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この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものであり実在するものとは関係ありません。
松戸厩舎
ブエナビスタの未勝利戦が行われる数週間前…
「ミカドの次のレース、重賞に挑戦しようと思う」
松戸から放たれた言葉にここに集まった真司、福長、駒沢の全員が息を呑む。
「いよいよ、ですか…」
「ミカドの戦績からしたら確かにいいと思います」
「重賞戦か…」
三者三様の言葉を出しながら盛り上がる3人に松戸は手を叩き3人を静かにする。
「そこで、そのレースなんだが年内で行われるミカドに合う重賞戦は3つある。G3の東スポ杯とラジオNIKKEI杯、そしてG1の朝日フューチュリティSだ」
11月中盤に東京で行われる1800mのG3『東スポ杯2歳S』、12月終盤に阪神で行われる2000mのG3『ラジオNIKKEI杯2歳S』、そして2歳の牡馬が唯一でれる12月中盤に中山で行われる1600mのG1『朝日フューチュリティS』の3つの内どれかを松戸は選択肢として用意して来た。
「距離と府中のコースを確かめるなら東スポ、中距離の適正を知るならNIKKEI杯、強豪になり得る存在を知るには朝日ですかね…」
駒沢がレースそれぞれのメリットを口に出した。
「ミカドは恐らく1800は走り切れます。前回の1600でもまだ余裕がありましたから」
「それじゃあ、やっぱり中距離の適正を調べるためにNIKKEI杯に行きますか?」
雄二と真司はミカドは既にマイルでは十分戦うことができることを口にする。
「最終的な判断は駒沢さん、あなたが決めることです。どのレースに出てもミカドは必ず善戦するでしょう。ミカドの未来を決めるのは貴方なんです」
松戸はあくまで自分たちはアドバイスをするだけと言い、ミカドに関する最終決定権は駒沢自身にあると言う。
駒沢はしばらく悩んでいた。そして悩み始めて5分程で駒沢は口を開く。
「もしも、ミカドがクラシック、三冠を狙うのであればどれがいいと思いますか…」
クラシック三冠、その言葉に3人の顔が強張る。ミカドの今後の調教が順調にいけば間違いなくダービーの距離2400は余裕で走りきることが可能だろう。しかし長距離3000の菊花賞はハッキリ言えば難しい。
「…クラシックを狙うのであれば朝日をお勧めします。G1の空気は他の重賞戦やOP戦とは全く違います。その空気に慣れさせる事は大事です。あとは獲得賞金ですね。朝日で入着すれば重賞を皐月までに1戦すれば出走可能でしょう。しかし…」
「同時にミカドの中距離への実力が不明になってしまう、と言うことですね」
駒沢の発言は最もである。馬の距離適正は殆どの場合親から遺伝する。(中には突然変異で中長距離の血統であるはずなのにサクラバクシンオーみたいな短距離最強が生まれることも稀にあるが…)
ミカドは恐らく親の遺伝子を忠実に受け取った馬である事はほぼ間違い無いだろう。
「俺がミカドに乗ってる感じでは2000までは問題なく走れます。ダービーもその時期には恐らく問題ないでしょう。しかし…」
「ええ、分かっていますよ福長さん。一番の難関は菊花賞でしょう?」
そう、何度も言うが3000と言う距離を走るのは馬であろうときついのである。ミカドは血統からすると菊花賞は掲示板入りするのも怪しい。
「わかっています。あの子には長距離は長すぎる。しかし、如何しても見てみたいんです。あの子の祖父が打ち立てた金字塔、父と母父が叶えられなかったあの偉業を…あの子が成し遂げるのを…あの子は間違いなくそれを成し遂げるだけの才能を持っていると私は思うのです。私の我が儘と言うのは分かっています。ですが…どうか」
頭を下げる駒沢に真司は困惑する。そして調教師の松戸と騎手である福長は黙ったまま駒沢を見つめる。
ただただ時間が静かに過ぎて行く。その静寂を破ったのは松戸だった。
「真司、雄二ミカドの調教に行くぞ。朝日まで1ヶ月と少し…その間に仕上げるぞ!」
「は、はい!」
「分かりました」
「駒沢さん」
「……はい」
「私も正直に言うとミカドにクラシックは難しいと考えていました。血統がそれを物語って、世論がそれは無理だ、難しいと言う。しかし、ミカドは何処かできっとやってくれる、そう感じてしまうんです」
「松戸さん…」
「やってみましょう。ミカドをかつての日本を震撼させた『皇帝』と『帝王』に連なる存在にしましょう」
「……ええ、やりましょう!」
松戸と駒沢は固く手を握った。そして一同は『朝日フューチュリティS』に向けて準備を進めるのであった。
