人間がウマ娘に負けるわけないだろ!いい加減にしろ!!   作:なちょす

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お気に入り件数が遂に4000件突破しました。脱ぎます。いつも脱いでる気がしますけど気の所為ですね。
あまりにも嬉しいので、最近育成中にふと思った事を書き残しておきます。

サクラローレルの尻───桜でんぶ。


Summer Ghost ②

「トレーナー!トレーナー!!トレーナー!!!」

「お"っ⋯⋯腰を潰すスタイル⋯⋯どうしたダウナー?」

「アップと一緒にフジツボ海に返してくるね!ほら、アップも!」

「⋯⋯お世話してくれて、ありがと。フジキセキさん達も喜んでる。」

「あぁ、成程。気を付けて行ってらっしゃい。」

 

 

 人間やれば何でも出来る───そう実感したフジツボ世話係in夏合宿。

 すっかり我がチームのアイドルとなっていた為、お別れは中々に寂しいものがある。チームの皆や後輩ちゃんも名前を付けて愛着を持っていたようだし⋯⋯だが、出会いと別れはこの世の摂理。是非ともアイツらには長生きして貰いたい。

 

 サラバだ。富士の海親方、ひじゃかぶ、ボルケーノ、藤岡さん、使い魔No.60、足ツボ、お兄ちゃん⋯⋯それから沢山のフジキセキ達。マトモな名前無くてゴメンな。お兄ちゃんは確信犯だろあの妹。俺を何だと思ってんだ。

 

 ヌッ。バイブスアップが物陰から此方を覗いている。

 

 

 

「⋯⋯いひ。トレーナー、優しい。好き。」

 

 

 

 それだけ言うとパタパタ走り去って「デジタル助けて動悸が収まらん死ぬかもしれない。」

 

「思考と言動が同時に出てませんかね⋯⋯それより、昨日の夜のお話があるとか言ってませんでした?」

「そうだ、それ。お前さんにもスターメモリーの事を共有しておきたくてな。」

 

 

 そうしてデジタルに説明する事になったのだが⋯⋯うむ、考えれば考えるほど、昨夜の出会いは素晴らしいものだったと思っている。

 

 渋々野宿する羽目になった事については正直未だに思う所があるものの、スターメモリーと接点を持てたのは非常に大きいだろう。如何せん彼女の事を知らなすぎる為、推し活しようにも手段を考えねばならなかった。

 

 そして直接話して分かった事もある。

 それは"才能"に対して強いコンプレックスを抱いているという点だ。オマケに相手の内面をよく見ている。恐らく、あの短い時間の中で俺の考えている事は筒抜けだったに違いない。あの観察力と状況への適応力がレースで発揮出来れば強敵になり得るだろう。

 何だ今日のこの分析力は。トレーナーみたいだな。ふふっ⋯⋯バッジ付いてたわ。

 

 だからこそ、何とかして普通のスターメモリーに戻してやりたい。そして彼女の才能を借りるべきだ。

 

 

 あの───物怖じしないツッコミの適応力を是非ともラモーヌ姉様にぶつけて欲しい。凄く見たい。ツッコまれるラモラモ。貴重な常識人枠として是非ともウチの楽しい集いに来てくれないだろうか⋯⋯いや本人に筒抜けならば、後は時間の問題か。

 

 

 そもそもアドマイヤベガへの仲介役という本来の目的を忘れてはならない。全てはマヤノの勝負服で剥き出しのお腹をどうにかする為。ただでさえ寒いと言っているあの子だ、冷えて風邪でも引いたら大変である。

 

 だが今の俺ではふわふわソムリエアヤべさんの力を借りられない⋯⋯何故なら死ぬ程嫌そうな顔されるから。凹む。

 借りられなければ極上のふわふわ素材を紹介して貰えない。更に凹む。

 

 そこでスターに取り次いで貰おうという完璧な作戦。やはりお兄ちゃんブレインは健在。何だと?度重なる己の才能が恐ろしい。今日の俺は最高に冴えている。やはり朝はヒメノミンを摂取するに限るな。

 

 その為には何が何でもスターに協力して貰わねばならない、つまりはそういう事よ。

 

