紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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主人公の馬名が決まります。
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この物語はフィクションです。登場する人物・団体名は架空のものであり実在するものとは関係ありません。



帝の名/人々の望みを乗せて

俺がテイオー産駒の馬として転生してから正確にはわからないけどそろそろ一年ぐらいだ。体付きもしっかりして来て、放牧地で他の幼駒とかけっこしたりして鍛えたりしていた。勿論遊びとはいえ手は抜かない。

 

『よっしゃー!俺の勝ち!』

『あ〜また負けた!』

『あとちょっとだったのにぃ〜!』

『速すぎるよぉ〜』

 

こんな感じで俺は幼駒時代を過ごしていた。そんなある日。

 

「悪いな、ショウジ。いつも馬を紹介してくれて。ホント、お前が友達で良かったよ」

「何言ってんだ、お前のおかげでウチの牧場は立て直せたんだ。その借りはまだ返せて無かったからな」

 

おや、キタヤマさんにもう一人、今まで聞いたことがない声が聞こえる。足音は5人?他にもいるのか?

 

「いたいた、おーい!ミカドォ!」

 

はいはいお呼びですね。因みにミカドとは俺のこと。皇帝、帝王ってきたから帝ってことでこう呼ばれている。

 

「よおーしよし、ノゾム。こいつがウチの期待の星だ」

「おお、こいつかぁ。デカイな」

「凄いわね、ほーらツトム、アユム、お馬さんだよ〜」

 

キタヤマさんと一緒にいたのはキタヤマさんと同じくらいの年齢の男の人とその人の奥さんっぽい女の人、あとその人の後ろには大体十歳くらいと五・六歳ぐらいの男の子がいる。

 

「こいつはトウカイテイオー産駒で母父はミホノブルボンだ。この血統なのに気性は大人しい、更に非常に賢い。トモもしっかりしているから結構善戦すると思うぞ」

「テイオーの子供なのか!?それにブルボンの血も入っているのか……良く揃えられたな」

「まあ、色んなことが重なってな。向こうさんもかなり乗り気だったし、少しだけ安く済んだよ」

 

向こうはなんか話しているけど、奥さんと息子さんは俺のことを興味津々で見ている。今までサラブレッドを近くで見たことないのかな?まあ、普通は無いか。

 

「すいません、触っても大丈夫ですか?」

「ん?ああ、本来なら危険なんですがそいつは大人しいですし、人懐っこいので問題ないと思います。ただ気を付けてください。人間とは比べ物にならないパワーがありますから」

 

奥さんはそう言われると柵越しから俺の頭を撫で始めた。

 

「本当に大人しいのね。額の白いラインもかっこいいわね。ツトムとアユムも触る?」

 

「う、うん」

「僕もさわる〜!」

 

息子さん、アユムくんは平気そうだけどツトムくんは如何やら俺のことが気になってはいるけどちょっと怖いみたい。まあ、自分の身長よりも高い動物が上から自分の方を見ているって図は明らかに威圧感あるよな。ならば…

 

俺は柵から首を限界まで出し、ツトムくんの視線に合わせる様に首を下げた。

突然の出来事でビックリしたのかちょっと後ろに下がったツトムくんだったけど、恐る恐る近づき、俺の頭に触れる。アユムくんもそれに続く様に触り出す。あとはこの状態をキープする。ツトムくんが手を離すまで首を極力動かさない。

 

 

side駒沢望

 

今日は昔からの知り合いである北山庄司の牧場に家族でやってきている。理由はもちろん馬を買うためだ。

 

「よう、望。久しぶりだな。少し太ったか?」

「庄司こそ、腹が出てきているぞ?」

 

ハハハと互いに軽口を出しながら笑い、今日来た目的のために移動する。放牧地には既に何頭かの馬がおり、草を食べたりのんびりしている。

 

「今回はどんな馬を紹介してくれるんだ?いい奴がいるって言っていたが…」

「ああ、去年の春に生まれた馬だ。血統も申し分がない」

 

数年前から僕は庄司の牧場から何頭か馬を買っている。事業も安定したことで前から憧れがあった馬主になろうとし、親友の庄司に相談したことがきっかけだ。

 

「前の馬はG1には出られなかったけどいい馬だったよ。元気にしているかい?」

「おう、今は馬房にいるがそろそろ放牧する時間だからその時に会うか?」

「ならせっかくだから会って行こう」

 

今日連れてきた息子の勉と歩も周りにいる馬に興味津々だ。兄の勉は少し怖がっているのか妻の陽菜の後ろに隠れているが弟の歩は逆にあっちこっちとはしゃぎながら馬を見ている。

 

「ママ、見て見て!馬が沢山いるよ!」

「ほら〜、はしゃがない。お馬さんたちがビックリするでしょう。勉、いつまでも隠れていないでちゃんと歩きなさい」

「はい…」

 

性格がまるで正反対の2人だがどちらも動物が好きと言う共通点がある。今度牧場に行くと話したらついて行くと言うのでせっかくだから連れてきたのだ。

 

「悪いな、庄司。いつも馬を紹介してくれて。ホント、お前が友達で良かったよ」

「何言ってんだ、お前のおかげでウチの牧場は立て直せたんだ。その借りはまだ返せて無かったからな」

 

そして歩いているウチにどうやら目的の馬が見つかった様だ。

 

「いたいた、おーい!ミカドォ!」

 

名前を呼ばれたからなのか一頭の馬がこちらに寄ってきた。黒い馬体だが額には白い流星が縦に入っており、左前肢以外には白い毛で覆われている。

 

「よおーしよし、望。こいつがウチの期待の星だ」

「おお、こいつかぁ。デカイな」

「凄いわね。ほーら勉、歩、大きいわね」

 

