紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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真っ黒クロスケさん、送検さん、ほっか飯倉さん、評価ありがとうございます!

今回はミカドは殆ど出て来ません。今回はブエナビスタの戦いです。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものであり実在するものとは関係ありません。


帝の朝日/絶景の阪神 前編 阪神JF(G1)

2008年 12月14日(日)

 

阪神競馬場

 

ブエナビスタside

 

私ブエナビスタは世代の頂点を決めるレースの一つ『阪神JF』に出走する為に阪神競馬場に来ている。

 

「落ち着いているな、ブエナビスタ」

「ええ、前回よりも気合の入りようが違います。良いレースができそうですよ」

 

テキや騎手の安堂さんが私について何かいっているけど集中している私の耳には入らない。ミカドとの約束を守る為、勝負に勝つ為、どちらも決して譲れない。

 

レースの時間が近づきパドックに移動する。パドックでは私の他にもたくさんの競走馬たちがいる。新馬戦や未勝利戦の娘たちとはまた違う。これがG1レースの空気…

 

(どの娘も強そう。油断は決して出来ないね)

 

 

枠番馬番馬名人気
1枠1番カツヨトワイニング13番人気
1枠2番ダノンベルベール3番人気
2枠3番レディルージュ12番人気
2枠4番アディアフォーン9番人気
3枠5番イナズマアマリリス8番人気
3枠6番ルシュクル7番人気
4枠7番ショウナンカッサイ10番人気
4枠8番フキラウソング14番人気
5枠9番ミクロコスモス4番人気
5枠10番コウエイハート16番人気
6枠11番デクラーディア6番人気
6枠12番ワンカラット5番人気
7枠13番ブエナビスタ1番人気
7枠14番チャームポット15番人気
7枠15番パトブレ17番人気
8枠16番メイショウボナール11番人気
8枠17番ジェルミナル2番人気
8枠18番シゲルキリガミネ18番人気

 

 

『7枠13番ブエナビスタ、1番人気です。前回の未勝利戦からの出走でありながらその驚異的な末脚を期待され見事に1番人気に選ばれました』

『2歳とは思えない素晴らしい馬体です。一頭だけ気合の入りようが違います』

 

 

私たちは騎手さんたちを背に乗せパドックから移動し、コースに辿り着く。お客さんたちがいる場所は沢山の人が集まっていた。

 

(凄い…今までなんかより全然違う。馬も騎手の人たちもお客さんも、なんていうか…凄い盛り上がりだ)

 

これがG1…最高峰のレースの空気…

 

『ハハッ…』

 

……面白い…

 

『最高に熱く燃えるレースができそうだよ…』

 

 


 

 

『晴れ渡る空の下、ここ阪神競馬場で2歳牝馬の頂点を決めるレース『阪神JF』が行われます』

 

 

『ねえねえ』

『うん?』

 

ゲート付近に集まっていたら一頭の馬に声をかけられた。

 

『あなたがブエナビスタ?』

『そうだけど、あなたは?』

『私?私はダノンベルベールっていうんだ。よろしくね、ブエナビスタ』

『長いからブエナでいいわ』

『分かった、じゃあ私のことはベールって呼んで』

 

ダノンベルベール__ベールはどうやら1番人気に推された私に興味があって話しかけてきたようだ。

 

『他の子にも話しかけたんだけど、みんなピリピリしているみたいで睨まれたり無視されたりしたんだけどね』

『ふ〜ん。それで、私に何か用があるの?』

『ああ、今日はいいレースをしようねって言いに来たんだ。それと…』

『それと…?』

 

『絶対に負けないから…』

 

途端にベールの周りの空気が変わった。さっきまでの無害そうな雰囲気から一転、油断したらこちらも飲み込まれそうなものへと。

 

『ふふっ…』

 

ほんと、凄い。G1に出ればこんな子とも何回も戦えるんだ。

 

『こちらこそ、勝つのは私よ……!』

 

そしてレースの時間が近づき、私たちはそれぞれのゲートへと向かう。私のゲートは13番、だから入るのは最後の方。

ベールは2番だからもうゲートに入って行った。

 

そして私の番になり、ゲートへと入って行く。

 

「ブエナビスタ、今日も後方から行くぞ。落ち着いてな」

『了解です。安堂さん』

 

 

『最後に大外シゲルキリガミネがゲートに入りました。……スタートしました』

 

 

よし!落ち着いてスタートできた!

