ウマ娘しながら書きました。イナリワン欲しいから現在ガチャを回しています。5万課金しても出てこないのって普通、ですかね?
さあ菊花賞もクライマックス。帝は最後の冠を手にすることはできるのか?
『未だ先頭はリーチザクラウン。2番手に3馬身のリードを取り、直線を駆ける』
「京都競馬場には小高い丘のような坂、通称『淀の坂』というものが存在する。あの坂はこの競馬場の魔物だ」
「どうした急に」
「淀の坂は4mもの登り坂を登れば、そう時間をかけずに坂を降る。この坂は競馬界ではゆっくり進むのが定石だ」
「理由は?」
「坂を登るのは勿論だが降る時は重力に引っ張られて登る時よりもスピードが出てしまう。それは即ち、最後に使うはずだった脚も同時に消費してしまうということだ」
観客席では翔一と一真、そして隣にやって来た男性一行が菊花賞を観戦していた。
「ノゾミミカドが勝つにはあの坂で無駄な体力を使わないこと。最後で末脚勝負をするには文字通り乗り越えなくてはいけない。だが体力面で不安が大きい彼にはかなり酷なことだろう。現にあんなに後方にいたら間に合うかも怪しい」
一真は自論ではあるがミカドが勝てる可能性が改めて低いことを翔一に説明する。父であるテイオーは長距離では2500の有馬でしか勝っていない。母父は菊花賞2着のみ。長距離適正の可能性があるのは父父のルドルフだけ。血統から割り出せるミカドの長距離適正はかなり低い。
「いや、それでも結構持っているとは思うよ」
ここで口を開いたのは体格のいい眼鏡の男性だった。
「ノゾミミカド号はさっきからずっと前の馬の後方に陣取っている。あれは多分スリップストリームだ。風の抵抗を減らすことで体力消費を抑えているようだ」
「それに、マークにもなるから前の馬を掛からせることができる。鞍上の福長さんも凄いよ。付いていた馬が掛かってスピードを出し始めたらマークをやめてまた別の馬に付いている。見極めがいいね〜あの人」
今度はショートカットの女性が説明し出す。
「そうなんですか?自分もちゃんとみているつもりなんですがさっぱりで…」
大学生ぐらいの青年は双眼鏡で見ながら、観察する。
「まあ、新人君にはまだ難しいだろう。我々のような競馬にどっぷりハマったようなものたちならある程度見極めることはできるだろう。お勧めはしないけどね」
男性は少し苦笑いしながらレースを観察する。
「今回ミカドの勝率がかなり低い。このままリーチザクラウンがゴールするようなこともあり得るだろう。だが、誰もが盲点だった伏兵が飛んでくるかもしれない。ミカドの大逆転があるかもしれない。ミカドに挑み続けた馬たちの逆襲があるかもしれない。何が起こるか分からないのが競馬だ。だがそれが面白い。どのような結果になったとしても、我々はそれを見守ろうじゃないか」
男性の言葉にその場にいたものが耳を傾けていた。その姿には貫禄らしきものがあった。
「因みに今日はいくら賭けたんですか?」
「ミカドを軸に三連単や三連複を諸々賭けて、トータル30万。負けたら暫く嫁が競馬やらせてくれなくなる」
貫禄どこいった…
向こう正面の直線に入り、俺は後方で様子を伺う。
『大丈夫だ…まだスタミナはある。坂を登る分は多分行ける。最後に末脚が伸びるかどうかが重要だ…』
俺の現在の順位は13位。後半に入ってこの順位は流石に下過ぎるがまだ大丈夫だ。作戦の1番の要は『体力温存』。無駄な体力を使わないようにコーナリングやスリップストリームで可能な限り消費量を減らす。
勝負は淀の坂と最後の直線。
『まだだ…坂に入ってからだ…』
『第3コーナー、京都名物『淀の坂』に先頭集団が入ります』
そしてとうとう先頭の奴らが坂に入る。
「ミカド、準備はいいか?」
『いつでもいけますよ、雄一さん!』
「いけそうだな!よし、行くぞ!」
ここで雄一さんは俺の体に鞭を連続で2回打つ。これは加速の指示ではない。威圧の指示だ。
『さあ、ここからは俺のレースにさせてもらうぜ!!』
ダービーの時と同じように俺は溜まったストレスをプレッシャーに変えて、他馬に威圧を与える。
『うわっ!?』
『な、何!?』
『こ、これは…!?』
俺の周りいた馬たちはプレッシャーに当てられ、僅かにだが動揺する。そして俺は前にいた奴らに向かってさらにプレッシャーを放つ。
『ま、まずいまずい!?』
『ヤバイよヤバイよ!』
『ヒィィィィ!?』
そうすることでこいつらは掛かっちまう。スピードを上げて、俺から離れようとする。けど…
『逃さないぜ!』
まだお前らには俺の風除けになって欲しいからな!
