今回はレース回ですが少し短めだと思います。
駄文ですがそれでも良いならどうぞ。
ルドルフ爺ちゃんとの出会いがあった短期放牧を終え、俺は栗東トレセンの松戸厩舎に帰ってきた。
今回はマジで濃い里帰りだったな…なんか雄一さんと大僧正が来たし…
トレセンに来てからはまたハードなトレーニングが始まり、レースの感覚を取り戻していく。次のレースは2月後半に行われるGⅡレース『京都記念』。ブエナと一緒にドバイに向けての出走になる大事なレースだ。
「どうだ雄一。ミカドの乗った感じは?」
「大分良いと思います。有馬で乗った時よりも走りに力強さがあります。」
「そいつはよかった。ルドルフに会って何かを吸収したのか帰って来てから、走りのキレが更に出た気がしてよぉ。」
『へへっ、まだまだ走れますよ!』
体の調子が格段といい。今ならどんな相手が来ても逃げ切れるし差し切れる気がする。
『おりゃおりゃおりゃあぁぁぁ!!!』
まあ、それは向こうにも言えることなんだけどな…
「ブエナビスタもいい感じですね。末脚がまた強くなってないですか?」
「去年はオークスから一勝も出来なかった分少し不安もあったがあの調子なら大丈夫そうだな。今のブエナビスタならノゾミミカドを差し切れると思うぞ。」
「なら俺らも差されたとしてもまた差し返しますよ。」
『おう!』
ブエナに負けないように気合いを入れ直し、トレーニングに励んだ。
福長side
京都記念当日
| 枠番 | 馬番 | 馬名 | 人気 |
| 1枠 | 1番 | ホクトスルタン | 7番人気 |
| 2枠 | 2番 | サンライズマックス | 5番人気 |
| 3枠 | 3番 | ノゾミミカド | 1番人気 |
| 4枠 | 4番 | ホワイトピルグリム | 6番人気 |
| 4枠 | 5番 | ミッキーパンプキン | 9番人気 |
| 5枠 | 6番 | トップカミング | 8番人気 |
| 5枠 | 7番 | ドリームジャーニー | 3番人気 |
| 6枠 | 8番 | ニホンピロレガーロ | 13番人気 |
| 6枠 | 9番 | アドマイヤコマンド | 11番人気 |
| 7枠 | 10番 | シルバーブレイズ | 12番人気 |
| 7枠 | 11番 | トウショウシロッコ | 10番人気 |
| 8枠 | 12番 | ジャガーメイル | 4番人気 |
| 8枠 | 13番 | ブエナビスタ | 2番人気 |
『晴れた空の下、冬の京都で優駿たちが凌ぎを削る戦いが始まります。今年の京都記念は年末を盛り上げた三頭が再び集まりました。』
『一番人気のノゾミミカド、馬体重は前走の有馬記念から+2kgの490kgです。見事三冠を制したこの京都でどのような走りをするのか期待です。鞍上は変わらず福長雄一ジョッキーです。』
『ノゾミミカドと有馬記念で同着という結果を残したドリームジャーニー。馬体重は+12kgの438kg。三番人気に押され、力強いその走りで先頭をもぎ取るか?鞍上は池副健一ジョッキーです。』
『4歳馬の紅一点ブエナビスタは二番人気。馬体重は+12kgの458kg。横谷典弘ジョッキーを背に乗せ、その末脚でライバルたちをなできるか?』
2010年に入り、ミカドの最初のレースがとうとう始まる。だがこのレースはただのレースじゃない。ミカドの無敗記録更新や海外進出がかかったレースでもあるのだ。
(負けるつもりは毛頭ないが、やはり体が強張る。)
龍二もこんな感じだったんだろうか…俺がそう考えていると時間になりパドックにいるミカドに近づく。
「福長さん、今日もよろしくお願いします。」
「ああ、真司。よろしくな。」
真司が引手でミカドを抑えている間に乗ろうとすると、ミカドが急に俺の顔に自分の顔を近づけ軽く小突いてきた。
「おっと…どうしたミカド?」
「ブルルっ(硬いよ雄一さん。ほらリラックス。)」
……よく分からないが俺の元気がないかと思って励ましたんだろう。動物は人の気持ちを理解することができると聞く。こいつの場合はまた違うだろうが…
「大丈夫だミカド。心配ない。」
そう言って首を叩くとミカドは「ブルッ」っと鳴いた。多分納得したのだろう。俺はミカドの背に乗り、真司に引かれながらコースに向かった。
「雄一、今日は勝たせてもらうよ。」
「ノリさん、今日も勝つのは俺らです。」
「はは、言うようになったね。」
コースに着いて返し馬をしているとブエナビスタに乗ったノリさんが声をかけてきた。下ではブエナビスタがミカドに寄ってきて何かをしている。
「後多分、ここにこの二頭が居ると「ちょいちょいちょい!!またかお前は!!」…来ましたね…」
「来たね…」
騒がしい足音と聞き馴染んだ声にある馬が来たことを察した。音の方を向くと小さな馬に乗った若い騎手。
「す、すみません。またコイツが…」
「ブルンっ!!」フン!
