紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

24 / 92
謎の通行人Bさん、評価ありがとうございます!

遅くなりましたが皆さん新年あけましておめでとうございます。
本年も今作をよろしくお願いします。

皆さんは有馬記念はどうでしたか?作者は単勝複勝はあてましたがそれ以外を全て外しました…(涙)

それと、以前行なったアンケートで、他の冠名ノゾミの馬はどの馬の産駒がいいかとやった結果、

(127) ナイスネイチャ
(82) キングヘイロー
(71) セイウンスカイ
(66) アグネスタキオン
(27) フジキセキ
(16) メジロライアン
(87) ナリタブライアン
(19) ウイニングチケット

ナイスネイチャがぶっち切りの一番人気で一着とりました…
ということでナイスネイチャの産駒を考えます。もしかしたらまたアンケートを取るかもしれませんので、その時はまた参加して下さい。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものであり実在するものとは関係ありません。


帝の挑戦/クラシックの前走 後編 弥生賞(G2)

俺たちの前に現れた一頭の鹿毛の競走馬。しっかりとしたトモに加え、身体全体も満遍なく鍛え抜かれていることが分かる。

 

『セイウンワンダー、こいつがそうか?』

『ああ、彼こそがこのレースで君と僕を含め三強と言われている最後の一頭…ロジユニヴァースだ』

 

ロジユニヴァース。

父には二冠馬『ネオユニヴァース』を持つこいつは俺の前世ではダービーを取った馬だ。弥生賞でもこいつは出走していて見事に勝っている。

 

『・・・・』

 

アイツはじっと俺たちのことを見ている。奴から放たれている圧は半端ないぐらいすごい。後ろにいるアミーゴが既に産まれたばかりの仔鹿みたいになっている。

 

『…よう。俺はノゾミミカド。後ろにいるのはキタサンアミーゴで横にいるのはセイウンワンダーだ。今日はよろしく頼むぜ、ロジユニヴァース』

『…紹介にあったセイウンワンダーだ。こちらもよろしく』

『……ロジユニヴァース……よろしく……』

 

ロジユニヴァースは俺たちにそういうと続けて…

 

『今日は…負けないから……よろしく』

 

と言い、自分のゲートへと歩いていった。

 

 


 

 

福長雄一side

 

 

ミカドと俺が返し馬を終えて、ゲート前で待っていた時に石田さんのセイウンワンダーがこちらに近づいて来た。最初はミカドに何かちょっかいにでもしに来たと思ったが、まるで会話をしている様に二頭は見つめ合っていた。

 

「石田さん、コイツら何話してんですかね」

「さあな。前のレースで接戦した馬同士、何かお互い感じるものがあるんだろうな」

 

レース前だというのに少し砕けたこの空間。この空気は別に嫌いではないがレース直前までこの空気にしておくわけには行かない。そろそろ切り替えなくてはと思った矢先、俺と石田さん、そしてミカドたちも、自分たちに近づいてくる何かを感じ取った。

その方向を見るとそこには一頭の鹿毛の馬、そしてその馬に跨がるベテランジョッキーが俺たちの前に現れた。

 

 

『8枠10番、ロジユニヴァース。二番人気ではありますが一番人気のノゾミミカドとオッズを分けての2.8。前走のラジオNIKKEI杯2歳Sにて、後方に四馬身の差を着けて圧勝を飾りました。馬体重は4kg減り、500kgとなりました。鞍上は前走から変わらず横谷典洋(よこやのりひろ)です』

 

 

横谷典洋。美穂が誇るベテランジョッキー。通算1500勝以上、重賞100勝もしており、自分が初めてダービーを挑戦した1998年には『セイウンスカイ』でクラシック二冠を成し遂げた人物だ。因みに石田さんが一番尊敬している騎手がこの人でもある。

 

「やあ、雄一、康成。今日はよろしく」

「横谷さん…よろしくお願いします」

「こっちもよろしくお願いします」

「なんかコイツがここに来たがっていてね。多分注目の二頭が気になったんじゃないかな」

 

