人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!! 作:なちょす
出なかった兄貴おりゅうううううう!?wwwww
俺だよ。
何でこの作品が生まれたか分かってんのか!?SSRカレンチャン出なかった腹いせだろ!PUはどうしたPUは!お前ら禁じられた排出率調整を平気で行ってんじゃねぇのか!?何でまた根性ライアン出てくるんだそれもうカレンチャンの時やったんだよサイゲェッ!!物欲センサーってのはいつもこうだ!望まぬ天丼ネタになった一般通過トレーナーの心情を述べよッ!!!!
A.マヤちゃんの太ももと肩のラインに免じて全てを許そう。アイポニー。
今回がPart.1における貴重なシリアス所さんです。後は番外も特別もPart1最終話までアホみたいなコメディーですからね。スターさん?あいつはギャグだよ。
「よぉダチ公。
「おっすダチ公。相変わらず老けてんね。」
「そうかそうか減らない口だ。スイカ食いたかったんだろ?霧吹きに汁詰め込んで来たから腹いっぱい食えよカブトムシ。」
「ぐわー!雑い!仕返しが雑いし顔中スイカ臭ーい!」
「遠慮するなよ。姫が頭突きでかち割ってきた特級品だぞ。満足しろ?」
「満足した。おしぼり頂戴。」
「あるわけねぇだろんなもんッ!!」
「雑いし逆ギレされたー!ウケるーッ!」
あっ、皆ポカンとしてる。それはそう。少々舞い上がってしまったようだ。サイボーグとマブ姉はお手伝いで居ないが、まぁこれだけ揃っていればOKよな。どうせ夜には顔合わせするんだし、寧ろマブは顔見知り。
「はーい皆注目。こっちの自由人はトウショウボーイ。多分授業で習った事あると思うけど、少し前に"TTG"って呼ばれていた3強の1人です。」
「どうも〜。昔の女で〜す。」
「何で言葉1つで他人の信頼関係を狂わそうとするんですか?」
「逆に言葉1つで狂うような信頼関係しか無いんですかね?」
「はぁーーー!?そんなわけ無いんですけどぉーーー!?仲良しチームなのが売りなんですけどぉーーー!?はぁーーー!?」
「じゃあ良いじゃん。って事でよろしく〜♪1週間は面倒見るけどその後は遊びたおすから、楽しい思い出作ろーねー!」
クッソ軽いなコイツ。自分がそれなりに有名人と言うか、レジェンドクラスだって事分かってんのかな。挨拶したのに結局皆ポカンじゃねぇか。カワカミ姫、挨拶中に両手のスイカぶつけて叩き割るのはよしなさい。何を目指してんだよ。
そもそもデジが大人しいのが不気味⋯⋯あいつどこ行った!?さっきまで居たのに!!イヤー!1人にしないで相棒ーーーッ!!
「ほんじゃあ挨拶もこの辺にして⋯⋯って、言いたいところだけれどね。相棒ちゃーん!そんな所隠れてないで、こっちおいでよー!」
「ひょえっ⋯⋯。」
居たわ。スタンド席の影に隠れて様子を見てやがった。
そのモーションは可愛さ満点で大変よろしいが、チームのエースとしてお前が居なきゃ話が始まらんと言うのに。
恐る恐る影から出てきた相棒は申し訳なさそうな顔をしたまま俺の後ろに身を隠してホンッッットそう言うとこやぞお前ッ!!
