目覚めるとそこは廃墟 作:海砂
アイテムボックスー! どこじゃー11!1!
俺は右往左往していた。めちゃくちゃにその辺をうろうろしている。
正直覚えてない。どこにあったっけどこにあったっけアイテムボックス……。
こうしている間にもよし子ちゃんが泣いているかと思うといたたまれない。
いや、泣いてないかも知れんけど。でも一人にしておくのはひっじょーに不安だ。
そしてピコーンと思い出した。
あ、俺が投下された時計塔の最上階! 確かあそこにアイテムボックスがあったはず! ……たぶん。
俺自身がアイテムボックス使うことなんてないからあんまり自信はないけど。
でもとりあえず、時計塔をがーっと登ることにした。じっとしていても仕方が無いからな! 途中で見つかるかもしれんし。
はい。俺テンパっててすっかり忘れてましたよ。この時計塔にいるのは俺たちだけじゃなかったんでした。
二階のドアを開けてバルコニーに飛び出したところで……ジル発見。イコール、暴走。
「s.t.a.r.s.……!」
あああもうだめぽだめぽだーめーぽー!! ジル襲ってる場合じゃないんだってばよ俺様ちゃん! こうしている間にもよし子たんが……。
ガン、ガン。二発の銃声と、腹部に重い衝撃。襲い掛かろうとしたジルが、どうやらマグナムで応戦してきたらしい……イタイヨ。
俺はゆらゆらっとよろめいて、足を踏み外して時計塔のバルコニーから一直線に庭へ落ちた。
マグナムよりは痛くないけど、意識して飛び降りたわけじゃないので思いっきり頭から着地してしまったのだった。……うん、よく首の骨折れなかったネ。
がるるるる。俺の外の人激しく暴走中。全力疾走してチョットドコイクノー。
そっちは俺のカプセルが投下された場所だよねー。ナニスルツモリー? カプセルに回復アイテムでも常備してるとでしょうか?
外の人の考えることはよくわからん。
----------
まさか、ここにまであの化け物が追って来ているとは思わなかった。ヨシコは大丈夫だろうか。
一緒にいた様子は無かったが、もしやまだ一人でこの辺りをうろついているのかもしれない。
やはり、別行動などしなければ良かったかもしれないと、今さらながらに思う。
それにしても、奴は傷ひとつ無いように見えた。ミハイルの死は無駄だったのだろうか……一体奴は、どれだけダメージを与えれば倒すことが出来るのだろう。
私の手元には今、時計塔の鐘を動かすための歯車が二つ、揃っていた。この建物のあちこちを探索していて見つけたものだ。
これを屋根裏部屋にある機械にセットすれば、きっと鐘を鳴らすことが出来るだろう。
この建物の鐘を鳴らせば、カルロス達の仲間がヘリで迎えにやってくる手筈になっている。
カルロスやヨシコと合流できなくとも、ヘリを呼べば気付いてこちらにやってくるだろう。
向こうが来なくとも、空から見ればゾンビどもの動きから生存者のいる場所は容易に特定できるに違いない。
バルコニーのはしごを上り、最上階へと足を踏み入れる。あの化け物が追って来ないうちに、早く迎えを呼ばなければ。
歯車のひとつを、ポケットから取り出した。
これを、この最上階で拾ってアイテムボックスに入れておいた歯車と組み合わせて、鐘を操作するための機械に嵌め込めばいい。
急いで私はアイテムボックスのふたを開ける。
……そこで私にとって、予想外の出来事が起こった。
蓋を開けた途端。中からにゅっと白い手が伸びて、私の腕をつかんだのだ!
「ひっ!」
止まりそうになる心臓を叱咤し、慌てて腰のホルスターからマグナムを抜く。その間にもしがみついている腕を振り払おうとしたがびくともしない。
ゾンビの腕には見えないが、早く何とかしないと……!
