ミカドが進む道はいったいどうなるのか?
年末
松戸厩舎
「今年は激動の年だったな…」
「ですね…」
松戸と真司は厩務員室に取り付けられているテレビを見ていた。
「ミカドとブエナがクラシックを総なめ。さらにミカドは骨折からの復帰で不利と言われた菊花賞を無敗で勝って三冠馬になって、有馬で日本初のG1競走同着判定+朝日杯を含めてG1五勝…」
「言葉にすると頭がおかしくなるな…」
あんな馬がいて良いのかと思えるほどミカドの活躍はおかしい。
「来年はどうするんですか?あいつが出れる早いG1はマイルだと安田記念、中距離は宝塚記念、頑張れば長距離の天皇賞・春がありますけど…」
「それは国内に限定すればの話だ。」
「えっ?」
松戸が立ち上がり真司にある書類を見せる。
「これって…ドバイ!?えっ、海外のレースですか!?」
そこに書かれていたのはドバイのレースに関する書類だった。
「あいつは長距離移動にもなんのストレスも感じることなく移動できるタフな馬だ。向こうの環境に合うかはまだ分からないが、狙って見るのもいいはずだ。」
「確かにドバイシーマクラシックならアイツの適正範囲内ですし、行けるとは思いますけど…」
「因みにこれは駒沢さんからの提案だ。」
「はい!?」
駒沢は以前から「海外のレースに自分の馬を出してみたい」と語っていた。しかし、彼の所有してきた代表的な馬は、長距離移動がそもそも向かない気性難のフェニックス、長距離移動は可能だがタイミングが掴めず引退してしまったラインなど上手く噛み合わなかった。
現役で走っているノゾミの馬で海外でも走れる実力を持つのはナチュラルとミカドの二頭のみ。
「ミカドの今の実力なら100%の力を出し切れば悪い結果にはならないはずだ。」
「はあ…てか、なんで俺に?テキたちがもう決めているんなら俺は関係ないでしょ?」
「何いってんだ?お前も行くんだよ、ドバイ。」
「・・・・・・」
この後、厩舎に絶叫が響いた。
「……って話なんだよ…聞いてないよ俺ぇ…」
『いや、俺に言われてもなんもなりませんよ真司さん?』
絶叫が聞こえたと思ったら、少しして真司さんが俺に愚痴ってきてことの顛末を一方的に聞かされた。
「俺の英語力英検三級レベルだぞ?そんな俺に海外ついて来いって、無茶だろぉ…しかも金持ちの国ドバイ」
『まあ、俺の実績的に後々凱旋門賞とかにも出るだろうし、今のうちに慣れておいた方が…』
「やべー…胃が痛い…」
しっかりしてくれよ…あんたしか俺の細かい仕草とかクセとか分かんないだからさ…
あと俺の好みのリンゴ。
『ほれ!』 ドンッ!
「うおっ!?」
俺は真司さんの背中を鼻で押す。
『真司さんなら大丈夫だって。あなたが居たからこそ、俺は三冠馬になれたんだから。』
真司さんが俺の剥離骨折に気付いてくれたおかげで俺は素早く治療ができた。
『俺を走らせる雄一さん。調教をするテキである松戸さん。そして俺を世話してくれる厩務員の真司さん。誰か一人欠けてもダメなんだ。あなただからこそ、俺は安心して過ごすことができるんだ』
「……ミカド、もしかして励ましてくれているのか?」
俺は首を縦に振り頷く。
「…本当に変わった馬だな、お前は。よし、今更何を言ってもアレだし、覚悟を決めるか!ありがとうな話し聞いてくれて。」
そういって真司さんは厩舎から出て行った。その背中はさっきよりも元気に見えた。
『にしてもドバイか…』
海外のレースで俺は結果を出すことができるか血統見ても全然予測できないからな…
『無敗のまま海外に出て勝てばまたすごいことになるよな…よし、いっちょやりますか!』
俺は心の中で覚悟を決めた。無敗の三冠馬として、日本を背負う一頭として。
次回ものんびり進みます。