目覚めるとそこは廃墟   作:海砂

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第一話

 おはようございます、いい朝です。

 朝として括ればいい朝なんですが、そんなこたぁ問題にならない問題が発生しました。

 まず、ここはどこでしょうか。なんか狭い部屋……物置? みたいな所に放置されていました。

 あ、申し遅れました私、日本で高校生やっております片岡よし子と申します。

 私立なもので土曜にも授業があり、明日は何しようかなどとwktkしながら眠りにつきました。

 ええ、ゲーム三昧の日曜日にするかショッピングにでも行こうかなどと思いながら。

 で、目覚めたらここです。

 あ、先ほど『日本』と注釈をつけましたのは、その辺に転がっているダンボールとか壁に貼ってあるピンナップが全て英語なんです。

 英語は教科書程度しか読めませんが、多分英語だと思います。だからといってここが英語圏かどうかは、はなはだ疑問なのですが。

 電気はついていますが、薄暗い蛍光灯一本です。ていうか埃っぽいので外に出てみようと思います。

 

 ドアを開けようとして、ふと変な声が聞こえてくるのに気付きました。

『ヴァー』というか『ヴォー』というか、よくわからない呻き声みたいです。気持ち悪いです。

 ちょっと怖くなったので、ドアの鍵を開けて、そっと外をのぞいてみました。

 

~約30分後~

 

 ……どうやら、うっかり気絶してしまっていたようです。

 ドアをきちんと閉めて鍵までかけてから気絶した自分にъ(゚Д゚)グッジョブ!! したいと思います。そして意外に冷静な自分にビックリです。

 ドアの外には、うじゃうじゃと死体が群がってました。

 死体といっても、起き上がって歩きながらヴァーヴァー言ってました。しかも腐っています。

 目が覚めたときの変なにおいは埃のせいだけではなかったようです。泣きそうです。

 けれどにおいにはほどなく慣れました。人間の適応能力万歳です。問題は外の死体です。

 チラッとみただけなんですが、どうも共食いもしているようでした。ということは、多分のこのこ出て行ったら私も食われます。問題です。

 

 ひとまず、この狭い物置小屋の中を調べてみようかと思いました。幸い、死体どもはこの部屋の中まで入ってこようとはしないみたいですし、窓もないこの部屋の出入り口は先ほど開けたドアだけなので、ここをしっかり閉めて置けば問題はないと思います。思いたいです。

 念のためにドアの前に薄汚れたソファをたてかけてから、私は部屋の探索を始めました。

 まず、ドアのすぐ脇に机があります。スチール製のシンプルな机です。私でも片手で動かせます。その上には、読めないけど何かの小冊子と、インクリボンで印刷するような古臭いタイプライターが置いてありました。動くようですが、今の私にはあまり関係がありません。

 小冊子をぱらぱらとめくってみました。どうやら観光ガイドのようです。英語なので読めませんが。……都市の観光地を紹介してあるようです。

 表紙を見てみました。『raccoon city guide』だそうです。ラコーンと読むのでしょうか。聞いた事のない名前です。

 ふと、思い出しました。子供のころにプレイして封印したゲームのことを。あまりに怖かったので封印して、高校生になってようやくプレイできるようになったゲームです。

 バイオ・ハザード。ゾンビがわらわら出てくるゲームです。小学生のころは夢に出てくるくらい怖かったです。今は平気ですよ? ゲームなら。

 その、ゲームの舞台となった街が『ラクーンシティ』だったような気がします。

 外の死体の群れ。この小冊子。英語だらけの街。

 ……イヤンな予感がします。きっとこれは悪夢なんだと思います。でなければ、どうして私がこんなところに居なければならないのでしょうか。

 

 ひとまず部屋の探索を続けることにしました。ロッカーが置いてあります。バイトが使うような細長いロッカーです。鍵は開いていました。

 開けると中には、清掃員用のような感じの制服と、小さなナイフがありました。制服はともかく、ナイフは念のためにお借りしておこうと思います。できれば銃がほしいのですが、そもそも撃てるかどうか疑問です。

