「ウマソウルってうるさいよね」「えっ」「えっ」 作:バクシサクランオー
ちょっと遅れた気もするけど誤差だよ誤差!
新章開幕です。
さっそくシニア級……と見せかけて、二話ほどクラシック級からの移行パートを挟みます。
お気に入り登録、評価、ここすき
感想、誤字脱字報告もありがとうございます。
はじまりの再確認
U U U
私の名前はテンプレオリシュ。
親しい相手からはリシュ、と呼ばれている。
どこにでもいる、一般家庭出身のウマ娘だ。
《まあ
どこにでもいるが、普通とは少し違うかもしれない。
ちょっと前から“銀の魔王”やっています。
レース史に消えない傷跡を残す存在になる予定です。
……うん、経緯は把握したとはいえ。自分で名乗るのはいまだ羞恥心が激しい。
先はまだまだ長いのだ。無理はしない方針でいこう。
「よし、できたぞ」
「ありがと」
父に礼を言う。
これでアオハル杯をテレビの大画面で見ることができるようになった。せっかくなのでポップコーンとコーラでも用意するべきだろうか。
《最近のテレビってすごいよなぁ。スクリーン代わりにパソコンに接続したり、そのままネットに繋いだりできるんだもん。もう半分パソコンみたいなもんだ。高性能過ぎて使いこなせる気がしないよ》
脳内でテンちゃんがお年寄りのようなことを嘆いていた。
有馬記念で激闘を繰り広げた私たちは少し早めの冬休みを獲得し、実家に帰省していた。
まあ授業自体はとっくに終わっているしね。
それでもギリギリまで学園に残ってトレーニングを続けるのがトゥインクル・シリーズのウマ娘というものなんだけど、今の私たちにトレーニングは無理。
当然、アオハル杯プレシーズンへの参加も禁止である。これは私たちだけではなく、有馬記念に出走したミーク先輩やマヤノも同様。
トレーニングに参加できないのに学園に留まる意義は薄い。
むしろいるだけで他の子が掛かり気味になって悪影響すらあるので、帰省してはどうかと桐生院トレーナーに勧められたのだ。
アオハル杯はチーム戦だ。走れないからとチームメイトを差し置いて自分だけ帰ってしまうことに、後ろ髪を引かれるものが無かったといえばウソになる。
でもあの人のいい桐生院トレーナーが、わざと露悪的な言い方をしてまで帰省を勧めてくれたのだ。私が遠慮せずともいいように。
あの人は去年、私が帰省せず後悔していたことを知っていたから。
その気づかいと思いやりを拒絶してまで学園に留まるだけの理由を私は見いだせなかった。
だからみんながプレシーズン第三戦に向けて調整を重ねる中、こうしてのこのこと故郷に帰ってきてしまったのだ。
去年の今頃とは違い、現在の私たちは歴史に名を残すレベルのスターウマ娘。
テンちゃんが言っていたように容易く近寄れる相手ではないと悟ったのか。それとも桐生院家やURAが裏で手を回してくれたのかまでは知らないが。
故郷の地を踏んでから、去年は湧いていたという羽虫の類には出くわしていない。
《いくら気に食わない相手とはいえ、人間を羽虫扱いはやめておこうか》
最初にそんな表現をしたのはテンちゃんだった気もするけど。
そう言うのならやめておこうか。
羽虫あらため、私の友人知人を名乗る不審者の方々ね。
《『あなた達のことが嫌いです。近寄らないでください』、それでもいいさ。それだって間違っていやしないさ。でも相手の品性が下劣だということと、相手を粗雑に扱っていいということは、必ずしもイコールではないから。それを感覚的に理解できるようになる前に、言葉だけ振り回すようになるのは避けておこう》
はいはい。りょーかい。
いまいち納得はしていないけど、テンちゃんがそう言うのなら受け入れよう。
テンちゃんのことは大好きだからね。
自分の情緒がいまだ未成熟な部分が多い自覚もあるし。
ともあれここ数日、実に平穏な一般家庭の娘の日常を満喫できている。
それは紛れもない事実だった。
