紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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ゴールデンウィークは母の実家に帰郷してました。
皆さんはどう過ごしていましたか?
執筆再開からなるべく間隔を開けないようにしてましたが、ゴールデンウィーク中はサボってました。許してください。

天皇賞春は皆さんどうでしたか?
作者は押し馬のタイトルホルダーが勝ってくれてその日はテンションがぶっ壊れて、妹にドン引きされて割とダメージ入りました。例えるなら太り気味と片頭痛と練習下手とやる気ダウンイベントが同時に来るくらい。

それでは、前回の続きから。
やらかしたアホミカドはどうなるのか…
どうぞ!


帝の優駿/ダービーの舞台へようこそ 後編 日本ダービー(G1)

『一番人気ノゾミミカドが出遅れ、早くも波乱な展開となった日本ダービー。現在の先頭は9番ジョーカプチーノ、2番手には12番リーチザクラウン。その内、1番ロジユニヴァースと14番ゴールデンチケットが追走。5番マッハヴェロシティと10番アントニオバローズがその後ろを行く。先頭が第一コーナーに入り、依然先頭はジョーカプチーノ。16番トライアンフマーチと6番ケイアイライジンは中団内に潜む。2番アプレザンレーヴと17番アイアンルックはその後方、11番セイウンワンダーは外に着きました。1馬身離れて3番フィフスペトル、その内アンライバルト。直ぐ後ろに8番ブレイクランアウト、1馬身離れて7番ナカヤマフェスタ。そして出遅れてしまった15番ノゾミミカドはここにいます。シンガリは13番シェーンヴァルト。こう言った展開になっております』

 

 

「日本ダービーは東京競馬場の左回り、2400mで行われる中距離レース、クラシックで『最も運が良い馬が勝つ』と言われている。距離が長くなる分、スタミナ管理や位置取りが重要になってくるレースだ」

「どうした急に」

「出遅れてしまったノゾミミカドは今現在非常に『運』がない。前めの走りをしてきた彼が差しから追込みの走りができるかどうか…」

「出遅れて勝てた例ってあるのか…?」

「あるにはあるが少ないぞ。しかもダービーなら尚更な…」

 

東京競馬場の観客席にて、一真と翔一はいつも通りミカドのレースを観戦していた。

ミカドが出遅れたことにより、観客席は阿鼻叫喚のところと一発逆転を狙うところ、そしてミカド以外を主軸にしていたものの期待に満ちたところに分かれている。

 

「今回のノゾミミカドはおそらくダメだ。末脚は凄い馬だが、馬群に囲まれて沈んでいくのがオチだ」

「マジかよ…」

 

もはや絶望的な状況。一真たちは諦めかけていた。

 

「君たち、諦めるのはおそらくまだ早い」

 

そんな2人に声をかける人物が1人。後ろを振り返ると20代後半〜30代前半ぐらいの見た目の男が立っていた。(馬券を握り締めながら)

 

「確かに絶望的な状況ではあるが、まだレースは始まったばかりだ。挽回できるチャンスはまだある。ここは見守ろうではないか」

 

男には見えていた。ミカドたちはまだ諦めていないことを…

 

 

 


 

 

ミカドside

 

『なんでこんな時にやらかすんだ俺のアホォォ!!』

「ミカド落ち着け!!前を取るのはもう無理だな…後方から行くしかないか」

 

不良馬場に慣れていなかった事が災いを呼んだのかどうか知らないがゲートでこけるなんて…

今の俺の位置は後方2番目。追込みと言って良い位置にいる。

 

俺は追込みなんてやった事ないし、どうしたら良いんだか…

いいや落ち着け俺。今は焦っても仕方がない。冷静になれ冷静に…

 

『落ち着け、落ち着け俺…』

「ようやく落ち着いたか…いいかミカド、少しずつ前に行くぞ。まだ始まったばかりだからな」

『了解です。雄一さん!』

 

 

『先頭は第二コーナーに入り、未だジョーカプチーノがハナを進みます。その横にはリーチザクラウンが前に行こうとしています』

 

 

先頭を取るタイミングは大きく分けて二つ。一つは少しずつ前に進み第四コーナーあたりで先頭を奪う。もう一つは最後の長い直線で末脚を爆発させて一気に他の奴らをごぼう抜きする事だ。