いかん、冷静になれ。いつもの事だろう。いやいつもじゃないからおかしくなってんだこっちは。そりゃちょっと、8割位はコイツに脳を焼かれた覚えはあるが、冷静さを欠いてはならん。少なくともティーボーはそういうとこ絶対に見逃さないし、後からクソほど弄ってくるに決まってる。
「⋯⋯どした?」
「だっ、だってレジェンド様ですよ!?あ、あたしさっき砂に埋まった状態でご挨拶しちゃいましたし⋯⋯申し訳ないと言いますか⋯⋯。」
「ほれほれ〜、天馬様のご尊顔だぞ〜?近くで見なくて良いのかな〜?」
「あっ、しゅき⋯⋯♡」
「止めろお前ッ!ウチのエースを落とそうとすな!コイツすぐ落ちるんだから!!」
「手土産もあるぞ〜?ウマ娘ちゃん好きな君にうってつけの、直筆サイン色紙だぞ〜?」
「ひぇぇぇッ!?!?!?そ、そんなっ、TTG様から直々にぃッ!?!?!?これも日頃の徳───。」
色紙を受け取った相棒がフリーズした。色紙に書かれていた名前は以下の通りである。
セントライト。カネケヤキ。カブラヤオー。ハイセイコー。テスコガビー。テイタニヤ。マックスビューティ。シンザン。テンポイント。グリーングラス。トキノ───。
「TTG増えたなぁ。」
「なわけ。ほぼおやっさんの人脈。いさみんの師匠すげーや。あんな適当野郎なのに。」
「⋯⋯家宝にさせて頂きます。トレーナーさん、これ神棚に飾って下さい。」
「家宝にしろよ。」
「畏れ多いですよコレェッ!!寮の部屋に置いておけない代物!歴史的価値の有る文化遺産!プレミアなんて言葉で表せない聖遺物!!分かってますかッ!?家宝にするに値する物だからこそ、トレーナーさんの家の神棚に置くんじゃないですかッ!!」
「わ、分かったよ⋯⋯お前の名前、『アドレスデヅタルちゃん』になってるけどな。」
「ほら適当だ。」
「ところでお前の名前は?」
「私のはこっち。」
どこからともなくサインペンを取り出したティーボーは、デジタルのジャージにスラスラと自分の名前を書いては顎に手を当てた。あっ、おい待てぃ!顎クイやんけッ!?そこまでは許してねぇッ!!しかもそのジャージまだ使うんだぞッ!!
「その色紙よりは価値が無いかもだけど、これで私にとって君は特別な人になったんだ。だから⋯⋯私の事だけ見ててよ、アグネスデジタル。」
「あっ、あっ⋯⋯あ───っ!」
「ん?」
「アタシがこんな扱い受けるのは解釈違いですからぁああぁあああッ!!!!」
あーあ、行っちゃった。キャパ超えたな⋯⋯いや戻って来たわ。何だし。
「生涯尽くして大切にさせて頂きます!ありがとうございます!本当にありがとうございます!!でもやっぱり解釈違いなのは間違いじゃないのでお許し下さいぃいいいいッ!!」
オタク君さぁ⋯⋯今日も可愛いね。
「律儀だねぇ。わははっ。」
「そういうファンサばっかりしてるからガチ恋勢が後を絶たないんでしょうが⋯⋯で?走んの?」
「えっ?やだ。歓迎会やってよ。顔中スイカ臭いし。そもそもロブ之助、これ以上はオーバーワークでしょ?」
「自由人め。でもあんがと。はーい今日の練習終わりー。皆で歓迎会しましょー。」
『はーい。』
和やかムードの中、ボーノさんから『スイカちゃんこ』とか言うヤバめの単語が聞こえた気がするが⋯⋯まぁティーボーなら全部食うだろ。知らんけど。食わせてやる。絶対に。
それより気になるのは、さっきからスタンド席に隠れてこっちの様子を伺ってるあのウマ娘だ。
チーム『ベガ』所属のスターメモリー。
成程成程、TTGと来てようやく思い出した⋯⋯確か"貴公子の妹君"だったか、或いは"期待外れの凡才"か⋯⋯何にせよ、浮かない顔しちゃってまぁ⋯⋯ふむ。ここで
1.義理堅くあれ───うむ、ここで会ったのも何かの縁。チーム『ベガ』には世話になっているからな。一肌脱ごうじゃないか。
2.恩は必ず返せ───これも1に同じだろう。特にアヤベには世話になりっぱなしだ。恩と言うか借りだが、返すに越したことはない。
3.無理をするな───今回はメンバーが多い。が、有り難い事におデジやカレン、ティーボーが居るなら分散して面倒を見れる。故に余裕は少しあるぞ。
