のテンションで人の頭どつくなよ⋯⋯誰かこの桜の暴君を止めてくれ。あっ、居たわもう1人。
「⋯⋯ジ、ジョーダンは何をさっきから爪眺めてんの?」
「んー?やっ、な〜んか調子がさ⋯⋯ベースミスったかもしんね。」
「ほーん⋯⋯ちょい待ち。見てやるから。」
「えっ?いやいや、いーって。つか、出来んの?」
「ちょっとはな。お前さんはそこに居てくれれば助かる。寧ろ居てくれないと、膝の上で幸せな顔した相棒が落ちるから。ローレル、ちょっとこれ使ってネイル落としてやってくれないか?」
「はーい♪」
「ハリセン置けよ。」
いつまで持ってんだその鈍器。それあれだぞ?ウチの先輩の忘れ物だぞ?
あの頃はシンザンやシービーにマルゼンの他にも、TTGの3人が混ざって色々やってたから⋯⋯人生ゲームとか、叩いて被ってジャンケンポンとか⋯⋯その名残を持ち出して人の頭をさっきからボッコンボッコン叩いてんじゃないよ。そもそも何置いてってんだあのハゲは。だから毎年俺だけこの部屋の固定枠扱いになってんじゃねぇか。持って帰れっての。そしてハゲろ。
渡したコットンと除光液で一旦ジョーダンのネイルを落としているローレルを横目に、俺はこっそり持って来た"担当イメチェンメイクボックス"を引っ張り出した。
ウチのチームは、SNSは元より雑誌の取材やウェディング特集の撮影等がポンポン舞い込んでくるクソかわメンバーの集い。流石に黙って見ているだけでは申し訳ないので、トレーナーとして出来そうな事は片っ端から学んだのだ。即ち俺流の推し活。この中には日頃使っているイメチェンアイテム達がわんさか詰まっている。
因みにネイルは商店街で教わった技術である。他にもメイクやら撮影技術やら裁縫やらうんぬんかんぬん⋯⋯あそこには俺の師匠達がわんさか居る。だから逆らえないんですよね、分かってます。
「よーし、ひと仕事やってやらぁ。」
「それデジタルの手な。」
「あっ、いつもの癖で。」
「いつも何してんの?」
「気にしちゃダメよ。良いからおてて出しなさいほら。」
「何かオネェのスタッフみたいでウケるんですけど。撮っとこ。」
「撮んな。」
好き勝手言いおってからにこのギャルは。
しかし手は滅茶苦茶綺麗。流石、己の弱点をカバーし続けてきたネイルのプロである。素直に尊敬するわ。
「そういえばジョーダンちゃんとトレーナーさんの組み合わせって、珍しいよね。」
「あー、何か補習してるとこ見つかって⋯⋯勉強教えて貰って⋯⋯『これでお前とも縁が出来たな!』とかワケわからん事言われて、今に至るって感じっすかね。」
「ワケわからんとか言うな。チームメンバー以外ならお前さんが1番付き合い長いんだから。最早マブだろ。」
「何で今マルゼンさんの話したん?」
「マブい姉ちゃんの話はしとらん。手元狂うから笑かすなよ。」
「ウケたんだ。」
「うん。」
『うぇ〜〜〜〜い。』
「笑かすなっつってんだろ顔中にトップコート塗りたくんぞ。」
「ガチで止めろ。」
見ろお前、サクラの彼女が楽しそうに笑ってらぁ。ん?楽しそうなら良いのでは?あっ、ダメだハリセン置いてねぇ。まだ安堵するには早すぎる。
まぁ⋯⋯正直言うと、デジタルを除けばこれ程まで友達感覚と言うか気楽に過ごせる子もトーセンジョーダン位である。言ってしまえば悪友のようなものだし、彼女のトレーナーには俺も色々と教わる事の方が多いのだ。
ウチのメンバーは良くも悪くも落ち着かない。俺の感情とポニーちゃんがブルンボルンに揺さぶられてしまうからな。
「あたしからすればローレル先輩とコレの組み合わせも珍しいですけど。」
「今コレって言ったか?」
「う〜ん、そうだね⋯⋯私もちょっと、色々あったからね。この人と。」
「今指差したか?」
便乗すんなゲレイロ。お前さんそういうキャラじゃないでしょ?どっちかと言うと、ど根性系主人公とかヒロインみたいなポジでしょ?2番目に付き合い長いからってジョーダンみたいな絡み方しなくていいんだよ?