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松戸厩舎 馬房
ブエナビスタ未勝利戦後日
『ミカド〜勝ったよ!!私勝ったよ!!』
『はいはい、偉い偉いよく頑張りました』
『も〜ちゃんと褒めてよ〜!』
俺、ノゾミミカドは12月に行われるレース『朝日フューチュリティS』(以下朝日FS)に出走することが決まった。同時にブエナも『阪神ジュベナイルフィリーズ』(以下阪神JF)に出走することになっている(まあ、獲得賞金がギリギリで、抽選でなんとか選ばれたらしいけど)。どちらのレースも2歳馬の頂点を決めるG1レースだ。
(…にしても朝日FSか…史実では確かセイウンワンダーが勝っていたな。クラシックでも善戦するから注意しとかないとな)
雄一さんたちは俺をクラシック路線に進ませることを決めたらしい。中距離の確認は皐月賞が始まるまで中距離レースはいくつかあるしそのどこかで確認すればいいしな。
『ねえねえ、ミカド』
俺が今後のことについて考えているとブエナが声をかけてきた。
『なんだ?レースで勝ったことはもう何回も褒めているだろ?』
『そうじゃなくて、あのさ…私たちが次出る2つレースって私たちの世代の1番を決めるレースなんだよね?』
『ああ、俺たちサラブレッドの登竜門みたいなレースだな。実際あのレースに勝ったり入着した馬の多くは様々なレースで結果を出している馬が多い』
俺が出走する朝日FSでは『幻の馬』トキノミノル、『怪物』タケシバオー、『スーパーカー』マルゼンスキー、そして俺の爺ちゃん『サイボーグ』ミホノブルボンなどが、ブエナの阪神JFにも『天才少女』ニシノフラワー、『女傑』ヒシアマゾン、『常識破りの女王』ウオッカなどの名馬たちが成績を遺したレースたちなのだ。
『だったらさミカド』
『ん?』
少し興奮気味のブエナは俺を見ながら話し続ける。
『私たちでその2つのレースを制覇しない?』
『……えっどういうこと?』
脳の理解が追いつかない。いやもちろん出るからには1着を目指すけどブエナからこんな話しを持ちかけられたことなんて今までなかったし、それに俺たち2人で制覇って、えっ?
『ごめん、ブエナどういうことか説明して…理解が追いつかない』
『だーかーらー!次のレースは私たちの頂点を決めるものなんでしょ?』
『ああ』
『つまり、私たちが勝てば世代最強コンビってことになってテキや厩務員さんたち、馬主さんも喜ぶじゃん!』
あ〜なるほどね。俺らが勝てばどちらも2歳馬の頂点は松戸厩舎のものになってみんなの喜ぶとこが見たいのか、君は。
『それにさ…』
『強い奴と戦って勝つ方が燃えるし…』
!?今、ブエナからなんかいつもと違う何かを感じたような…
『?どうしたのミカド?』
『い、いや、なんでもない(気のせいか?)』
もう一度ブエナの方を確認するがいつも通りののほほんとしたブエナだ。やっぱり気のせいか…
『で、どうするミカド?』
期待の眼差しで俺を見てくるブエナ。ここまで相手が言っているんだ。なら俺も…
『よし、いいぜ。その話乗った』
『やっt『ただし!』…?』
『俺たちでも勝負しないか?』
『勝負?』
『俺たちは別々のレースに出ることになっている。だから直接対決は出来ない。そこでだ』
色々と違いはあるけどこうした方がこっちも燃える。
『距離が同じレースだからな。どっちが速いタイムで勝つかも勝負しないか?』
朝日と阪神、コースは違うがどちらも右回り1600mのマイル戦だ。全然違うレースの結果を競うのは少し違う気もするけど…
『へえ…それ、面白そう…』
『だろ?』
『それじゃあ、少し早いけど宣戦布告だ』
『お前なんかより速く俺はゴールするぜ、
俺の挑発にブエナも闘志を燃やす目で返してくる。
『ふふっ…』
『調子に乗るなよ、
こうして俺たちはそれぞれ初のG1レースに向けて動き出した。
入口付近
オーラ『先輩、僕アレに近づかなきゃ行けないんですか?』
モナーク『まあ、そうだろうお前の馬房隣なんだし…』
オーラ『…正直今だけは近付きたくないです』
モナーク『まあな。ミカドから出ている覇気は英雄様にも勝らずとも劣らねえしな』
オーラ『それ言ったら妹もあの常識破りにも負けないくらいですよ』
モ・オ『『……(収まるまで)動きたくねぇ……』』
厩務員A「モナーク!頼むから動け!」
厩務員B「オーラもどうした!?いつもは聞き分けが良いこだろう!」
数分間、松戸厩舎の馬たちはミカドたちの近くに近寄らなかった。
ブエナの性格、作者でも少し分からなくなってきました。
普段は良い子です。
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