目覚めるとそこは廃墟   作:海砂

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第十三話

 俺、孤独。

 超孤独。

 薄暗い時計塔の屋根裏部屋に一人取り残されてるとです。

 うっかり出て行くわけにもいかんので、ぽけーっとしとるとですが。

 ……飽きた。

 何もすることがないって、やだ。

 外でゾンビーどもをちぎっては投げている方がまだ楽しかった。

 ……でもそんなことやったら、またよし子ちゃんに銃で撃たれてしまう。

 しかし暇だ。暇なのだ。

 

 俺はそーっと、扉を開いて外を見てみた。外は薄暗い。遠くでカラスがギャーギャー鳴いている。きっとあれだ、ゾンビカラスなんだろうな。

 ため息をついて、俺は扉を閉めた。いつまで引きこもっていればいいんだろう……そんなことを考えてくるりと扉に背を向けた瞬間。

 

 何かと目が合った。

 

 え。

 何?

 なんかギラギラした二つのまなこが俺をじーっと見つめてるんですが!

 

 OK俺はネメシス、怖い物などない。

 近づいてみた。そのナニカは動かない。

 さらに近づいてみた。

 

「ブシャー!!」

 

 ひっかかれた。え? ひっかかれた?

 

 よく見ると、ソレは白い猫だった。こんな所に猫?

 

「グルルルル……」

 

 原作のゲームにゾンビ猫なんて出てきたでしょうか。じっくり監察してみるけれど、別に腐ってはいないな……いや、よく見ると尻尾が千切れてる。やっぱゾンビか。

 

 うわぁい、ぬこでぬこがぬっこぬこー!

 俺はもっふもふになろうとした。

 

 食いつかれた。ちょっと痛い。

 ていうかゾンビぬこに噛まれたら色々とやばいのではないだろうか。

 ……いや、大丈夫か。だって俺ネメシス。いまさら感染したところでとっくにゾンビになっちゃってるもんねー!

 

 嫌がるぬこをとことんもっふもふしてやった。うむ、満足。

 ぬこはジト目で俺を睨んでいる。頭をなでてやろうとしたら手首に食いつかれた。

 

『寄るな、馬鹿』

 

 ……ん? 今なんか聞こえた?

 

『近づくな下郎が。カスが。粗大ゴミが』

 

 気のせいじゃないと思う。えーとその、もしかしてアナタは目の前のぬこですか?

 

『もしかしてじゃない。お前の目は節穴か。このデクノボウが』

 

 ぬこはうにゃうにゃ言っているだけなんですが、何故かコイツの言っていることが理解できます。

 はっ、もしかして、ゾンビーになってしまったら犬も猫も人間も、共通のゾンビ語で会話してるんでしょーか! 俺らにはわからなかっただけで!

 

『今頃気付いたのか屑が。図体だけでかいくせにどうしようもなく使えない阿呆だな』

 

 ……なんかイラっとしますがこの際横においておきましょう。すげー! 俺今ぬこと会話してる! ……あれ? 俺の言葉もわかるとですか? スターズしか言ってませんが。

 

『わかる』

 

 通じてるよ! マトモに会話できるよ! すげーすげー。

 

『……おれもまさか人型と話が出来るとは思わなかった。他の奴らは何を言っているか全くわからないからな』

 

 え? そうなの? じゃあこれってば俺にだけ備わった特殊能力なのかな? あ、でもそういえばゾンビわんこと意思の疎通は出来なかったよな。ということはこのぬこが特別なのか?

 

『ぬこぬこ言うな。オレには”みるく”というちゃんとした名前がある』

 

 ……みるく。この口の悪さで、このえらそーな態度で、みるく! やべーツボに入った! なんだよそのかわいらしい名前、似合わないにも程がある!!

 

『うるさい。飼い主が付けたんだ、文句があるか』

 

 いえいえ、ありませんよ。……ん? 飼い主? お前さん飼い猫?

 

『ああ、飼い猫だった。……飼い主は、ゾンビになってしまったがな』

 

 そっか……そりゃそうだよな。この街に居る以上……みんなゾンビになっちまったんだよな。

 

『アレは生ける屍だ、もはやおれの知っている飼い主ではない。……置いて、出てきた』

 

 そうかそうか。お前も一人ぼっちなんだな。独り者同士仲良くやろうぜ。

 

『気安く近づくな、下郎が』

 

 イラッ。……だがまあいい。こうして会話が出来るだけでも幾分暇は潰せる。

 

『それはこちらも同じだ。他の猫どもは話が通用するどころか、おれを食おうと追いかけてきたからな』

 

 はー、人間もネコも同じような感じなんだね……。あれ? 君はゾンビじゃないのかい?

 

『さあな。この尻尾を見る限りではゾンビになっているのかもしれないが、意識はあるし自由に行動も出来るし、他の奴らを食おうとも思わない』

 

 そういって、みるく(笑)は前足で尻尾を寄せる。半分くらいが千切れていて、その先からは骨の端が見えているが、本人は全く意に介していないようだ。

 

『別に痛くも痒くもないからな。歩くときにちょっとバランスを崩しそうになる程度だ』

 

 へぇ、ネコって尻尾でバランスとってるのか。

 

『それより、お前は何者だ? 他の人間どもとは違うようだが』

 

 俺? 俺もただの人間ですよ。何でか知らないけどこの街に生まれ変わっちゃって、何でか知らないけどネメシスの中に入っちゃって、街から出ようと四苦八苦しているただの平凡なおっさんですよ?

 

『ネメシス?』

 

 うん。見たとおり、強いゾンビ。たぶん、改造人間。この街をこんなにしちゃったアンブレラの最終兵器。

 

『最終兵器……?』

 

 あっ、今、鼻で笑ったな! 俺むちゃくちゃ強いのよ? スターズ見たら暴走しちゃうけど。

 

『それで、その最終兵器が何故こんなところで引きこもっている』

 

 俺は、かいつまんで彼に事の次第を説明した。よし子ちゃんのこととか、ジルのこととか、核兵器のこととか。

 

『ふむ……つまり、お前はその、ジルとかいう人間と鉢合わせないためにここにいるというわけか。だが、そのよし子とやらは信用できるのか? 一人で逃げ出すかも知れんぞ』

 

 いや、むしろその方が俺にとっては都合がいいとです。あの子はバケモノである俺まで助けようと必死になってるんですよ。ゾンビがこの街を出たところでとっ捕まって研究対象にされるか抹殺されるだけだってのにね。

 

『いい女ではないか』

 

 うん。いい子なのは認めるんだけどね、少々ガムシャラというか、人の話を聞かないというか、暴走癖があるというか……。

 

『まあ、そう言うな。お前の為を思っているんだろう。うらやましいぞ、おれは飼い主と別れてから、ずっと一人だったからな』

 

 ……でもほら、今は二人だよね? 仲良くしようよ。

 

『黙れ、雑魚が』

 

 やっぱり、ムカつく。

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