 

「とまぁ、ここまでが昨日の夜の話。OK?相棒。」

「OKです。では推し活の内容はこんな感じで⋯⋯。」

「ほぅ、仕事が早い。どれ。」

 

 

①トレーナーさん : 最近今まで以上に物忘れが激しく、背の小さいウマ娘ちゃんを見ると動悸が激しくなる傾向有り。感情の上がり下がりも強く、要観察対象。多分危ない。

 

 

「あっ、こっちじゃない。」

「カルテかな?」

「気にしないで下さい。」

「じゃあこっち見ろ。おい⋯⋯ったく。」

 

 

①. 謝罪。以上。

 

 

「耳出してホラホラ。」

「いやどう考えても迷惑しか掛けてないじゃないですか⋯⋯やめっ、耳っ。」

「あぁん?そんな筈───おっ、噂をすれば。なら俺のパーフェクトコミュニケーション見せてやるわ。」

「謝罪の菓子折り用意しておきますね。」

 

 

 なんて奴だ。しかしそんなこと言ってられるのも今だけだぞ。

 入口に感じた気配に目線を送れば、何やらデジタル人形を手にしたスターちゃんがぷるぷるしながら立っていた。昼間にこうして見ると、君意外と背丈あるね。カレンと同じくらいだろうか。

 

 

「いらっしゃい。」

「⋯⋯忘れ物です。」

「いやそれ布教用だから持ってていいぞ?敢えて置いてったから。」

「要らないです。良いから持って帰って下さい。」

「分かった分かった。どうした?随分ご機嫌じゃないか。」

「何で頼んでもいない迎えを勝手に呼んでくれてるんですか。しかもアヤべさんならまだしも───ゴールドシップさんとネオユニヴァースさんに⋯⋯っ!」

 

 

 ふむ、どうやら余程楽しい思いをしたらしい。元気一杯だ。

 

 

「月面探査機のハリボテ付けた三輪車に乗せられて西海岸から上陸したワカメの大群を捕まえる為に投網用の納豆を延々掻き混ぜながら宇宙と交信して砂浜を爆走してる心太(ところてん)好きな変人集団だって周りから見られ続けた私の気持ち考えて下さい。」

「⋯⋯何語?」

「日本語だよッ!!」

「ひぇっ⋯⋯ちょ、ちょっと待て!確かにゴルシはけしかけたけどユニ子は知らん!」

⋯⋯まぁ確かにユニさんは昆布と一緒に収穫したと言ってましたけど。それでも!寄越すなら寄越すで、せめて会話の成り立つ人にして下さいよ!日本語なのに言ってる事分かんない人とそもそも日本語すら話さない人送り付けられても、意思疎通なんか出来ないんですからッ!」

「ふむ⋯⋯ラモーヌとかどう?」

「VIPをこんな事に使うなッ!」

 

 

 キレッキレ〜〜〜〜ッ!見てるかタマモクロスッ!関西の未来は明るいぞッ!この切れ味、まさに疾風迅雷やね。

 

 

「兎に角⋯⋯これは返します。後、別に無理して私なんかに構わないで下さい。1周回って迷惑です。」

「2周回れば良いか?」

「〜〜〜〜〜ッ!」

「ウソウソ、ゴメンて。ふざけ過ぎたよ。今後は気を付ける。」

「なら⋯⋯良いですけど。」

 

 

 相も変わらず浮かない顔ではあるが、そんな彼女を眺めていてある事に気付いた。

 

 足元に散らばった薔薇の花弁である。そして後ろから風を感じるや否や、聞き慣れないウマ娘の凛々しい声が聞こえてきた。

 

 

 

「そうは言うがヴェニュスパーク。私は私の情動を抑える事など出来やしないのだ。私が彼女を必要としている様に、彼女もまた私を必要としている筈なのだから⋯⋯あぁ、忌々しき"運命"よ。何処までも我等が邂逅の邪魔をする。夢の彼女が、"ミディの瞳"が愛おしい───ラララ〜♪」

 

 

 

