人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!!   作:なちょす

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ロリ婚する。話はそれだけだ。良いね?
しかしいつになったらフラワーちゃんをほんへに出すんやコイツ⋯⋯。




第3R : マヤ、出会っちゃった!

 トレーニングに集中出来ない。

 

 全部昨日判明した『トレーナーちゃん男の人好き過ぎ問題』のせい。何なら寝不足気味だもん。これは実質トレーナーちゃんが寝かせてくれなかったのと同じだね。

 それに暑いし⋯⋯もう、直接全部トレーナーちゃんに聞いた方が早い気がしてきたなぁ⋯⋯。

 

 いや、でも⋯⋯うーん⋯⋯折角ならやっぱり、大人っぽい駆け引きしてトレーナーちゃんから聞きたい。そしたらトレーナーちゃんだって、マヤの事子供扱いしなくなると思うし⋯⋯。

 

 

「マヤちゃん、大丈夫?」

「ちょっとしんどいかもー⋯⋯。カレンちゃんは大丈夫?その⋯⋯トレーナーちゃんの事、とか。」

 

 

 2人が出会った日のお話は聞いた事がある。

 カレンちゃんが子供の時、迷子になった事。

 その時トレーナーちゃんと出会って、自分の夢を肯定してもらった事。

 トレセン学園で運命的な出会いを果たして、デジタルちゃん、ボーノちゃんの後に3人目としてチームに入った事。

 本当ならカレンちゃんが物凄く複雑な気持ちじゃないかなって思うのに、昨日から落ち込んでる様子は見せなかった。こういうところ、本当に強いんだよね⋯⋯。

 

 それでも、さっきトレーナーちゃんの所から走って来たのはまだ思うところがあるんじゃないかな。

 

 

「⋯⋯あのね、マヤちゃん。実はカレン言ってなかったんだけど⋯⋯。」

「うん⋯⋯。」

 

「今回のお話が大した事じゃないってヤスさんに聞いて1週間前から知ってるんだ。酔っ払ったお兄ちゃんが同級生の人に告白しただけなんだって。」

 

「エーーーーーーーーッ!!??」

 

「昨日カレンがヤスさんの所に行ったのも、お兄ちゃんには内緒にしてて欲しかったからなの。」

 

「エーーーーーーーーッ!!??」

 

「マヤノさんにステータス : 『驚愕』を感知。どうしましたか?」

「ブルボンさん!トレーナーちゃん別に男の人とそういう関係じゃ無いんだって!」

「検索 : "過去のマスターの言動及び行動"。思考 : "そこから構築される事実確認のプロセス"。実行中──実行中──実行中──。」

 

 

 ぽかんとした顔のままゆらゆらしてる。ブルボンさんってこんな感じだったかな。

 

 

「結論 : "でしょうね"。」

「今の時間なにーーー!?って言うより知ってたの!?」

「あくまでも推測によるものです。この結論に至る可能性は96%でした。」

「それほぼ100!!えっ!?じゃあロブロイちゃんは!?」

「『皆さんが神妙な面持ちだったので、チームとして大きな課題に向けて特訓するんだと思ってました』って、朝言ってたよ?」

「1番真面目だった!じゃ、じゃあスイープちゃんは!?」

「回想 : 『別に興味無いわよ。使い魔の事なんか大して知らないし。』と。」

「新人ちゃん達はっ!?」

 

『あぁ、お馴染みの⋯⋯って()。』

 

「うわーーーん!マヤだけ知らなかったーーーーーっ!何でーーーーーーっ!?」

 

 

 あっ、寝不足でフラフラする⋯⋯。

 おかしいよ⋯⋯マヤ結構物分りに関しては自信あったんだよ?だからトレーナーちゃんから事実確認を取ろうと思って頑張ってたのに⋯⋯うぅ〜〜〜⋯⋯。

 

 

「⋯⋯ボーノちゃんは?」

「今日のご飯が味噌ちゃんこだと言うこと以外は特に。」

「わーい。」

「ごめんねマヤちゃん。本当はすぐにでも教えてあげたかったんだけど⋯⋯お兄ちゃんが近くにいる時には教えてあげられなかったんだ。」

「な、何で⋯⋯?」

「だってお兄ちゃん、カレン達が落ち込んでるとすぐ気付くでしょ?でも普段全然そんな素振りを見せないから───カレン達の事を見てもらいたくて、ちょっぴりいじわるしちゃった♪」