4.猫は友達───これだけは未だに分かんないの。ウマ娘であるお袋の家系が代々受け継いでいるらしいが⋯⋯よっぽど影響力があって猫好きだったんだろうな。『キンチェム』って人。
まま、4項に関しては余裕があったら猫の可愛さを布教すれば良い。結論としては、マヤ達の特訓が終わったら盛大に推し活してやろうという事に至ったワケだ。"推し活はやることキッチリやってから"、は我が相棒の言葉である。流石はオタク、言葉の重みが違うぜ。
「っ⋯⋯。」
こちらの視線に気付いた彼女はぺこりと一礼し、その場を後にした。
見間違いだろうか。
彼女の後ろに、ドス黒い霧のような物が見えたのは。
◇◆◇◆◇
「それで?何が聞きたいのかなキッズ。」
「んー?」
ティーボーさんの歓迎会は、終わるのが勿体無いくらい楽しかった。本人の緩〜い感じと、マヤ達の知らなかったトレーナーちゃんの昔の事が沢山聞けたし。当のトレーナーちゃん本人だけはずっと"No!!"って叫んでたけれど。
すっかり日も落ちて、もう30〜40分もすれば消灯時間。マヤはティーボーさんに色々聞きたい事があったから、夜の散歩に付き合って貰ってた。もちろんそれを分かってこの人も付き合ってくれたんだと思う。何となく感じていたけれど、ティーボーさんは多分頭が良い。
「君はキタちゃんもロブ之助も居ないのに抜けがけで走ろうなんて性格じゃない。なら理由なんて、大方こっちの用事でも聞いとこうって事でしょ。」
「うーん⋯⋯そうとも言うし、違うとも言えるかも。」
「わははっ。何だそりゃ。」
静かな砂浜で、波の音だけが行ったり来たりしてた。
ティーボーさんはそれから何も言わなくて、ただ微笑んだままマヤの言葉を待ってくれていて。
「課題の事とかは聞かないよ。でも何個か気になる事があって⋯⋯。」
「うん。」
「ティーボーさん、トレーナーちゃんの
「ん〜⋯⋯違うかな。
⋯⋯やっぱり。顔に出てる。
「ティーボーさんの"スイッチ"って⋯⋯トレーナーちゃんでしょ。」
「おん?何だよ何だよ急に〜。」
「カッコイイとこ見せようとしてた。あのまま走ってたら、きっとマヤ達皆追いつけなかったと思うの。久しぶりに会ったって言うのがどんな感情なのかは、今のマヤには分からないけれど⋯⋯でも───。」
「そうなぁ。カッコつけようとはしたよ?ダサいとこなんか見せられないって。私はいさみんの前じゃ、いつだって"天馬"トウショウボーイさんでいなきゃ。」
新月の夜。
真っ暗な空に浮かんだ沢山の星を見ながら、どこか寂しそうな声でそう言ったティーボーさんは溜息を零した。
「⋯⋯すっかり1人前の顔しちゃってさ。頼れる相棒も居て、チームトレーナーなんてもんになって。たかだか3年ちょっとだぜ?おやっさん──あっ、いさみんの師匠ね。その人から話を聞いた時は耳を疑ったよ。あの頭ん中思春期男がそんなわけってね。けれども⋯⋯今日、見て分かった。私らTTGは過ぎた時代の栄光で、今を生きてる君らの足を引っ張っちゃいけないんだなって。」
「⋯⋯そうなの?」
「そうなの。いつか分かる時が来るよ。」
「ティーボーさんは⋯⋯それで良いの?」
「良いの。それもいつか分かる⋯⋯かも?あははっ。」
「⋯⋯そっか。」
マヤには分からない。きっとティーボーさんにだって分かってないと思う。でもこの人は大人だから⋯⋯きっと納得はしてる。それが良い事なのかは置いておいて、何となくこの人の横顔から目を離せなかった。
届かない願いを星に祈ってるような表情。
トウショウボーイさんは、きっと───。
「んで?他には?」
「聞いていいのか悩んだけど⋯⋯スターさんの事。」
「まぁ、そうなるか。う〜ん⋯⋯何から話すべきか⋯⋯もうちょっと散歩しようぜ。」
波打ち際をゆっくり歩くティーボーさんの後ろを追う。わざとらしくうんうん唸りながら、それでも1つ1つ丁寧に言葉を選んで話してくれた。
「まずTTGってのは、ファンが付けてくれた呼び名でね。私とダチ2人───"流星の貴公子"テンポイントと、"緑の刺客"グリーングラス。そして"天馬"トウショウボーイ。」
「うん。そこはロブロイちゃんからちゃんと聞き直したよ。」
「よろしい。スターメモリーはその1人⋯⋯テンポイントの、少し歳の離れた妹なのさ。」