 いつの間にか開け放たれた窓に座り、携帯片手に仰々しく演技(?)をする見た事も無いウマ娘。散らばった薔薇の花弁は、どうにもあれが原因らしい。どっから舞い出てんだその花弁。

 

 

「故に〜私はここに来た〜〜〜♪そうッ!私はライネルブリッツ!雷撃とは名では無いッ!私の歩むべき真なる"運命"ッ!ラララ〜ララ〜〜〜♪」

 

「⋯⋯トレーナーさん、ご存知ですか?」

「知らない⋯⋯怖い⋯⋯スター、知ってる?」

「分かるわけないじゃないですか⋯⋯もう帰りますからね。」

「ムッ?そこ居るのは───。」

 

 

 ヒェッ、こっち見た⋯⋯!

 謎のウマ娘はバレリーナの様にクルクルクルクル多めに回りながらデジタルの前に立ち、その手を取って何故か頬に口付けした。

 あっ、怒るよ?

 

 

「初めましてアグネスデジタル。私はライネルブリッツ。海の先、フランスからこの島国へとやって来た旅人だ。人は私を、"猛り燻る雷撃"と呼ぶ。そして私は私をこう自負する───"星を最も愛する者"と。」

「⋯⋯あの。多分、そいつもう聞いてないです。魂入ってないので。」

「ふむ⋯⋯つまり昇天する程私に会いたかったと。ならば遠慮しなくて構わないッ!情熱の抱擁を交わそうじゃないか!ハッハッハッ!!」

 

 

 あかん、相棒が痙攣しだした。幸せそうな顔しやがって⋯⋯もう2時間は起きれねぇな。

 

 

「そんな貴方は彼女のトレーナーさんだね。会えて光栄だ。君達の活躍ぶりはヨシエさんから聞いているよ。あぁ、今はポラリス所属だから、私のトレーナーという事になるのかな。」

「そうですか⋯⋯うぉっ、何?携帯、どうしたら良い?」

「彼女の相手を頼むよ。我が友であり、彼女の師匠であるモンジューに良く似た気高くも愛おしい者だ。さぁそちらの君ッ!君の名前を教えてくれたまえ。」

「⋯⋯⋯⋯スター⋯⋯メモリー、です。」

「そうかそうか、星を冠する美しい名前だ。君にはこの1輪の薔薇を送りたい。受け取っては頂けないだろうか?」

 

 

 誰かこの暴走ガールを止めてくれ。こっちの情報処理がまるで追いつかん。ポラリスって言ったか?あの女フザケやがって、早く引き取りに来やがれ。

 いや、こちらにはツッコミ界の新星スターメモリーが居る。ふはははっ!勝ったな!今その子は凄く元気だぞ!ツッコミのキレが凄いんだ!傷付く前に去った方が身の為───何で受け取っちゃったのぉ⋯⋯?薔薇は良くてデジたん人形はダメぇ⋯⋯?こんなに本人に似て可愛いと言うのに。クロフネなんて、あげるって言ったそばからもぎ取っていったのに!

 

 

「スターメモリー、と言ったね。」

「はい⋯⋯あの、どちら様ですか?」

「君が必要としている者だ。」

「へっ⋯⋯?わっ!?」

 

 

 きゃーっ!プリンセス抱っこ!どぼめじろう先生の本でよく見るヤツー!きゃーっ!青春ーっ!起きろ相棒!立ったまま気絶してる場合じゃねぇから!

 何で人差し指握るんだ⋯⋯幼児退行すんな。

 

 

「愛しき君よ。"ミディの瞳"よ。私は君を探していた。君に逢いに来たんだ。世界を跨ぎ、ただ君だけを───ん〜〜〜〜〜ブリッツッ!!!!