ミカドとセイウンワンダーはロジユニヴァースのことを凝視しており、向こうもこちらを見ている。数秒程見つめ合っていた三頭だったがロジユニヴァースが最初に視線を逸らし、それに気付いた横谷さんが移動を始めた。

 

「もういいのかい?それじゃあ二人とも、また後で」

「はい、それでは。雄一今日は勝つからな」

「自分も負けませんよ」

 

横谷さんに続き、石田さん、そして他の騎手たちもゲート前で待機をし始める。

 

「今日のレースはお前にとって未知の世界だ。焦らずリラックスしていくぞ、ミカド」

『ブルルっ!』

 

俺がミカドの首元を軽く叩きながらそう言うと、ミカドは、任せろと言わんばかりに鳴いた。どうやら相棒は既に準備万端らしい。

そして順番に各々のゲートに入り、俺とミカドの挑戦である戦いが…

 

 

ガゴンッ!

 

 

始まった。

 

 

『スタートしました。10頭素晴らしいスタートを決めました。誰がハナを取るか。2番ミッキーペトラが行こうとしています。それに8番レオウィサードが続きますが…あっと!?10番2番人気ロジユニヴァースが逃げる!?横谷典洋逃げを行っています!観客からも驚きの声があがります』

 

 

(何!?)

 

しかし始まったと同時に警戒対象の一頭の行動により、この弥生賞は早くも波乱な展開を迎えた。

 

 


 

 

観客席

沢渡翔一side

 

 

『スタートしました。10頭素晴らしいスタートを決めました。誰がハナを取るか。2番ミッキーペトラが行こうとしています。それに8番レオウィサードが続きますが…あっと!?10番2番人気ロジユニヴァースが逃げる!?横谷典洋逃げを行っています!観客からも驚きの声があがります』

 

 

「ロジユニヴァースは過去のレースでは主に中団に潜み最後の直線で抜け出し先頭を奪うと言ういわゆる先行や差しと呼ばれる脚質でレースを行なってきた。故に今回のこの一手は誰も予想出来なかった」

「どうした急に」

 

ロジユニヴァース号の逃げに俺を含めた観客たちが驚く中、一真が何かを話だす。

 

「ラジオNIKKEI杯の逃げ馬に付いたことを除き、ロジユニヴァースは自らが序盤に前めにいくことは今まではなかった。だからこそ今回の急な脚質の変更は他の陣営に衝撃を与えた。他陣営はいつも通りの作戦で来ると思っていたからな」

「そうか!相手がロジユニヴァース対策で建ててきた作戦が今回の逃げで全て水の泡と化したのか!」

「ああ。脚質の変更で相手に動揺を誘い、焦らせ、判断を鈍らせる。流石は『青雲のトリックスター』の鞍上を務めた横谷騎手だ」

 

双眼鏡を構えて騎手たちの顔を見るとやはり向こうも驚いている。事前の情報と違う動きをされればそりゃ焦る。

 

「でもよ、ロジユニヴァースもキツいんじゃねえのか?いきなり走り方と言うか戦法を変えたら体力もいつも以上に使うだろうし、逃げとか大逃げって博打の要素が強いって聞いたことあるぞ」

「確かに一部ではそう言われているが逃げも立派な作戦の一つだ。それに鞍上は横谷騎手だ。逃げに関してはあの人はよく理解していると思う」

「じゃあ今回の弥生賞はロジユニヴァースで決まるのか?」

 

俺がそう言うと一真は俺に不敵な笑みを浮かべた

 

「いや、まだそうと決まってはいない様だ」

 

 


 

 

『アイツ、まさかの逃げ戦法かよ!?』

 

スタートしたと同時に俺は先頭から三、四番手程の位置につこうとした時、ロジユニヴァースは大外から一気に先頭に立った。他の馬たちや騎手も俺たち同様にアイツらの行動に驚いている。

 

 

『意外な展開になっております弥生賞。先頭10番ロジユニヴァース、2馬身離れて2番ミッキーペトラ、その外8番レオウィザード、直ぐ後ろに4番ノゾミミカド、内には5番モエレエキスパートと6番セイウンワンダーがいます。半馬身後ろ1番リアライズナッシュ、9番ケイアイライジンが並びます。1馬身離れて7番ハイローラー、シンガリには3番キタサンアミーゴ。この様な展開になっております』