「マヤノさんは大体マスターの傍に居た為、連絡が遅くなりました。すみません。」

「まさかの自滅だったよ⋯⋯大人の駆け引き、マヤより先にやってたんだ⋯⋯。」

 

 

 しかもトレーナーちゃんには絶対効く方法で。今の所マヤの成果って、ロブロイちゃんが牛さんの友達だって事と崩れたローレルさんのイメージだけだよ。こんな事ある?無いよ。

 

 

⋯⋯もう今日は何もしたくない。

「でもねマヤちゃん⋯⋯実は、カレン達も次の手が無くて困っちゃってるの。だからマヤちゃんの手を貸して欲しいんだ。ダメ⋯⋯かな?」

「うっ⋯⋯。」

「昨日のマヤちゃんとお兄ちゃんのやり取りを見て、ビビビー!って閃いたの!マヤちゃんなら他の人とも顔が広くて仲良しだし、お兄ちゃんの考えも分かっちゃうから有利な駆け引きに持ち込めるかなって⋯⋯。」

「それは⋯⋯えっと⋯⋯。」

 

 

 あのカレンちゃんがマヤを頼ってくれてる。可愛いだけじゃなくて頭も切れるカレンちゃんが⋯⋯ブルボンさんも、そうなのかな⋯⋯?

 少しだけ目線を送ると、ブルボンさんはカレンちゃんの方を向いてからマヤに目線をくれた。

 

 

「『ぶっちゃけ1番大人のやり取りです』と、ミホノはミホノは進言します。」

「⋯⋯やるっ!マヤがぜーーーったいにトレーナーちゃんの事をチームに振り向かせてみせるから!!」

「ありがと〜♡」

「流石です。天下無敵のちょろ──記憶媒体にある台詞データを消失しました。」

「ブルボンさん、ちょっとあっちでカレンと"お話"しませんかー??」

「任務了解。これより"コミュニケーション"を実行します。」

 

 

 行っちゃった。何かブルボンさん言いかけてたけど、何だったんだろ?

 

 

「あの、マヤノさん⋯⋯大丈夫ですか?さっき大きな絶叫が聞こえてましたけど⋯⋯。」

「キタちゃん!もう大丈夫だよ!なんて言ってもマヤ、大人だからね!♪」

「はぁ⋯⋯それなら良いんですけど⋯⋯。」

 

 

 そう言ったキタちゃんは、さっきまでカレンちゃんと一緒に居たトレーナーちゃん達の方に顔を向けて言った。

 

 

「あの、マヤノさん⋯⋯あの人って。」

「えっ?」

 

 

 キタちゃんが向いた方にはトレーナーちゃんと⋯⋯いつから居たのか、ウマ娘の人が。

 

 わっ、待って待って!?何あの人⋯⋯おっとな〜〜〜!!

 マルゼンちゃんとは違う雰囲気って言うか⋯⋯出来る女オーラが凄い!でも誰!?また新しいトレーナーちゃんの交友関係が発覚したの!?も〜〜〜〜!これ以上新しい人増やさないでよトレーナーちゃん!!また分かんなくなっちゃうから!!ハヤヒデさんに何個方程式作ってもらえばいいのー!?

 

 

「うーん⋯⋯?」

「キタちゃんどうしたの?」

「何かあの人⋯⋯どこかで見た事あるような⋯⋯無いような。ヨシエさんが何か言ってたような⋯⋯言ってないような。いや、テイオーさんだったかな?」

「そうなの?」

「ハッキリとは⋯⋯でも気の所為かもしれません!それか、何か有名な人で雑誌やテレビに出てたとか!」

「うーん⋯⋯確かにトレーナーちゃんもヨシエちゃんも、知り合いに凄い人がいっぱいいるから有り得るかも。」

「ですよね!あたしも最近慣れちゃってましたけど、やっぱりあの2人が特殊なんですよね!あはは、良かった───。」

 

「お2人共、こんにちは。」

 

『わぁっ!?』

 

 

 キタちゃんと一緒に尻もちをついちゃった。

 だって、さっきまでトレーナーちゃん達と一緒に居たお姉さんが急に目の前に現れたんだもん。いつ来たのか全然分からなかった。

 

 

「初めまして。今日から1週間、お2人とゼンノロブロイさんの指導をさせて頂く⋯⋯そうですね───"ティー&ボー"、と呼んで下さい。」

「えっ?もう1人居るんですか?」

「えっ?私だけです。」

「えっ?」

「えっ?」

 

『えっ?』

 

 

 じゃないよもーっ!!終わらないじゃん!何今のゆるいやり取り!?何で2人組みたいな呼び名を使ったの!?