「この人ヤバいよぉ⋯⋯。」

「何故見つけられたのか⋯⋯だって?それは私達が、魂の奥底で深く繋がっているからさ!!」

「絶対病気だよぉ⋯⋯。」

「さぁ行こうッ!我等が邂逅を果たした時、本当の運命は始まるんだッ!ハッハッハッ!!ラララ〜ラララ〜〜〜♪」

「えっ、ヤダっ、待ってヤダヤダヤダ怖いッ!止まって!誰か助け───ッ!!」

 

 

 ⋯⋯行っちゃった。まぁ何だ、お幸せに。

 いや携帯置いていくなよ。どうするんだコレ。

 

 

「アノ。」

 

 

 テレビ電話で繋がっている画面の向こうでは、これまた見た事ない容姿端麗な淑女がにこやかに微笑んでいた。あら可愛い!ふふふっ。

 

 

 

 部屋汚ったねッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここで少し話を変えようか。

 人間には、ある種のシックスセンスが有るとされている⋯⋯違うポニーちゃん、セックスセンスじゃない。使わないもんにスキルPt割り振るな。中学生か。

 五感以上に研ぎ澄まされたそれは稀に、然し確実に反応する直感の様なものである⋯⋯違うポニーちゃん、小さい子達に確実に反応してるのはお前が愚息だからだ。良いな?分かったらもう喋るな。無視するからな。愚息無視。

 

 恐らくはレースに出て色んな感情を間近で浴びているウマ娘の方が、それをより強く感じ取れるかもしれないが⋯⋯それは一先ず置いておこう。

 

 で、話を戻すと。俺のトレーナーとしての直感が告げている。

 

 

 "彼女に主導権を握らせてはならない"、と。

 

 

 モンジューの弟子───ヴェニュスパークもきっと同じような事を思ったはずだ。真偽は定かで無いが、俺のお兄ちゃんブレインが卓越した和差積商(さんすう)を駆使して得た予想、間違いないだろう。

 

 うぅむ⋯⋯しかし見れば見る程に可愛い。ビジュアルが完成されている。なのに何だろうかこの既視感⋯⋯俺は彼女を知っているのかもしれない。いや知っている。確実に知っているぞ。記憶が脳の奥底から湧き出てくる⋯⋯ッ!この子と過ごした日々の事がっ!

 

 

 こんなだからデジタルにカルテを書かれるんだな。やはり相棒、俺をよく見ている。もうずっと面倒見ててくれねぇかな。

 

 

 然しこの既視感だけは本物だ。記憶の方は良く分からんが⋯⋯えっ、な、何か考えたら急にときめきポニーしてきたかもしれない⋯⋯この子と過ごした淡い青春、多分あった気がする三十路の夏─懐玉・玉折編─。アホのすみかはここです。ひぇ〜〜〜!この子メッチャ可愛くな〜〜〜いっ!?背もそんなに大きくなくな〜〜〜い!?フランス凄い!フランス万歳!フランス最高!皆でしゃぶろうエスカルゴ!トレビアーンッ!

 

 

 

 

『アナタ、ロリコン。』

「許さねぇエスカルゴ。」

 

 

 

 おのれフランス。おのれモンジューの弟子。

 ゆるふわかつスライムみたいな、にへらっとした笑顔しやがって。可愛ければ何言っても許されると思ったら大間違いなんだよ。日本はそこまで甘くないし、俺が大和魂溢れる日本男児だと言うことを分からせてやらねばなるまい。そもそも許してくれるのはお前さんを可愛いと思っている男だけだ。分かったかッ!!

 

 

「デジタル、ちょっとこの子見て。凄い可愛い⋯⋯ダメだ再起不能だった。しかしこっちも可愛い。」

『ヨシエサン、イッテマシタ。アナタ、ロリ───。』

ウォッホン!さて⋯⋯ヴェニュスパークさん、だったかな?」

『ハイ。』

「初めまして。」

『ハジメマシタ。』

 

 

 何を?

 いや、反応するな。大丈夫こんなのはいつもの事⋯⋯では無いが、日本語はまだ不慣れなのだろう。それか寝ぼけてるんだ。何せ時差が7時間もあるから、向こうは早朝だろう。

 

 何だそのスマイル。情緒をぶち壊してくるじゃないか。

 

 違う違う、そうじゃない。まずは主導権を握らせないように会話の立ち回りをだな⋯⋯何話したらいいのぉ?起きてデジたん。助けてデジたん。どうしたらいい??

