目覚めるとそこは廃墟   作:海砂

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第二十六話

 ずるり、びちゃん。

 ずるり、びちゃん。

 

 俺はマだ生きていル。意思をモっテ、動ケてもイる。

 背中ニへばリつイていタネメシスはモういナい。

 ゴミ捨て場かラ排水路を経て、俺は向かウ。

 助けナキゃ。助ケなきャ。

 俺ノ本体は、タいラントだった。

 肥大シたあのネメシスがヨし子ちゃンに向かウ前に。

 アイツを何トしても止めナクちゃ。

 そレが俺の、最後ノ仕事。

 

 音ダけガ響く。ずるり、びちゃん。

 

 

----------

 

 

 オレは踵を返して入ってきた扉を開けた。

 これまで見た限り、この工場にヘリが着陸できるような場所はない。

 あるとすれば、さっきの通信室の中にあった下に降りるハシゴ、あの先くらいのもんだろう。

 ジルがあの向こうを探しているはずだ、オレは少しでも早く、一人と一匹を見つけなきゃな!

 

「わっぷ」

 

 角を曲がったところで、俺の懐に何かが飛び込んできた。

 ゾンビだったら絶体絶命だが奴らはこんなにチンタラしてないし、それよりなによりこいつは温かい。

 

「ヨシコ! ジルも脱出方法も分かったぞ!」

 

 よかった、探し回ることもなく一人を見つけた。一匹も足元にいる。

……一匹は、ゾンビウイルスを保有しているんだろうか。だとしたら、ここから先には連れていけない。

 

「……ムラカミさんは、どうなんですか?」

 

 ヨシコの目が座る。

 

「ジルがムラカミにここで会ったとは言っていた。ただ、警報音が鳴り始めてからずいぶんと通路が遮断されちまった。行ける場所は限られてるはずだ。多分、ジルが行った先にムラカミもいるはずだ」

 

 オレはそう、大嘘をぶっこく。……まるきり大嘘ってわけでもないんだけどな。多分あのデカブツは生きていればジルを追っていくだろう。

 

「……わかりました。そこに連れて行ってください。行きましょう、みるくちゃん」

 

 猫の返事は警報音にかき消される。

 ごねないでくれて幸いだったな、もう時間がねぇ!

 

 

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 ジルさんとムラカミさんが激突したのなら、どちらかが無事ではないのでしょう。

 ジルさんが無事だったのだとしたら、ムラカミさんはケガを負っているはずです。

 ……ジルさんもカルロスさんも、ムラカミさんを置いていこうとしています。

 私は、何としても、救いたい。なんて上から目線じゃなくて、一緒に脱出したいのです。

 

 カルロスさんの言っていたことの一部は確実です。

 警報音とともに、いくつかの扉にシャッターが下りました。

 だからこそ、私は迷わずにカルロスさんのところまで戻ることができたのです。

 もし、ムラカミさんがあのシャッターの向こう側にいたならば……もう、諦めます。

 時間がないのは確かです。ジルさんとカルロスさんの好意を無にしてしまうのも気が引けます。

 その場合は、私達だけでも脱出すべきなのだと思います。

 ごめんなさい、ムラカミさん。私は悪い子です。

 いっぱい助けてもらったのに。いっぱい慰めてもらったのに。

 ハシゴを降りている最中、そんなことばかり考えていました。

 

 ハシゴを下りきるとそこには、数匹のゾンビが倒れていました。

 きっと先に行ったジルさんが倒したのでしょう。

 うまくよけながら歩くと一匹のゾンビがまだ生きていて足首をつかんできましたギャー!

 

 頭蓋に一発。静かになりました。後ろでカルロスさんが口笛を吹く音が聞こえました。

 チンタラしてられません、早く先に進みましょう!

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