 

 

「ふふっ、冗談でございますよ。ティーボーと呼んで下さいでございます。」

『ティ、ティーボー⋯⋯さん。』

「───よーしよしヨシエちゃん。はーい!私と君達は知り合い超えて最早フレンド!堅苦しいモードしゅ〜りょ〜〜〜!改めてよろしくぅ♪」

 

 

 そう言って浜に膝をついたティーボー?さんは、マヤとキタちゃんの手を取って、キスを───えっキスッ!?わっ、わわ、わぁ⋯⋯!ハートのサングラスが全部台無しにしてるぐらい大人な対応⋯⋯フジさんでもやってるの見た事無いのに!

 

 

「あららら⋯⋯この中に1人、お顔真っ赤な純情娘がいるようで。」

「だっ、だってぇ〜⋯⋯。」

「わははっ。気楽に行こうぜぃ、天才マヤちゃんにリボルケインキタちゃん。」

「リボ⋯⋯?」

「って事だから2人とも!最後の主役、英雄見習いの素敵な卵ちゃんを呼んでみよっか!行くよ〜?せーっ、の───!!」

 

『ロブ───』

 

 

「ロブ之助ぇぇえええええいッ!!」

 

 

 皆ビックリしてる。ロブロイちゃんも、トレーナーちゃんも、デジタルちゃんも⋯⋯ビックリするよね、今のは。ロブロイちゃんの事をそうやって呼ぶ人初めて見たもん。

 

 近くに居たカレンちゃんやスイープちゃん達は、ようやくティーボーさんに気づいたみたいで⋯⋯カレンちゃんに関しては、今頃凄い速さで色んな事を考えてるんだと思う。対応力込みならウチのチームでもダントツの理解の速さだから、多分もうトレーナーちゃん絡みだって察してるんじゃないかな。

 

 

「はい、良く出来ました!じゃあ皆で練習だ!トレセーン、ファイオーッ!」

 

 

 そうしてティーボーさんはキタちゃんの手を引っ張りながら、皆が居る方とは逆側に歩き出した。だからマヤも、遠くに居るロブロイちゃんに『こっち』って手を振って⋯⋯見ちゃったんだよね。

 

 

 

 トレーナーちゃん達が居る方から真っ直ぐこっちに向かって来た──砂浜の、大きく抉れた蹄跡を。

 

 

 

 

 

 

 

「かわい子ちゃん達、ようこそティーボー先生のスペシャル指導教室へ!いや〜、1回こういうトレーナー業務って言うの?やって見たくてさぁ〜!理事長ちゃまに無理言っちゃったぜぃ。」

 

 

 合流したロブロイちゃんとも挨拶を交わした後、ティーボーさんは嬉しそうにそう言っていた。

 

 

「さてさて、改めて君達に状況説明をしよっか!私は今日から1週間、皆の面倒を見る為にやって来たサプライズゲストなワケでございます。時にBLACKちゃん?君はトレーナーから何か言われてるかな。」

「ヨシエさんから?指示に従ってという事以外は特に⋯⋯あっ。"モっぺを楽しませてあげて"、とは言われました。」

「う〜わ出た。ヨシエちゃんの言葉足らずな超感覚的ピーキー指導。その中に意味が5〜6個はあるから気を付けてね。」

「えっ?そうなんですか?それしか言われてないので、あたしはそのモっぺさん?がそもそも誰なのか分からなくて───。」

「キタちゃん。それ多分、ラモーヌさんだと思うな。」

 

 

