紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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前回、ナチュラル姐さんを普通に忘れていて今回主役回です。
コメントで教えてくださりありがとうございます。

ナチュ「おい作者。」
な、なんでしょうか…?
ナチュ「なんで私を忘れた?」
他のオリジナル馬やルドルフ爺ちゃんのキャラが濃くて、あと単純に貴女の出番が少ないからです。
ナチュ「よし、そこに直れ。フルパワーでぶっ飛ばすから。」


自然のノゾミ/覇王への賛美歌を

《ノゾミミカド・ブエナビスタ ドバイSC1・2フィニッシュ!!》

 

《無敗のミカド 海外でも無敗!!》

 

《GⅠ6勝、10戦10勝の最強の帝!!》

 

「新聞で凄い取り上げられてますねミカドの奴…」

「日本だけじゃねえぞ。」

 

松戸と真司は日本から取り寄せた新聞を読んでいた。そこにはミカドとブエナがドバイSCで圧勝した記事が一面に載せられていた。

更には海外の新聞でも…

 

《ジャパンのエンペラードバイを制覇!!》

 

《エンペラーの侵略の手はヨーロッパにも!?》

 

《ジャパン最強のコンビ!!全てを置き去りにするエンペラー!全てを薙ぎ払うクイーン!!》

 

「海外の新聞でもミカドに注目が集まっている。ブエナビスタにもな。」

「そりゃあ、三着に五馬身差でゴールですよ?あのカップルが…」

 

真司の視線の先には…

 

『ブエナ、そのごめんって…』

『ヤダ。』

『ウオッカの姐さんとはそういう関係じゃねぇから…』

『私にもっと構え。』

『はいはい…』

『ムフー♪』

 

「日本最強の馬が一頭の牝馬相手に頭が上がらないとか…記事見ているやつらは知らないでしょうね…」

「まあ、今はそれはいい。ミカドとブエナの次走だ。」

 

松戸が話を切り替える。

 

「ミカドとブエナは日本に戻す。今回はあくまでも海外での状態を知ることだったからな。結果は良好。少なくとも環境の変化による不調はどっちもなかった。これが分かっただけでも十分な収穫だ。」

「このままヨーロッパとかにいかないんですか?」

「今回はドバイに絞って来たからな。それはまた今度だ。何より…」

「何より…?」

「ミカドが国またぐ度に暴れられたら、お前の命がいくつあってもたりねぇだろう…」

「本当にありがとうございます。」

 

その後、ドバイから日本に帰ることになった二頭。

 

*その一部

 

『だから嫌だっていってんだろぉぉ!!??』

 

「またかぁぁぁぁぁぁ!!???」

 

「真司がまた吹き飛んだぞぉぉ!!」

「先生、アイツの犠牲を無駄にしないでください!」

「獣医です。では…」

 

『嫌だぁぁぁ!!??』

 

『ミカド…』

 

「はい、ブエナも大人しくしていてねぇ。」

 

『………』

 

「可愛い顔してもダメ。」

 

 

いつもの一悶着がありつつも無事に日本に帰ってきたミカドたち。検疫(大暴走タイム)を終えて、間を挟んでから栗東トレセンに戻ってきた。

 

 


 

 

『毎回あれしなくちゃいけないのが1番のストレス…』

『ミカドは大袈裟すぎ。少しは我慢しようよ。』

『過去のトラウマがな…無理なんだよ。』

 

地獄の検疫以外は何のストレスもないから。

 

『さあて、あのおばさんはもういないし…ミカド、私を構え!!』

『えっとブエナ?』

『何?私のいうことが聞けないのかぁ〜?』

『あのね。君忘れていない?』

『何が?』

『ここ、俺ら以外にも馬がたくさんいること。』

『あっ。』

 

周りには、オーラ先輩や同期のアミーゴをはじめ、多くの馬がいることをすっかり忘れていたブエナ。

 

『忘れて……////』

 

赤くなって小さくなる。可愛い。

 

『いやぁ〜熱々だねぇ…』

『先輩、妹さんと後輩のバカップル振り見ても何とも思わないんですか?周り血涙流すか砂糖吐いてるか絶望や諦めで焦燥しているんですけど。』

『いや別に?羨ましくは思うけど負の感情はないよ?応援しているからね。』

『先輩マジカッケェっす。』

 