「いやいいよ。怪我さえしなければこっちは、ただ文字通り手綱はしっかり握っておいてよ健一」
「ノリさん、マジですみません…福長さんもすみません。こいつ有馬からノゾミミカドに対抗心を持っちゃって…ノゾミミカドがすんごい嫌そうな顔してる…」
ドリームジャーニーと健一の登場に誰からも見て分かるくらい嫌そうな顔をしているミカド。あれ以来、ドリームジャーニーに苦手意識を持つようになってしまい、ドリームジャーニーの名を聞くだけで耳を絞るようになってしまった。
「ああ…大丈夫大丈夫苦手なだけで特に何もしな『ベシッ!』…いと思いたかった…」
ミカドがブエナビスタに近づこうとするドリームジャーニーを遮るように一蹴した。どうやらこっちが想定していたよりもミカドは相手が嫌いらしい…
「ブル。(気安くこいつに近づくんっじゃねぇよ金色チビ。)」
「ビィヒン!?(アアン!?テメェが決めることじゃねぇだろゴラァ!?)」
「フン。(お前みたいな不良が近くにいるとブエナの衛生教育上よろしくない。ブエナに何かあったら先輩に顔向け出来ねぇしな。一昨日きやがれドリジャ。)」
「ヒン…(ミカド、別に大丈夫だよ…)」
完全に一触即発となったミカドとドリームジャーニーをなんとか引き剥がし、俺らはそれぞれのゲート前に向かう。
「ミカド…らしくないぞ。」
「フヒィン…(すんません…)」
「今回はいいが気を付けろよ。怪我したら元も子もないんだからな。」
そしてとうとう準備が完了し、馬たちがゲートに入って行く。
「さて……行くぞ。」
俺らもゲートに入り、間も無く全ての馬がゲートに入った。
そして…
ガコンッ
ゲートが開きレースが始まった。
ミカドside
ゲートが開き、俺らは一斉に飛び出した。今回も良いスタートを切った。でも今日は前にはいかない。
『スタートしました。全頭きれいなスタートを切りました。ハナをとったのはホクトスルタン。ホクトスルタンが行きました。続いてシルバーブレイズが三馬身後ろ。ブエナビスタが五馬身差でいます。一番人気ノゾミミカドはなんと後方です。後方からの競馬になりました。』
今日の俺の作戦は差し。最近になってようやく他馬を気にしなくなってきたのでブリンカーを外した俺。俺の持論ではあるが差しは逃げとは違い、周りの動きをよく見ないといけない。差しでブリンカーをするのはちょっと怖かったので外してもらってすんごい嬉しかったのは余談。
とにかく今回は前回と違い、俺がブエナとドリジャを追う。そして逃げ先行で来ると思った他の奴らの作戦を崩すため、俺は後方から走らせてもらう。
『さ〜て…どうする、ブエナ?』
『ミカド…後ろからって…』
「これはやられたね。今回は裏を取られたか…」
『アンニャロォ…!俺様のマネしやがってぇぇ……!』
「ノゾミミカドが後ろって、うわっどうしよ…」
『第一コーナーに入り先頭は依然ホクトスルタン、続いてトウショウシロッコ、三馬身後ろにブエナビスタ、二馬身後ろの内にホワイトピルグリムとジャガーメイル、さらにニホンピロレガーロとドリームジャーニーがその内にいます。その後ろに着くのはトップカミングとシルバーブレイズ、一馬身後ろにノゾミミカド、ミッキーパンプキン、最後方にサンライズマックス。こういった展開になっております。先頭集団が第一コーナーを抜けて第二コーナーに入ります。依然先頭を進むのはホクトスルタン。ブエナビスタが三番手の位置で先頭を狙います。ノゾミミカドは現在後方から四、五番手に位置付けております。向正面に入り、1000mを通過し、タイムは1:02.0。少しスローペースになっております。』
さて…後ろから五頭目ぐらいの位置にいて、ドリジャのチビ先輩は目の前にいて、ブエナは三番手か…動くなら淀の坂を過ぎてからかな?
