マークを苦手とするミカドに対して母のルイシエルが一肌脱ぎます。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものであり実在するものとは関係ありません。
『ミカドォォ!!俺らを気にするな!!お前が気にするのは自分のスタミナとゴールだけだ!!他馬のことは確認くらいで見る程度にしろ!!』
『サー・イエッサー!!』
『ミカド君。集中力が切れるということは鞍上の指示も上手く伝わらなくなるということだ。彼らと僕らは一蓮托生。パートナーの意思を無視しても君はいいと思うのかい?』
『いいえ!思っていません!!』
『ならば行動に移すんだ!君の鞍上はこの状態ならどう動くかを!言葉が伝わらない僕らは彼らに行動で自分の意思を伝えるんだ!!』
『サー・イエッサー!!』
『ミカド、あなたはコーナリングと末脚が特に優れているわ。後はその気性の問題よ。引退した私たち老いぼれがあなたのような若駒を鍛えてあげているのだからしっかりやりなさい!!』
『イエスマム!!』
「……何だこの状況…」by卓矢
俺ノゾミミカドは現在。故郷の北山牧場で母を筆頭に引退してまだ十分動ける馬たちにしごかれているのである。
俺はあまり無理しないほうがと言ったのだが久しぶりの併せ馬や調教の真似事でスイッチが入り、熱血指導に発展したのだ。
『ハァハァ…クッソ…やっぱり現役みたいにはいかないな…』
『仕方ない……ですよ。僕らは……引退してもう…2年はたっています。フゥ、7歳馬で久しぶりにここまで走れるだけ充分ですよ』
『ハァ…ハァ、レースから引退して2年経っているのに何で現役競走馬について来れるんですか?』
俺の特訓に付き合ってくれたこの二頭の引退馬。口調が荒い栗毛が『ノゾミフェニックス』、落ち着いている芦毛が『ノゾミライン』。どちらも俺の馬主であるノゾムさんが所有している馬でG3やG2で勝ったことがある実力馬だ。
『分かっていねぇなぁミカド。たとえ引退したとしても鍛えることをやめる理由にはならない!後輩共に俺の強さを見せつけるには筋肉を衰えさせねぇことが重要なんだよっ!!!』
アッーーハッハッハッ、豪快に笑うフェニックス先輩を居ない存在かの様に無視するライン先輩は俺に話す。
『いくら引退したとはいえ、僕らは走ることが生き甲斐の生き物です。僕はより長く走っていたいと考えて自分で筋力や体力が落ちない程度に鍛えてはいるんです』
『な、なるほど?』
『まあ、僕らみたいな馬は稀だと思いますよ。種牡馬は長く生きて子孫を残しますから命を縮める激しい運動はあまりしない方がいいですからね』
『おいおい、俺を置いて話を進めようとするなよ!とにかくミカド!お前は俺らの事は気にすんな!同じ『ノゾミ』の冠名を持つもの同士だ!遠慮なく特訓やら相談やらに乗ってくれ!』
『フェニックス、少しは声を抑えて下さい。隣の放牧地にはシエルさんを始め、命を抱えた牝馬の方々やまだ幼い当歳馬が居るんですよ。君のその声量で今年も何頭の馬が泣いたか……』
『何言ってんだよ。どちらにしろあいつらは厳しい世界に身を投じる奴等になるんだ。俺の声ごときでビビっている場合じゃねぇだろ』
『ですから段階があるんですよ。もしも心に傷がついてレースで実力を発揮することが出来なければどうするんですか!』
『大丈夫だって。どちらにせよ避けては通れないんだからよ。今の内に耐性がついていた方がいいだろ』
二頭とも性格は対極的だが後輩の事を思って行動してくれるお節介な馬ということが今の会話からも窺える。フェニックス先輩のやり方はちょっとアレだけど…
『ミカド』
『あ、母さん』
道を挟んで隣の放牧地にいる母さんが俺に話かける。因みに俺や先輩がいる放牧地は牡馬を中心に放牧され、母さんがいる放牧地は牝馬や当歳馬を中心に放牧されている。勿論、安全面を配慮しての配置だ。
『見たところ少しづつマークを気にしなくなったわね』
『へへっ。そう?』
『ええ。でもまだ不安が残るレベルだわ。あなたは前で競馬をするタイプだからね。どうしても注目されてしまうからまだまだよ』
『うっ…はい…』
『あねさん。いっその事、走り方を変えるのはどうだい?こいつの末脚なら後方からでも充分通用する気がするが』
『フェニックスと同じ意見なのは少々腹立ちますが僕もそう思います。ミカド君のこの気質なら後方からの方が掛かる事も少なくなると思えますが…』
フェニックス先輩とライン先輩が俺の脚質変更を母さんに唱えてきた。確かに前方から攻める俺にとってこのマークで掛かる癖は死活問題。今は勝っているから大丈夫だけどクラシックや古馬に行った時に確実にヤバくなる。けどね…