*この厩舎で1番のメンタルを持つ男、それがアドマイヤオーラ。

 

 

戻ってきた翌日。俺は別の厩舎の馬との並走をすることになった。その相手は…

 

『おいっす。久しぶり〜。』

『ナチュラル先輩!お久しぶりです!(そういえばまだいたわ、話したことあった牝馬…普通に忘れていた…)』

『なんか今失礼なこと考えていた?』

『いえ、何も。』

『吐け。』

『イエス・マム。』

 

この後ぶっ飛ばされました。本気で…

 

「ナチュラルの並走に付き合ってもらってありがとうございます。」

「いえ、ミカドもまたこっちでの感覚を戻さないといけなかったからな。」

「次走は宝塚でしたよね?ナチュラルはステイヤー気質ですから、2200は短すぎるんですよね。」

「それでもマイル桜花賞や中距離オークス三着だ。十分狙えるだろう。」

 

調教師同士の会話を横に俺らの上にいる騎手同士も話している。同期だしねこの二人。

 

「雄一、ドバイ勝利おめでとう。」

「ありがとう。龍二もナチュラルで阪神大賞典優勝おめでとう。」

「おう…ありがとう。」

 

少し倭田さんの声に元気がない?感じがする。いや、どっちかっていうとピリピリしている?どうしたんだ?

 

『ナチュラル先輩。倭田さんどうしたんですか?前見た時よりも元気がない感じなんですけど…』

『ああ…GⅠ前になると少しだけこうなるんだ。特に春から夏の手前ぐらいにかけてね。私にもよく分からないんだけど、「今度こそ…」って…』

 

春から夏の手前にかけて、GⅠ前、倭田騎手、今度こそ……ああ、なるほどそうか…

 

『それは多分、『覇王』との約束です。』

『約束?』

 

倭田龍二騎手を語るにおいて、この馬は絶対に欠かせない。

 

『世紀末覇王・テイエムオペラオー』

 

通算成績26戦14勝。GⅠ勝利数7勝。天皇賞春連覇、秋古馬三冠達成、脱出不可能なブロックからの有馬勝利。2000年全戦無敗を成し遂げたまさに覇王。その絶対王政に逆らえるものはいなかった。

 

『その馬が倭田さんの相棒だったんです。オペラオーが引退するときにGⅠ勝利を彼に報告して立派になった自分を見せるとも言っていました。』

『けど、あの反応だと…』

『はい。彼はまだ中央芝GⅠを勝っていません。』

 

決して腕が悪いわけじゃない。むしろ彼のジョッキーとしての実力は上位に入る。

 

『おかげで心無い人の中には、倭田さんはオペラオーの背に乗っていただけのお荷物、リュックみたいなことを言うんですよ…』

『……へぇ………』

『そもそも当時の倭田さんはまだ若いジョッキーですし、未熟な部分もあったかもしれないですけど、倭田さんだからこそオペラオーは勝てたんだと俺は思いますよ。俺だって雄一さん以外の人がレースで乗るなんて考えられませんし…って先輩?』

 

 


 

 

ノゾミナチュラルside

 

 

ミカドの話を聞いて、私はかなり怒りを感じた。龍二さんがお荷物?

 

ふざけんじゃねぇぞ。

 

あの人は決して弱くない。あの人はとても強い人だ。普段はおちゃらけた感じでふざけたことをするけど、この世界で生き残ってきた猛者だ。

彼を馬鹿にするのは許さない。彼を侮辱することは許さない。

 

見ていろ。貴様らがお荷物だと言った人は『覇王』の一人だと言うことを見せてやろう。

 

 

『ん……い……せん…い……!先輩!』

『!あっ、ご、ごめん、何?』

『何じゃないですよ?いくら呼んでも反応しなかったんですよ?もう直ぐ始まるみたいですから行きましょう。』

『う、うん。』

 

いけないいけない。今はトレーニングに集中しないと。

 

龍二さん、今度こそ………

 

 

貴方(覇王)たちに勝利を捧げましょう。

 

 

 


 

 

 

天皇賞春当日

 

この日の私はいつにも増して調子がいい。脚も軽い、息もいつもより深く吐ける、視界も良好。これまでで最高のコンディションだ。

 

「な、なあ…今日のナチュラルってなんか違くないか?」

「確かに、なんかこう、覇気みたいな?そんなものを感じる…」

「三連単、ちょっと考え直すか?」

 

パドックを周り、騎手の方々が出てきてそれぞれの馬の下に向かう。

 

「ナチュラル、今日もよろしくな。」

 

『龍二さん、今日もお願いします。』

 

龍二さんも私にまたがり、パドックを抜けて、コースに向かう。

 

日本GⅠで最長距離のレース、『天皇賞・春』が始まる……!