何だポニーちゃん、ポジが悪い?ポジ違いだから喋んな。
「ったくよぉ⋯⋯揃いも揃って好きに言いやがって⋯⋯ほら、出来たぞ。」
「早っ───あ〜、あのさ?やって貰って言うの、ちょい気が引けんだけど⋯⋯。」
「おぅ。ミスった。」
「あたしの気遣い返せし。」
「まぁ待て、聞いてくれジョーダン。これは"敢えて"、だ。」
自慢じゃないが、俺はこの位の事でミスったりはしない。なら何故かと言われれば───交渉術である。
怪訝な顔を浮かべたギャルを宥め、隣でハリセンを構えた暴君を横目に説明する事にした。
「俺は昔、お前さんのトレーナーにネイルを教えた事がある。あの人は勤勉家だから、お前さんの為に今だって不器用ながらも努力している事だろう。」
「⋯⋯それで?」
「俺のこのミスを話のタネに、あの人に話題を振ってみるといい。"そういやアンタも出来るんだって?やって見してみ?あたしも教えたげるからさ〜"的な事をそれとなく言うんだ。あの人真面目な顔に似合わず絶対ウキウキでやるぞ。」
「いやいや、まさかぁ⋯⋯やりかねねー⋯⋯。」
「ふふっ⋯⋯あとは分かるな?お前さんは共通の話題であの人にもう少し歩み寄れる。あの人はお前さんの為に力になれる。win-winの関係じゃないか。」
あっ、考えてる考えてる⋯⋯ヨシッ!押せ!行け!ここで上手い事頼れるマンだと示して、あわよくば俺の頼みを聞いて貰え!
「お前さんは自分をバカだと言うが、バカ正直で素直なのが良い所だ。あの人もそこはちゃんと気付いてる。日頃の恩を上手い事返せるチャンスだぜ?」
「⋯⋯何か⋯釈然としねーけど⋯⋯上手い事乗せられてる気がするけど⋯⋯一理あるわ。天才か?」
「伊達にトレーナーやってないさ。ガハハ!」
「そして2人の初々しいやり取りを、デジタルちゃんと一緒に隠れて見てるんですよね?」
ロォーレルゥゥウウウウウウッ!!!!
今決まったろ!?"勝ち確です。ありがとうございました"ってなっても良い場面だったろ!?何で全部バラしたんだチクショーッ!!デジタルが起きたら良い知らせとして報告しようと思ってたのによォッ!!
ゲッ!?ジョーダンの眼が痛い!視線が刺さるッ!冷や汗が止まらねぇッ!!
「⋯⋯⋯⋯いや、ほら。当然冗談だから。」
「だぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜る。」
「ごめんて⋯⋯。」
「それで、トレーナーさんは結局私達に何の用があったんですか?」
「今聞くの?タイミングおかしくない?⋯⋯まぁ、良いか。実はさ⋯⋯ウチのチーム、ここ1週間空気が重くて───。」
「あーはいはい、いつものっしょ?お疲れっしたー。」
「逃がさんぞトーセンジョーダン。貴様とは縁が出来てるんだ、そう簡単に逃げられると思うなよ⋯⋯ッ!!」
「うーわ秒で縁切りてぇ⋯⋯。」
駄目です。大人しくお話聞いて下さいお願いしますから。
最早俺だけではどうも出来んのだ。相棒もここに来たは良いが、早々にハリセンを持ち出したローレルに冗談半分で"なんでやねん♪"と軽く小突かれ、そのまま幸せの中で意識を失ってしまった。何しに来たんだお前。
「た、頼むよ⋯もう頼れるのが2人だけなんだ⋯⋯!」
「まぁアンタ、他のウマ娘達から微妙に距離置かれてんもんね。」
「そうなんだよ。俺が何したってんだ。」
「何って⋯⋯ねぇ?」
「そうだね。多分畏れ多い的な意味だと思うけれど⋯⋯やっぱりバーベキューのアレかな?」
『ラモーヌさん連れて来て"ラモラモ"呼びしてた事。』
「ハモるな。別に連れて来るぐらい普通だろ。」
「や、それは良いんだって。あの人相手に"ラモラモ"とか言ったからビビられてんの。ぶっちゃけあたしも、『コイツ実はやばいんじゃね?』とか思ったし。」
「しかもラモーヌさんのお皿にウィンナーばっかり山盛りにしてましたよね。アルダンさん、顔面蒼白でしたよ?」
だってウィンナー似合うと思って⋯⋯本人も食ってたし、良いじゃん⋯⋯その後もシャコガイあげたじゃん⋯⋯。
言っておくけどお前ら、ウチの師匠なんかもっと凄いんだぞ。ラモラモの事、"青二才の未亡人だな。ガッハッハッ!"とか普通に言ってたんだからな。シンザンにシバかれてたけど。ラモラモぐらい可愛い方だろう。
「そんな事やってっから距離感遠いんじゃね?って話。あいつヤベーわ的な。」
「でもデジタルちゃん、ここに来た時は結構焦ってる感じでしたし⋯⋯多分チームの事と関係あるんじゃないですか?」
「えっ!?そうなのか相棒!?起きろ!頼む起きてくれ!俺に叡智を授けてくれぇッ!!」
「⋯⋯ふぁっ!?アタシは何を───ふとももぉ??」
「ジョーダンの太ももならまた後で聞くから!今は大事な話があるんだよ!」
「大事な話、です、か?太ももじゃなく??」
覚醒したのも束の間、既にぷるぷる小刻みに振動しつつある相棒はジョーダンの膝枕に限界寸前だ。このままでは幸福と罪悪感から意識が遥かな
その前に話題を⋯⋯明瞭簡潔に、されど伝わる様に!行けっ、ポニーちゃん!!お前はやれば出来る子元気な子ッ!!