「ヘルプ! ヘルプミー!!」
そこで聞き覚えのある声に気付き、私は慌ててマグナムの銃口を下ろして、私にしがみついている腕を引き上げる。……それは、ヨシコだった。
「ヨシコ……なぜここに?」
「ウワァァァ! ジル、ジル!!」
何を言っているがよくわからないが、ヨシコはどうやら相当怖い思いをしたらしい。実は私も相当怖い思いをしたのだが言わないでおこう。
彼女の頭をなでてあげると、ようやく落ち着いたようで、けれど相変わらず何を言っているのかは判らなかった。きっとまだ動揺しているのだろう。
「ヨシコ、ちょっと待ってて」
ひたすら私にはわからない言語でしゃべり続けているヨシコをなだめつつ、私は当初の目的である歯車を取り出して、時計の機械へとセットする。
スイッチを入れると、ゆっくりと歯車がかみ合って、腹の底に響くような大きな鐘の音が鳴り響いた。
「これで……もう、大丈夫よヨシコ。助けが来るわ」
出来るだけ、幼稚園児にもわかるような簡単な単語でヨシコに話しかける。彼女も理解したようで、出入り口のところから外を眺めていた。
「さぁ、下に下りましょう。ここにいてもヘリが着ける場所が無いわ」
ヨシコを連れて、時計塔の階段を下りる。庭に出た頃には、辺りにヘリのプロペラ音が響いていた。
「ようやく助かるのね……」
その時、悪夢が訪れた。先ほどまで私達がいた時計塔最上階のさらに上……屋根の上に、ヤツの姿が見えたのだ。
「まさか……」
ヤツは、肩の上に何かを抱えている。目を凝らさなくてもそれは見えた。
「逃げて!」
私の声はヘリの操縦者には届かない。そして、ヤツの肩から発射されたロケットランチャーが、無常に空を切り裂いていく。
直撃を受けたヘリは轟音を立てて……墜落した。
「Nooooooooooo!!」
ヨシコも私も呆然と、空を見上げていた。ほんの一瞬で、ようやく掴んだはずの希望が打ち砕かれてしまったのだ。
「xxx、xxxxxムラカミxxx……」
ムラカミ、という単語を耳が拾う。確か、ヨシコがあの化け物のことをそう呼んでいた。やはり、あの化け物と彼女の言う『友人』は同一人物なのだろうか。
そして彼女の目の前で、ヤツはヘリコプターを打ち落とした。
「ヨシコ……」
「xxxxx! xxxxxxxxxxxxxxxxx!!」
ヨシコに私の声は届いていないようだった。急に何事かを叫びだすと、私が止める間もなく、どこかへ走っていってしまった。
彼女を追うべきだったのだろうが、私の体は予想以上に落胆していたらしい。すぐに動くことが出来ずに彼女を見失ってしまった。
----------
ムラカミゴルァオンドリャー!
マジギレした私は、ムラカミさんを探しに突撃していました。今考えると、恐ろしいほどに無謀だったと思います。
ジルにもらったショットガンを肩に担ぎ、左腰にはムラカミさんにもらった銃をさし、私は全力でムラカミさんを追いかけましたです。
そして、建物のバルコニーで、ようやくムラカミさんと対峙しました。
一発限りしか打つことの出来ない使い捨てのランチャーをまだ握り締めているムラカミさんは、私の姿を見るとそれを放り出して、ゆっくりと近づいてきました。
「何てことするんじゃムラカミぃぃぃ! ようやく地獄から脱出できると思ってたのに、たとえ暴走してたからってやっていいことと悪いことがあるだろうがゴ━━━━(# ゚Д゚)━━━━ルァ!!」
ムラカミさんの暴走が終わったのかどうか、はたして定かではありません。けれど私は問答無用で、ありったけの弾をムラカミさんに叩き込みました。
そういえば、前にムラカミさんは肩の心臓が弱点だといっていたような気がします。すっかり忘れてました。ので、主に頭と上半身を狙って撃ち込め撃ち込め!
ムラカミさんの足が止まりました。じっと私を見ています。……アルェ? もしかしてもう暴走してないんでしょうか。私も銃を下ろして切れた弾を補充しつつムラカミさんの目を見つめました。
……あいかわらず表情から感情の起伏はまったくわかりません。
「s.t.a.r.s.……」
ムラカミさんは一歩、また一歩と私に近づいてきます。
たぶんですが、暴走していたらガーっと駆け寄ってきて攻撃してくると思うので、もう正気を取り戻してるんじゃないかと思います。
「ムラカミ……さん?」
「s.t.a.r.s.……」
そしてムラカミさんは、手を伸ばせば届く距離まで近づきました。私も彼も動かずに、じっとお互いを見つめています。
っていうかもし暴走したままだとしたら、もしかして私ものすごく危険なんじゃないでしょうか。
……逃げようかな、そう思ったときでした。
ムラカミさんの手がにゅうっと私の方に伸びてきて……ぎゅっと私を抱きしめました。触手が私の体に刺さらないように気を使いながら、それでも、ぎゅっと。
……気のせいかもしれませんが、もしかしたらムラカミさんも泣いていたのかもしれません。
暴走した自分が、迎えのヘリを打ち砕くところを目の当たりにしたのですから。
私は、ムラカミさんの頭をヨシヨシしてあげました。ムラカミさんは何も言いませんでした。私も何もいわずに、ずっとヨシヨシしてあげました。
きっとまだ、方法はあるはずです。私は諦めません。だから、ムラカミさんも諦めちゃダメですよ? 諦めたら、そこで試合終了なんですから。