 小さな部屋なので、探索はあっという間に終了しました。ここには食料が全くありません。どうしましょう。

 ソファをどけて、もういちど、そーっと外を見てみることにしました。幸い、ドアには覗き窓がついているので、扉を開けなくても外の様子を窺うことができます。

 

「s.……t.a.r.s.……」

 

 なんかものごっついのが居ました。2mはあろうかという大きさの、やっぱりゾンビのような気持ち悪い化け物です。速攻で覗き窓の蓋を閉じました。見なかった事にしようと思います。

 とてもこの小さなナイフ一本で外に出られる気がしません。かといって、このままだと餓死コース一直線です。

 ひとまず耳をすませ、ゾンビ達が少しでも少ない時を狙って外に出ようかと思います。

 

 日本語の通じる方は、どこかにいらっしゃるでしょうか……。誰か格好いい警察官が助けに来てくれたりしないでしょうか。

 とりあえず、現実逃避、してみました。これで解決してくれればいいのにと切に願います。

 

 

 一晩、過ごしました。外のゾンビは減りそうにありません。もちろん、誰かが助けに来てくれるなんてこともありませんでした。

 とりあえず、あのバケモノはいなくなったようなので、外に出てみようかと思います。怖いですけど餓死はいやです。

 

 ドアをそーっとあけて、外に出ました。空は普通に青いです。ゾンビ達はまだ、私に気付いてはいないようです。

 周囲を見回してみました。ここは路地のようです。少し先に行けば開けた道に出られるようです。ですが、その道は炎でふさがれています。どうやら車が炎上しているようです。ということは路地の反対側に進むしかないですね。金網と非常口のようなドアがありますので、先に進むことはできるでしょう。ですが、その前にゾンビがたむろしています。

 

    燃え上がる車を何とかする

 ニア ゾンビを倒して進む

 

 とりあえずナイフを構えて、5人くらいいるゾンビの群れに突っ込みました。

 

 無謀でした。まず1人は足を切り裂いて動けなくすることに成功したのですが、その間に別のゾンビが上にのしかかってきました。逃げようとすると、最初のゾンビが私の足首を掴んではなしてくれません。少しはなれたところにいた2人も寄ってきました。絶体絶命のピンチです。

 

「s.t.a.……r.s.……」

 

 なんか嫌な声が聞こえました。一生懸命掴まれた足首を自由にしようともがいている私の上にいたゾンビがあっという間に吹っ飛びました。

 驚いて見上げると、そこにはあの、大きなバケモノがいました。き、気絶してもいいですか?

 

 バケモノは私の足首を掴んでいるゾンビの頭を踏み潰し、さらに音を聴いて集まってきたゾンビを蹴散らしています。やはり普通のゾンビよりは強いようです、見た目からして。

 その隙に逃げようとした私に気付いたのか、バケモノは私の手を掴みました。振りほどこうとしてもびくともしません。引き続き絶体絶命です。

 

 バケモノは、私が最初にいた部屋に私を引きずり込むと、ドアを閉めて鍵をかけました。ああ、これはもしかして他のゾンビに食われないところで美味しく私をいただこうというつもりなのでしょうか。

 思い切って、持っていたナイフをバケモノの腹に突き立てました。……が、なんか平気そうにナイフを見つめています。やっぱり小さなナイフじゃ効果なかったみたいです。ロケットランチャーでもなけりゃこのバケモノは倒せないんだと思います。

 

「……s.t.a.r.s.……」

 

 バケモノは突き刺さったナイフを引き抜いて、……何故か私に返してくれました。

 

「s.t.a.r.s.……」

 

「返してくれるんですか?」

 

 バケモノは頷きました。そういえばさっきからこのバケモノ、私を助けてくれこそすれ、一切危害を加えてきません。

 

「私の言葉、分かりますか?」

 

 バケモノはまたしても、頷きました。まさかバケモノさんに日本語が通じるとは意外でしたが、これはもう、わかっているとしか思えません。

 

