はかいしん こうりん   作:海砂

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第二章 おれの うしろに たつな

「破壊神様、今度やってくる勇者は、強力な魔法の使い手です。その攻撃力はハンパじゃなく、ニジリゴケ程度は一撃で即死してしまうでしょう。

 つまり魔王、大ピンチです。まだ初心者マークの破壊神様には酷かもしれませんが、とっとと養分を集めて魔方陣を作りまくりつつトカゲおとこを大量に生み出しておいてください。

 え? やり方がわからない? ここにくる前にトレーニングやってこなかったんですか全く……。

 いいですか? まずニジリゴケを生み出して、ニジリゴケが養分を運搬する習性を利用するんです。んでほら、ガジガジムシ生み出したあの白いモゴモゴ、あれのもう一段階上の状態になった土を掘り返したらトカゲおとこが出てきますから、ひたすらそれを繰り返してください。

 あっ、トカゲおとこのエサはガジガジムシですから、それを増やしておくのもお忘れなく」

 

 

 なんか次も強い勇者が来るらしい。鬱だ。

 魔王が俺にエールを送っている。正直ウザい。殴ってもいいだろうか。

 とりあえず土を掘って緑ぷよを誕生させる……あれ? 緑ぷよじゃなくてオレンジぷよが出てきた。

 

「あっ破壊神様、それはニジリゴケの上のランクのアメリカニジリゴケです。ニジリゴケよりもたくさん養分を運んでくれますので、より一層養分の濃縮がラクになりますよ、よかったですね」

 

 魔王の敬語なんだか上から目線なんだかよくわからない口調が余計に俺のイライラを煽る。殴ってもいいだろうか。

 

 気付いたら、俺は魔王を殴っていた。だが、これっぽっちも効果がないようだ。

 

「ふふふ、魔王これでも一応魔王ですから。ドラゴンの炎にもやられない特殊装備持ちなんですよ。破壊神様ごときにやられるようなヤワな魔王じゃありません」

 

 魔王がえっへんえっへんしている。ムカつく。でも殴っても効果がないのでくすぐってみた。

 

「ちょっ! は、破壊神さふっ、ひゃっ、ぎゃははははははははry」

 

 くすぐりはどうやら効果があるらしく、ちょっと気がすんだ。さて、ダンジョンを掘るとしようか。

 

 魔王をくすぐっている間に、オレンジぷよが養分を集めてくれていた。これがトカゲ男を生み出す土か? これまでの緑モゴや白モゴとちがって、あんまりモゴモゴしてない。が、なんかちょっと光あれ! とか言いたくなるような神々しいまでの白ブロックがダンジョンに慣れた目には痛い。

 何か固そうだったがツルハシを使うと豆腐のようにぐしゃりとあっさり掘れた。あまり有難みがない。

 そして、青っぽいトカゲ男が誕生した。男臭い。汗の臭いとか、なんかアレな臭いとか、まるで四畳半の中に10人くらい男子中学生を詰め込んだ時のように臭い。

 見た目はまさにトカゲ男。大きなトカゲが二本足で立って、鎧を着込んだ感じ。妙に目が愛くるしいのは気のせいだろうか。のそのそと動き出して、いきなりその場に穴を掘り始めた。

 

「あ、それ巣穴です。ガジガジムシ食べさせて太らせたら、そこで勝手に繁殖しますから、どんどんやっちゃって下さい。ちなみにトカゲおとこのメスは存在しません」

 

 オスだけで繁殖するのか……不思議な生態だがとりあえずどうでもいい。俺はひたすらオレンジぷよとガジガジムシとトカゲおとこを生み出しては食わせたり食わされたり食卓におよばれしたりを繰り返した。

 トカゲおとこはガジガジムシをうまそうに食う。俺も勧められたが固辞した。仕方なく一緒にオレンジぷよを食った。オレンジなのに桃の缶詰の味がした。不思議。

 

 トカゲおとこは、案外悪い奴らではないらしい。卵を抱いていると暇なのか、よく話しかけてくる。ちなみに卵を産むときは追い出された。見られたくないらしい。

 どうせガジガジムシのことしか考えてないんだろうと思っていたが、意外と哲学的なことも考えていた。

 

「私達はどうしてここに産まれてきたのでしょうか……」

 

 返答に困った。

 

 

 そんな日々を繰り返していたら、突然魔王がキレた。

 

「ちょっと! 破壊神様! いつまでマッタリしてるんですか! もうすぐ勇者がやってきますよ!? このままでいいんですか? 私がさらわれちゃったらどうしてくれるんですか!!」