 マヤの言葉を聞いて、キタちゃんはどんどん顔色が悪くなっていった。

 そうだよね⋯⋯マヤも昨日、トレーナーちゃんがラモラモって言ってた時言葉に困ったもん。そういう所だよ2人共。だからウマ娘の子達の間で密かに流行ってる、『このトレーナーは無〜理〜ステークス』で13回連続ワンツーフィニッシュ決めてるんだからね。一緒に居るとお腹痛くなるって。

 

 

「よしよし、難題押し付けられた不憫な子よ⋯⋯でも任せなさい!無理じゃないからね!先ず君の課題は『積み重ね』。ガチガチに基礎固めてメンタルわっしょいさせてこー!」

「⋯⋯で、出来ます⋯かね⋯⋯?その、あたしは全然テイオーさんやルドルフ会長には及ばないですし⋯⋯ましてやラモーヌさん相手に⋯⋯。」

「ん〜、1つ言っておくよ。そもそも君の相手はメジロラモーヌじゃない。その上で出来ると言っておこうか。『惰性的な継続』と『意識した積み重ね』は決定的に違う。後者の方が断然ムズいんだけど、ヨシエちゃんが君を選んだって事は後者のやり方が出来るって断言してんだよね。あの子は自分のやり方が滅茶苦茶な事を理解してる。

 その上で担当を選別してるのさ。そこにルドルフもトウカイテイオーも関係無い。キタサンブラック───君は、ヨシエちゃん最後の"可能性(希望)"なんだ。」

「えっ、えぇ〜⋯⋯胃が⋯⋯ち、因みにその相手って⋯⋯?」

「⋯⋯忘れちった!わははっ!取り敢えず最終日にモっぺをぶっ飛ばしてやろーぜぃ!」

「⋯⋯⋯⋯はいっ。」

「ラモーヌさんって、呼び名幾つあるんでしょうか⋯⋯。」

「ねー。」

 

 

 それよりキタちゃん倒れるんじゃないかな。もう全然笑ってないもん。

 

 

「さぁお次はロブロイちゃん。過去のレースは私も見させてもらったよ。君に必要なのは、"スイッチ"かな。」

「スイッチ⋯⋯ですか?」

「YES!ぶっちゃけ実力はそこそこあるし、確実にこれからもっと伸びる。けれど忖度無しに言うのなら気弱。優しいんだろうけどそれ以上にメンタルがナメクジ。」

「ナ、ナメクジ⋯⋯。」

「私としてはルドルフの前で、我こそは英雄ゼンノロブロイ!悪しき皇帝よ!貴様の覇道をぶち壊しに来た!ぐらい言って欲しい。」

「無理ですっ!無理無理無理無理っ!!」

 

 

 わははっ!て笑いながら、それでもティーボーさんはロブロイちゃんに視線を合わせるようにしゃがんで言葉を続けた。

 

 

「今のは冗談。でもね?自信を持ってって言うのは本当。トレーナーの、チームメイトの、ファンの期待と夢を背負って、私達は走る。どれだけ自分は1人だ、関係無いと思ってても⋯⋯ウマ娘である私達(・・・・・・・・)がレースに出てる時点で、誰かにそういう想いを託されている。それは皆同じなんだ。」

「皆⋯同じ⋯⋯。」

「そうして最後まで走って、歓声すら置き去りにする最終直線でようやく本当の1人きり。意地と意地の、エゴとエゴのぶつかり合い。君らの勇者様が強いのはそのスイッチの入れ方が上手いのと、入れるべき所をきちんと理解しているからさ。

 足を動かすのは、心を震わせるのは、最後まで信じた自分だけの夢の剣。その剣で全てを打ち倒して、自分に希望を託した民の元へと凱旋出来たなら───シンプルにカッコイイだろう?英雄。」

「っ───!」

 

 

 大きく見開かれたロブロイちゃんの眼の中で、熱く、大きく昂る何かが揺れ動いた。

 ティーボーさん⋯⋯言葉を選んで話してる。ロブロイちゃんの考え方を根っこから揺らすように、ロブロイちゃんの好きな言葉で。勿論トレーナーちゃんからマヤ達の事を聞いてる可能性もあるけれど⋯⋯何だろう、この、さっきから胸がザワつく感じ。この人の現役時代を知らない筈なのに、言葉の節々にある説得力⋯⋯うーん⋯⋯?それも何か違う。もっと分かりやすい"違和感"がある気がする。