 

 

先頭から俺の位置までの差はおよそ3、4馬身ほど…マイル戦なら直ぐにでも挽回したい差だけど今回は2000mの中距離。まだ大丈夫なはずだ。

 

「ミカド、落ち着いていけよ…横谷さんの逃げは惑わされやすいからな。今はただじっと堪えるんだ」

『分かっていますよ』

 

 

『向こう正面に入り、いまだ先頭はロジユニヴァース、ミッキーペトラがそれに続きます。その後ろレオウィサード、ノゾミミカドが並びます。セイウンワンダーがモエレエキスパートを交わし現在五番手に上がってまいりました。リアライズナッシュとケイアイライジンはまだ1馬身後ろで気を伺っています。キタサンアミーゴがスピードを上げ、ハイローラーを交わしました。第三コーナーに入り先頭は依然ロジユニヴァースです』

 

 

「ペースは掴めた。ミカドのスタミナはまだ大丈夫。後はタイミングか…」

 

第三コーナーに入って俺の位置は三番手くらい。先頭とは2馬身半ぐらいの差。後ろからは差し追込み勢がスパートをかける為に徐々に上がってきている。ここから第四コーナーまで後少し…雄一さんからの指示はまだ来ない…不味いな、急に焦って来た…!

第四コーナー中盤からスパートをかけても俺の今の位置じゃ最悪囲まれて抜け出せなくなるかもしれない。だからと言ってコーナーに入った序盤にスパートをかけてもスタミナが持つかどうか分からない。

 

『どうしたらいいんだよこれ…』

 

先頭で走るロジユニヴァース、後方から来るセイウンワンダーたち、前に行きたい気持ち、後ろからのプレッシャー、初めての中距離、いつも以上に俺は焦りを抱いていた。

そこに…

 

「ミカド、落ち着け」

 

ポンと、雄一さんは俺の首を叩く。

 

「大丈夫だ。横谷さんの逃げは確かに驚異的だ。だけどな…」

 

雄一さんは不敵に笑う。

 

「俺は一度だけ、あの人の逃げを途中まで抑えたことがある。色々とやらかしたけどな。だから大丈夫だ」

 

落ち着いてゆっくり俺に話しかける。

 

「第四コーナーの終盤まではこのまま三番手を維持する。後ろから来る奴らは気にするな、大半の馬はロジユニヴァースの逃げで動揺した分のスタミナを消費したから少し上がりにくいはずだからな。お前は前だけを見るんだ。お前の持ち味が活かせる最高のタイミングに指示を出す。だから耐えるんだ」

『雄一さん……』

 

この時、俺はライン先輩に言われたことを思い出した。

 

『言葉が伝わらない僕らは彼らに行動で自分の意思を伝えるんだ』

 

俺たち競走馬と騎手は一蓮托生。騎手は俺たちが勝てる様に考え指示を出す。その指示を俺たち競走馬は自分なりの方法で応える。いや、騎手だけじゃない。世話をしてくれる厩務員さんたち、鍛えてくれるテキ、そして応援する人たち全ての人々の期待に応える為に俺たちは走るんだ。

 

『そうだ。俺一人で走っているんじゃない!皆んなと一緒に走っているんだ!』

 

俺一人ならヤバイこの状況。だけど…

 

 

『第四コーナーの中盤に差し掛かり、先頭はロジユニヴァース!ミッキーペトラ猛追!レオウィサードに代わりノゾミミカドが現在三番手!セイウンワンダーは五番手の位置でまだ動かない!いよいよコーナーの終盤に差し掛かり直線に入る!ロジユニヴァースが二番手に半馬身の差をつけて先頭を保ったまま直線に入って来た!後方の馬たちは間に合うか!?』

 

 

先頭が直線に入る。その一瞬。

 

「『ここだっ!!!」』

 

俺と雄一さんは互いの呼吸合わせる。鞭から出される指示に従い、間髪入れずに俺は脚を溜める。コーナーの出口から直線に続くこの道。真正面に遮る物が何もないこの状況(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