「妹⋯⋯でも、あの⋯⋯テンポイントさんって⋯⋯。」
「⋯⋯今でも、たまに夢に見る。忘れもしない日経新春杯。アイツは第4コーナーで骨折した。嫌な音がして⋯⋯気付いた時には、倒れてるテンが居てさ。ピクリともしてなかったんだ。何が最悪だったって、それが妹の真ん前で起きた事でねぇ⋯⋯正直───死んじまったかと思ったよ。」
ポツリ、ポツリ⋯⋯ゆっくり言葉が吐き出される。その言葉はどれもが重くて、悲しくて、見てきたこの人だから説得力を持っていて。レースが楽しい、熱いだけじゃない、危険な1面もある事を物語っていた。
「誰もが貴公子の復帰を願った。アイツのトレーナー⋯⋯って言うか、私らTTGのトレーナーも躍起になって、『コイツの夢を死なせてたまるか!』って。一命は取り留めたけど、競走生活には戻れなくてね⋯⋯あぁでも心配は要らないよ。アイツは諦めが物凄ーく悪くてさ。今も私とグリ子の2人がかりでリハビリしてやってんだ。」
「そっか⋯⋯。」
「けど⋯⋯スーちゃんは違った。あの子はずっとうわ言みたいに言ってたのさ───
「どういう事?」
「さぁ、ね。詳しい事は何にも話しちゃくれない。ただ⋯⋯走る才能に恵まれた姉と平凡な妹。色々あったろうさ。あの子は決まって今日みたいな新月の夜に、1番綺麗なあのお星様にお願い事をしてたんだと。"願いを叶える星"とか言ってね。」
ティーボーさんが指差した空には、確かに他よりも大きく、強く輝いてる星があった。あぁいうの、一等星って言うんだったっけ。
あれ?でもそんな事をしてた人、他にも居たような⋯⋯。
「あの子は今暴走してる。自分の感情が間違ってた、贖罪の為に⋯⋯ちゃんちゃらおかしいや。実の姉だろうと、負けず嫌いで悪い事なんか何も無いのにね⋯⋯。姉ちゃんも姉ちゃんで、妹との約束を守ろうと必死こいてるのに頑なに会おうとしないんだ。だから、誰かが止めなくちゃならない。そうしないと、スーちゃんは"運命"に引きずり込まれちまう。」
「その止める役目がマヤだったって事?」
「んー?どうだろ。そういう役こそ私らみたいな時代遅れがやるべきだと思ってるけど。」
「嘘ついてる。ティーボーさん、そんな事思ってないよ。だって無理してるもん。」
「なんだとぅコイツめ〜⋯⋯とまぁ、スターに関してはこんなとこかな。後はどうだい?ちょっと合宿所から離れちゃったし、夜も遅い。帰ろうか?」
「待って。最後に1つだけ───キタちゃんの
足が止まった。
「⋯⋯何でそう思った?」
「ティーボーさんが思ってる以上にマヤは分かるんだよ?昼間、『敵』の事を話してから一瞬顔付きが変わったよね。それって、本当は言いたくなかった事なんじゃない?違うかな⋯⋯マヤ達の前じゃ、言ったらダメな事かも?」
「⋯⋯。」
「ティーボーさんと会ってから、ずっと感じている違和感もあるんだ。この違和感は多分『矛盾』なの。ヨシエちゃんに凄くそっくりな⋯⋯何か目的があって来たはずなのに、目的を果たしたくない。話したくない。そんな『矛盾』。
このお話は本当にキタちゃんだけのお話?ううん、きっと違うよね。キタちゃんは
「マヤノ⋯⋯。」
「トウショウボーイさん───どうして今になって『勇者御一行』の前に現れたの?そんなに辛そうな顔してまで⋯⋯。」
「それは⋯⋯君らが───。」
言葉を止めたティーボーさんは、勢いよくマヤの方を振り向いた。
驚きにも怯えにも似たその開かれた目線は、マヤよりもずっと後ろ⋯⋯夜の闇が続いてる、砂浜の方に。
そんな時だった。
「にゃあ。」
「⋯⋯猫ちゃん?よーしよし、どうしたの〜?」
「触るな。」
冷たい声だった。
この人は変わらずに遠くの闇の中に眼を凝らしてる。
「⋯⋯マヤちゃん。その猫、どうやって来たと思う?」
「どうって、勿論歩いて───あっ。」
「ここにはもう⋯⋯私達以外
言われた通りにするしか無かった。
合宿所の周りや建物に面してる細い道路には街灯が並んでいて、それはずっとずっと浜の向こうまで続いている。だから波打ち際でも、少しは明かりが見えるんだけど⋯⋯この子の周りには足跡1つ無かった。
