紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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フリュードさん、Tomネッコさん、御馬原遠矢さん、Gomer Pyleさん、評価ありがとうございます!

今回は前回に続き日常編です。

次回からまたトレセン編に行きます。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものであり実在するものとは関係ありません。


帝の気遣い/曇りからの晴れ

年が明けて、俺ノゾミミカドは故郷の北山牧場でのんびりしているんだけど…

 

「はあ〜……」

 

新年早々あまり調子が良くない人が目の前にいます。

 

「北山さ〜ん。あけましておめでとうございま〜す」

「おう、卓矢。おめでとう……はあ〜…」

「ちょちょ、どうしたんですか新年早々。あっ。もしかして娘さんのことですか?」

「……ああ」

 

この牧場の主、北山さんには現在15歳の娘さんがいる。今の時期だと高校受験の真っ最中かな?

 

「年末年始くらいは勉強休んだらどうだって言ったんだけど、そんな暇はない!って言われてな」

「この時期は最後の追込みですから仕方ないですよ。俺もそうでしたし」

『まあ、自分の将来を決める一つの分岐点だからね。ピリピリしちゃいますよ』

「けどな、ここ最近は部屋から殆ど出てこないんだよ。気分転換ぐらいしなきゃ息が詰まっちまうよ。健康にも悪いしな。それ言ったらまた部屋に籠っちまって…」

『(オブラートに包んでいっているけど)』

(北山さんは絶対…)

(『(ただただ頭に詰め込んで、息抜きもしないでやっていたら受かるもんもうからねぇぞ。ぐらいのこと言ったんだろうな)』)

 

少なくとも、受験生の前で言ってはいけない禁句を本人の前で口に出したな。俺と卓矢さんはそう考えた。

 

「卓矢、お前なんか思いつかねえか?勉強も疎かにせず、気分転換になること」

「そうですねぇ……そういえば娘さんって志望校は?」

「農業高校だよ。あいつは獣医になりたいって言っていたからな。牧場自体は雄介が継ぐから問題ないが」

 

因みに『雄介』は北山さんの息子さんで今は農業大学に通っているらしい。俺も仔馬の時に何回か北山兄妹には会ったことがある。

 

「それならここにこさせればいいんじゃないですか?」

「ここに来ても時間の無駄だろう」

「いや、ここだったら馬だけしかいませんけど家畜について学び直すには丁度いいんじゃないですか?」

「・・・・・・」

 

確かに良いアイディアだ。アニマルセラピー的な奴でリラックスできると思うし、色々役に立つ情報も入るんじゃないか?

 

「どうでしょうか?」

「……明日それとなく誘ってみるわ」

 

そう言って北山さんはその場を離れて行った。

 

「まあ、あの年頃の女の子だと難しいからなぁ〜」

『俺たちには娘も年が離れた妹もいませんからそこらへん分からないですよね〜』

「結局は本人達が話し合って、解決しなくちゃ行けないからな」

『ですね。俺たちもできる限りのサポートをしましょう』

「よし、俺もできることはやるか」

 

あれ?なんか言葉通じてね?

 

 


 

 

次の日

 

「…お久しぶりです。卓矢さん」

「久しぶり、(みなと)ちゃん」

 

北山さんが奥さんと雄介君の力を借りて、娘さんの湊ちゃんを連れ出すことに成功した。湊ちゃんは小柄で身長は大体150cmくらいかな?黒くて長い髪を今日は後ろでヘアゴムで纏めている。

 

「お兄ちゃんとお母さんにも言われて…それで折角だから…」

「うんうん受験生は大変だよね。俺もこの時期は詰め込んでいたな〜。でも無理はダメだからね。俺も緊張のあまり中学の期末試験でテスト中に腹痛に襲われてトイレに籠もって一教科半分くらい受けられなかったことあるからね」

※作者の実話です。

 

『そうそう。俺らもしっかり休まないとベストコンディションでレースに望めないからね』

 

体調管理は大事だよ〜。てか、北山さんどこだ?姿が見えないし匂いもしない。足音も聞こえないしこの場に居ないのか?