初めて見る人間が沢山いるせいか馬はこちらを興味津々で見ている。

 

「こいつはトウカイテイオー産駒で母父はミホノブルボンだ。この血統なのに気性は大人しい、更に非常に賢い。トモもしっかりしているから結構善戦すると思うぞ」

「テイオーの子供なのか!?それにブルボンの血も入っているのか……良く揃えられたな」

「まあ、色んなことが重なってな。向こうさんもかなり乗り気だったし、少しだけ安く済んだよ」

 

トウカイテイオーは僕が好きな馬の一頭だ。その血を受け継ぐ馬がここにいるとは…しかも母父は『坂路の申し子』と呼ばれたミホノブルボン。どちらも無敗二冠を成し遂げた名馬だ。

 

「こいつは俺が今まで育ててきた馬の中でも一番走ると思う。他の幼駒たちと一緒に走っているところを何回か見たがどの馬も追いつけなかった」

「それだけでか?いくらなんでも誇張しすぎじゃ…」

「その差は目測でおよそ10馬身だと言ったらどうだ?」

「・・・・はあ?」

 

幼駒同士の遊びの追いかけっこで10馬身?本当か?

 

「最初は遊びだったがだんだんどいつも本気になっていってな、現役馬に比べたらまだ遅いが加速力が他の馬と全く違う」

 

「さらにこっちの言葉を理解しているんじゃないかって言うくらいに賢い。間違いなくこいつは中央で走り切ることができる」

 

庄司の言葉を聞きながら僕はミカドと呼ばれた馬を見た。勉や歩が触りやすくする様に自分の頭を下げて撫でられている。その間は全く動かない。

まだ馬主としては初心者に毛が生えたレベルだが僕はこの時思った。

 

こいつは間違いなく『帝王や皇帝と並ぶ傑物だ』と…

 

 

side out

 

 

「よし、こいつを買うよ。ツトムも気に入っているみたいだし」

 

く、首がそろそろキツい………あっちは話し終わったみたいだけど行かなくていいの?首を少し横に振り、向こうのほうに首を向ける。

 

「うわっ!どうしたの?」

「さあ、あっ、もしかしてあっちの話が終わったよって言っているの?」

 

そうですとも(首を縦にブンブン振る)

 

「本当に賢いのね……ほら、ツトム、アユム行くわよ」

「うん、バイバイ…」

「バイバーイ!」

 

バイバイ〜…さて、俺のご主人になるのはこのノゾムさん?って人なのかな?

 

「ミカド、コイツがお前のことを買う。この時期なら来年の夏にはデビューできるかもな」

「よろしくな、ミカド」

 

ハイハイ、よろしくお願いしますぜ、ご主人。(ペコリ)

 

「おおっ、お辞儀ができるのか…賢いなぁ…」

「こいつは頭が良い、多分そこまで手が掛からないと思うぞ。あと、馬名はどうする?」

 

確かに。俺の今の『ミカド』は人で言うなら幼名。じいちゃんは『ルナ』、オグリキャップは『ハツラツ』って呼ばれていたらしい。俺の馬名、カッコいいのが良いなぁ〜。父さんは『皇帝』から『帝王』っていう感じで名付けられたけど俺もその系統がいいなぁ〜。

 

「大丈夫だ、もう決まっている」

 

えっ、早くね?

 

「随分と早いな、元々決めていたのか?」

「ああ、元々『ノゾミ』の冠名を付けるつもりだったからな。そんで庄司、お前が言っていたこいつの名前を組み合わせてみたらかなりしっくりきてな」

 

ああ、なるほどなるほどそういう事かぁ〜。

 

「こいつの名前は『ノゾミミカド』。皇帝から始まり、帝王が繋ぎ、そして帝がその血を受け継ぎ、多くの望みを背負って走る。そんな名前だ」

「……良い名前じゃねぇか……」

 

ああ、メッチャ気に入った。ノゾミミカド、俺の新たな名前。よぉ〜し、これから頑張って行くぜ!!

 




主人公の馬名は『ノゾミミカド』です。
皇帝・帝王と続くなら『帝』の文字は入れた方がいいと思いこれにしました。ノゾミの部分を考えてから馬主さんの名前を決めました。

人物紹介

北山庄司
48歳。北山牧場を経営する一家の大黒柱だが奥さんと14歳の娘には強気になれない。一時期不景気で経営難になりかけたが親友である望の援助によりなんとか立て直した。無駄にある土地を利用して行き場の無い引退馬の保護区の様なものもやっている。

三山卓矢
24歳。北山牧場で働く厩務員。ミカドにおっさんズの括りに入れられた可哀想な人。顔はそこそこいいが田舎の為出会いは無い。

駒沢望
48歳。株式会社駒沢の経営者でありノゾミミカドの馬主。かなりやり手の経営者だが少し気がよわく奥さんには頭が上がらない。トウカイテイオーの大ファンで有馬記念の時は北山と泣きながら喜んだ。馬券は勝ちよりロマンを優先する買い方。なので大体爆死する(そして奥さんの雷が落ちる)。会社は主に動物福祉などを中心に様々な分野を手掛けている。

駒沢陽菜
39歳。望の妻。気が弱い夫に喝をいれるパワフルな美人奥さん。実は名家のお嬢様だが結構庶民派。

駒沢勉
10歳。望の息子。引っ込み気味だが成績は上位に位置するほど頭がいい。メガネをしていて暗そうな雰囲気だが将来化ける可能性あり。

駒沢歩
7歳。望の息子。元気いっぱいな性格で考えるよりも先に行動するタイプ。みんなを引っ張るリーダー的な感じ。成績は普通レベル。将来間違いなくモテる。

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