「こうやって見ていると、リシュが普段この中で走っているなんて何だか不思議な感じがするわねえ。はい、こっちがリシュの分ね」
「ありがと。そう?」
母が運んできた四つのマグカップのうち二つを受け取り、やや少なめに入れられたカフェオレに口をつける。
受け取ったマグカップのもう片方は、同じくやや少なめに入れられたテンちゃん用のブラックだ。
「ええ。いつも応援しているし、毎回録画だってちゃんとしているけど。こうやって隣に並んでテレビを見ているとね。こんな御大層なレースであの小さかった私たちの娘が走っているなんていまだに信じられなくなりそう」
「小さいのは今もだけどねー」
本格化が終わればまた身長が伸び始めるのだろうか。
身体能力の衰えには本能的な忌避感があるが、それだけは楽しみかもしれない。
体格で不利を感じたことはない。仮に二メートル超えの相手だろうと立ち幅跳びで軽々と飛び越せる自信はある。だが、それはそれとして百四十三センチという身長は単純に不便が多いのだ。
「走っているだけじゃなくてちゃんと勝っているんだよ?」
「うん。すごいわよねー。この前見せてもらった口座残高、平均的なサラリーマンの生涯年収を超えちゃっていたもの」
母の何気ない一言に父がダメージを受けていた。
GⅠ一着の賞金ともなればそれだけで億の世界。URAに所属するウマ娘として角が立たない程度にお仕事を引き受けているし、ぱかプチなどのグッズの利権もバカにならない。
私の稼ぎはクラシック級までの二年間だけで既に一般家庭のサラリーマンの生涯年収を超えてしまっていた。
当初の予定通りお金だけが目的ならもう引退してもいいくらいだ。今はさらに欲しいものが出来たので最低でも『最初の三年間』は完走させてもらうつもりだが。
「家のローンくらいは私の貯金から返済しちゃってもいいと思うんだけどなー」
ただ、『最初の三年間』という一つの区切りが目に見える距離に近づいてきたのも事実。
気の早い話かもしれないが、引退すれば私の貯金は私の自由に使えるようになる。
一括返済できるのにわざわざ時間をかけて利子を払うのはバカらしいような気がした。それとも親のローンを子供の私が返済しちゃうと、額によっては余分な税金が掛かっちゃったりするのかしらん?
「もー。宝くじに当たったんじゃないんだから。まだまだ子供の世話になるような歳じゃないわよ。リシュとテンちゃんが頑張って稼いだお金なんだから、ちゃんと自分のために使いなさいな」
「でもさぁ」
今でこそトレーニングに掛かる金銭は学園から支給されるあれやこれやで賄えるようになったが、かつては家計を圧迫していた。
母はそのために専業主婦からパートを始めたくらいだったのだから。
見返りを求めて注がれた愛情とは思わないが、投資された分はしっかり返せる身分になったのだと証明したい気はある。
「いい、リシュ。実はずっと内緒にしていたけどね……」
母は真面目くさった顔をして、何やら深刻そうに告げた。
「実はお父さんとお母さんは生まれたとき、家族でも何でもない他人だったのよ」
そりゃそうだ。むしろ血縁者だったら現代の法律で結婚できる国などそう無いだろう。
ただ、何を言わんとしてるのかは察することができる。
「今のリシュにとって家族っていうのは私たちのことで、家庭っていうのはここのことなのかもしれない。でもね、いつか自分の相手を見つけて家族になって、新しい家庭を築く日がきっと来る。
そのときに後悔してほしくないのよ。お金なんて足りなくて困ることはあっても、多すぎて困ることなんてそう無いんだから」
まあ金に群がってくる亡者のたぐいとか、金銭感覚が狂ってしまって気が付けば借金が生じているとか。多すぎることで生じる問題もいくつかは思いつくけど。
揚げ足取り以上のものにはならないだろう。無いよりはあった方がいいに違いないのは共通見解だ。そうじゃなきゃトゥインクル・シリーズを走ってなんかいないし。
