紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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えー約四ヶ月ぶりの投稿です。

今回こんなに空いたのはマジで忙しすぎて着手できなかったんです…


帝の復帰/秋の盾 天皇賞・秋(GⅠ)

父さんとの出会い、そして走る原点を思い出した。

 

前みたいに走れるかはわからない。

 

でも、前に進まなくてはいけない。

 

俺の目標のために…俺を信じてくれているみんなのために…

 

 


 

 

松戸厩舎 室内

 

 

「ミカドが戻ってきて数日経ちましたけどいつものミカドに戻りましたね!」

「この間まであった動きの悪さがなくなっている。テイオーたちとの交流がプラスに働いたか…だが油断はできん。取り除けたとしても僅かに残った石ころ一つに足を取られればまた逆戻りの可能性もある」

 

松戸厩舎に戻ってきたミカドの様子を見て、二人は一先ず安堵の表情を浮かべたが、まだ完全に安心はできない。再び何かの拍子で逆戻りの可能性もあるのでこれからも細心の注意を払わなくてはいけないのだから。

 

「だからこそあのレースに出る。ミカドがこの先に進めるかを見極めるためにな」

「じゃあ次走は…」

「おう。『天皇賞』を取りに行くぞ」

 

秋古馬三冠の最初の一角であり、前身のレースを含めると100年以上の歴史を誇る伝統的なレース…

 

それが『天皇賞・秋』

 

「ルドルフとテイオー、どちらも辛酸を舐めたレースだ。宝塚で勝ったセイウンワンダーも出る。リベンジマッチだ、勝ちに行くぞ!」

「はい!」

 

真司は部屋を勢いよく出ていく。一人残った松戸は難しい顔をしていた。

 

(さっきは逆戻りするかいつものに戻るかと言ったが、俺はこのレースでミカドは全く違う(・・・・)方向に行くと考えている…)

 

今のミカドはこの数週間、父と祖父から新しいものを手にしたように見える。そしてそれを吸収し、自分のものにしようとしている。もしも完全に物にすることが出来れば、今までの殻を破って新しいミカドに生まれ変わるだろう。

 

(だがミカドをその段階に進ませるためには俺らや雄一だけで出来るのか…本番ではミカドは今まで雄一しか乗せたことがない。本来であれば一頭の馬に同じ騎手しかつかないなんてことは…あるにはあるが少ない…アイツだからこそ乗りこなせていたとも言えるが…ミカドが殻を破った時、雄一でも乗りこなせるか…)

 

松戸は一抹の不安を抱えながらも時間は淡々と過ぎていった…

 

 


 

 

天皇賞・秋

誉高き伝統の祭典

秋の古馬戦の始まりを告げる最高峰のレースに挑む強者たち

メジロの歴史を築いた逆襲の天皇賞馬

メジロアサマ

皇帝を失墜させた驚愕怒涛の革命馬

ギャロップダイナ

時代の常識を破壊した小さくも轟く巨大な稲妻

タマモクロス

最高のメンバーが集う中で勝利を掴んだガム噛み男

バブルガムフェロー

天覧競馬の最敬礼は天にも愛されたものと共に

ヘヴンリーロマンス

世代の垣根を越えて最高の栄誉を掴み取れ

 

 


 

 

東京競馬場

 

天皇賞・秋

枠番馬番馬名性齢人気
ショウワダモン牡614
ブエナビスタ牝4
ジャガーメイル牡6
エイシンアポロン牡3
セイウンワンダー牡4
スマイルジャック牡515
ペルーサ牡3
シルポート牡516
トウショウシロッコ牝718
10シンゲン牡7
11アクシオン牡712
12アーネストリー牡5
13ヤマニンキングリー牡517
14ネヴァプション牡713
15スーパーホーネット牡710
16キャプテントゥーレ牡511
17ノゾミミカド牡4
18アゼリオ牡3

 

 