 

『最初の方が安全だから雄一さんもそれを考えているだろうし…ん?』

 

前の馬がそれほどスピードを出していないのか俺はかなり前の奴に接近していた。

 

『やっべ外にでねぇと…』

 

接触したら大きな事故につながりかねない。俺は外に行こうとする。

 

『あれ?塞がれてる?』

 

外に出るための道には既に他の馬がいて塞がれていた。

 

『これって、もしかして…』

 

内を見る。いるのは馬。

 

後ろは見えないけど音的に直ぐ後ろに一頭いる。

うん。間違いない。

 

『完全包囲網敷かれているじゃねぇかぁぁ!!?』

 

オペラオーみたいになってるよ俺!?

 

「まずいな…囲まれたぞ…」

 

俺の順位は大体10〜13くらいだ。後方で囲まれる状態なんて俺は経験した事がない。

 

『どうする?どうすればいい!?』

 

 

『現在ノゾミミカドは後方馬群の中。ここから前に出ることはできるのか?先頭集団は向こう正面に入ります』

 

 

あ〜先頭の奴らはもうすぐ半分の地点に近づいている〜…

現実逃避したくなってくるわ〜…

 

『いやいや、目を逸らすな俺!!まだ勝負は決まったわけじゃない!なんとか打開策を見つけるんだ!!』

 

世紀末覇王はこれよりも酷い状況でも勝利している。まずは状況の確認だ。

 

俺は現在10〜13位くらいの順位。残りの距離はあと1000mぐらい。周りに抜けだす隙間はない。俺の状態は無理に前に行けないからいつもよりスタミナや脚は残っている。

 

『隙間は最後の直線ぐらいにならないと多分空かない。だからと言ってそこまで待っていたら手遅れになる』

 

てか、それ以前に…

 

『滅茶苦茶イライラする…』

 

直線を待っていたら俺の集中力が先に切れる。

 

『あ〜クッソ…ダメだぁ…考えれば考えるほどイライラが溜まってくる…』

 

「ミカド、落ち着け!もう少しだけ我慢しろ!」

 

雄一さんのなだめる声が聞こえるが正直今の俺はそれに耳を傾ける余裕は少ない。

このイライラを相手にぶつける事が出来ればいいんだけどなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

『ん?待てよもしかしたら…』

 

 

 


 

福長side

 

 

「クソッ…抜け出せるか、これ?」

 

後方でこうも囲まれていたら抜け出すのは容易ではない。

しかもミカドにとって今の状況は非常にまずい。

 

ミカドは集中力が持続しにくい。この状況が長く続くといずれ掛かる。抜けだすチャンスは恐らく最後の長い直線だがそこまでミカドが耐えられるとは思えない。

 

 

『先頭集団が第三コーナーに入り、先頭はジョーカプチーノとリーチザクラウンが争っている。その背後からロジユニヴァースが虎視淡々と前を狙っている』

 

 

(このままだと最後の直線で抜け出せたとしても抜け出すまでのロスを加味すると勝率は3割あれば良い方か…)

 

先頭からかなり離されてしまっているが賭けるしかない。

そう思いミカドにはまだ耐えるように指示を出す。ミカドに変化が現れたのは。

 

「……ミカド?」

 

指示に対してミカドが反応を示さなかった。それどころか前に行こうとスピードを上げようとしている。

 

(まさか、掛かったか!?)

 

起こり得る最悪の状況。それが起きてしまったと感じた。

 

「ミカド!スピードを下げろ!!接触するぞ!!」

 

手綱で必死に止めようとするがミカドは止まらない。前の馬に接触すると思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォウゥッ!!