そうしていると、俺もとうとう3コーナーに入った。
『っ…!?こいつは、結構キツいな!』
中山の坂とはまた違ったキツさだ。というかこっちの方が何倍もキツい!!コーナーになっているからスピードを維持しながら走るのも結構難しい。
『そりゃ、タブーを起こしたって言われるな…!』
あの三冠馬は本当にすごい馬だったってのがなんとなく分かった気がする。この坂で加速するとか普通は考えないってホント!
『馬たちが続々と淀の坂を登っていきます。しかし、アドマイヤメジャー、キングバンブー、ポルカマズルカが少し前に行こうとしています。その後方からノゾミミカドが追いかける。更に続いてセイウンワンダーも追いすがる!先頭集団は第4コーナーに入り、一番手との差も埋まって来た!』
坂を登り切り、これまた急な坂道を今度は降る。ここでスピードを出してしまうと、後半使う脚も使ってしまい、最後の直線が伸びなくなる。だからここでは無理にスピードを出さない。登る時と同じスピードで降って行く。
『さて、そろそろ……ですよね』
「そろそろ…だな。ミカド、4コーナーを抜けたらここから抜け出すぞ。そしていつも通りに……だ」
『いつも通りに、ですね』
そう、いつも通り……
『「末脚全開で一気に抜き去るっ!!!!』」
こっからは小手先一切無しの、根性全力の直線勝負じゃあぁぁぁ!!!!
『第4コーナーを抜けて、先頭集団が直線に入る!!リーチザクラウンが粘って未だ先頭!ヤマニンウイスカーとシェーンバルトが突っ込んでくる!!しかし、スリーロールスがやって来た!!前の馬を一気に抜き去って先頭に変わる!そして………!?な、なんと、ノゾミミカドが大外を回って来た!?最後の冠は渡さないと、怪我明けとは思えない脚で加速する!!その内にはセイウンワンダー!!宿敵に一矢報いるため、こちらも末脚を爆発させる!!まだまだ分からない菊花賞!!200mを通過!!先頭はスリーロールス!しかしノゾミミカドが追いすがる!!セイウンワンダーも負けじと喰らいつく!!伏兵の奇襲か、帝の三冠か、青雲の逆襲か!?3頭の勝負はまだ続く!!』
ただただガムシャラに走る。先頭争いは俺ら3頭に絞られた。互いにその存在を認識してはいるが、今俺たちの目に映るものはゴールのみ。
『負けてたまるかぁぁぁぁ!!!!』
耐えて耐えて、最初に先頭に出て来た、伏兵であるスリーロールス。
『君に勝つのは、この僕だぁぁぁ!!!』
俺の圧に耐えて、自分の走りを崩さないで走り続けたワンダー。
『絶対に、絶対に譲らねぇ!!!俺の夢のためにも……俺を信じてくれるみんなのためにも!!!』
様々な工夫や根性、執念でここまで体力を保たせた俺。
全員が絶対に譲られない物を持って、このターフの上で走る。脚が重くても、息が切れそうでも、倒れそうになっても、ゴールするまではその脚を止めない。
『『『一着は……俺(僕)だぁぁぁあああぁぁ!!!!!』』』
『100mを通過したがデットビートは続いている!!最内スリーロールス粘るか!?セイウンワンダー差すか!?大外ノゾミミカドが追い抜くか!?』
正直、脚はもうかなり限界に近かった。地面に着くはずの脚が空回ってんじゃないかと思うくらい感覚がなかった。五感も視力以外は全くと言いほど機能していないと錯覚していた。周りの声も聞こえない。雄一さんの鞭も感じない。芝の匂いも嗅ぎとれない。唯一感じられる視覚も白黒に見える。
さっきはあんなこと言っていたけど、もういいんじゃないか?俺は精一杯頑張った。復帰明けで三着以内に入れるだけでも凄いことだ。
脚を緩めてもいいよな?