 

 

「⋯⋯とまぁそれっぽい事言ってみたけど、そこは割と後でど〜〜〜〜〜とでもなるから、先ずは足りてない分の実力を堅実につけようねー!課題は『マヤちゃんの後ろ1バ身以内に付いてくる』ことー!」

「えっ⋯⋯?」

「ティーボーさん台無しーッ!ロブロイちゃん固まっちゃったよ!?ほら見て!眼鏡光ってる!!」

「あっ、これは逆光で⋯⋯。」

「わははっ!そんなナイスツッコミしてくれたマヤちゃんの課題はね〜?」

 

 

 空気が変わった。

 

 この人は笑ってるのに、ロブロイちゃんもキタちゃんも後退りして。

 マヤも背中がゾワゾワして、自然に手をギュッと握ってた。

 ずっと付けてたハートのサングラスを外してティーボーさんは⋯⋯瑠璃色の眼をしたウマ娘は、言った。

 

 

 

「───『私に勝ちな』。」

 

 

 

 あー、理解(わか)っちゃった───この人、デタラメに強い。

 

 

「⋯⋯良いよ。」

「驚かないんだ?」

「だってティーボーさん、本当ならデジタルちゃんクラスじゃなきゃ相手にならないくらい強いでしょ。そんな人と走れるなんてこれから先何回あるか分からないもん。」

「やだな〜。こんな事言ってるけど、私はもう引退してるんだからすぐ出来るって。わははっ。」

「ううん嘘。おかしいと思ったんだよね。さっきの⋯⋯トレーナーちゃん達の所からマヤ達の所に来るまで早過ぎた事とか。今のロブロイちゃんに対する言葉とか。ティーボーさんってば、意地と意地のぶつかり合い⋯⋯それもかなり強烈なのを経験してるんだね。」

 

 

 笑ったままこの人は何も言わない。

 でも促してきてる⋯⋯"それで?"って。空気だけがピンッて張りつめて、胸が詰まる。

 

 

「まぁ、経験してるよね。でも君達の所にちゃっちゃか行ったのは大した事じゃ無いよ。カレンちゃん⋯⋯だっけ?あのスプリンターの子ならもっと速いんじゃない?」

「そうだね。でも───スプリンターでも無い(・・・・・・・・・・)引退選手が、学園内で1〜2を争う現役スプリンターに並ぶっておかしくないかな?まるで"スピード"に手足が付いてるみたい。それかあの足跡を見るなら⋯⋯もしかして、手足の代わりに"翼"でも生えちゃってる?」

 

 

 さっきの足跡の所には、小さな人集りが出来ていた。

 言葉を無くしてる子、素直に驚いてる子、嬉しそうな子、ちょっと引いてる子⋯⋯色々な感情が集まったその場所に目もくれないで、ティーボーさんは黙ってマヤの方を向いていた。

 

 

「⋯⋯"翼"⋯"スピード"⋯⋯あぁーーーーーーッ!!??

 

 

 大きな声をあげたのはロブロイちゃんだった。

 眼を真ん丸にして、まるで信じられない物を見ているかの様にビックリして⋯⋯どうしたんだろ?

 

 

「マ、マ、マヤノさん!ここここの人───むぐっ!?」

「OK天才キッズ、私の負けだよ。君は本当に分かっちゃう子なんだなぁ⋯⋯。」

「ふふん♪でしょ〜?マヤのこと、もっと凄いって言ってくれても良いよ☆」

「まぁそこが弱点なんだけどね!物分りが良すぎる気分屋さんでオールマイティな脚質持ち⋯⋯だから、その日の気分とレース展開で都度変えながら走ってるでしょう?」

「えっ、うん。」

「それ自体は悪い事じゃないんだ。良くないのは、君が受け身の姿勢で居続ける事。天候に、バ場に、相手に、展開に合わせる⋯⋯結構。気分で走るのだって大いに結構!けれど──相手任せな合わせ方しかしてないから急なアプローチが発生したら引っ掻き回されて、対応出来たとしても先ず出遅れるし、取り戻そうと掛かりに掛かる。」

「うっ。」

「バテる。逆噴射。撃沈。トレーナー大爆笑。ユーコピー?」

「だってぇ〜〜〜〜〜っ!!うぅ⋯⋯アイコピー!」

 