たしかに私にとって家族というのは生まれたときからそこにあるもので、新たに作るものではない。
そして現代において、新たに何かを作るというのは何かと物入りになるということとイコールである。
そのときのために十分な安全マージンを確保しておけというのは納得できる忠言だった。
「どうしてもって言うのなら結婚して子供もできて将来設計がある程度実感を伴ったものとして見通しが立って、それでも十分に余力があるってなってから改めてお願いするわ。
お父さんもお母さんも、まだまだ子供の世話になるような歳じゃないってことよ」
「うんわかった。老人ホームはいちばんいいところに入れてあげるから任せておいて」
人生経験の差を大人に持ち出されてしまうと、己の未熟さを自覚している子供としては反論のしようがない。どれだけ才能があったって覆せないものは存在する。
そして、そんなどうしようもないものを持ち出されると腹が立つものだ。そんな苛立ちを自慢気なピースサインに込めて誇示した。
「はいはい。そのときはよろしくね」
年の功というやつか、笑顔であっさり受け流された。完全にこちらの負けだった。
でもさ。レースの賞金だけで億超えで、そこにURA所属のウマ娘として引き受けた仕事のあれやこれやが上乗せされるのだ。もはや私たちひとりの人生で使い切れる額ではない。
多少親のために使っても罰は当たらんと思うんだよね。負けた以上ここは大人しく引き下がるけども。
「そういえばこの前も何かのゲームとコラボしてレイドボスやっていたわよね。『
ブラウザゲー? スマホゲー? ソシャゲって言うんだっけ。ともかくああいうゲームって時間がごっそり取られるっていうし、むかしのゲームみたいに明確なクリアも無いから辞め時がわからないし、どうにも二の足踏んじゃうのよねぇ」
「それでいいと思うよ」
コラボさせてもらっている身でこんなことを言うのも何だが、しょせんはレースに影響が出ない範疇で引き受けた数あるお仕事の一つだ。仕事である以上手を抜くわけがないにせよ、思い入れは相応のものでしかない。
一番リソースを割いているレースを応援してくれるならそれでいい。
「それにせっかくコラボしているのに、リシュ自身が使えることってあまり無いじゃない。ボスキャラだったり、期間限定のお助けキャラだったり。だからその期間だけやるのもなーってますます意欲が湧かないし、結局は配信動画とか検索するので満足しちゃうのよ」
《このご時世、動画配信サイトを漁ればソシャゲ配信なんて簡単に見つかるだろうし。たしかにイベントの内容を確認したいだけならそっちの方が効率的か》
「私たちはプレイアブルキャラにしにくい性能らしいからねー」
なにせ芝もダートも不問の全距離適性で、なおかつ無敗だ。
テンちゃん評価レジェンド級だってここまでご無体な戦績を残したウマ娘は存在しない。
……長いレースの歴史上に似たようなことや、あるいはそれ以上にバカげた戦績を残したウマ娘もいるにはいるが、遠い歴史の果てにいる彼女たちにコラボ案件は来ないので今はさておこう。
『絶対』や『無敵』などと謳われる数々のレジェンド級ウマ娘だって距離適性なりバ場適性なり、あるいは脚質なりで有利不利を作りバランス調整ができる。
しかし私たちにはそれが無い。
ゲームは商品だ。である以上、その品質は一定に保たれねばならない。それが運営の責任である。
だが、バランス調整のためテンプレオリシュを弱体化させるなど論外。“銀の魔王”はあの暴虐的な性能あってこそ“銀の魔王”なのだ――とコラボ担当者は澄んだ目に狂信の色を宿しながら語ってくれた。
どうもそれはテンプレオリシュとコラボしたいと望む者たちにとっては共通認識らしく、ゆえに私たちは私たちのスペックを維持したままゲームバランスを破壊することなくこなせる配役を割り振られるわけである。
すなわちレイドボスのような圧倒的な脅威か、あるいはいずれ退場するゲスト枠だからこそ存在が許される超有能サポートキャラ。