そんな馬鹿なこと考えていた。けどここで…
『もの凄い脚だ!もの凄い脚だ!』
聞こえるはずのない『声』が聞こえた。
『シンボリ来たシンボリ来た!!』
いる筈のない冠名の名を叫んでいる。
そして、後ろから猛スピードで俺の前に飛び出して来た馬が一頭。
『あ、あれは…!?』
今とは違う少しダボっとした緑と白の勝負服に身を包んだ騎手。ヘルメットの色は赤。馬のゼッケンに書かれた番号は『5』。
『な、なんだよこれ……』
動揺した。俺は完全に動揺していた。
だって、だって、その馬は
『シンボリが先頭に立ったシンボリが先頭に立った!!』
競馬で唯一絶対が許された皇帝。俺の祖父にあたる馬。
『シンボリルドルフ…!!』
そして、ルドルフ爺ちゃん?は俺の方を向いた。
『・・・・・・』
何も言わない。けどまるで『ここで終わるのか?』と挑発しているように感じた。
『……へへっ』
正直この状況は全くわからないし、ルドルフ爺ちゃんは今もご存命で、これは幽霊じゃないとは思う。多分限界が来ている頭が見せている幻だ。前世で見た映像が映し出されているんだろう。
けどな…
『あんな余裕ブッこいた顔で挑発されちゃあ、へばるわけにはいかねぇよなぁ!!!!!』
感覚を失いかけていた脚に力を入れる。例え幻の存在だとしても、無敗の三冠馬に挑発されたら、やり返すのが礼儀ってもんだ!!
『俺の末脚は、歴代でもトップクラスってところを見せてやるよぉぉぉ!!!』
溜めた力を再び爆発させ、スピードを出す。今までにないくらいのスピードが出て、幻に追いつこうと喰らいつく。ゴール板まであと少し。
『俺が…』
あと50。影を踏む。
『俺が……』
あと30。前脚に届く。
『俺が……!』
あと10。完全に並ぶ。
『俺こそが、最強だぁぁぁぁ!!!!!!』
0。僅かにだが追い抜いた気がした。
『やればできるじゃないか。お前の勝ちだ。無敗の帝よ』
『ノゾミミカドだ!!ノゾミミカドだ!!!祖父の偉業、父と母父の無念を、多くの人々の望みを叶え、今一着でゴールイン!!!!!最後の直線での三つ巴で他二頭を差し切って、半馬身差で勝ちました!!!!勝ち時計は3:01.4!!レコードタイムを記録しました!!3つの冠を携えて、今ここに4年ぶりの無敗三冠馬が誕生しました!!!!』
人物紹介
ダービーの時に来た男
多分勘付いた人もいるともいますがみんな大好き五徹ニキ。今日はコテハンメンバーでわざわざ来た。奥さんも一緒に来ていたが人混みが苦手でレース中はホテルで子供たちと留守番。財布の紐は奥さんに握られ、今回負けたらヤバかった。
体格の良い眼鏡の青年
掲示板ではイッチと呼ばれている男。昔から空手をしていて瓦割りは10枚は現在も余裕でできる。他にも遠泳、パルクール、サバイバルなんでも御座れのスーパーマ○ラ人並の身体能力の持ち主。ただし運が極端で、良い時は宝くじや万馬券を当てるが、悪い時は自転車乗っていたらイヌに追われ、カラスに追われ、野球ボールにあたり、サッカーボールにあたり、ラグビーボールに当たって、自転車ごと坂から落ちて、なんやかんやで木に着地するぐらい不運が連発する。
ショートカットの女性
一文無しネキ。普段はバリバリのキャリアウーマンだが、私生活がだらしなくて全然ダメな汚部屋住人。現在婚活中だが30代のカウントダウンが始まって来ていて焦っている。掲示板で知り合ったイッチと五徹ニキは後に仕事でも関わりが増えている。これでも営業成績社内ベスト10。
大学生くらいの青年
毎度お馴染み新人君。現在大学3年で課題が増えて大変な時期。掲示板の良心であり、各方面からの信頼も厚い。競馬は友達に勧められて初めて、ミカドのことを新馬戦から応援している。上記三名に比べて、賭ける金額は最大でも五千円ぐらいでリターンが他よりも少ない代わりにリスクも低い。安定性はコテハン勢トップクラス。
最後に出て来たルドルフは、簡単に言うとこの競馬場に刻み込まれた『記憶』なようなもの。
そこにミカドの脳が色々変換した結果あんな行動をとっているように見えただけです。
本物では無いですけど偽物でもありません。競馬場が見せたのは本物の走りですから。
次回は人間側視点からのその後です。お楽しみに。