 

枠番馬番馬名人気
1枠1番カネトシソレイユ16番人気
1枠2番エアジパング13番人気
2枠3番フォゲッタブル1番人気
2枠4番メイショウドンタク17番人気
3枠5番フィールドベアー18番人気
3枠6番トウカイトリック7番人気
4枠7番ナムラクレセント8番人気
4枠8番トーセンクラウン11番人気
5枠9番メインストリーム14番人気
5枠10番テイエムアンコール9番人気
6枠11番ミッキーペトラ12番人気
6枠12番ジャガーメイル2番人気
7枠13番ジャミール3番人気
7枠14番メイショウベルーガ6番人気
7枠15番エアシェイディ10番人気
8枠16番マイネルキッツ4番人気
8枠17番ノゾミナチュラル5番人気
8枠18番ベルウッドローツェ15番人気

 

 

『春の日差しが差し込む今日、京都競馬場で18頭の優駿たちが伝統のレースに挑みます。天皇賞・春!今年は一体どの馬が栄光を手にするのか?』

 

 

もう直ぐゲートに入る。私は外側のゲートであり、基本は内に入ることが難しい場所からのスタートになる。好都合な位置だ。

 

「ナチュラル、そろそろいくぞ。」

 

龍二さんの声で私の番がきたことを察した。私は誘導されるがままにゲートに入る。普段は狭くて少しいやだけど、今は全然気にならない。

 

 

『さあ、全頭ゲートに入りました。誰がこの長丁場を制するのか?第141回天皇賞・春……』

 

 

ガゴンッ!

 

 

『スタートしました!』

 

 

最初のスタートは出遅れず、けど前に行き過ぎずの感じ。差しを主体で走る私にとっては前に出ても意味はない。

 

 

『全頭綺麗なスタートを決めました。最初にハナを取ったのは11番のミッキーペトラ、続いて内から16番マイネルキッツ、10番テイエムアンコールと5番フィールドベアーがその内、続いて2番エアジパング、7番ナムラクレセント、4番メイショウドンタク、12番ジャガーメイルはこの位置に、1番カネトシソレイユ、外に一番人気3番フォゲッタブル、14番メイショウベルーガ、内には6番トウカイトリック、一馬身後ろに8番トーセンクラウン、更に後ろに17番ノゾミナチュラル、一馬身後ろに15番エアシェイディ、その直ぐ後ろ、13番ジャミール、一馬身後ろ18番ベルウッドローツェ、最後方9番メインストリーム、こういった展開になっております。間も無く最初の第三コーナーに入ります。』

 

 

大体今の順位は14〜5番手くらいか…悪くない。出来ればもう少し外に行きたいがここからでも前は見える。ペースは若干早いか?いやまだ分からない。なんせ始まったばかりだ。今は自分のペースで走ろう。

 

「よし、ここだな…」

 

龍二さんもどうやらここがいいと思ったようだ。位置取りは完璧だ。

 

(……テイエムオペラオーか…)

 

ミカドに聞いた龍二さんのかつての相棒。年間無敗の覇王とか考えただけでも恐ろしい。

 

 

『第四コーナーを抜けて、正面スタンド前、大歓声に見舞われながら18頭が駆け抜けます!』

 

 

『ハッ……!いけないいけない!今は集中しないと!』

 

過去のことは今はいい。現実を見ろ、ナチュラル。今はスタンドの直線。レースはまだ半分も来ていない。

 

「少し前に来たか。抑えろナチュラル。」

 

『はい。』

 

私は前半は必要以上に前に出なくてもいい。後方中段に付いて、半分切ったら十八番で削る。長距離はその馬の素質がもろに出る。変な搦め手を使おうものなら自爆まっしぐら。なら得意なやり方で勝つのが一番。

 

 

