紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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世界の神様さん、小畑さん、refreshさん、評価ありがとうございます!

今回はミカドが久しぶりに生まれ故郷に帰ります。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものであり実在するものとは関係ありません。


帝の休息/久しぶりの故郷

俺ノゾミミカドは現在、故郷の北山牧場へと向かう馬運車にいる。

なぜかと言うと…

 

 

数日前 松戸厩舎

 

 

「ミカドを放牧ですか…?」

「ああ、スパルタに耐えたブルボンの血が入っているとはいえ、テイオー産駒であるミカドは小さな故障でも命取りになりかね無い。あいつは真面目に調教するし休むときはしっかり休むメリハリがついた馬だが最後のアレがな…」

 

松戸は真司にミカドを暫くの間放牧させることを説明していた。

ミカドは確かに丈夫だが最後の末脚はどうしても脚に負担が掛かる。レースのたびにあの末脚を出し続けるといずれは故障を起こす可能性も否定しきれ無い。

 

「確かにあいつの末脚って普通に考えたらまずありえ無い加速していますよね。検査して出たのは疲労ぐらいでしたし」

「この間のレース後に脚の確認を入念にやって特に問題なし、コズミも出てい無いから丈夫ではあるがここで油断して後々骨折しました、じゃあ笑えねぇよ」

 

「次のレースは一先ず一月は入れない」

「あれ?若駒には行かないんですか?2000ですよ?」

 

『若駒S』は3歳馬のみが出走するOPレース。距離も2000とミカドの中距離適正を知るには合っており、狙いに行けるレースではある。

 

「狙いにはいかない。確かにあの競馬場で走ることになるがそれは今じゃない。それに2000を知るにはあのレースが1番だ」

「あのレース?…まさか…!」

「ああ『弥生賞』だ」

「!!」

 

中山で距離2000のG2『弥生賞』はクラシック三冠の一つ『皐月賞』の前哨戦にあたり、このレースに勝てば皐月賞の優先権を手に入れることができる。

 

「それまでミカドには英気を養ってもらう必要がある」

「はあ、分かりました。松戸さん…テキに従いますよ」

 

 


 

 

ということらしい。にしても約一年ぶりの故郷か…母さんびっくりするだろうな〜…

息子がいきなり無敗でG1取ったことを知ると。

 

ブエナとの勝負に勝ってまた不機嫌になったアイツの機嫌を取るのにまた苦労したけど…

 

そう考えている内に懐かしい匂いがしてきた。そろそろ北山牧場に近づいて来た証拠だ。

 

『早く着かないかな〜♪』

 

ここに来るまでずっと立ちっぱなしだったし途中で磯の香りがしたから多分船に乗って移動したんだろうけど結構酔った。前世じゃそこまで船酔いはしなかった気がするんだけど馬だと酔いやすいのか?まあいっか。

 

母さんや北山さん、卓矢さんたちは元気にしているかな?

 

「あと少しで北山牧場ですね。」

「ああ。結構長旅だったからな。特にフェリーに乗る時は少し覚悟したんだけどな」

「馬って船での移動が苦手な仔が多いらしいですからね、自分は今の所そういう極端に嫌う奴とかには当たったことがないんで分かりにくいですけど。でもミカドの奴、本当に大人しいですね」

「他の馬は長距離移動のストレスで荒れたりする奴もいるけどこいつは本当楽でいいな」

 

運転手のおっちゃんと兄ちゃんの会話をバックミュージックにしながら俺は馬運車に揺らされていた。匂いが強くなっていく内に馬運車が止まる。とうとう目的地にたどり着いたんだ。

 

『着いた?着いたのか!?』

 

懐かしい匂いにつられてつい仔馬の様にはしゃぐ俺を見て運転手さんたちは暖かな目をしながら微笑んでいた。

 

 

『たっだいまぁーっ!!』

『あら?ミカド、帰って来たの?』

『ああ、休みもらったんだ!母さん!俺実はさ!』

 

卓矢さんに引かれて厩舎に入り、俺は母親の馬房の前まで来た。

 

「お〜い、ミカド。母親に会えて嬉しいのは分かるが先ずは馬房に入ってくれ」

『ええ〜。いいじゃないですかここでぇ〜』

「言っとくがお前ここを出る前よりも体がでかくなってんだからな。昔の感覚でいると他の馬に怪我させちまうから落ち着いてな」

『ちぇ〜』

『こらこらミカド。卓矢さんを困らせてはいけませんよ。明日の放牧で多分一緒に出るからそこでゆっくりお話ししましょ?』

『うぃ〜っす…』

 

もう少しここで話したいが他の奴らに迷惑は確かにかけられない。俺は渋々卓矢さんに連れられ自分が前まで使っていた馬房に入った。

 

そして翌日

 