 

 何か反論したかったけれど、実際心当たりしか無かった。にっ、て笑ったティーボーさんの大人な笑顔に、ますます何も言えない⋯⋯マヤの子供っぽい所を宥められてるみたいで、ちょっぴり悔しい。む〜。

 

 

「だから君にはもっとスタミナを付けてもらいます。多少の掛かりはしょうがない。それでも押し切れる肺を作っておけば困る事は無いし、君の考えも幅が広がるでしょ。後はもう1つ有るんだけど⋯⋯そこはやりながら考えてごらん。」

「はーい⋯⋯あれ?でもそれとティーボーさんに勝つ事に何の繋がりがあるの?」

「んー?走れば分かるさ。そして君のそんな変化を、いさみんは待ってる。」

「⋯⋯いさみん?」

「あっ、やべ。トレーナーさん!わははっ!」

 

 

 さっきまでとは打って変わって、ティーボーさんはマヤと目を合わせてくれない。引き攣った笑い方で明後日の方を向いてる。

 ⋯⋯あやしい。この人絶対絶対、ぜ〜〜〜ったい何か隠してる!

 

 

「あ、あの、マヤノさん⋯⋯この人は───。」

「バーンッ!!」

「ひゃあっ!?」

「今どこからクラッカー出したの⋯⋯?」

「さぁさぁ先ずは実力判断の模擬レースと行こうか!芝コースに行こうそうしよう!マヤちゃんは⋯⋯気になるなら、トレーナーさんにでも聞いてくるかい?私が言った事、きっと明瞭簡潔に教えてくれるぜぃ♪じゃっ、待ってるね〜!良いかいロブ之助。ネタばらしはほら、トレーナーにねっ?ねっ⋯⋯?私もちょっとカッコつけたいから⋯⋯。

は、はい⋯⋯。

 

 

 ⋯⋯行っちゃった。何か、知性を持ったハリケーンみたいな人。手当たり次第に巻き込んで暴れてるっぽいのに、ちゃんと考えながら動いてるって言うのかな。

 トレーナーちゃんの所かぁ⋯⋯うん、行ってみよ。やっぱりトレーナーちゃんからも聞いておきたいし。夏合宿って本当はそういう期間だもんね!

 

 そうと決まればレッツゴー!!

 

 

「ねぇねぇ、トレーナーちゃん!」

「どうしたの⋯⋯?」

「声小さいね。どうしたのはこっちの台詞だけど⋯⋯あのね?トレーナーちゃんから見て、マヤってどう思う?」

 

 

 地面に項垂れて半泣きだったトレーナーちゃんは、マヤの問いに少し考える素振りを見せた。

 本当は⋯⋯ティーボーさんの言葉が、本当でも嘘でも良かった。嘘なら嘘でティーボーさんのお茶目なジョークだったで済ませられるし、本当なら───。

 

 

『そして君のそんな変化を、いさみんは待ってる。』

 

 

 あの言葉は、きっとティーボーさんとトレーナーちゃんが昔からの知り合いだって事なんだと思う。むしろこっちが嘘だったりして。本当に待っているのは⋯⋯あの人。マヤに何かを見出そうとしてる。

 だからマヤに足りない物があの人の言った通りなら、マヤは全力であの人と戦わなくちゃいけない。

 

 トレーナーちゃんはまだ考えてじっとマヤの事を見ながら──待って今別の事考えてない??

 

 

「掛かりやすい───とか。」

「わぁ〜っ!やっぱりそうなんだ!ありがと!!」

「えっ!?あっ、マヤ!?待って、マヤーーーッ!!」

 

 

 気のせいだった!そうだよね!幾らトレーナーちゃんでもこの場面で別の事なんて考えないもんね!

