因みにテイオーの性格は作者の感じたテイオー像をいくらか入れていますのでこんな感じの性格になりました。
卓也side
時は数日前に遡る。
駒沢さんのミカド復活の計画はこうだった。
「トウカイテイオーを…ここに連れてくる!?」
「はい。ミカドを立ち直らせるには何度も挫折を味わった彼に合わせる。これしかないと思うのです。」
訳がわからない案だがどこかでなるほどと思っている自分がいた。
ミカドが以前ルドルフと対面した時、ミカドとルドルフは直ぐに打ち解け、ミカドはルドルフから何かを吸収した様に走りにキレが現れたのだ。
駒沢さんはそこに目を付け、ルドルフで出来たのであればテイオーでもと思い、北山さんの無駄に広い伝手を使って社大で種牡馬になっていたテイオーをミカドに合わせようと考えたらしい。
しかし、ただ合わせるだけでは社大側は決して納得しないだろう。何せ、ミカドが無敗三冠と海外GⅠ制覇を成し遂げたことによって、その親であるテイオーの価値が上がり、現在引っ張りだこなのだ。
そこで駒沢さんはルドルフ、テイオー、ミカドの皇帝一族の特集を自身が抱え込んでいる『週刊雑誌コネクト』に組ませるという名目でテイオーを連れてくるという話にしたのだ。コネクト側は前回の祖父孫の特集で大儲けしたこともあり快く承諾してもらい、社大側も宣伝になるならばと許可。
そして残りは撮影場所となる場所のみ。そこに選ばれた…というかそんなことができる場所は、ルドルフも居て帝も帰ってくるこの『北山牧場』しかないわけだ。
「テイオーがここに来て、向こうに戻るまでここで世話をしなくてはいけません。だから皆さんの力が必要なのです。しかし、今回は種牡馬として現在人気が高いテイオーを迎え入れるため、万が一のことが起きた場合皆さんに迷惑をかけてしまう。だからこうして私自ら貴方方にお願いをしに来たわけです。」
確かにテイオーになんかあれば北山さんと駒沢さんは勿論、当事者になる俺らも矛先が向くだろう。リスクが高いと言ったのも頷ける。
「駒沢さん、それでも俺らはもう覚悟も決まっています。それに、俺らは無敗の三冠馬を輩出した牧場の従業員ですよ?万が一なんて起こさせません。だろ、みんな?」
『『おう!!』』
ここにいるみんなは長い間ここを支えて来たベテランから新人でも馬の管理にうるさい奴らばかりだ。普段からクセ馬どもを相手しているのもあってそんじゃそこらの牧場の奴らより動ける自負がある。
「皆さん、ありがとうございます。日程は追って連絡しますが早ければ今週から来週までに全頭揃うと思いますのでその時はよろしくお願いいたします。」
深々と頭を下げる駒沢さん。俺はこの人は本当に馬を_ミカドのことを心から愛しているのだと思った。だって、大体の馬主は一頭の馬にここまでのことをすることなんてない。一頭一頭に向き合って生きているんだろう。
(ミカドはいい人に買い取ってもらったな…)
そして今日、テイオーがここにやって来る。無線から馬運車が入ってきたと連絡が入り、俺は準備を済ませ、ミカドを第四放牧地に放つ。そして少し遅れて俊がルドルフを放つ。
「……上手くいけばいいな。」
「どうでしょうね…ここ数日、ミカドは外に出しても前みたいに他の馬たちと関わろうとしませんし…そもそもルドルフたちと絡んでくれるかどうか…」
そう話していると突然ミカドがルドルフに向かって威嚇をするように耳を絞り、嘶いた。
『ブルルッ!!』
普段では絶対に有り得ない行動をするミカドを見て、これは不味いと感じた卓也たち直ぐに二頭を離すために動こうとした。
『…………』
しかしルドルフは動じない。何をされようがジッ…とミカドから目を離さず見ている。
そんなルドルフを見て怖気付いたのかミカドは威嚇をやめた。心なしかその姿はルドルフへ八つ当たりしたのを申し訳なさそうにしてるように見えた。
「あっぶねぇ…」
「ルドルフが寛容みたいで助かったぁ……」
「けどますますこの後が心配になってきた…」
「大丈夫ですよ。一応最初は隣の放牧地に放して様子を見ることになってんですから…」
取り敢えず何も起きなかったことに安堵した二人だがこの後のステップに進められるかどうか不安になってきた。
そこに無線から連絡が入る。