 

 

だが次の瞬間、ミカドから今まで感じた事がないほどの『圧』が発せられた。

 

『ビヒィ!?』

 

『ブルルっ!?』

 

すると前方に居た馬たちがまるで何かに押し出されたかのように左右に動く。そして目の前には馬一頭が抜け出せるほどの隙間が空いた。

 

「まさか……よし、行くぞミカド!お前の本来の走りを見せてやれ!!」

 

『ブルッ!!!!』

 

一先ず考えるのは後だ。今はこのチャンスを掴むのみ。

 

 


 

 

俺が考えたのはこのイライラをどう発散し活用するか、そしてそれを活かす方法を見つけた。

 

以前併せをしてくれたナチュラル先輩が発したあのプレッシャーだ。

威圧を発する事で、先輩は周りからスタミナを削って垂れさせる戦法をよくとっているらしい。

テキたちが見ていた先輩のレース映像を俺はこっそり見た事がある。

確かに先輩の前にいた馬たちのスピードは最終的にかなり落ちて順位も下から数えた方が早いものになっていた。(同時に先輩も垂れ馬に巻き込まれていた)

 

以前の併せで俺は先輩のプレッシャーを直に受け、それを再現することにした。

 

プレッシャーを与える為に前の奴に少し近づく。初めてやる事だからなるべく近くでやったほうがいいだろう。

 

『おい』

 

『ん?』『なんだ?』

 

こちらに反応した前を走る2頭。俺は鬱憤を晴らすようにこいつらに向けてプレッシャーをかけた。

 

 

『どけ。そこは俺が通る道だ!!』

 

 

『ひっ!?』『うおっ!?』

 

プレッシャーを受けた前2頭は動揺し左右にそれぞれよれる。

 

そして俺の目の前には、この馬群を抜け出す隙間が生まれる。

 

「まさか……よし、行くぞミカド!お前の本来の走りを見せてやれ!!」

『勿論ですよ雄一さん!!』

 

さあ、無敵の帝のお通りだ!!

 

 

『第四コーナーを抜けていよいよ直線に入る!先頭はジョーカプチーノ!しかし、リーチザクラウンとロジユニヴァースが差を縮める!おっとジョーカプチーノ失速!!馬群に沈んで行った!残り200を切った!!先頭はリーチザクラウンか!?ロジユニヴァースか!?いや馬群から一頭凄い勢いで上がってきた!!ノゾミミカドだ!?ノゾミミカドが抜け出してきた!?先頭との差をどんどん縮めていく!!?一体どういうことだ!?凄まじい末脚であっという間に先頭集団に並んだ!!』

 

 

『!やっと来たか!!』

『な、なんだあいつ!?あそこからどうやって!?』

 

『追いついたぞ!!まだまだこっからだ!!』

 

観客も実況も騎手も馬たちも、ここ府中に集まった全ての人々が驚愕しただろう。

 

絶望的な状況から一気に先頭に立つ。そんな逆転劇みたいな展開を…

 

『ダービーを取るのは僕だ!』

『俺だって負けられねえんだ!』

 

だがまだ劇は続いている。並んだだけでは勝てない。ここからこいつらを抜かさないと栄光の称号は獲れない。

 

 

『残り100を切っても先頭の3頭の戦いは続く!!しかしロジユニヴァースとノゾミミカドが前に出る!!リーチザクラウンも追うが差が広がる!!後方からアントニオバローズとナカヤマフェスタが来るがもう追いつけない!!』

 

 

『まだだ!まだ……!』

『後少しぃぃぃ!!!』

 

互いに譲れない意地と意地のぶつかり合い。限界ギリギリの脚で駆ける。

もうかなりキツイ状態だが脚を緩めるつもりはない。

 

『限界がなんぼのもんじゃぁぁぁ!!!』

「ミカド!!行けぇぇぇぇ!!!」

 

俺はギリギリな体に文字通り、雄一さんの鞭を入れてもらい、過去一の末脚を叩き出す!!

 

『ダービーは俺たちのもんだぁぁぁ!!!!!』

 

 

『ノゾミミカドだ!!ノゾミミカドが差し切ってゴールイン!!!!ダービーの称号を手にしたのは、皇帝一族の救世主、『帝』の名を受け継ぐ、希望の帝!ノゾミミカドです!!!祖父たちに続き、無敗でダービーを制しました!!!!』

 

 




はい、なんとかなりました。

作者的には負けてもいいかなとも考えたんですが、「まだ負けるには早い」と思いこうさせました。

次回はダービー直後の話とダービー掲示板回を予定しております。
いつもの掲示板メンバーのリアルタイムの反応をお楽しみに。
因みにみなますポジの2人に話しかけたのは五徹ニキです。

コメントや評価、お気に入り登録を是非。作者はコメントが来るとデジたん並みに喜んで昇天します。
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