 

 ティーボーさんの言っていた事は本当だった。

 "とか"、って言ったのは、きっと掛かりやすさだけじゃない要因があるんだ。そしてそれがティーボーさんの言っていた、気付いて欲しいこと。

 

 それがマヤの課題なら、乗り越えれば強くなれる。もっとキラキラになれる。あの人と──ワクワクな勝負が出来る。

 そんな軽い足取りの中、何でかいっぱい並んだスイカを横目にマヤは芝コースへと向かった。

 

 

 そして着いた時には───1人の生徒が、3人の前に立っていたんだ。

 

 

 さっきまでの明るい雰囲気はまるで無くて、ただその生徒⋯⋯尾花栗毛のウマ娘の子は、両眼が隠れるくらいに伸びた前髪の隙間からティーボーさんの事を黙って見ていた。

 

 澱んだ青。

 眼の下に出来た大きなクマ。

 

 ビックリした顔のティーボーさんを見れば、2人が知り合いなのはすぐ分かったけれど⋯⋯そこに、少なくとも仲良しなんて感情は無かった。その子もその子で、睨みつけているようにも見えるけれど⋯⋯申し訳なさって言うか、ティーボーさんに対しての怖さが見える感じでどこか眼を泳がせてた。

 

 

「⋯⋯あー⋯久しぶり、スーちゃん。今年は合宿に参加してたんだ。」

「⋯⋯。」

「そっか⋯⋯あっ、とそうだ。君の姉ちゃんさ───。」

「っ⋯⋯すみません。芝コース、使いますよね。私はそろそろ休憩なので⋯⋯どうぞ。」

 

 

 スーちゃん。そう呼ばれた子は、深く俯いて更に言った。

 

 

「ごめんなさい。私、走りますから。ちゃんと⋯⋯勝ちますから。」

「⋯⋯なーに言ってんのさ。そんな使命感、誰も望んでない。代わりなんて、誰にも出来ないんだから。君は君の為に───。」

「出来ないとかじゃ、なくて⋯⋯やるんです。私が。私だけが、何を掛けても。何に変えても⋯⋯所詮、"期待外れの凡才"ですから。それじゃ。」

 

「───随分変わったじゃん。」

 

 

 マヤ達の横を通ったこの子に、ティーボーさんの寂しそうな、冷たい声が掛かった。

 

 

「スター⋯⋯私は、君の星空みたいな眼が大好きだった。私らにくっ付いて歩いてた時とは随分違う。あの綺麗な星は──どこに行ったのさ。」

「⋯⋯落ちましたよ⋯落ちたんです⋯⋯あの日に、全部。」

「そうかい⋯⋯じゃあ落ちたついでによく聞きな。君に姉ちゃんの代わりは出来ない。」

「⋯⋯言ったじゃないですか。それでも、私は───。」

「無理だ。あの強さを、あの輝きを、あの気高さを真似するなんて、誰にも出来やしない。私にも、グリ子にも、シンザン先輩にも。仮に妹だったとしてもさ⋯⋯アイツを1番近くで見てきた私が言うんだ、スター。」

「⋯⋯そんなの⋯⋯分からないじゃないですか。」

 

 

「分かるに決まってんでしょうが。自分(テメェ)の心だって見失ってる奴に、"テンポイント(流星の貴公子)"が背負えるかよ。」

 

 

「ッ⋯⋯!」

「あっ⋯⋯。」

 

 

 疲労の残った無理してる顔。その顔を悔しさで歪ませたスターメモリーさんは、涙が零れる前に走っていった。

 

 

「⋯⋯あーあ、クソ頑固な姉妹め。はよくっ付けっちゅーのに。」

「ティーボーさん⋯⋯。」

「じゃあやろうか!芝コースも空けてもらったワケだし、レッツRUN!大将が来る前にやっちゃうぜぃ☆」

 

 

 無理してるのは、この人も同じなのに。

 何でも無いみたいな顔でスタート位置についたその人に何も言えなくて、ただ後ろを追ってマヤ達もスタート位置についた───時だった。

 

 

「マヤノッ!ロブロイッ!!キタちゃんブラァァァァァックRXッ!!!!」

 

 

『トレーナーちゃん(さん)!』

「うーわっ、早いんだよ来るのが。わははっ。」

「RXって何ですか⋯⋯?」

 

 

「そいつはトウショウボーイだッ!手加減も遠慮も要らん!全力で走ってヨォォォッシッ!!」

 

 

「トウショウボーイ⋯⋯この人が⋯⋯?」

「やっぱり、"TTG"⋯⋯!」

「おーおー⋯⋯担当(カレン)ちゃんにおんぶして貰って、良いご身分ですねートレーナー殿!」

「うっせぇわ!誰のせいでこんな事してると思ってんだお前ぇッ!」

 

