目覚めるとそこは廃墟 作:海砂
油断していた。
路面電車を動かす為のオイルも手に入れて、あとは電車で待つミハイルとヨシコの元へ戻るだけ……そう思っていた時期が私にもあった。
そんなほんの数分前の自分を殴りつけてやりたい。
「おい、ジル! こいつぁナニモンだよ!?」
カルロスの必死の応戦だが、まるきりダメージを受けているようには見えない。
ただ、一つわかったことがある。
ヤツはスターズメンバーだけを狙っているものだとばかり思っていたが、それを邪魔しようとする人間(この場合はカルロス)にも容赦がないということだ。
「カルロス、相手にしていても埒があかないわ! 回り道をしてこいつを撒くのよ!!」
できれば別れたほうがいいかもしれない。こいつは間違いなく私を狙っている、それだけは確かだ。
カルロスの銃で効果がないのなら、私がITEMボックスまで戻るべきだ。
持ちきれないからと、コイツの存在を忘れてマグナムを置いてきてしまった自分が恨めしい。
「おい待てよ!! この狭い路地でどうやって一緒に逃げるんだ!」
「一緒にとは誰も言ってないわ、じゃあね」
そして私は今来た道を急いで戻る。予想通り、化け物は私の方を追ってきた。
カルロスはきっと路面電車の方のメンバーと合流するだろう。私はコイツを撒いてからそこに向かえばいい。
だてにこの街を何時間もウロついてたわけじゃない。
こうして私とバケモノの、命がけの鬼ごっこが幕を開けた。
----------
おーい……。
追いかけたってお前さんの足じゃ追いつかないと思うぞー。
それにどうも、俺の意思で体を動かせない時は、お前さんセーブポイントに入れないみたいだしねぇ。
そんなわけで、セーブポイントに閉じこもってるジルを求めてドアの前をウロウロしています、俺。
自由に動かせるんだったら一目散に逃げ出すのになぁ。暇だ。
ていうかお前さんバカですか? このまま待ってたらジルたんはきっとマグナムとかショットガンとか持ち出してきますよ。そしたら勝ち目ないじゃーん。
と、俺(という表現もどうかと思う)はくるりときびすを返して走り出した。ドコイクノー。
そしてたどり着いたのは警察署。ジルと離れたんだから俺に所有権戻してくれよう。
なんて考えを全力で無視されて、俺はとある場所に向かっていた。
うん、俺も覚えてるけどさ……。
警察署でコレ、使ったね。
んで俺は使えないから放置して逃げ出したね。
……ロケットランチャー。
あー、これならマグナムにも勝てるかもねぇ……、案外頭イイのねお前さん。
んで、そいつを抱えてまた走り出しました。
だがしかし。やっぱりコイツは脳みそ筋肉バカの模様。
このロケットランチャーに弾は入ってないんだよーん。弾は全部で四発。コイツは警察署の激闘で三発使いました。
残りの一発は……うん、俺が興味本位で使っちゃった。警察署の裏庭にある小屋吹き飛ばしちゃいました、テヘ♪
だって、ロケット砲撃つ機会なんてそうそうないし、前世の俺の体だったら持ち上げることすら出来ないだろうし……いや、うん、ごめん。やりたかっただけだ。
途中で弾が入ってないのに気付いたごたるです。なんかイラっとしてるみたいです。
んでランチャーを放り捨てた後、全速力で路面電車に向かって猛ダッシュはじめました。
らめぇぇぇ、ヨシコちゃん逃げてぇえ!
----------
『……カルロス、帰ったか』
電車の中で待っていたら、突然ドアが開いたので驚きました。
そして、見知らぬ方が入ってきました。ゾンビさんではないようです。
ミハイルさんが話をしているので、きっと彼のお友達なのだと思います。
「ヨシコ、紹介しよう……私の部下のカルロス・オリヴェイラだ。カルロスも日本語が少し話せる」
起き上がろうとしたミハイルさんを慌ててまた寝かせて、そしてカルロスさんを紹介してもらいました。
ペコリと頭を下げるカルロスさんに向かって、ミハイルさんは何かを話しています。きっと私の紹介をしてくれているのだろうと思います。
「……ヨシコ? はじめましてざんす。ミーは、おメリケン帰りのカルロス・オリヴェイラざんす。よろしくざーんす」
……ん? この方……日本語が、ヘンです。
「なにがおかしいザンスか?」
なにって、何もかもがおかしいと思うのですが……一体誰がこの方に日本語を教えたのでしょうか。
ムービースター真っ青の白人美男子が、……なんというか、シュールな光景です、ある意味。
「はじめましてです。ヨシコ・カタオカと申します」
ぺこりと頭を下げると、カルロスさんは笑って答えてくれました。いいひとです。
そして二人は英語でなにやら深刻そうな話を始めてしまいました。……つまんないです。
----------
「おやっさん、何か強力な武器持ってねぇか? 俺のアサルトじゃ手におえねぇヤツが出てきたんだ。あいつぁただのゾンビじゃねえ、5.56ミリじゃ全く効果がなかったように見えた」
横になっている隊長に事の次第を報告した。手に入れたアイテムはジルが持っていること、出会ったバケモノのこと、そして、出来るならもっと強い武器を持って彼女を助けに戻りたい、ということ。
俺はおやっさんの隣に支給されたM4A1を置いた。まだ弾は入っている。おやっさんがゾンビどもを撃退するのには充分だろう。
「こいつを持っていけ、少しはマシだろう」
そういっておやっさんが手渡してくれたのは、S&WのM686、いわゆるマグナムだ。
アメリカ製のこじゃれた銃器はどうも苦手だが、こいつを脳天にブチ込んでやればいくらあのバケモノでもさすがにお陀仏だろう。
「だが弾は残り少ない……よく狙えよ」
「ヘッ、わかったよ。ありったけの弾もらってくぜ」
弾は込めている6発を合わせて残り19発。一発や二発じゃ、当たり所にもよるだろうがさすがに効果はないかもしれない。こいつは慎重に動かなきゃなんねぇな。
それよりも、ジルは無事だろうか……あいつがくたばっちまったら、俺らの脱出計画もパーだ。
俺はマグナムを片手に再び飛び出した。雑魚に目をくれてる暇はねぇ。急いで戻らねぇとな。
そして、ダストボックスを飛び越えたところで、ジルがやってきた。気合入れたはいいが、どうも空回っちまったみたいだな……ま、無事ならいいんだけどさ。
「急いで電車を動かすわよ!!」
「オーケイ、運転は俺に任せときな」
二人でまた電車内部へと戻る。
「ジル!」
ヨシコが笑顔で二人(というか、ジル)を出迎えた。……チッ、女の子にゃカッコつけたいところだが、残念ながらこの子に英語は通じねぇ。もっと日本語を勉強しておくべきだったな……。