「俺とお前の⋯⋯将来的な話だ。」
「°」
相棒はフリーズした。何ならオマケでハリセンも飛んできた。なんでやねん。
「⋯⋯デジタルちゃん、宇宙行きましたね。」
「相棒ーーーーーーッ!!!!」
「いや、今のはアンタが100悪いわ。んな言い方普通はしねーからな?」
「えーっと⋯⋯要するにトレーナーさんは、チームの雰囲気を何とかしたい。でも皆は素直に聞いてくれないし、自分から聞くのも怖いからそれとなく私達に聞いて欲しい⋯⋯で、合ってますか?」
「⋯⋯はい。」
「まぁ、そんくらいなら別にいーけどさ。あんましさっきみたいな事ペラペラ言ってっと、ますます距離感バグんぞー。じゃ、帰るわ。」
「ありがとう⋯ありがとう⋯⋯気を付けます⋯⋯。」
そうしてジョーダンとローレルが部屋を後にしようと扉を開けた直後だった。クッソデカいマーちゃん着ぐるみが扉の前に立ち尽くしているじゃないかたまげたなぁ⋯⋯何してんのヤス君。
「⋯⋯はっ?なんコレ⋯⋯ちょちょちょ!?無理だから!その幅で入ろうとすんなって!絶対無理───ほら詰まったぁ⋯⋯。」
「何でやるなって言ったことを全っっっ部律儀にやってんのよアンタはぁ〜〜〜〜〜ッ!」
スイーピー⋯⋯?えっ!?スイーピー!?ななっ、何でこのタイミングで!?はっ!まさか昼間に話した"レースの魔法"が嘘っぱちだとバレたのか!?とっ、問い詰めに⋯⋯??
ヴェあああああっ!!勘弁して下さい俺が悪かったです!謝りますからチームのムードが重ったいこの流れでの言及は許して下さい!!
もしこれがバレでもしたら、相棒には呆れられ、マヤちゃん達には嘘つき♡と失望され、カレンには布団の上で"お話"されるハメに⋯⋯くっ!!
いや、待てよ⋯⋯だとしたら何故俺の可愛い後輩であるヤス君まで居るんだ?えっ!?ヤス君にも失望されるパターン!?ヤダーーーっ!!
⋯⋯取り敢えず引っこ抜いてやるか。
「しょーがないから魔法でどうにかしてあげるわよ!行きなさいキタサン!!」
「魔法じゃないんですか!?」
「アンタだってあたしの立派な使い魔なんだから魔法で召喚したようなものじゃない。」
「いや、あの⋯⋯えぇ〜〜〜⋯⋯?」
「良いよキタちゃん。こっちで引っ張るから───。」
「わっしょいッ!!」
威勢のいい掛け声と共に、着ぐるみの腰あたりに抱き着いたままキタちゃんが部屋の中に飛び込んで来た。何で皆お話聞かないん⋯⋯?あっ、俺が言えた事じゃねぇわ。凹む。
ゆっくり起き上がったキタちゃんは地味に恥ずかしかったのか、両手で顔を隠しながら、こう言った。
「⋯⋯これで⋯満足ですか⋯⋯?」
「えっ⋯⋯知らない⋯⋯でも、何かゴメンね?」
この後大変ご立腹な魔法少女に、死ぬ程
キタちゃんブラック(わっしょい) : "ポラリス"から派遣された期待のホープ。スイーピーの頼みは基本断れない断らない。天然ジゴロにしてお助け番長。1人だけギャルゲの主人公みたいな相関図してるし、ことある事にわっしょいしてる。3期おめでとう。
ジョーダン(愛すべきバカ) : シナリオで印象が180°変わる事に定評のあるボスギャル。ウマ娘かと思ったらドラゴン桜だった。チームメンバー以外なら1番ロリコンと付き合いの長いマブダチ。大体ツッコミしてるけどボケる時はとことん素でボケる。こんな友達欲しかった。
ローレルさん(サクラの姿) : 走る粘度代表バ。ブーさんへのクソデカねっとり感情持ちが発覚して無事おもしれー女になった子。当作品ではそれに気付かなかったどっかのアホが煽ったせいでマヤちゃんにも感情が向いてる。2番目にロリコンと付き合いが長いし、度々ボケる。育成シナリオで更に発覚した恋愛強者。
ヤス君(マートレ見習い) : 後輩ちゃんの同期にしてロリコンの希少な同性後輩。脳内CV.は細谷佳正。そうだよゲンジロちゃんだよ。素顔はクソイケメンなのに着ぐるみ着てるから描写が皆無。生真面目で涙脆いが、根底にあるのは既にチームトレーナーの後輩ちゃんと比較した自分へのコンプレックス。この作品のヒトミミはクソデカ感情持たなきゃ死ぬんか?