『第一コーナーに入り先頭は依然ミッキーペトラが進みます。マイネルキッツが半馬身差で後を追う。フィールドベアーも続いて、テイエムアンコールは少し後ろから行きます。』

 

さて、暫くはここで耐えるとしよう。

 


 

 

レースは順調に進み、もう第三コーナーの手前。私の位置は10位くらいのところにいた。

 

『さて、こっからだ。』

 

京都で最もキツイのがここ淀の坂。一周してこの急勾配を登り降りするのはキツイの一言に尽きる。ここを突破するにはゆっくり進むか、有り余るスタミナを使って一気に進むかの二択。前者は定石、後者は奇手。多くのものが定石を取るだろう。博打をして大負けはしたくないから。

 

もちろん私は……

 

 

『京都名物淀の坂を駆け登る18頭。先頭は依然ミッキーペトラ、しかしマイネルキッツがすぐ後ろまで来ている……後方からノゾミナチュラルが上がって来た!ロングスパートか倭田龍二!?』

 

 

後者だ。

 

「お前なら出来るだろう!!タブーなんてお前にとっては関係ないだろう!!」

 

『さっすが龍二さん!!私のことをよくわかっている!!』

 

淀の坂を一気に駆け抜ける。私の強みは威圧によって相手を萎縮させること、もう一つは他馬と比べ物にならないほどのスタミナ量。オークスまで私はマイルと中距離をメインに走って来たがあるトレーニングで、他の馬は息絶え絶えだったのに私だけがケロっとしていた。そこから私の本来の舞台は長距離、ステイヤーであることがわかった。そこからはひたすら長距離向けのトレーニングを積んで菊花賞、有馬記念、天皇賞・春、様々な長距離レースに挑んだ。結果はいいとは言い難いが長距離でも走れることを証明した。

 

『淀の坂だろうと関係ない。この博打だろうがタブーだろうが、勝てる可能性が高いならやるまでだ!』

 

一気に先頭集団に追いついた。早めに抜け出し、いつもの事故確率を減らせた今なら…!

 

『誰にも私たちの……覇王たちの道を……止めることはできない!!』

 

威圧を全開にして周りの動きを牽制。前は思った通りに走れなくなるし、後ろは私を抜かせずらくなる。それにいつもよりも威圧はマシマシだ。お前たちが相手しているのは覇王の片割れ、「もう一人の覇王」なのだから。

 

「行けぇぇ!!ナチュラル!!!」

 

 

『ノゾミナチュラル、第四コーナーで中盤で既に三番手にまで上がって来た!先頭は変わってマイネルキッツだが少し掛かり気味か!?逃げ切ることはできるのか!?メイショウドンタクも上がって来て四番手だが追いつけるのか!?最後の直線にかけて、後続馬もどんどん上がって来た!さあ、第四コーナーを抜けて直線コースに入る!!先頭はマイネルキッツ!しかし、外のノゾミナチュラルが猛追!!真ん中ジャガーメイルが突っ込んでくる!ノゾミナチュラルが先頭に躍り出た!!ジャガーメイルも二番手に上がる!!これは、これは!!遂にやったぞノゾミナチュラルゴォォォォルッ!!!ついに届いた悲願のGⅠ勝利!!そして倭田龍二2001年テイエムオペラオーのこの天皇賞・春以来のGⅠ勝利!!』

 

 

「………〜ッ!!!!や、やった……!やった!……勝ったぞぉぉぉ!!!!」

 

ゴール版を一番で抜けた私は龍二さんの雄叫びを直近で聞いて、勝ったことを再認識した。

 

『とうとう…私も……GⅠを……』

 

「ナチュラル……ありがとうな。君のおかげで今日は勝てた。」

 

『私はただ走っただけ、全てはあなたの勝利です。けど礼を頂いたなら私から捧げましょう、覇王に送る勝利の賛美歌を…』

 

私は大きく嘶いた。覇王は今も健在であるということを証明するために。




は、はい…ぶっ飛ばされた作者です……なんとか…生きています……
ノゾミナチュラル様、この度は誠に申し訳ありませんでした…駄作者ですみません…
次のミカドのレースにも登場することを確約して許してくれました…

今年もあと僅か、有馬を見て、ホープフル見て、年越しです。
多分今年一回出すか出さないかなのでそれまで楽しみにしていてください。
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