『行くぜ、帝のお通りだ!!』

 

 

『ここで来た来たノゾミミカド!!外を周り自慢の末脚で加速して来た!!ミッキーペトラを交わし、先頭のロジユニヴァースを捕らえる!!』

 

 

『よう!追いついたぜロジユニヴァース!!』

『まさか…追い付いてくる馬がいるなんて…!』

 

 

『短い直線に潜む急坂を先頭二頭が登って行く!三番手にミッキーペトラとモエレエキスパート、キタサンアミーゴ、セイウンワンダーも来るが間に合わない!ロジユニヴァース逃げ切れるか!?ノゾミミカド差すか!?まだ分からな……いや、ノゾミミカドだ!!ノゾミミカドが僅かに差した!!』

 

 

『何っ!?クソっ、動けよ!まだ動かせるだろ!』

 

相手は僅かに前に出た俺を追い越そうと必死に脚を動かそうとするがどうやら上手く動かない様だ。最初の逃げで終盤加速するためのスタミナを消費しすぎた様だな。

 

『お先に失礼するぜ!』

 

俺はお構いなしに残りのスタミナを全て使う勢いで再び加速する。

 

 

『ノゾミミカドだ!!ノゾミミカドが今ゴールイン!!!!!最後に見事差し切りました!帝が遥か先にいた宇宙を捕らえたました!!勝ち時計は2:02.6!!上がりは35.2!!素晴らしい走りを見せてくれました!!』

 

 

ゴール盤を駆け抜けた瞬間、俺はゆっくりと減速した。後ろからロジユニヴァースを始め、ゴールを走りぬけた馬たちが次々と現れた。

 

『な、なんとか…2000……を…は、走り…きった…』

『ゼェハァ…み、みかどぉ〜……だ、だい、だいじょう…ぶ……?』

『アミーゴか……スゥーハァ……おう、大丈夫だ。お前は?』

『な、なんとか』

 

アミーゴは既に息絶え絶え、後ろにはセイウンワンダーも居る。こっちもかなりキツそうだ。

 

『セイウンワンダー、大丈夫か?』

『ハァ…ハァ…ハァ…ああ、大丈夫。フウ、ノゾミミカド、今回は後れを取ったが次はこうは行かない。次のレースでは君を差し切って見せるよ』

『おう、こっちも楽しみにしているぜ!』

『ねぇ』

 

不意に後ろから声をかけられ俺たちはその方向に振り向くと先程まで雌雄を削りあっていたロジユニヴァースがそこにいた。

 

『今回……君の勝ち……でも次は僕が勝つ…君、もう一度名前教えて……さっき…ちゃんと聞いてなかった』

 

おい、とツッコミを入れたくなったがそれを飲み込み、俺は奴にもう一度名乗る。

 

『俺はノゾミミカド。人々の望みを背負って走る『最強の帝』になる存在だ』

『ノゾミミカド……覚えたよ…次は勝つ』

 

それだけ言って奴は俺らから離れていった。

 

色々あったが、今回の挑戦である中距離2000mを俺は走り切ることが出来た。先ずは最初の壁を乗り越えたことを喜ぶとしょう。

 

 




人物紹介

沢渡翔一(さわたりしょういち) 24歳
競馬を始めたばかりの初心者に毛が生えたレベルの人物。結構運が良い。
現役馬での推しはノゾミミカド、セイウンワンダー
引退馬ではトウカイテイオー、ディープインパクト

倉持一真(くらもちかずま) 24歳
競馬歴4年の翔一の親友。親の影響でレースだけは高校生から見ていた。運は悪くはないが良くもない。
現役馬での推しはロジユニヴァース、ブエナビスタ
引退馬ではオグリキャップ、スペシャルウィーク

今回はどうだったでしょうか?結構難産でした。ナイスネイチャ産駒の馬もしっかり考えますのdお楽しみに。

評価やコメント、お気に入り登録を是非。それでは。

ナイスネイチャ産駒は引退or現役?

  • 引退
  • 現役
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。