「調子が上がってきているブエナビスタにGⅠ勝利で絶好調のセイウンワンダー、話題が色々尽きないノゾミミカド…またこの三頭が揃い踏みか…」

「この世代って凄いよな…この間の凱旋門賞でもナカヤマフェスタが出走して2着に入っているし…」

 

観客の翔一と一真はいつものように競馬場で観戦しにきていた。

 

「ノゾミミカドは3番人気。宝塚記念とその後の不調でもう少し順位が下がると思ったが、コネクト特別号ので調子を戻したことが広まったせいかそこまで人気は下がんなかったか…」

「オッズはブエナビスタが2倍だけどミカドは4.4倍か…菊花賞よりはマシだけどそれでも下がっているな…」

「それでも不調の話がでただけでこの人気はさすがだよ……にしても他のみんなは来れなくて残念だなぁ」

「仕方ねぇよ。森さん(五徹)はなんかやらかして競馬をしづらくなっているらしいし、麻生さん(一文無し)と藤上さん(イッチ)は緊急のトラブルで休日出勤…常盤くん(新人)は課題が多すぎて行けなくなったみたいだし…」

 

今回コテハン勢は(約1名を除いて)火急の用事で不参加。ここ最近は大人数で観戦していたので少し寂しさを感じる。

 

「取り敢えずあの人たちの分まで俺らがミカドたちのことをしっかり応援してやろうぜ」

「だな」

「お〜い、翔一、一真〜!」

 

不意に二人を呼ぶ声が聞こえ、同時に後ろを振り返る。

 

「二人して何私のこと置いて行ってんだこの野郎!!」

 

振り返った瞬間二人の顔面に飛んできたのは強烈なキックだった。

 

「ぐらんどっ!?」「ばっくる!?」

 

謎の奇声を上げて吹き飛ばされた二人。鼻を押さえながら体を起こそうとすると二人の前に仁王立ちで現れたのはキックをした張本人。

 

「こんなところで女の私を一人だけにしてほっとくなんてあんたら何考えてんの!?」

 

彼女の名は『加野巧』(かのたくみ)。翔一と一真が経営しているレストラン『ACE of GRAND』のウエイトレス兼影のボス的な存在。

 

「いやだってお前競馬博物館から全然出ようとしないし俺ら一応声かけたからな…」

「それでも初めて来た人がいる中でそいつだけを置いて行くのは非常識でしょうが!あんたらが出てすぐ目の前にいたから見つけられたけど、もし観客席の方に行っていたら私見つけられないからね!」

 

怒り心頭で顔を真っ赤にしている巧。一真は狼狽るが翔一が動く。

 

「巧」

「何!?」

「俺らなんてお前に声掛けたか覚えているか?」

「……なんか言っていたのは覚えてる」

「つまり覚えていないと…俺らは『少し外の空気吸ってくるからエントランスで待っていろ』って言ったんだけど…」

「・・・・・えっ?」

「つまり俺らここから動いていない」

「………」

「確かにお前を置いて行ったのは悪かったと今考えたら思うよ。それはすまん。でもこの仕打ちはなく無い?」

「………思いっきり蹴ってすみませんでした…」

 

 

互いに悪かったということでこの後一緒に蕎麦を食べた。

 

 


 

 

パドック

 

 

「ミカド…落ち着いているな…」

 

『真司さんそんな心配そうな顔しないでくださいって。俺はもう元気ですから』

 

パドックで久しぶりに引かれる俺はいつも以上に気合を入れていた。

久しぶりのレースであるのは勿論、宝塚の時のような不甲斐無い姿を見せないようにするために…

 

『爺ちゃんや父さんが負けたこのレース…今度こそ俺が勝つ……!』

 

 

『3番人気、ノゾミミカド。気合がかなり入っているように見えます。』

『前走の敗戦以来、調子を崩したようですが完全に回復しているように見えます。祖父と父が獲れなかったこの天皇賞・秋で復活するか必見です』

 