 

 

『アノ。』

「あっ、えっ、はい。ボンジュール。」

『Bonjour. ブリッツ、イマスカ?ブリッツ、オハナシ、シタイデス。』

「さっきウチの生徒拉致してどっか行っちゃったよ。ゴメン。」

『本当に勝手なんだから⋯⋯。』

 

 

 えっ、急に賢さ跳ね上がったんだけど。凄い流暢⋯⋯フランス怖───ヌッ、今気付いた。彼女黒インナーでは?黒インナー⋯⋯黒インナーッ!?黒インナー族!?絶滅したんじゃなかったのか!?

 

 い、いけない!これはダメだ!俺は黒インナーに弱いんだ勘弁して下さい!!お前その格好でさっきまで寝てたの!?ハレンチ過ぎるでしょ服着なさいほらっ!それはもうほぼ下着だッ!

 ダメだポニーちゃん止めろ、脳内のカレンに黒インナーを着せるじゃない!お前死ぬ気か!?自称『何者にも染まらないお兄ちゃんだけの黒』をイメージカラーにしてるカレンだぞ!?OUT!これはいけませんやり過ぎです!ドスケベ中等部がよォ⋯⋯ッ!!

 

 

 1人で何ハッスルしてんだ俺。段々自分が怖くなってきた。デジタル、カルテに"誇大妄想癖"も追加して。

 

 

 しかし⋯⋯ここで露骨に目を逸らせば主導権を握られ、『エスカルゴみたいに目が出てますよ?♡』と弄ばれるかもしれん。いやクソ雑魚ナメクジよりはマシか⋯⋯?どっちも目が出てんだから大差ねぇわ。

 既に主導権を握られている疑惑があるのだからこれ以上は⋯⋯でもまじまじと見るのもそれはそれで⋯⋯うぅっ、大人の余裕と威厳が⋯⋯!

 

 

『あっ、安心して下さい。不慣れなのは間違い無いんです。ただ、ブリッツとヨシエさんが沢山教えてくれました。』

「そっか⋯⋯2ヶ月位で良くそこまで上達したね。良い先生だったんだ。」

『はい!面白い時はこう言うんですよね?"草"。』

「ロクでもねぇな。」

『3+3に0を掛けまして。』

「ロクではねぇな。」

『君は。』

「ロックを聴かねぇな。」

『très bien!!』

 

 

 あ〜〜〜主導権握られてますねぇ⋯⋯俺、デジャヴだもんこのやり取り。テイオーと初めて話した時やったもん。何だ?天才ってのはこうして人を弄ぶのが一般常識なんですか?ボケ拾う身にもなれってんだ本当に可愛いなそのスマイル。très bien.

 

 

『ヨシエさんの言う通りですね!どんな対応もやってみせる凄腕トレーナーさん!オールラウンダー!』

「オールラウンダーってのはボケ拾うやつの事じゃねぇのよ。これ即興漫才って言うの。分かった?」

『D'Accord. 隣の人も漫才?しに来たんですか?』

「隣?」

 

 

 横向いて。

 あわやキスかな。

 月桂樹。

 

 

「近いのよ。心臓止まったわ。」

「急に振り返るからじゃないですか。私もビックリしました。」

「じゃあ漫才する?」

「止めさせて貰います。」

『ありがとうございました。』

 

 

 きゃっきゃっ嬉しそうに拍手をしている。あかん、主導権握られてもいい。可愛い。俺フランス人になる。

 

 

「そう言うのは声に出さない方が良いですよ。」

「ヤダ聞かれてた⋯⋯。」

「この方、ヴェニュスパークさんですよね?お知り合いだったんですか?」

「何で知ってんの?」

「何で知らないんです⋯⋯?去年の凱旋門賞ウマ娘ですけど。」

 

 

 凱旋門⋯⋯凱旋門?凱旋門って事は───凱旋門って事???