『で、最後の直線もう少しで差しきれられるってところで何とか粘り勝ちしたんだ!すごいだろ!』

『ふふっ、そうね。まさかいきなりG1のタイトルを取るなんて思わなかったわ』

 

俺の今世での母親、名前は『ルイシエル』。北山牧場の繁殖牝馬の一頭でありミホノブルボンの娘でもある。性格は非常に大人しくマイペース。世代は99世代、分かりやすく言えば世紀末覇王が暴れ回る時代です、はい。

とは言え母さんは牝馬だし、戦績も何とかオープン戦に1回だけ勝てただけらしく同世代のことはほとんど知らないらしい。

いやまあそれよりも…

 

『母さんが妊娠していたの全く知らなかったんだけど…』

『誰も知らせていないし、あなたは昨日はしゃいでいたから全然気づいていなかっただけよ』

 

そう。母さんは現在妊娠中で現在10ヶ月。早ければ年明け、遅くても2月には生まれるらしい。ていうか馬の繁殖期は春から夏にかけてだろ?逆算すると少なくても今年の2月にはすでに交配しているはずだ。

これについては後から分かったが、どうやら母さんの発情期が早めに来たらしく、北山さん始め牧場の従業員はこんなに早く来るとは思わずてんやわんや。あっちこっちの種牡馬で種付けできる馬を探して何とか交配できたらしい。

 

『ていうことは俺の弟か妹が生まれるのか。なんか楽しみかも』

『取り敢えずあなたは頑張ってレースで走りなさい。私たちの血を繋げる為にも、あなたが小さい頃から言っていた《最強の競走馬》になる為にもね』

 

昔は精神は人、体は馬ということで酷く悩んでいた時期があった。母さんは自分が知らないような知識を持つ俺を厩務員さんたちと一緒に一生懸命に育ててくれた。普通だったらこんな子供気味悪がって育児放棄するんじゃないかと考えたけどそんなことは一切せずに俺を育ててくれた。

昔一度だけ聞いた。

『何で母さんは俺のことを気味悪がったりしないで育ててくれるの?』と。

そしたら母さんは一度キョトンとした顔をしてから、クスクスと笑い出した。そして…

 

『あなたがどんな存在であろうと、私がお腹を痛めて命懸けで産んだ可愛い子供であることには変わりは無いわ。そんな子供を私が知らない様な知識を持つだけで親である私があなたのことを気味悪がるわけないでしょう』

 

この言葉に俺はガラにもなく大泣きしちまった。いくら成熟した人間の魂が入っているとは言え体はまだ幼い仔馬。俺の精神は体の方に引っ張られていた時期だったから涙が止まらなくなっていた。

 

優しく、おおおらかで、俺という特異な存在を否定せずに受け入れてくれた母さんを俺は好きになった。

まあ、暇あれば母さんの近くにいたから厩務員たちから『マザコン』呼ばわりされるんだけどな…

 

『勿論、分かっているよ。ライバルは多いけどこっから先のレースも俺は勝ち続けるよ』

『そう。なら、あなたのテキさんが言っていた他馬のマークで異常に掛かるその悪癖を直しなさい』

『あれっ何でそれ知ってんのっ!?』

『北山さんがあなたの話を四角い箱で話していたのを聞いたのよ。レースで掛かるのは仕方ないわ。でも今のところ全てのレースで掛かっているそうじゃない。この放牧中、引退した方々に聞いて回って協力してもらいなさい。勿論私もできる範囲で協力するから、

いいわね?』

 

『………はい』

 

そして我が母は、母にとっての父、俺にとっての祖父並のスパルタ思考の調教には厳しい馬です。




紹介

名前:ルイシエル ブルボン王朝→ルイ王朝 シエル(仏で空)
年齢:12歳(旧13歳)
生年月日:1996年5月2日
性別:牝
毛色:鹿毛
血統:父・ミホノブルボン 母・レディシエル(架空馬)母父・リアルシャダイ
成績:29戦6勝 2着1回 3着0回
距離:短B マイルA 中C 長E
脚質:逃げA 先行B 差しG 追込みG

北山牧場の繁殖牝馬の一頭。ミカドの母であり、良き理解者。現役時代は黙々と調教を行う機械のような馬だったが他よりも加速力があまり出ず活躍することは少なかった。引退後はミカドの他に6頭ほどの馬を輩出したがどの馬も重賞にはいけなかった。
普段はおおらかでとても優しいが調教の話になるとスイッチが入り現役時代と同じ感じになる。

名前の由来はルイ王朝と空です。空にした理由は名前を考えている時に窓を見たら青空が広がっていたからです。
この血統は頑張って考えました。どこかおかしい点が有ればどんどん言ってください。

コメントや評価、お気に入り登をよろしくお願いします。それでは。
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