 

 正直オッサンな魔王がさらわれても別にどうでもいい。可愛い女の子なら助けに行ってもいいんだがな。不公平だといわれようが、それが現実だ。

 だが、せっかく仲良くなった彼らをむざむざ死なせるのも忍びない。トカゲおとこくんたちの繁殖は彼らに任せ、俺は魔法陣を作ることにした。

 トカゲおとこを発生させるためのとーふ(名付けた)の周りを掘って孤独にさせると、デーもんの住む魔界? への扉、すなわち魔方陣が登場するらしい。

 とりあえず掘ってみた。……これが、魔法陣。確かにどう見ても魔法陣だが、誰がこの文様を描いたのかは定かではない。なんか、足突っ込んだら溶けそうだな。

 ちなみにこの文様の中央をぶしぶしすると、中からデーもんがこんにちわするらしいのだが、とりあえずは放置した。魔法陣の上を歩かせると、勇者のMPを吸い取ることが出来るらしい。次に来る勇者は魔法使いらしいから、この魔法陣をあちこちに作っておけば役に立つだろう。べっ、別にデーもんが怖いわけじゃないんだからねっ!

 

「破壊神様、勇者がやってきましたぞ」

 

 この野郎、いっそ入り口のド真ん前においてやろうかな、とか思ったがやめておいた。

 ゲームオーバーになった後の俺の運命は誰も知らない。つまりあんなことやこんなことになってしまうかもしれないのだ。魔王はどうでもいいんだが俺まで巻き込まれるのはゴメンだ。

 

 そして魔王の調査能力がカスであることを、俺は思い知らされるのである……。

 

 

 

 

 

 

ちょうそげきすないぱー ゴノレゴ LV13

 

「きょうの ターゲットは……」

 

 

 なんっじゃっこりゃー!!

 どこが魔法使いだ、どこが! ぶっとい眉毛のあのお方が防弾ベスト着てライフル構えてるじゃねーかコン畜生! その辺のコマンドーよりタチ悪いぞ!

 ごめんトカゲおとこくんたち。アレに剣で立ち向かうのは無謀だ。恨むのなら魔王を恨んでくれたまい。

 

「ミッション かいしだ……」

 

 ゴノレゴは外すことなく一撃でトカゲくんたちを即死させていく。さすがゴノレゴ……っと見惚れてる場合じゃなかった、逃げなければ。俺も眉間を打ち抜かれてしまうぞ。

 そうして、うまく分かれ道を利用してゴノレゴと鉢合わせしないように俺は逃げ惑った。魔王? 知ったことか! ……でも気になるので、一応様子を見に行ってみた、陰に隠れて。

 

「これが まおうか」

 

 キャーっ! ゴノレゴさん迷いなく魔王の眉間を撃ち抜いた! ……が、魔王は無事だった。あの装備、通販で買ったとか言ってたけど俺にも買ってくれんかなぁ。

 二発、三発と銃弾が撃ち込まれるが魔王はピンピンしている。……あ、違った。腰が抜けて動けないようだ。

 ゴノレゴは背に負ったデイバッグからごっついサバイバルナイフを取り出すと、魔王に向かって突き立てた! ……が、やっぱ跳ね返してる。すげーな、アレ。あんな変な格好はしたくないが防御力は魅力だ。

 

「……チッ ミッションは しっぱいか……しかたあるまい いらいぬしの じょうほうも ほうしゅうも たりなすぎる」

 

 ぎゃっ、ゴノレゴが魔王放置して踵を返した! やばい俺と鉢合わせる、逃げろ!!

 

 

 

 

 

 

 なんとか逃げ遂せた俺。魔王を簀巻きにすることなくダンジョンを出て行ったゴノレゴ。……何故か今回もステージクリア扱い。これでいいんだろうか。不安になった。

 

「ちょっと! 魔王涙目になっちゃったじゃないですか! 破壊神様マジメにやってくださいよっ! おかげでおしっこ……」

 

 ちびったのか?

 

「…………………………なんでもありません」

 

 ちびったのか。

 

「もう、次こそはちゃんと勇者を退治してくださいねっ! じゃあ、魔王情報収集してきますからね!!」

 

 また逃げられた。鬱だ。

 俺は一人、トカゲおとこくんたちのお墓を作ってあげた。……君達の雄姿は、俺が見届けたからな! だから、安らかに眠ってくれ。化けて出てこないでね、出るなら魔王のとこに行ってくださいね。




クロス先:ゴルゴ13
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