 

「あれ?牧場長は?」

「今朝、私が使う用にお母さんが昔使っていたつなぎを段ボールから取り出そうとして持ち上げた時にぎっくり腰起こして…」

「『北山さぁぁぁああんんんんんん!!!!????」』

 

あの人なにやってんだ!?湊ちゃんとの仲直りのためにもこの案出したのに肝心の本人がぎっくり腰でダウン!?

 

「それで今日は行けないから後は任せたって…お兄ちゃんも午後から手伝いに来るって」

「そ、そう…」

『あの人、新年早々踏んだり蹴ったりだな…』

 

今度神棚にでも祈っておこうかな…

 

「あの…それでさっきから後ろに居る馬は…何ですか?」

『馬?(キョロキョロ)あっ俺か』

「あれ?湊ちゃんもコイツには昔会っているはずだけど。まあ、2年は経っているし、分からなくても仕方ないか」

 

ちょっとショックな俺。昔はよく会っていたと思うんだけど…

 

「コイツはミカドだよ。覚えていない?シエルの子供だよ」

「シエルの?……あっ…!」

『思い出した?』

「よくマザコンって呼ばれていた甘えん坊の?」

『そっちの方向で思い出すの!?』

「そうそうソイツ、放牧中もシエルの近くに今もよく行くよ」

『そこ新しい情報教えないで!母さんの近くに居るのは否定しないけどそれ特訓のためだから!』

「ふふっ、今でも甘えん坊なんだ…」

 

あ〜、湊ちゃんが元気になるなら甘えん坊で良いです。ヤケクソで頭スリスリしてやる。おりゃ!

 

「きゃっ!?……えへへ、いい子いい子」

「どうしたミカド?露骨に甘えt『あ"あ"ぁ…!?』……なんでもないです…」

 

卓矢さんが余計なこと言わないように先に牽制。湊ちゃんの手はゆっくり優しく俺の頭を撫でる。この至近距離だと顔がよく見える。確かに顔色は良いとはいえないな。今日くらいはリラックスしてほしいな。

 

「それじゃあ…湊ちゃん。折角だからミカドを放牧地に出そうか。ここまで懐いているなら多分問題ないだろうし」

「えっ!?だ、大丈夫何ですか?私なんかにやらせて…?」

「何回もやっているし裏掘り*1や無口*2の取り付けは出来るだろう?それだけ手伝ってくれるかな?」

「わ、分かりました…」

 

戸惑いながらも作業を始めた湊ちゃん。少し覚束ない感じだったけど割とテキパキと作業を進めて行き、直ぐに俺を放牧出来る状態にまでした。

 

「あ、あの…終わりました…」

「もう終わったの!?早いなぁ。じゃあミカドを放牧地に移してもらえるかな?場所は第二放牧地ね」

「は、はい。えっとじゃあミカド、ウォーク…」

『は〜いっと』

 

 


 

放牧地

 

『なるほど。だから彼女は暗い顔をしているのですね』

『はい。さっきよりは良くなっていますけど…』

『何をそんなに悩んでんだが…そんなに悩むならほっぽり出しちまえば良いのによ』

『あなたみたいな馬鹿はそれで良いでしょうね』

『頭でっかちにも分かんねぇだろ』

『フェニックス、少し向こうでお話ししましょうか?』

『おうこっちも話死合いしたいと思っていたんだが』

『俺彼女の近くに居るんで終わったらどっちかが呼んで下さいね』

 

そそくさと二頭から離れた俺は後ろから聞こえる地響きをスルーしながら湊ちゃんに近づく。湊ちゃんは母さんの顔を撫でていた。

 

(うおお…すげぇ絵になるツーショット…)

 

美人さんの湊ちゃんにこっちも美人顔の母さんというこの状況。後ろの地響きがなければ映画のワンシーンとかにも使えんじゃね?