それだけじゃなくて、街灯の位置を考えれば本当なら影は海に向かって伸びていないといけないはずなのに、この子の影はティーボーさんが見つめていた浜の暗闇まで真っ直ぐ伸びている。
あんなに聞こえていた波の音も聞こえない。
海は動き続けているのに音だけが消えていた。
「⋯⋯居るのか、そこに。居るんだな、そこに。」
耳をギュッと絞って、喉から低い唸り声を出して警戒しているこの人の視線を追って暗闇を見ると、赤い光が不規則に揺らめいていたんだ。
正確な距離は分からないけれど、街頭の間隔を考えれば───多分、目測で2000mちょっとか、そこら。
その光のすぐ近くの街灯が消えた。
嫌な汗が背中を伝う。
寒気もしてきた。
今すぐにでも逃げ出したいのに、どうしてもその光を目で追っちゃう。
街灯がまた1つ消えた。
この時間⋯⋯って言うより、合宿所周りの電気は基本的には消えない。防犯の意味合いも兼ねてるからって、前にトレーナーちゃんから聞いた事がある。
なのに⋯⋯また、消えた。
その赤い光の近くから、どんどん消える
消えた。
消えた。
消えた。
また、消えて。
点滅を始める。
「何でだ。何でっ⋯⋯!」
点いて、消えて。黒いモヤが街灯の近くに居る。
点いて、消えて。モヤは人の形になった。
点いて、消えて、点いて、消えて。それがウマ娘の形だって事に気づいた時には、辺りが真っ暗だった。消灯前の合宿所の電気すら全部消えて───それから、一斉に明かりが灯る。
黒いモヤは。
黒いウマ娘は。
ウマ娘の形をした何かは。
赤い
『█████』
ノイズ混じりの声を、音の無い世界へ叩きつけるように捻り出したそれは⋯⋯っ。
「私もこの子も───
激情を煮え滾らせた蒸気機関車のように、物凄い速度で向かって来た。
「走れマヤノッ!!戻るよッ!!!!」
「ぇ⋯⋯?」
「ほら急ぐッ!担いだげるから⋯⋯っ、さぁ!!」
返事をする前にティーボーさんはマヤの事を肩に担いで走り始めた。
それは速いなんてものじゃなくて───本当に、背中に翼が生えているようだったんだ。姿勢がうんと低くて、マヤの事だって担いでるのにまるでブレない軸。走りの鋭さ。街頭に照らされた砂浜に大きく抉れた足跡を幾つも残しているのに、凄く軽やかに地面を蹴っていて。
これが⋯⋯"天馬"トウショウボーイ───こんな状況なのに、凄いものを見てるせいで胸のドキドキが止まらなかった。
けれど、もっとおかしいのは後ろに⋯⋯確実にマヤ達に狙いを定めて、黒い影のウマ娘はその速度をぐんぐん上げてる。不規則に揺れてた赤い光が安定して、寒気だけが意志を持って近付いてきてる。分かりたくもない事が分かっちゃうんだ。
「ティーボーさんダメ!追いつかれる!」
「今どの辺ッ!?」
「よく見えない!でも、どんどん早くなってる!あれ何!?本気のマルゼンちゃんより
「正面玄関まで回ってられない⋯⋯トレーナー棟なら近いけど、そもそもベランダの鍵開けてる不用心なのが居るとは───。」
「居る!トレーナーちゃん!」
「マジ!?」
「消灯前は必ず30分ぐらいベランダで煙草吸いながらボーッとしてるって、
『██████████』
追いかけて来てる何かが言葉を発した⋯⋯気がする。全く聞き取れないし、相変わらず凄く寒い。合宿所までは後もう少しのはずなのに、とても長い距離に感じる。この人の足でこれなら、マヤは絶対に逃げ切れなかった。
けれど、どうしてだろう⋯⋯こんなにも悲しい気持ちになるのは。
「ドンピシャだぜ、マヤちゃん。」
「えっ⋯⋯?」
「不用心なのがちゃんと居たって事さ。いさみーーーんッ!」
「カワイイカレんぁーーーッ!!⋯⋯あっ、寝てた⋯⋯何してんの君ら?もう消灯時間になるぞー。」
「自分の担当、ちゃんと受け取れよーッ!マヤノ!今から君を投げる!」
「えーーーッ!?」
「ほんの数秒ばかしの遊覧飛行さ!部屋の中入ったら、私に構わず窓閉めるんだよ!はーい3、2、1!!」
「待っ───!!」
「ゆーきゃんふらーーーいッ!!」
身体が宙を浮く。
トレーナーちゃんの所まで2mも無いくらいの距離を飛びながら、ふと目に入った。追いかけて来た黒いウマ娘の影が、やっぱりとても悲しそうな眼をしていた事。諦めにも似た、虚ろな眼⋯⋯ねぇ、どうして?