ファンからもその扱いは概ね解釈通りだと好評らしい。
《ボスキャラをやっているときでさえ被ダメージの苦悶の悲鳴や、HPを削り切ったときの断末魔の叫びといった方面の演出がほぼ無いからなぁ》
常に余裕たっぷりで、システム上は撃破されても悠々とした態度を崩さない。何なら完全な上から目線で主人公を褒めるようなセリフさえ残して退場する。
ファンの方々の中で私たちのイメージってどうなってるんだろう。少しばかり不安がこみ上げなくもない。
本当にそれでいいのかお前ら。
『さあ、始まりましたアオハル杯プレシーズン第三戦。ここに集うのはいずれも劣らぬつわものばかり。仲間との絆が試されるこのレース、昇格を果たすのはいったいどのチームか』
雑談をしている間にも画面の中でレースは進んでいく。
非公式レースとはいえ学園主催。そこらの模擬レースとは規模も予算も違うのがカメラ越しでもわかる。
母の言葉ではないが、普段は自分があの中にいると思うと何だか不思議な気分だ。
映像でライバルの走りを研究する時とはまるで違う感覚。カメラが映し出す部分の裏側で、きっとあの子は今こんなことをやっているのだろうという考えが自然と脳裏を過る。
なんだか自分に繋がっている空気の一部が剥離したみたいで、えらくソワソワする。
『注目の〈パンスペルミア〉は先日の有馬記念で素晴らしい戦いを繰り広げたハッピーミークやマヤノトップガン、そしてあのテンプレオリシュを擁するほどの実力派チーム。
しかし、だからこそ激戦を駆け抜けた彼女たちは休養のため本日のプレシーズンには出走しておりません。エースを複数人欠いたこの状況が今日のレースにどこまで響いてくるでしょうか?』
『有馬記念やホープフルステークスといったGⅠに出走するような優駿が出走できないのはアオハル杯の日程的にどのチームにも共通する問題です。
ただ、チームリーダーであるハッピーミークが走れないというのは痛いかもしれませんね。今もベンチで精神的支柱としての役割を果たしている彼女ですが、ウマ娘にとって走れる、あるいは走れないということは自他ともに無視しえない影響力があります』
私たちは故郷に帰されたのに、ミーク先輩は現場に残って頑張ってる。
これが人望の差というやつか。
《いやはや、あのマイペースの極致だったミークパイセンが今では立派にリーダーとしての務めを全うしていることに感涙を禁じ得ないね》
ま、テンちゃんの言う通りか。
あのひとは傍目にも人付き合いが得意ではないのに、その上で桐生院トレーナーの信頼に応えるため懸命にチームリーダーとしての役目を果たし続けてきたのだ。
私を含む初期メンバーはその悪戦苦闘っぷりをずっと間近で見てきた。
ただチームの中で走って勝ってきただけの私とは役割が違えば、存在の有無で生じる重みも異なる。
「リシュのチームは〈パンスペルミア〉だったわよね。どう、勝てると思う?」
「うーん、厳しいんじゃないかな」
私たちが所属しているアオハル杯チーム〈パンスペルミア〉のランキングは現在五位。ここで勝てばランキング一位とまではいかないまでも、トップスリーは見えてくる。
ただまあ、言った通り厳しいというのが正直な予想だった。
なにせミーク先輩もマヤノも、そして私も出走メンバーにいないのだ。
各部門でエース級三人がいない中で、相手は前回のプレシーズンよりも格上のチーム。
これは負けても仕方がないと思う。
「あら。あのサクラバクシンオーちゃん、だったかしら? すっごい速かったし、てっきり短距離専門なんだと思っていたけど。実は長距離もいけたのね」
「ガッチガチのスプリンターだったんだよ。三か月前までは」
しかしそんな私の予想に反し、〈パンスペルミア〉はここまで四戦中二勝二敗の大健闘をしてみせた。
ちなみに勝ち星を稼いだのはデジタルとバクちゃん先輩の二人。
そこだけ見れば順当な結果と言えるだろう。