「なんだ、急に?こちら卓也、どうぞ。」
《卓也か!?すまん完全に油断していた!?》
「えっちょっ何があったんですか!?」
《例の馬の身体能力を少し侮っていた。かなりの歳だからもう昔みたいにはできないだろうと鷹を括って言いた!》
「何があったんですか!?」
《
「えっ。」
《助走無しで柵を飛び越えやがった!今あの馬は……
北山がいい終わらないうちに卓也たちの目の前に一頭のサラブレットが姿を現した。ミカドとよく似た姿、違いが有るとすれば脚の体毛の位置が左右逆という点と馬体の毛色の濃淡の違いくらいだ。
「トウカイ……テイオー……」
「……俺、今日命日かも……」
ミカドside
『トウカイテイオー、か…そうかお主が…』
『ん?なになに、お爺さんも僕のこと知っているの〜?いやぁ〜人気者は辛いねぇ〜。』
父さん_トウカイテイオーの突然の登場は俺の頭を白黒させるほどの衝撃だった。当の本馬は自分が多くの人や馬に認知されていることが嬉しくて機嫌が良い。
『名前だけはな…しかし、こんなチャランポランなやつだったとはな…』
『………あ゛?』
しかしその機嫌は爺ちゃんの一言で急降下した。
『爺さん、長生きしたかったら言葉には気をつけな。俺はそこら辺の奴らなんかより手加減とかはできないんでな?』
『若造が。貴様が目の前にするのはこの世界の頂点だと気付かんのか?』
二頭から発せられる覇気はその場にいれば誰もが動けなくなってしまう程のものだった。しかも離れた位置にいる他の馬たちもこの二頭の覇気を喰らってしまい動けずにいる。
フェ『おいおい…ルドルフの爺さんと真っ向から立て付いたと思ったらなんだよアイツ…!?』
ラ『ミカドに姿が似ています。恐らく彼の親族だと思われますが……彼の一族は化け物しかいないんですか!?』
カン『俺、今日死ぬのかな……』
レオ『カン、気をしっかり持て。しかしあの馬どこかで……』
シエ『あの方は……』
ボー『ガタガタガタガタ』←恐怖の余り何も考えられないし喋れない。
というか今は周りよりもこっちだ。父さんと爺ちゃんが正面衝突したらどっちもただじゃ済まない!
『爺ちゃん、いくら自分の子供だからって初対面の相手にその言い方はないって!』
『……む』
『貴方もですよトウカイテイオーさん。有名なのは良いですけどあんまり見せびらかしたりするのはどうかと思いますよ。最強無敵の帝王なら寡黙でビシッとした格好の方がかっこいいですよ!』
『えっ…そう?』
『絶対似合います!』
『えへへ…そ、そうかなぁ?ヨォーシじゃあ寡黙な僕を目指してみよっかなぁ!』
この代わり様を見て、『チョロッ』と思ったのは俺だけじゃないはず。
『ん?というか今君。』
『はい?』
『今この爺さんに僕のことを息子って言っていたよね?』
『えっはい。この御方は日本競馬4代目三冠馬であり史上初の無敗三冠馬である皇帝シンボリルドルフであり、貴方の実の父です。』
『えっ?』
『それとな、テイオーよ。貴様を先ほどから『君』と言っている此奴は貴様の実の息子であり、我と同じ無敗三冠を成し遂げた競走馬『ノゾミミカド』だ。』
『はっ?』
俺らの説明で一瞬フリーズした父さん。しばらく動かなかったが急にプルプルと震え出した。
『あ、あの父s『キュウニイワレテモウワケワカンナイヨォーーーーー!!!!』』
父さんの絶叫が牧場中に響いてこだまして行った…
数分後
『えっとこっちのお爺さんが僕のお父さんで…』
『うむ。』
『そっちの君が僕の息子…で良いんだよね?』
『はい。』
『ほんと、まさか自分の血縁に会うなんて思っても見なかったよ…』
『まあ、普通母親はともかく父親や息子に会うなんてそうそうないですからね…』
父さんが落ち着いてやっと話しをすることが出来る様になった。
『僕もお父さんのことは人間からよく聞いたよ。とっても強い馬だったって…』
『ふっ…我もお前の事は聞いていた我とは違う『絶対』を見せつけたとな…』
『……三冠も無敗も貫けなかったけどね…』
父さんの声はさっきと比べて格段に落ちた。その時のことを後悔しているかの様に。
『………ふむ。ではテイオー。』
『ん、何?』
『お主のその話を此奴にしてやってくれないか?』
『『えっ?』』
爺ちゃんが突然なんかいってきた。
