目覚めるとそこは廃墟   作:海砂

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第四話

 ジルさんがやってきました。

 ようやくやってきました。

 あれ? でも私、英語がしゃべれません。村上さんはわかるんでしょうか。

 

「xxxx xx!!」

 

 ジルさんがムラカミさんに銃を向けています。私が持っているのなんかより大きい銃です。あれで撃たれたら痛いと思います。

 

 ムラカミさんの様子も変でした。いや、もともと変だったんですけど、別方向に変というか。私の言葉が聞こえていないようです。

 

「ムラカミさん?」

 

 私が彼に近づこうとした時、ものすごい勢いで突き飛ばされました。

 幸い広い場所だったので、地面に転んでひざをすりむく程度で済んだのですが。

 

 村上さんはジルさんに向かって走っていきます。

 ジルさんはそんな村上さんに向けて銃を放ちますが、数発受けながらもムラカミさんはジルさんに向かって大きく振りかぶりました。

 彼女は辛うじてそれを避けると、銃を撃つ態勢を整えます。

 

 ……まさかこれがムラカミさんの言っていた……暴走? 大変です。非常事態警報発令です!!

 

 

 でもぶっちゃけ、私にどうすることもできません。二人の戦闘のクオリティが高すぎて完全に置いていかれました。下手に殴り込んだら間違いなく死ねます。

 

 ジルさんの銃が何度もムラカミさんの体を貫きます。それでも立っているっていうか暴れているムラカミさんはやっぱりすごいと思います。

 ですがやはり少々無茶だったようです。ムラカミさんは『s.t.a.r.s.……』とつぶやきながら逃げていきました。追いかけなければなりません。

 

「xxx!! xxxxx xxx xxx xxx xxxx!?」

 

 ジルさんが私の腕をつかんで離してくれません。私はムラカミさんのところに行かなきゃいけないんです!!

 

「xxxxx xxx xxxx xxx xxxxx!? xxxx!!」

 

 何て言ってるのかわかりませんが、とりあえずジルさんはムラカミさんに勝るとも劣らぬ馬鹿力で、振りほどこうと思ってもびくともしません。

 女性なのにすごいです。

 今から追いかけても多分ムラカミさんには追いつけません。私はあきらめて、ジルさんと意思の疎通を図ることにしました。

 

「えーっと……ノーイングリッシュ!」

 

 日本で学んだ英語などクソの訳にもたちゃしません。っていうかこんな状況ですらっと普段学んでいる英語をしゃべれる方がすごいと思います。

 

「……xxx xxx xxxxx xxxxxxx?」

 

 さっぱりわかりません。あ、『are』くらいならわかります。違うかもしれませんけど。

 

「えーとえと……ジャパニーズ! アイアムジャパニーズ!」

 

「Japanese? oh……I cant speak japanese.」

 

 今度はちゃんとわかりました。日本語がわからないようです。ということは、カタコトでも英語がわかるので英語を話した方がよさそうです。

 

「まいねーむいずよしこ、よしこ・かたおか」

 

「yoshiko? ok, my name is Jill, Jill=Valentine」

 

 ジルさんはゆっくりとはっきりと、わかりやすく発音してくれます。ジル・バレンタインさんだそうです、知ってましたけど。

 

「yoshiko, xxxx xx xx xxxxxxxxx! xxxx xx xxxx xx!」

 

 今度は聞き取れませんでしたけど、多分デンジャラスとかカモンとか言っていたので、ここは危険だからおいで、って言っているんだと思います。多分。

 

「えええっと、アイ、ウィル、ゴー、ウィズユー オーケー?」

 

 どうも予想が当たってるみたいです。ジルさんはにっこりと笑って頷いてくれました。

 日本のすばらしい英語教育はどうやら間違ってないようです。私はいつも赤点でしたが。

 

「xxxx xx xxxx.」

 