『勿論それは最初に考えたわ。でもそれだとこの子の強みの一つが潰されてしまうのよ』
『強み?加速力とスピード以外なんかあったか?』
『………ああなるほど』
『おっ、ライン。分かったのか?』
『ええ。ミカド君の強みの一つそれは…』
『『『スタートダッシュの良さです(よ)(なんです)』』』
ライン先輩、母さん、俺の声が重なる。そう。俺の強みの中はスタートダッシュの良さだ。俺が出た3レースの内、逃げと大逃げを打った新馬戦と朝日杯で、俺は抜群のスタートを完璧に決めている、らしい。(テキ曰く)
『先程の併せでスタートした時にミカド君は合図を出した僕よりも抜群のスタートをしました。この反射神経は中々のものですよ』
『スタートが良すぎるせいで後ろに下がることが出来にくいのよ。勿論練習すれば差しとかのスタートも出来るようになるだろうけど、ここでやるにはリスクが高いわ。その辺はこの子の陣営に任せればいいだろうしね』
『ほーんなる程』
『あなた本当に分かっていますか?』
このスタートダッシュで俺は結果的に先行・逃げ策が固定しかけている。テキたちも俺の悪癖を直すべく差しに挑戦しようとしているらしい。多分向こうに帰ったらやると思う。
『まあ、その辺は俺たちじゃなくてテキたちが考えなくちゃいけないものですし俺たちは俺たちの出来る事をしましょうよ』
脚質を変える判断をするのは人間サイドが考える事だし俺たちがここで話していてもあまり意味がない。というか先輩たちや母さんはその辺は俺より分かっているだろうし。
『そうだな…よっし!特訓再開だ!今度は俺が前にいるからお前が俺をマークしてみろ自分でやってみた方がわかる事もあるだろう』
『フェニックスにしてはいい考えですね。では僕はいつも通り最後方から様子を伺いましょう。追い込み馬の恐ろしさはまだ伝えきれていませんからね』
『うへぇ…ライン先輩ってワンダーに似ているからあの走り苦手なんですけど…』
『その苦手を克服するための特訓ですからね』
『ミカド。疲れたからってサボらないように。分かっているわよね?』
『イエス・マム!!』
『ハハハっ。流石あねさんだ、おっかなねぇぜ!ここの牧場で牝馬たちを纏めるだけはあるぜ!!その昔、この牧場の『鬼の
『フェニックス。大事なモノを捥がれたくなかったら今すぐ向こうで準備してきなさい。はい3、2、1…』
『スンマセン今すぐ行きます!!!』
紹介
名前:ノゾミフェニックス
年齢:7歳
生年月日:2001年5月16日
性別:牡
毛色:栗毛
血統:父・サンデーサイレンス 母・ヒノカグラ(架空馬)母父・ノーザンテースト
成績:23戦9勝 2着5回 3着2回
距離:短G マイルG 中B 長A
脚質:逃げC 先行A 差しD 追込みG
『ノゾミ』の冠名を持つ種牡馬。気性が荒く、前めの競馬を好んでいたがその高すぎる闘争本能が裏目に出てスタミナを切らす事は数え切れない。しかしハマれば強く、G3でG1馬を倒した事もある。加速力は高くはないがトップスピードは速く、そのスピードに乗るために長距離を多く走っていた。ノゾミラインは幼なじみで出走したレースでは8戦4勝4敗という結果になり今でも決着を付けようと何かと張り合っている。性格は豪快で後輩には自分の武勇伝を良く聞かせる兄貴分。ただし声がデカくて仔馬たちを泣かせては牝馬たちに怒られる。
名前:ノゾミライン
年齢:7歳
生年月日:2001年6月3日
性別:牡
毛色:芦毛
血統:父・オグリキャップ 母・ヒカリコノハ(架空馬)母父・モガミ
成績:20戦8勝 2着12回 3着0回
距離:短B マイルB 中A 長B
脚質:逃げG 先行C 差しA 追込みA
『ノゾミ』の冠名を持つ種牡馬。大人しい気性で騎手の命令をよく聞く馬であったがどの距離も卒なくこなせるため、様々なレースに出走するも2着止まりが多い器用貧乏。成績から応援したくなる馬になり結構根強いファンが多かった。後方から気を伺い最終局面で一気に追い抜く戦法を良くとっていた。これは父の柔軟な体を受け継いでいたことで加速力がついたモノである。ノゾミフェニックスとは幼なじみでライバル視しており、現在でも張り合っている。性格は冷静沈着なタイプで論理で戦う頭脳派……だけど根性論も意外と多い。
何気にシンザンの記録を超えているある意味化け物。
この2頭は今後ももしかしたらちょくちょく登場するかもしれません。
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