『今ミカドはとある巨大な壁にぶち当たり走りを見失っている。我だけでは此奴に気付かせるのは心許なかったものでな。お主であれば今のミカドに適任だ。じゃあ我は少し席を外す。』
『えっちょまっ…!?』
そそくさと離れて行った爺ちゃんに呆気を取られた俺たちは顔を見合わせた。
『……えっと…話す?よかったら聞くけど……』
『………お願いします…』
どっちにしろ今の俺は八方塞がり、なら父さんに聞いてみよう。何度も挫折を味わった父さんに……
俺は今までの経緯を父さんに話した。デビュー戦のこと、母さんたちのこと、ブエナを含む厩舎のこと、先輩や師匠たちのこと、ライバルたちのこと、三冠を獲ったこと、有馬での同着のこと、ドバイでのこと、そして…初めての敗北のこと…
全てを話し終わる頃にはかなりの時間が経っていた。それでも父さんはずっと聞いていてくれた。
『……これで全部です。そんであれ以来、俺は上手く走れなくなりました…』
『ふむふむ……なるほど…』
『何かわかったんですか?』
『ん〜…そうだなぁ…』
父さんはこちらの目を見ながら俺に問うた。
『ミカドはさ、何のために走っていた?』
『えっ』
『僕はね、自分が強いことを示したいから走っていた。何度も挫折を味わいながら。』
父さんは続ける。
『僕は生まれた時から他の奴らより脚が柔らかくて柵もぴょんと飛び越えられてさ。他の馬はできないけど僕はできた。だから僕は特別なんだってね。』
『レースをするようになってからもそれは変わらなかったよ。ずっと一番にゴールして皐月賞もダービーも無敗で勝って、あと最後のひとつって時に骨折。』
『それで僕は出れなくなった。これが僕の一番初めの挫折。』
『骨折から復帰して、復帰戦は快勝。次は最強って言われている馬が出るレースに出ることになった。僕はもちろん勝つつもりで走った。長い距離をね。でも最強は僕が思っているよりも最強だった。』
『相手の実力を見誤ったのと自分の力の過信でしすぎたことで初めての敗北。これが僕の二番目の挫折。』
『無敗で無くなった僕はその後は結構ガタガタになっちゃってさ、勝ったり負けたり不調になったりで…それで有馬記念で走った時さ、全然力が入んなかったんだよね。今まで獲ったこともない様な順位、そしてまた骨折。』
『結果僕は一年という長い時間を棒に振った。これが僕の三番目の挫折。』
どれも俺は『知識』として彼の経歴を知っている。だけど当事者本馬の口から語られるその話は俺を引き込んだ。骨折による三冠の断念、天皇賞での敗北、有馬での大敗からの一年間の空白、どれも俺なんかが想像することもできないものに感じた。
『……父さんはどうやって乗り越えたの?』
『……正直いうとあんまり覚えていない。』
『えっ『でもね。』』
『僕は骨折しても負けても心が折れそうになっても自分こそが最強だって思っていた。僕は自分の強さを見せつけるために走ってきた。だからこそラストランになったあの有馬で僕は勝つことができたんだ。』
『ねえ、ミカド。君は…何のために走ってきたんだい?』
父さんが言ってきた『なんのために走ってきた』という問いに俺は答えられなかった。
三冠は父さんの無念を晴らすため、レースで勝つのは雄一さんや母さん、北山さんや駒沢さんといったみんなのため、ここまで考えて気づいた。
俺、今まで『自分だけの為に走ったことがない、いや自分で考えた物が何一つない』ってことに……
『あ……え……そ…の……』
『その様子だと、考えたことがないのかな?』
『…………』
何も言い出せなかった。俺は
空っぽの器だったんだ。
ミカドはこう言ってますけど、作者は別にミカドを空っぽの存在だとは思ってませんよ?
だって空っぽだったらあんな走りが出来ますかね?
先にいってしまうとミカドは自分よりも他人を優先してしまう『人』の生物としての矛盾によって、自分の為でなく他人の為に動いていたのです。
それに気づいたミカドは今後どうなるか……
お気に入り登録、高評価、コメント等をよろしくお願いします!
それでは…
因みにミカドは空っぽだと思いますか?コメントで是非言ってって下さい!皆さんの意見も気になりますので!
あと今結構落としていますけど作者の好物は落としてから上がる展開ですのである程度は安心してください。