 

 相変わらず楽しそうに笑ってるティーボーさんは、その眼をトレーナーちゃんからマヤ達の方へと向けた。

 

 

「改めまして私はトウショウボーイ。TTGの1人、"天"なんて呼ばれてた事もありまして───後は分かるね?」

「っ⋯⋯。」

「⋯⋯あたし達、もしかして今凄い経験してます⋯⋯よね。」

「わははっ。」

 

「おいティーボー!急にレースするって事は分かってんだろうなぁッ!」

 

「分かってますよ〜。まったく、そんなにカッカしなさんな⋯⋯黙ってた事は、後でちゃーんと───。」

 

「カメラ持ってきてねぇんだからな!?どうせクソカッコよくぶっ飛ばすんだろうけど加減しろよ!?あとあれだ!あの〜⋯⋯取り敢えず終わったら歓迎会すんぞコラァッ!!」

 

 

 キョトンとしたティーボーさんは溜息を1つこぼしながら、呆れた様に顔を手で押えていた。

 なのに⋯⋯その顔に浮かんでいたのは、笑顔。空気を張りつめさせたあの笑顔でも無くて、マヤ達の所に来てからずっと貼り付けてた偽物でも無い、自然な笑み⋯⋯嬉しさ?

 

 それでも1つ分かるのは───トレーナーちゃんが今、この人の"スイッチ"を押した事。

 

 

───だから会いに来なかったんだぜ⋯⋯っし!それじゃあ位置について!よーい⋯⋯スタート───!」

 

 

 

 

「あっ、トウショウボーイさんってあのトウショウボーイさんなんだ!?」

 

 

 

 

 ようやく理解が追いついたマヤの言葉に、ティーボーさんは頭から芝コースに転んじゃった。痛そう⋯⋯。

 眼鏡がずり落ちそうなロブロイちゃんに、眼が点のキタちゃんが2人揃ってマヤの顔を見ながら固まってた。

 

 

「⋯⋯ド派手にすっ転んだなぁ、おい。」

「あっ、トレーナーちゃん。」

「もーーーーーッ!勘弁しなよ天才キッズ!他にどのトウショウボーイが居るんじゃいッ!」

「えっ!?だ、だって教科書の人が居るなんてすぐに飲み込めないよ!」

「あーはっはっはっはっ!!物分り良いのに理解おせー!ひー、ヤベー!腹痛てぇーッ!!」

「笑い過ぎーッ!」

 

 

 この後両手にスイカを付けたカワカミちゃんと、そんなカワカミちゃんに引っ張られたソリに乗ってスイープちゃんが来るまで、ティーボーさんはずっと笑ってた。

 

 ずーーーーーーーっと!!笑ってたッ!!




トウショウボーイ(天) : 期間限定PU、電撃参戦のレジェンド。シンザンとハゲ師匠率いる初代『ポラリス』はそれなりの因縁相手──というわけでも無く、ただの暇つぶし先。花魁ハレンチャンのイベントで匂わせされてたけど別個体って事にして下さい。でもシチーさんとは絡ませたいべ⋯⋯。現役時代はスレてたロリコンと1番仲の良かった自由人にして、"速さ"に特化した走りをする元ロリ体型のお姉さん。自分のやり残した事に終止符を打つ為に、勇者御一行と協力体制を取る⋯⋯かもしれないし、ロリコンにかまちょしたいだけかもしれない。

スターメモリー(スーちゃん) : Part.2辺りで主人公やりそうな死んだ目のオリ子ちゃん。アカン、性癖バレる。アヤベさんと共にチーム"ベガ"所属の高等部で耳飾りは右耳。『流星の貴公子』に異常なまでの執着を見せ、自分が持たない"凡才"だと吐き捨てるハイパーネガティブちゃん。『変幻自在の天才』、『猛り燻る雷撃』との邂逅でジェミニは再び惹かれ合う──因みに不沈艦と宇宙人に絡まれるのが悩み。


次回、『対決 : ███████』


対決パートが終わったら1回番外編を挟みます。天才魔法少女と30才魔法使いの激闘をお楽しみ下さいまし。盛大にふざける回です。
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