ううん、そっちは後。先ずはトレーナーちゃんに受け止め───何で目を瞑って十字切ってるのーーーッ!?
「さぁ⋯⋯カモンカモンカモンッ!!!!」
「じゃあ眼を開けててよーーーッ!!」
「ぶべらッ!!!!」
ギリギリの所で顔にしがみつく事しか出来なかった。トレーナーちゃんは受け止めきれるわけも無く、そのまま部屋の中に倒れ込むように───。
「⋯⋯おかえり。夜遊びしたいお年頃だろうけど、消灯時間は守ろうな。」
⋯⋯怪我、してない。
必死になってて分からなかったけど、窓の方を向いて置かれていたソファーの上に倒れ込んだみたい。こんな置き方じゃなかったはずだけど⋯⋯トレーナーちゃん、最初から知ってたの?
「あっ!窓!!」
「閉めたよ。倒れる時にな。」
「えっ⋯⋯本当にトレーナーちゃん?」
「どういう意味かはこの際置いとくよ。」
「だってトレーナーちゃん普段はもっとドジっ子なのに⋯⋯。」
「置いとくって言ったんだから拾わなくて良いのッ!薄々気付いてたけどもッ!」
「アローハー!トウショウボーイさんだぞー♪」
「えっ!?な、何でティーボーさん床下から出てきたの!?どういう事!?」
「わははっ。この部屋、元々いさみんの師匠の部屋なのさ。私らTTGは消灯時間破りの常連だかんね。こうして緊急逃走経路を3つぐらい作ってたワケ。マヤちゃん投げた後に軒下滑り込んでさ〜。いやー助かった!愛してるぜぃダチ公☆」
「分かったから人の担当を夜遊びに巻き込むんじゃありません。マヤ、そろそろ降りてもらっていいかい?首が逝く。」
ゆっくり降りて窓の方を見ると、黒いモヤも、赤い眼をした黒いウマ娘もどこにも居なかった。まるで最初から何も無かったかのように静かな砂浜。少し息を切らしたティーボーさんだけが、部屋の中で『わはは』って笑ってた。
「はいはい、お楽しみは終了。エアグルーヴ母ちゃんが見回りに来るから、そろそろ部屋に戻りな。」
「うん⋯⋯。」
「じゃあお休み〜。」
「何俺のベッドで寝ようとしてんだお前。皆のとこで寝させて貰え。」
「ケチ臭いこと言うなよダチ公。私と君の仲じゃんか。」
「俺とお前の、ねぇ⋯⋯因みにお前から結んできた『約束』、俺は1日だって忘れた事は無いぞ。それでもここで寝るか?ベッドは1つだ。本当に良いのか?俺はお前、今日は何が何でもベッドに寝てやるからな。お前がそのまま寝落ちかまそうが俺はそこで寝るぞ。良いんだな。本当に、本っっっ当に良いんだな?」
「あーっ!可愛い皆と寝たくなってきたなーっ!帰ろっかなーっ!行こーぜマヤちゃん!」
「えっ?う、うん⋯⋯。」
凄く慌てた様子のティーボーさんに手を引かれて、マヤ達はトレーナー室を後にした───はずだったんだけど。
「くそっ、くそぅ⋯⋯っ!人の事忘れてたくせに何で余計な事覚えてんだアイツ〜〜〜っ!」
「⋯⋯どうしたの?座り込んで。『約束』の話?」
「ふふっ⋯⋯良いんだ天才キッズ。気にしないでくれ。これはその⋯⋯わ、若気の至りだったんだから⋯⋯。」
「え〜?もしかしてデートのお誘いでもしてた、とか⋯⋯なーんちゃって───♪」
あっ、図星だぁ⋯⋯凄い顔してる。逃げよ。
「待てよマヤち〜ん!今日はお姉さんと一緒に寝ようぜ〜〜〜〜〜〜〜おぉいッ!!」
「わーーーッ!?ゴメンなさーいッ!!でもそんな露骨に顔に出るティーボーさんの方にも問題あると思う〜〜〜〜〜〜!!」
結局3秒後に捕まっちゃった。
あれ?1週間でこの人に勝てる想像、全く出来ないや⋯⋯。