 

 

『18頭ほぼ揃ってスタートしました。まず向こう正面先行争いです。ハナに立ったのはアディアホーンとレディルージュ。しかしショウナンカッサイが先頭を奪います。それに続いてシゲルキリガミネが上がってきます』

 

 

後方から3、4番目辺りについて、チャンスを待つ。ベールの位置は…

 

 

『その内にレディルージュが入り3から4番手の位置についています。あとはルシュクルが追走、そしてコウエイハート。3コーナーに向かっていきます。内はカツヨトワイニング、アディアホーン、ワンカラット、ジェルミナル、半馬身差パドブレ追走して、中団グループにはイナズマアマリリス。第3コーナーのカーブに入り、ダノンベルベール、外からチャームポット、その1馬身差にフキラウソング』

 

 

目の前にいた。あの子も私と同じ差しの脚質なのか…

 

 

『その外にブエナビスタ。800の標識を通過、2馬身差にミクロコスモス、最後方メイショウボナール、こういった展開になっております』

 

 

半分を過ぎて、4コーナーに入る少し前に安堂さんから外に出る指示が出た。理由は恐らく…

 

「外に出るぞ。あのまとまった馬群に呑まれると厄介だ」

『ですね。あれじゃあ抜け出しにくくなりますしね』

 

直線に入るまであの集団がばらけることは無い。後方の私からしたら厄介この上ない状態だ。

 

 

 

『第4コーナーカーブでシゲルキリガミネが上がって行った。そしてルシュクルが上がり先頭に立つか。コウエイハート、ジェルミナル、外からダノンベルベールが来た!』

 

 

(!ベールが動いた!!)

 

 

『ダノンベルベール先頭争いに乱入!このまま先頭に立つことはできるのか!?』

 

 

凄い脚だ。外側にいたとはいえ混雑していたあの馬群から一気に前に出るなんてパワーもスピードも普通の競走馬とは違う。

でもね…

 

『パワーもスピードも私の方が上だ!!』

「行くぞ!ブエナビスタ!!」

 

安堂さんから鞭が入る。同時に私は大外から一気に加速する。

 

 

『ダノンベルーベール先頭か、外からブエナビスタがやって来た!一気に外からブエナビスタがやって来た!ダノンベルベールを交わし先頭に躍り出た!!』

 

 

『なっ!?』

『お先に失礼、ベール』

 

ベールを抜き去り先頭に立つ。脚はまだ残っている。このスピードを維持し続けるには充分なほどに。後はこのままゴールに…

 

『負けるかぁぁぁぁあぁぁあぁぁっっ!!!!』

 

 

『内のダノンベルベールが再び加速!ブエナビスタとの差を縮めて行く!まだ勝負の行方は分からない!!』

 

 

『何っ!?』

「あの馬、まだ力を残していたのか!?」

 

上の安堂さんもベールの再加速に驚きを隠せていない。トップスピードを維持しているけどその差をベールは埋めてくる。気づく頃にはベールはあと半馬身の位置にまで来ていた。

 

『追いついたよ!ブエナ!!』

『でもまだ抜かせないよ、ベール!!』

 

 

『ブエナビスタが僅かにリード!しかしダノンベルベールも負けじと食らいつく!後方からショウナンカッサイとミクロコスモスも来るが追いつけない!残り100を切りブエナビスタ粘る!ダノンベルベール差すか!?』

 

 

完全に私たち二頭の一騎討ち。ベールは私を追い抜こうと少しづつ差を埋めて来てる。同世代でミカド以外でまだこんな凄い子が居たなんて知らなかった。

 

『あと少し…!!』

 