 相変わらずヒアリングは駄目ですが、歩きながら手招きをしているのできっとこっちへ来いということなのでしょう。

 それにしても、アメリカの方は手招きをする時に手のひらを上に向けるんですね、初めて知りました。

 

 私は彼女についていくことにしました。でも、ムラカミさんの安否も心配です。無事だとよいのですが。

 

 

----------

 

 

 私の名はジル・バレンタイン。アンブレラ社の陰謀を突き止めるべくラクーン・シティに潜伏していたところ、未曾有のバイオハザードに巻き込まれた。

 アンブレラの開発した人間をゾンビにしてしまうウイルスの流出によって、街の人々がゾンビへと変貌してしまったのだ。

 数日間、偶然知り合った男とともに閉じこもっていたが、このままでは埒があかないと思い、外へ飛び出した。

 

 生存者のほとんどいない、終わってしまった街、ラクーン・シティ。

 かろうじて見つけ出した元同僚のブラッドは、その辺りにいるゾンビとは違う巨体の化け物に無残にも殺された。

 私も奴からは逃げることくらいしかできない。

 そんな中で、アンブレラ社の傭兵であるカルロス・オリヴェイラと知り合った。

 同じアンブレラとはいえ、ウイルスのことは知らず、住民を保護するためにやってきたという。

 彼らと協力して、私はこの街を脱することにした。

 

 そんな時……私は彼女と出会ったのである。

 

「ジル、わたし、ばけもの、トモダチ」

 

 例の巨大な怪物を友人と呼ぶ日本の少女、ヨシコ。

 確かに彼女と出会った時、彼女は怪物の傍にいた。

 けれど怪物は問答無用に私に襲い掛かってきて、私は右手に持ったマグナムで応戦するしかなかった。

 

「ヨシコ、膝の怪我、治療しよう」

 

 私は持っていた救急スプレーを擦りむけた彼女の膝にふりかける。

 染みるのか眉を潜めたが、他に外傷はないようだ。

 

「ありがと、ジル」

 

 片言の英語しか話せないヨシコだが、それでも全く知らない日本語で話されるよりはわかる。

 彼女がほんの少しでも英語を理解できるのは幸運だったといえよう。

 けれど、未だに言っている意味はわからない、化け物と、友達。彼女はそれを繰り返す。

 あんな、言葉も通じないような化け物が友達? ……彼女の英語が間違っているのだと、期待したい……。

 

 私は彼女をミハイルが休んでいる路面電車に案内することにした。彼はカルロスの上官で、大怪我をしているが、ヨシコ程度なら守ってくれるだろう。

 ……というよりも、彼が部下を守れずに苦しんでいるのを目の当たりにしたので、彼にヨシコを守らせることで、少しでも悔恨の念を取り払えればとも思ったのだ。

 

「ヨシコ、気をつけて」

 

 炎があちこちでうずたかく舞い上がっている。彼ら傭兵の脱出ルートである時計塔と現在地の間には火災地区が横たわっており、その移動手段として路面電車を選んだ。だが、型の古いこの電車はあちこちにガタがきており、そのままでは動かすことができない。

 私はカルロスと手分けして、この電車を動かすべく部品をかき集めに出ている最中だった。

 

「ヨシコ、ここにいれば、少し安全よ」

 

 電車のドアを開ける。中には隊長さんが横たわっていた。

 

「隊長さん、生存者を見つけたわ。彼女はヨシコ・カタオカ。私達が戻るまで、彼女を守ってほしいの」

 

 ミハイルは呻きながら起き上がって、彼女を見た。

 

「英語はほとんど話せないけど、簡単な単語ならわかるみたい。ヨシコ、彼はミハイル。彼は強い。彼があなたを守ってくれる」

 

 何とか通じたようで、ヨシコは軽く頷いた。

 

『……日本人?』

 

 ヨシコは驚いてこくこくと頷いている。ミハイルは日本語を話せるんだろうか。

 