「⋯⋯まさか2人が外に居るとは思わなかったからエラい目に巻き込んじまったな。マヤ、トラウマにならなきゃ良いけど。結局お前さんとルドルフが言っていたオカルト話や、『漂流者』と『観測者』が全部事実だったわけだ。屋根裏に隠して悪かったな⋯⋯もう出てきて良いぞデジタル。」
「いえいえ、お構いなく。屋根裏は慣れてますから。」
「なんで?いや⋯⋯お前だもんな。取り敢えず見回りまで後20分。パパっと話をして、URAファイナルズからの"ユメ"にケリをつけようか。」
「⋯⋯はいっ。」
「お前にも言ってんだぞー。真っ黒ウマ娘の───『セントサイモン』さんよ。」
こ↑こ↓少々長くなります。ゴメンね♡
セントサイモン(複合体) : 絶対に出すと心に決めていた、通称『煮え滾る蒸気機関車』。そして当作品における裏ボス。"悪いユメ"の根源にして自身も数多の"運命"に引きずり込まれた『観測者』。既に姿が分からない程黒く染まっているが原因は謎。自我があるかも不明。急にマジモードな勇者夫妻の意図ももう少し先の話。ぶっちゃけコイツが史実で1番のチート持ちだとワイトも思います。まずサイゲ君さぁ⋯ウチ諭吉あるんだけど(ry
セントサイモン君の可愛い史実エピソード♡
・猫を天井に叩きつけて殺した。
・レース中に騎手と舐めプかまして3/4馬身ピッタリキープしながら勝った。
・拍車を使われて町外れまで暴走した。
・自分達のものにしようとした不良達にキレて殺しかけた。
・常にキレて発汗してる。
・10戦10勝。(中にはクラシック勝利馬やダービー馬、後に29勝してる一流馬も)
・厩務員が隙見せたらガチで殺しにかかってくる。
・本気の実力を出したらレース中に何するか分からないからと、常にセーブ状態。
・気に入らない事があると大体暴走する。
・いつもと違う騎手が手綱を緩めた瞬間、案の定残り1200mで全員ぶっこ抜いた挙句20馬身差の優勝⋯⋯だけでは飽き足らず追加で1600m暴走。(この時のレースは4000m。何で5.6kmも走ってるんですかねぇ⋯。)
・セントサイモンの悲劇。詳細は各自ヨロシャス!
・蝙蝠傘にビビり散らかす。可愛い。ここ究極の萌えポイント。
次回は3章特別Rが2連発。今月めっちゃ書くのに時間掛かりました。ごめんなしゃい☆
次回、『特別R : 勃発、魔法大戦!』
次回の次回、『【ウマ娘】社会的ゲート難共のスレ2【語ろう】』
P.S.通算UAがとうとう50万を突破しました。童貞兄貴たちありがと♡大好きだぞ♡ちゅっ♡何でこんな作品見に来てるんですか⋯⋯?(困惑)
記念回とかは特に無いですが、今後は後書きにて少し色々やろうかと思います。最終的に勇者御一行がどんなカオスチームになっているのか予想してみて下さい。分かるもんならなぁッ!!!!
まだまだ亀更新な早漏野郎ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。長文失礼しました。
☆一定の隠し条件を満たした為、同時進行シナリオ『チャンピオンズ・ミーティング』が開放されました。
☆一定の隠し条件を満たした為、シナリオ本編後に以下の要素が追加されます。
・追加プレイアブル⋯⋯『龍王』ロードカナロア
・追加プレイアブル⋯⋯『風檣陣バ』カゼノコ
・追加プレイアブル⋯⋯『Re:boot』ミホノブルボン
・追加プレイアブル⋯⋯『Red ignition!!』マルゼンスキー
・特別な併走相手⋯⋯『桜花絢爛』サクラバクシンオー