『オイコラテメェ!!俺様のマネするとはどういうことだゴラァ!!』
『今回は差しがちょうど良いんだよ!別にテメェみたいなやつの真似なんて誰が好き好んでするかゴラァ!!』
三コーナーに入る少し前の位置でドリジャと並ぶとガン飛ばしてくるアイツを横目に俺は機を窺う。そろそろ来るからな、淀の坂が。
『第三コーナーに入り、京都競馬場名物の淀の坂を登っていきます。』
久しぶりの淀の坂…やっぱり辛い…でも前より余裕がある。菊花賞よりも距離が短いのもあるけど、俺自身のスタミナが上がったんだろう。それでもここからスパートなんてかけられないけど…
ブエナは今は三番手、ドリジャと俺は五、六番手辺り…スパートをかけるなら…
「四コーナー序盤だな。」
『ですね。』
登り坂を終え下り坂に入る。急な下りで脚をなるべく使わないように抑え、四コーナーが見えてくる。
「行くぞ、ミカド。」
『ええ。行きますよ、雄一さん。』
そして俺たちが四コーナーに入った瞬間…
バシッ!!と鞭が入った。
俺はそれと共に足を溜め、力一杯地面を蹴る。
『さあ、ここからが俺のレースの本番だ!』
蹴ったと同時に一気に加速。馬群を抜けて一気に先頭集団を捉える。
『第四コーナーに入り、ここでノゾミミカドが動いた!外から一気に前との差を詰め、先頭を狙う!続くようにドリームジャーニーも加速、ブエナビスタもここで動く!有馬記念で激闘を繰り広げた三頭の争いになるのか!』
俺が動いたと同時にドリジャとブエナも動く。いやこいつらだけじゃない。他の馬たちも動き出した。
『待ちやがれぇぇ!!俺の前を走るんじゃねぇぇ!』
『抜けさせないよ、ミカド!』
『いや、差し切らせてもらうぜ!』
『ノゾミミカドが動いたと同時に他の馬も動き出す!現在先頭はジャガーメイルに変わったがブエナビスタがもう後ろにいる!さらに有馬を制した二頭が上がってきた!直線に入りここで先頭はブエナビスタに変わった!その半馬身後ろにはノゾミミカドとドリームジャーニー!しかし、ノゾミミカドさらに加速!ドリームジャーニーを置き去りにし、ブエナビスタに並んだ!残り100m!』
『ブエナ!追いついたぜ!』
『来ると思ってたよミカド!』
ブエナと並び直線を進む。二度目の俺たちの対決はあと数十mで終わる。だがまだ俺らは並んだままの拮抗状態。
(このままじゃちょっとの拍子で俺が負ける!だけど俺にはもうこれ以上のスピードを出すのは無理だ!どうすれば…)
……いや落ち着け俺。爺ちゃんがいっていたじゃないか。視野を広く持てって。冷静になれ、周りを見ろ、前を向け!気持ちで負ければ勝てるものも勝てない!
脚を必死に動かすのと同時に俺は神経を集中させる。視界に映る景色、耳から聞こえる足音や歓声、嗅覚で感じる土の匂い、肌で感じとる風。味覚以外の全ての五感を集中させる。
『ん?なんだあれ…?』
目に視えたのは一筋の光。それは真っ直ぐゴールに向かっていた。
『まさか…いや、今考えるのは後だ!』
俺は光の筋をなぞる様に走る。
『クッ…負けるかぁ!(少し脚が重い?なんで?)』
『あああぁぁ!!』
光は俺を導くかの様に輝いている。そして…
『ノゾミミカド今一着でゴールイン!ブエナビスタとの接戦を制して無敗伝説を更新しました!タイムは2:12.8!素晴らしい走りを再び京都で見せてくれました!』
『『___!!!!』』
湧き上がる歓声が競馬場を包む。
『ハア…ハア……ハア……』
息絶え絶えで声を出すのも儘ならない。息をなんとか整えてゴール板の方を見る。
何もない。
『あれが、爺ちゃんの言っていた『絶対』の一つか?』
かつて爺ちゃんが視えていたという『絶対』。それが今の奴ならなんで『今』視えたのか?見える条件は?前の幻影も『絶対』なら今回はなんで光の道だったのか?今回と前回の違いは?
考えても答えは出ない。
『ねえミカド!大丈夫!?』
『うおっと!?ブ、ブエナ?なんだよ?』
『なんだよじゃないよ!ずっとみんな呼んでいるのに全然反応しないから心配してんだよ!』
そう言われて俺は周りを見る。心配そうに俺を見るブエナ。キレ散らかしているドリジャ。不安そうにしている雄一さん。
『ああ、うん。大丈夫だ。少し考え事をしていただけ。』
『本当?』
『ああ。』
『おい、三冠馬。』
『ん?なんだよドリジャ。』
『それで呼ぶな!今回は俺の完全敗北だ。だが次はこうはいかねえ。『宝塚記念』でお前を待つ。だからこのまま勝ち逃げすんじゃねえぞ。』
ドリジャの奴はそう言って去っていった。
『たく…あっ雄一さん、俺は大丈夫です。ほら。』
俺は雄一さんを安心させるためにテイオーステップをする。それを見た雄一さんは安心したのか大きく息を吐き、観客は再び大歓声をあげた。
「よく頑張ったなミカド。これで、行けるぞ。海外に。」
『海外、ドバイですね…』
そして次はいよいよ初の海外レース、ドバイの地へと向かうことになる。
次回は海外レースへの挑戦が始まります。
あと番外編挟みたいと考えています。
アンケートで募集したノゾミレオの菊花賞を次回か次々回に予定しています。
その他の話も順に投稿できたらしていきたいと考ええておりますのでお楽しみに。
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