 

 

「嘘だろッ!?こんなに部屋汚ねぇのにッ!?」

『なっ⋯⋯!違いますっ!私の使いやすいレイアウトなんです!掃除はしました!昨日⋯⋯いや先週⋯⋯2ヶ月前だったかな⋯⋯とにかく違いますからっ!』

「⋯⋯もしかして結構ズボラ?」

「私に聞かないで下さい⋯⋯。」

『ちーがーいーまーすーーーっ!』

 

 

 だってなぁ⋯⋯あっ、しまった。誰かさんが窓開けっ放しにしてたせいで書類が飛んでる。イタズラ好きな風さんね。どうにかしてくれヤマニンゼファー。

 

 

「私が戻しておきますから、トレーナーさんはそっちに集中して下さい。私の用は後で構いませんから。」

「そっか。助かる。」

『ぐぬぬ⋯⋯まっ、まぁ良いです。貴方がどういう人か分かりましたから。ウマ娘の子達と凄く仲が良いんですね。』

「有難いことにね。ローレルみたいにビシッと正してくれるタイプも居るし。」

『さっきの人ですか?でもさっきの人、貴方のチームでは無かったと思いますけど⋯⋯もしかして、何かそういう感じ何ですか?』

「違う違う、ただ推し活をだな───。」

 

 

 待てよ?推し活なんて言葉、フランスの彼女に伝わるだろうか⋯⋯無理だな。これは最早日本特有、ひいては日本のオタク特有と言うべきか。無理に伝える事では無いと思うが⋯⋯。

 

 

『へぇ⋯⋯日本はそういう⋯⋯へぇ〜⋯⋯。』

 

 

 このテイオーみたいなにやけ顔に好き勝手言われるのは負けを認めた気がして許せない。おのれフランス。なんとしてでも誤解である事と推し活の素晴らしさを伝えなくては。

 何かそれらしい意味をフランス語で⋯⋯でもどう言えばいい?こんな時デジタルなら何と伝えるだろうか。きっと長年推し活してきたあいつの事だ、明瞭簡潔にスパッと言うだろう。半身なのだから真似したい。大人の余裕を見せつけたい。俺は負けてねぇッ!

 

 思い出せ⋯⋯相棒と歩んできた数年の日々を。推し活の事を何と言っていた?俺に推し活の素晴らしさを説いたデジタルの言葉を。

 

 

 

 ───これはもう『愛』ですよ!好きだからこそ力になりたい、あたしから送る愛──愛──愛───。

 

 

 

「違うぞズボラちゃん。」

『ズボラちゃん⋯⋯。』

「推し活とは、即ち愛。つまり───。」

『つまり?』

 

 

愛してる(Ja t'aime)───これは俺からサクラローレルへの愛なんだ。」

 

 

 物凄い衝撃音と共に、作業机が揺れた。

 何してんだあの桜ピンク。どんな勢いで頭ぶつけたらそんな事なるんだよ。逆に散らかっとるやないかい。

 

 

「まぁ、要はそういう事さ⋯⋯ふふっ。」

『⋯⋯日本って、そういうの許容してるんですね。』

「勿論。愛は大きければ大きい程良い。まるで料理の薬味みたいに。だからローレルもデジタルも、滅茶苦茶強いぞ。多分君にだって負けないかもな。ワハハッ。」

『ムッ⋯⋯それは聞き捨てなりません!私の方が強いです!なんたって負け無しですからね!』

「でもなぁ⋯⋯ズボラちゃん、ちょっと抜けてるとこあるからな〜⋯⋯。」

『だとしてもですっ!いや⋯⋯分かりました。』

 

 

 スン⋯⋯としたズボラちゃんことヴェニュ子ちゃんは、割とガチトーンでこう言った。

 

 

『じゃあ行きます。日本。』

「エッ。」

『それで決めましょう。丁度凱旋門賞を勝ったご褒美で、トレーナーさんが行きたい所に連れて行ってくれると話していました。だから行きます。』

「エッ。」

『貴方には必ず競って貰います。そして私がズボラじゃない事も証明しますから!良いですね!師匠ーーーッ!』

 

 

 通話切れちった。

 

 ⋯⋯あ〜成程、これは⋯⋯国際問題やりましたね?そうだな、取り敢えず冷静に辞職願いを書いて⋯⋯皆に挨拶回りして⋯⋯うっ。

 

 