 バケモノさんは、机のほうに向かって、タイプライターをいじりはじめました。そして、何か文章を打って、私に手渡してくれました。

 

『nihon jin ka? shinjite kurenaikamo sirenaikedo ore mo nihon jin da. murakami yuusuke to iu namae da.』

 

 いくら私でもローマ字くらいは読めます。バケモノさんはムラカミユウスケさんだそうです。驚きです、どうみても日本人ではありません。

 

「s.t.a.……r.……s.……」

 

 バケモノさんが首をかしげて私を見ています。

 

「信じますよ。先ほどは助けていただいてありがとうございました」

 

 私はバケモノさんにむかって頭を下げました。正直信じがたいですが、私がこんなところにいることからしてそもそも信じられませんし、きっと同じようにバケモノの中に入っちゃったとか、ショッカーに改造人間にされたとかだと思います。意外と私、冷静です。

 

「私は片岡よし子と申します。気がついたら何故かこの部屋に寝ていました」

 

 バケモノさん……ムラカミさんは、頷いてさらにタイプライターをいじっています。体の大きさに対してかなり小さなタイプライターをカタカタさせているムラカミさんは、ちょっと可愛いです。

 

『ore mo kiga tsuitara kono bakemono ni natteta. kokoha baio-hazard no sekai no youda. nantoka site issyo ni nigedasou.』

 

 強い味方ができました。一緒に何とかして、この地獄のような街から逃げ出したいと思います。

 ムラカミさん、今後ともよろしくお願いしますね。

 

 

----------

 

 

 俺の名は村上祐介、凡人。特技はゲーム。バーチャとかバイオでストレス発散するのが趣味の、平凡な派遣社員だ。

 だがそれは昨日までの話! 今の俺はテラtueeee!!

 

 うん、ほんのちょっぴり絶望的な気分になっています。だって強いことは強いんだけど。

 俺どう見ても真っ黒なレザーのロングコートがよく似合うネメシス……追跡者。

 しかも言葉は『スターズ』これしかしゃべれません。これなんて罰ゲーム?

 

 鏡を見て、絶望に打ちひしがれて幾星霜。

 幸いその辺のゾンビにゃ負けなかったので、目に付いた奴らを片っ端からフルボッコしつつ、街をうろうろしていた。

 そして、とあるバーにたどり着いた時に、異変は起こった。

 

「s.t.a.r.s.……!」

 

 俺の体が暴走する。一切の制御が聞かなくなった俺の体は、視界の端で逃げ出したある男を追い始めた。

 意識だけはあるものの、なすすべもなくその様子を見ている状態だ。

 そして逃げる男は警察署へとたどり着く。

 

「助けてくれ、ジル!!」

 

 男は叫んだ。英語なのでよくは聞き取れなかったけどヘルプミーくらいはわかる。

 そして俺の体は右腕から変な触手を出して、男の顔面を貫いた。

 

「s.t.a.r.s.……」

 

 ようやく思い出した。これは、バイオハザードの2だか3だかで出てきたシーンだ。殺した男はブラッド、目の前には呆然とするジル・バレンタイン。

 銃を向けられているのだが不思議と恐怖は感じない。その程度の武器で俺を傷付けることはできないと、体が感じ取っているんだろう。

 

 やがてジルは警察署内に逃げ込む。俺はそれを追った。……何度も言うが、俺の意識がかろうじて残っているだけで、体は完全に制御を失っている。

 それが寄生したネメシスのせいなのかは定かではないが……

 とりあえず、署内でジルを追っかけまわすわロケットランチャーぶっ放すわの大騒動の末、幸いなことにジルを見失い、俺は制御を取り戻した。

 その最中に銃をぶっ放されたりもしたけれど、どうも再生能力が尋常ではないらしく、傷はすぐにふさがったし、撃たれた瞬間もチクっとした痛みだけですんだ。

 が、これ以上ジルを深追いするとこっちが殺されかねない。とりあえず鉢合わせしないように逃げよう!