マイル部門のデジタルはともかく、今回バクちゃん先輩が担当したのが長距離部門だったという事実から目を背ければ、だが。
《スプリンターズSの直後からたったこれだけの期間でアオハル杯上位陣に通用するレベルで仕上げてくるとは。流石すぎるぜバクシンオー……》
本当にバケモノだな、あの人。
いやまあ、中長距離でGⅠを獲ることはデビュー前からバクちゃん先輩が掲げていた目標らしいし。
表面上は圧倒的スプリンターではあっただけで、水面下では着々とそれに向けたトレーニングも並行して行っていたのだろう。
そこに私が奉納した中長距離用走行フォームが最後のピースとなり、この短期間で急速に開花したと。
順当に考えればそうなるはずだ。うん。きっと、そうだったに違いない。
いや普通に考えればさ。距離適性の壁への挑戦って何回もレースを挟んで百メートル刻みで徐々に伸ばしていくのが定石じゃない? とは思わないでもないけど。
いきなり長距離やっちゃうんだ。そして勝っちゃうんだ?
《これは来るなー、春天》
バクちゃん先輩の目標はあらゆるウマ娘のお手本にふさわしい学級委員長になることだ。
もちろんあの人のことだから春シニア三冠の全てをいずれ手にする予定だろうが、どうしたってローテを組む際に優先順位は必要となる。
中距離と長距離はただ単純に距離が延びるというだけの差ではない。
距離適性の有無は大前提として。レースに求められる技術の差異だって、細かい部分を数えていけば枚挙にいとまがない。
大阪杯と天皇賞(春)は同じ春シニア三冠の一角を担うGⅠではあるが、大阪杯の方がレースとしての格が下がるらしい。
レースの価値を半分くらい賞金額で判断している一般家庭出身の私たちにはあまり実感が湧かない格付けだけども、古参レースファンの見解はだいたいそのように一致している。
というか、天皇賞の格が高いと言うべきか。
八大競走といって、グレード制が導入されるまで重賞の中でも特に格の高い競走に数えられていたほど。
ちなみにクラシック三冠とトリプルティアラから秋華賞を除いたものが五大競走と呼ばれ、八大競走はそこに春秋の天皇賞と有馬記念を加えたものだったりする。つまり私は既に八大競走の半分を制している計算になる。
さておき、あのメジロマックイーンさんが今から天皇賞(春)を目標に据え、それに特化したトレーニングを積んでいるという話さえある。古き名門にとって天皇賞とはそれだけの価値があるレースなのだ。
距離適性の壁を粉砕した先の初挑戦。
スプリントの絶対王者であったバクちゃん先輩が初めて挑戦者となる舞台。
きっと天皇賞(春)という冠はそれにふさわしい。
彼女は今、淀の3200mに狙いを定めてトレーニングを積んでいるのだ。
獲得済みのGⅠ経歴的に、今度は私の方が迎え撃つ側になるのかな?
……ああ、それはとても面白そう。
『一進一退の攻防戦。ついに運命が決まる第五レース。現在二勝の〈パンスペルミア〉の命運は若きエースへと託されました』
『トウカイテイオーは間違いなく来年のクラシックの中核となる優駿ですが、他チームの面々は百戦錬磨のシニア級。彼女はその芳醇な才能で経験の差をどこまで埋めることができるのでしょうか、注目です』
いまさらな話だが、アオハル杯は一部門につき三つのチームからそれぞれ三人が出走する、計九人で行われるレースだ。
各部門で一着になったウマ娘が所属するチームに勝ち星が加算されていき、勝ち星が三つに達した時点でチームランキング昇格が確定する。
ここまで四レースで二勝しているのは〈パンスペルミア〉のみ。残りの二チームはもう昇格の目は無く、このプレシーズンの未来は残留か降格かの二択しか残っていない。
それで腐ってやる気をなくすような物わかりの良いウマ娘なら、わざわざ血反吐を吐きながらシニア級までトゥインクル・シリーズに踏みとどまるようなことはしないだろう。
画面越しでもわかるくらいに気迫が充満している。
これはテイオーに向けた威圧も兼ねている、かな?