「盛大にやらかしてて草。」

「いつから狸寝入りしてやがったお前。」

「指を握った辺りですかね⋯⋯あっ、心配しなくても大丈夫ですよ!父には言っておきます。」

「次の職場に実家紹介すんな。」

「いや、本当にここまで来ると才能ですよ。何でトレーニング中はマトモなのにこう⋯⋯ヒェッ。」

「何よ⋯⋯あっ、そうだローレル!お前さんの用事って──OMG。」

 

 

 真顔の月桂樹よ。

 おぉ、桜の君よ。

 その振り抜く寸前のハリセンは誰の為。

 

 

「ふ───シッ!!」

「痛ってぇッ!!今迄の比じゃねぇよッ!頭割れるッ!割れたッ!」

「また後で来ますねー♪」

「⋯⋯何であんな事言ったんです?いや想像はつきますけど。」

「昔のお前がそう言ってた事を思い出して⋯⋯まぁつまり、お前と過ごしてきた日々や教えがずっと俺を支えていたという事だな。ふふっ⋯⋯。」

「そう言った所であたしを巻き込んでいい免罪符にはなりませんからね。そもそも、あたしが言うのとトレーナーさんが言うのは意味合い変わってきますから⋯⋯。」

「ヌッ。確かにそうだな⋯⋯軽率だった。今度ズボラちゃんと話す時は訂正しとくよ。あの言葉はデジタルに向けた───スネを蹴るなお前ッ!追い打ちか!?

「No, Speak!No!You are Mr.problem!!」

 

 

 なんて日だ⋯⋯国際問題にゲレイロからのガチハリセン、果てはインチキEnglishな相棒からのスネ蹴り⋯⋯とほほ。癒しが欲しい。

 

 

「おじちゃん。」

「あら〜あーちゃんどうしたのぉ〜〜〜?水着可愛いねぇ〜!」

 

 

 癒しが居た。そう言えば合宿も終わりだし、"思い出作りに来る?"って誘ってたんだった。親御さん同伴で即決だったの忘れていたよ。

 そのフリフリ水着可愛いねぇ!麦わら帽子もマルゼンスキーから貰ったのかな?ちょっと大きそうだけどそれがまた似合ってるねぇ!ふぅン!

 くっ、脳内にタキオンが⋯⋯。

 

 

「これあげます。バケツいっぱい取りました。」

「え〜〜〜何かな何かな〜〜〜?見てもいい?」

「うぃ。どぞ。」

 

 

 こういう日も悪くないじゃないか。相棒からの目が本当に呆れを感じさせるものになっている気がするものの、断言しよう。お前絶対俺と同じ反応するからな?

 それよりお宝だっひょ〜〜〜〜〜い!!

 

 

 

「嬉しいなぁ〜!宝物にしちゃおっかなぁ〜〜〜───フナムシかぁ。

 

 




ズボラちゃん襲来まで後───。
オリウマ娘2人がどうなったかは後々で。


ライネルブリッツ(猛り燻る雷撃) : The変人。モンジューの友にしてポラリスへ所属したフランスのぶっ飛びレディ。身長もスタイルもタップンタップンチチー位デカい。栗毛のショートヘアーに耳飾りは左耳。タイマンだけならクソ強ウマ娘。ウマ娘タラシで、日本語を知ってるくせに日本文化はニンジャスレイヤー並。スターメモリーの事を"ミディの瞳"と呼び、ことある事にイチャつこうとするものの死ぬ程距離を取られる残念美人。その真意や如何に───。

ヴェニュスパーク(ズボラちゃん) : 育成させてはよ。ビジュアルの良さでトレーナー達の心を奪ってきたクソかわフランスウマ娘。それ以上に凱旋門で心を折りに来るクソ強ウマ娘。ズボラなだけで部屋が汚いのはこの小説の設定ですので悪しからず。でも絶対汚い。そこが良い。


次回、『Summer Ghost③』。
これにて夏合宿編のほんへ及び同時進行シナリオのプロローグは終了と致します。特別編はもう少しだけ続くんじゃよ⋯⋯そっちはコメディーと下ネタとミチコちゃん極振りで参ります。

ところでバレンタイン話いる⋯⋯?
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