 

 で、どうも『s.t.a.r.s.』という単語及びその隊員の姿を見ると暴走してしまうようだ。

 ひたすら鉢合わせないように逃げ惑っている最中に、ゾンビに襲われている生存者を発見した。

 体の自由が利くので助けてあげる、どうやら日本人のようだ。

 ゾンビをちぎっては投げている間に彼女が逃げようとしたので、思わず手を取ってしまった。

 完全にびびられているけど、多分一般人なので、ジルとかみたいに俺が殺される心配はないだろう。

 うっすらと残った原作知識をたどって、この近くにセーブポイントがあったことを思い出す。

 この状況で果たしてゲームに忠実かどうかは疑問だが、とりあえずその場所に彼女を連れて行った。何をしてるんだ俺は……。

 

 予想通りというか、彼女は持っていた小さな果物ナイフを俺に突き立てた。

 痛くも痒くもないけど、彼女にとっては貴重な武器なんだろう。引き抜いて、返してあげる。

 ここで、彼女も俺の様子が変だということに気付いたようだ。

 

「返してくれるんですか?」

 

 俺はその言葉を聞いて小躍りしそうになった。日本語! 日本語!! 表情に出たかどうかは定かでないが、俺は絶世の笑顔で頷く。

 

「私の言葉、分かりますか?」

 

 勿論頷く。というか日本語しかわからない。

 何でこんなところに日本人が取り残されて、しかも無事なのかは知らん。

 だが意思の疎通ができるとは思ってなかったのでものすごくうれしい。

 

 セーブ用のタイプライターが使えそうだったし傍にインクリボンも落ちてたので、それでローマ字でタイプする。

 

『日本人か? 信じてもらえないかもしれないけど、俺も日本人だ。村上祐介という名前だ』

 

 この見てくれで信じてくれって言うほうが無理かもしれないけど、中の人は日本人なんだよ!!

 

「信じますよ。先ほどは助けていただいてありがとうございました」

 

 この言葉で、俺の中でこの子はいい子認定された。そして意思の疎通ができるという喜びを噛み締める。

 正直核兵器で街ごとあぼーんするまで1人でゾンビ退治してすごす気満々だったからな。

 

「私は片岡よし子と申します。気がついたら何故かこの部屋に寝ていました」

 

 よし子ちゃんねおk把握した。状況も俺と似ている、それで彼女が無事だった理由も納得できた。

 普通にラクーンシティに暮らしてたら今まで生き残れてるはずないもんな、俺みたいな化け物にでもなってない限りは。

 俺は再びタイプライターに向かう。タッチタイピングは得意です。少なくともロケットランチャー扱うよりはね。

 

『俺も、気がついたらこの化け物になってた。ここはバイオハザードの世界のようだ。何とかして、一緒に逃げ出そう』

 

 彼女は頷いて、俺に手を差し出してくる。触手が巻きついている手で恐縮だが、俺はその彼女の手を握り締めた。

 

 そして俺はとりあえず丸一日何も食べてない彼女のために、近くのコンビニから密封されたパンとミネラルウォーターを。

 それとガンショップで一番小さい銃(日本警察が採用しているニューナンブ)と銃弾を数箱、持っていってあげた。大層喜ばれた。

 

 俺は彼女が食事を取っている間に、ローマ字の50音表を製作しておいた。

 だっていつまでもここに引きこもってるわけにはいかないから、いつでも意思の疎通ができるようにしておかないと。

 ……手ごろなペンとメモ帳が見つかったら持ち替えるつもりだけどね。

 それと、彼女に銃の撃ち方を教えた。しまったオートマチックの銃にしといたほうがよかったか? 

 まぁ、出来る限り俺が守ってあげれば大丈夫だろうとは思うけど……。

 

 そして俺たちは、この小さな部屋を出た。時間軸に自信がないけど、とりあえず少しでも早くラクーンシティを出て行かないと。

 この辺でウダウダしていたら2人ともお陀仏だからな!

 

 しかしさて、どうやって街を出るか……それが問題だ。

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