どれだけ才能があろうと経験の浅さは如何ともしがたい。本格化という不思議要素がある分ヒトミミほどその傾向は顕著ではないが、それでもこの年頃の二年差は体格にも大きく影響する。
そして自分より大きい相手に圧を掛けられると萎縮してしまうのは動物の本能だ。
彼女たちはゲートに入る前の段階から少しでも有利に立ち回ろうと持てる手札の全てを惜しみなく使っている。
大人げない、なんて価値観は私たちの間には無い。こうしてゲートに入って横並びになる時点で老若男女問わず敵だ。
敵は叩き潰す。
それだけの話である。
しかし、対するテイオーは静かなものだった。
相手を舐め腐っていることに起因する余裕ではなく、燃える闘志を内に秘めたままゆったりと外部の圧を受け流している。
そのたたずまいは普段の小突き回したくなる小生意気さとは違う、その名の通り“帝王”の片鱗を感じさせるものがあった。
“皇帝”の覇気と同系統の空気。もっとも、ルドルフ会長のそれに至るためにはもう三段階くらい熟成を重ねる必要があるだろうけど。
少し意外。
意外といえば彼女がホープフルステークスに出走せず、こうしてアオハル杯の方を優先したのも意外だ。
かつてマヤノも制したホープフルステークスは、クラシック一冠目の皐月賞と同じ中山レース場2000m。
無敗のクラシック三冠ウマ娘になると以前から公言しているテイオーにとってはGⅠウマ娘の称号と合わせ獲っておいて損はないタイトルのはず。
ちなみにテイオー不在のホープフルSはメジロマックイーンさんが制していた。まあ順当な結果だろう。
《よかった。ホープレスステークスに出走してメジロマックEーンになるパクパクですわサンなんていなかったんだ》
いずれのジュニア級GⅠタイトルに目もくれず、ただ今日のレースだけまっすぐ見つめてテイオーはいまこの場に立っている。
彼女をそうさせるだけのものがこのプレシーズン第三戦にはあるのだろうか。ぱっとは思いつかないんだけど。
《テイマクは素晴らしいライバルではあるけど、言い換えてしまえば同格ってことだ。切磋琢磨するには絶好の関係だったとしても、対格上の経験を積むに適当な相手とは言い難い。
テイオーは少しでも多くの経験を選んだ。マックイーンは堅実に実績を求めた。要するにそういうことなんじゃないかな》
テンちゃんには何やら推測があるらしい。
私もレースを見ていればわかるかな?
アンケートへのご協力ありがとうございました。
更新からあえて間隔をあけての実施だったのに一か月で600名以上の方に回答いただき『これだけ多くの方が読み返してくれているのか』と、とても幸せになりました。
有馬記念とスプリンターズSの得票が多かったのはだいたい予想通りでしたけど、浜辺の野良レースが得票数3位に食い込んだのは正直予想外。
気合い入れて書いたのは間違いないんだけど、公式レースに人気では敵わないと思っていたので。
どのレースにも多かれ少なかれ票が入っていて、どのレースもちゃんと好きになって貰える書き方ができたんだなと嬉しく思っています。
アンケートは恒常で66話に設置しておくので、気が向いたら見に行ってみてくださいな。
ところで皆さんは確定ガチャ引きましたか?
こちらはお布施も兼ねて全部引きました。
キャラガチャは10割の確率で未所持が手に入る夏ドベガチャと、7割の確率で未所持が手に入るシリウスガチャを選択。
結果、新規に入手できた未所持はヤエノ一人でした……。
来てくれてありがとうシービー、でもきみ過去ピックアップのタイミングがタイミングだったから貯蓄ブッパでお迎えしてるんだわ!?