勝利への渇望、闘志、この子は間違いなくこのレースにいる子たちの中でも抜きん出ている。

 

『でもね…』

 

 

 

 

 

『私だって、負けられないんだぁぁぁ!!!!』

 

 

 

『ブエナビスタがダノンベルベールとの差を開いて行く!!凄い脚だ!!強い走りだ!!ブエナビスタ、今ゴールイン!!!!!勝ったのは13番、ブエナビスタだぁぁ!!!ダノンベルベールの猛追いを退け、半馬身差で見事2歳女王の座を手に入れました!!』

 

 

「よくやったな!凄いぞブエナビスタ!!」

『ハア…ハア…ハア…か、勝った……の?』

 

最後はガムシャラになって走ったからちょっと息が…

 

『す、凄いね。ブエナ』

 

息を整えていたらベールがこちらによって来た。向こうもかなり息が上がっている。

 

『そっ、そっちこそ…追いついかれた時はホントビックリしたんだからね…』

『それはこっちのセリフだよ…結果的に追い抜けなかったし…最後の加速何?』

 

お互いに称え合いながら走っていると周りの人の声がなんかどよめいているように感じた。何があったんだろう?

 

 

『タ、タイムはなんと!1分33秒ジャスト!!レコードタイムです!!二年前に更新されたウオッカのタイムをコンマ1秒更新しました!強い馬だ、ブエナビスタ!ダノンベルベールも負けて強しの競馬!来年のクラシックが非常に楽しみです!!』

 

 

会場が一気に盛り上がる。レコード…私がレコードを…

 

「レコード……か…」

 

安堂さんも驚いている。けど表情は嬉しそうだ。

 

『ブエナ、レコードって何?でもスゴいことなんだよね?ならおめでとう!』

 

ベールはレコードについてわからないみたいだけど祝福してくれた。

 

『うん、ありがとう』

 

さて、私はしっかり勝ったよミカド。

次は貴方の番よ。

 

 


 

《その後のおまけ》

 

ブエナ『にしてもベール凄いね、あの末脚』

ベール『えへへ、あの日から凄い頑張ったんだよね』

ブエナ『あの日?』

ベール『二つくらい前のレースで負けてね。その時勝った馬が凄い強かったんだ。最後の直線でバビュン!!って速くなるんだよ。あんな風に走りたくて自分なりに考えたんだよね〜』

ブエナ『へぇ〜、ベールに勝つ相手なんてそうそういなさそうだけど…どんな馬だったの?』

ベール『ええっと…確か、ノゾミミカドって呼ばれてた!』

ブエナ『へぇ、ノゾミ…………えっ』

ベール『黒い馬体で、額に白い流星があって、すっごく強い牡馬だった!カッコよかったんだよ!走る姿も凄い綺麗で……』

ブエナ『へぇ〜そうなんだぁ〜(なんだろう。なんかちょっとムカムカする…)』

ベール『?どうしたのブエナ?』

ブエナ『何でもないよ(取り敢えず帰ったらミカドに蹴りの一つでも入れよう)』

 

 

松戸厩舎

ミカド『なんか悪寒が…』

オーラ『ミカド?どうした?』

 

※蹴りはされなかったが暫くブエナはちょっとだけ機嫌が悪かった。




紹介

ダノンベルベール 2歳
父:アグネスタキオン 母:ミスベルベール

ミカドたちの同期の牝馬。ミカドとは芙蓉Sで対戦し3着。今回の阪神JFではブエナと接戦し2着となった。ミカドに負けてからミカドみたいに強くなろうと決意、結果史実より強化された。
結構天然でいい子。ブエナは友達、ミカドは憧れ。

安堂勝樹(あんどうかつき)48歳
栗東に所属する男性騎手。ブエナの主戦騎手でもある。もともとは地方の騎手であったが中央へ移籍。
馬を動かす技術が上手く、天才と言われた騎手たちにも引けを取らない実力の持ち主。

次回はミカドのターンです。気長にお待ちください!!

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それでは。
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