「私は職業柄、他の国の言葉も少し話せる。お互いに片言だが、君よりは意思を交換することができるだろう。……すまない、私はほとんど役に立たないな……」

 

「何を言っているの! あなたには彼女を守ってもらわなきゃいけないのよ!! それをお願いしに、戻ってきたのよ」

 

 ミハイルは笑った。それは彼と知り合ってから、初めて見せる笑顔だ。

 

「それだけは、命に代えても約束しよう。必ず彼女を守りきる」

 

 そうしてミハイルは、ヨシコに色々と話しかけ始めた。片言と彼は言っていたが、それなりに会話できるようだ。

 私は安心して二人をその場に残し、改めてこの電車を動かすための部品を探しに行くことにした。

 

 あとは、あの化け物と再会しないことを願うだけだ……。

 

 

----------

 

 

「ヨシコ、怪我、無いか?」

 

 ムラカミさんもしゃべれなかったので、この人と話す日本語が、この世界に来てから初めての会話になります。

 最初に日本語の言葉を聞いたとき、ちょっぴり泣きそうになってしまったのはナイショです。

 

「少し、あります。でも大丈夫。ミハイルさんは平気ですか?」

 

「このくらい、大丈夫だ」

 

 そういうけれど、彼の脇腹の傷はとても深そうです。できるなら何とかして差し上げたいのですが、ここには道具も無ければ、私に知識もありません。

 ひとまず、ゾンビ達が襲ってこない間はここに一緒にいることにしました。

 ミハイルさんは電車の椅子に横になっていますが、手には機関銃? のようなものを抱えて、ドアの方をずっと警戒しています。

 この人はきっと私を守ってくれる……そんな気が、します。

 

 

「ヨシコはよくこの街で無事だったな」

 

「友達が、助けてくれました。マイフレンド へるぷみー」

 

「oh……友達は?」

 

 聞かれて胸が痛みました。きっと無事だとは思うのですが、ジルさんと再び出会ったりしていたらと思うとぞっとします。

 

「はぐれました……わかりますか? ええと、別れた。見失った」

 

「見失った、わかる。……無事だといいな」

 

 私は頷きました。そして思い立ちました。彼はスターズのメンバーではありません。もしかしたら彼らならムラカミさんを救えるかもしれません!!

 

「えっと……マイフレンド イズ モンスター。バット、 ヒー イズ えーっと……カインド、カインドリー」

 

 通じるかどうか微妙でしたが、何とかわかってもらえたようです。

 

「トモダチは怪物なのか? 見た目が?」

 

「はい。大きなゾンビのようです。ですが、ジルさんに会うまで私を守ってくれました」

 

「大きなゾンビ。会ったかもしれない。彼は、私の部下も助けてくれた。けれど見た目が怪物なので、銃で撃ってしまった。申し訳ないことをした」

 

 朗報です!! ミハイルさんはすでにムラカミさんと面識があるようです!!

 

「けど、彼は、スターズメンバーを見ると、心も化け物になります。何とかして彼を救う方法は無いでしょうか……私は、彼を助けたいです」

 

 ミハイルさんは難しい顔をしました。そりゃそうです、私達の仲間の中にはスターズメンバーのジルさんがいるのですから。

 

「それは難しい。非常に難しい。もしトモダチとジルがここで一緒にいたら、きっとトモダチの心はmonsterになる。その時は、私は彼を殺すだろう」

 

 ムラカミさんは、全部わかっていたのでしょうか。わかった上で、私をここに連れてくるつもりだったのでしょうか……。

 とても、悲しいです。何とかして、ムラカミさんも、ジルさんも、助けることができないでしょうか……。

 私は必死で考えましたが、ジルさんとカルロスさんが帰ってくるまで、いい方法は全く浮かびませんでした。




=どうでもいいこと=
中の人は英語の赤点連続で留年しかけて先生に土下座して卒業した前科持ちです。
よって英語表記はものすごく適当です。間違ってたら教えてくださいw
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