 

俺が2人(一人と一頭)を見ていたら湊ちゃんが俺に気づいた。

 

「あれ?ミカドもシエルに会いにきたの?」

『ミカド、あなたの後ろに見えるのは何?』

『いつものアレです』

『分かったわ』

 

ナチュラルに先輩方の地獄行きが決まったが、湊ちゃんの側に俺は寄る。

 

「ミカド、シエル。話、聞いてくれる?」

 

湊ちゃんは俺たちに話始めた。志望校の試験が近づくに連れて焦りが日に日に大きくなって来たこと。成績は何とか志望校の基準を満たしたけど不安なこと。父親が一昨日自分に言った言葉のようにただ詰め込んでいるだけじゃダメなこと。

 

「分かっているんだけどね。ちゃんと休まなきゃ行けないってことも。でも不安なんだよ、みんなも勉強しているし今もこんなことしないで勉強しなきゃいけないのに。でも家族は今日ぐらい勉強から離れてみたらって言うからさ。私どうしたら良いんだろうね』

 

俺たちは馬だ。人に言葉を伝えることは出来ない。でも行動で何かを伝えることができる。だから俺がすることは…

 

『湊ちゃん!』

 

彼女の心を俺なりの方法で休ませることだ。

 

「えっ?きゃっ!?」

 

再び頭をスリスリさせる。この年頃は、自分の弱さを見せるのはかっこ悪いこと、自分で解決しなきゃダメだと思い込む。もちろん自分で解決できるんだったらそれはそれで良い。でも誰かに相談することで気持ちがいくらか楽になる。それが人だろうが馬だろうが関係ない。

 

『ちょっとぐらい休んでも良いんだよ。ずっと頑張っっていたら体と心がいつか悲鳴をあげる。君になんか文句言う奴がいたら俺がそいつらを蹴り飛ばしてあげるよ』

 

「ミカド、ちょくすぐったい…えっ!?シエル!?」

 

『ミカドの言うとおりあなたは昔からよく頑張っていますから、休むことにも頑張りなさい』

 

母さんも湊ちゃんに頭をすり寄せる

 

「ちょ、ふふ、もうどうしたのよ?」

 

湊ちゃんは困り顔になりながらもその表情はさっきよりは明るくなっていたと俺は思う。

 

 

 

あの後、兄の雄介君が参戦し、暴走した先輩方は母さんに粛清され、湊ちゃんは始めた時よりは元気になっていた。

 

「卓矢さん、今日はありがとうございました」

「いやいやこっちも助かったよ。雄介君も悪いね」

「全然大丈夫ですよ。久しぶりにここに来れて大分気分転換になりましたし」

「私も…ミカド達と触れ合えて少し気分が晴れた気がします。ミカドたちに話しかけている内にちょっとだけ嫌なものがなくなった気がして…」

「ソイツは良かったよ。二人とも北山牧場長にお大事にと少しは休んでくれって言っといて。あの人すぐに無理するから」

「はい、分かりました。しっかり卓矢さんが言っていたって言いますね」

「ちょ、俺が言ったって言ったら戻って来た時に色々言われそうで怖いんだけど…」

「ふふ、冗談ですよ」

 

いやぁ〜元気になって良かった良かった。アニマルセラピー万々歳だな。

 

「ミカドも話聞いてくれてありがとうね」

『どういたしまして』

 

何にせよ、頑張ってね湊ちゃん。俺も頑張るからさ。

 

「うん頑張るね」

 

………あれ?何で何も言っていないのに反応したの?

*1
蹄の裏に付いた土などを取る作業

*2
手綱とハミが付いていない頭絡




人物紹介

北山湊 15歳
北山牧場長の娘。美人さんでもの静かな性格。幼い頃から馬たちと過ごしていたことから将来はそれに関わる獣医になりたいと考えている。引っ込み思案だが動物の気持ちを察することに長けている。

北山雄介 19歳
湊の兄で北海道の畜産系の大学に進学。乗馬経験があり、たまに引退馬たちに跨って走っている。大学では乗馬サークルに所属している。人当たりが良く爽やかで交友関係が広い。家族思い。

アンケートをとります。
ノゾミ系の他の馬が気になるという声があったのでその産駒をアンケートでとります。
他にもこの馬がいいんじゃない?という方がいたらコメントで教えてください。
注意としては2008年までに既に産駒を出している馬限定でお願いします。
このアンケートは年末まで実施します。
他にも産駒を思いついた方がいればコメントなどで教えてください。

評価やコメント、お気に入り登録を是非。それでは。
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