 

『ふふ…そうそう、ミカドはこうでなくっちゃ。みんなが注目する強くてカッコいいのがミカドだもんね♪』

『……あの、ブエナビスタ。止まっていないで前に進んでください。迷惑です。』

『ちょっと黙っててくれる?今のミカドの精神統一の姿を目に焼き付けている途中だから』

『さっさと進め馬鹿毛』

 

 

『1番人気のブエナビスタと2番人気のセイウンワンダーが威嚇し合ってますね…』

『有馬記念から続く黄金世代の後継者たち、このライバルたちの一線も見ものです』

 

 

……俺が気合入れている間になんであの二頭は喧嘩し出すのかな…?

 

「うわぁ…ミカド、絶対にあの二頭が同時にいる時は近づくなよ?」

 

『俺もできればそうしたいです…』

 

多分無理だと思うけど…

 

 


 

 

『東京11レース芝2000GⅠ、第142回天皇賞・秋。薄暗くなってきた曇り空の下、18頭が争います。それでは出走馬をご紹介しましょう』

『…本日の一番人気最強の女王、1枠2番ブエナビスタ、馬体重−4で456。鞍上はC.スミロン56kg』

『…宝塚記念でその強さを証明し秋の盾を狙う、3枠5番セイウンワンダー、馬体重は−2で518。鞍上は富士田真二58kg』

 

雄一さんを乗せてコースへと向かうため地下馬道を通る。出口から地上に出ると季節のせいか少し薄暗くなった曇り空と何十万もいるだろう人たちが目に入った。

 

 

『宝塚記念の雪辱を晴らし三冠馬復活なるか?8枠17番ノゾミミカド、馬体重増減無し490。鞍上は福長雄一56kg』

 

 

俺の名前をアナウンサーの人が言った瞬間大きな拍手と歓声が沸いた。

 

『うおっ…』

「おっと、落ち着けミカド。久しぶりで少しビビったか?」

『違いますよ』

 

実は少しだけ驚いたけど…

だってなんか宝塚より人いるように見えるし、久しぶりだし…

まあこの光景を目にしてようやくレースが出来るんだって思うと身が引き締まる。後は問題が起きないようにアップして…

 

『あっやっとミカド来たぁ!もうこの青毛とずっと一緒にいたからうんざりしていたところなんだよ〜』

『それはこちらのセリフです…』

 

はい来ました問題を起こすフラグの塊が…

 

『ブエナ…あんまり興奮しすぎるとレースに響くぞ。少しは落ち着けって…』

『え〜!?でもでもあんなに落ち込んでいて変に静かになっちゃったミカドが元に戻るどころかなんか前よりいい感じになっているんだよ!?こんなのワクワクしないわけないじゃん!!』

『さっきからこのテンションで近くにいるんです…はっきり言ってもう結構限界です…』

『ワンダーマジでごめん。うちのおてんばお姫様が迷惑かけて…』

 

レース始まる前からテンションの差が激しい二頭…だがどちらも前より身体が引き締まっていて闘気もかなり上がっている。

間違いなくこのレースで最も注意しなくちゃいけないのはこいつらだ。

 

『取り敢えず、ワンダー』

『うん?』

『このレースでお前に差をつけてゴールして、宝塚のリベンジさせてもらうぜ!』

『フッ…今回も僕が1着を貰いますよ?』

『ちょっとちょっと!私を忘れないでよ!今日勝つのは絶対、間違いなくワ・タ・シ!!』

 

レースが始まる前の雑談はここで切り上げ、各々の入るゲートに向かった。

 

共に走るライバルたち、応援してくれる人たち、俺を鍛えてくれた陣営のみんな、殆ど顔も知らないテイオー産駒たち、故郷で見守る牧場のみんな…

 

みんなの為、そして他ならない俺の為に…!

 

『このレース…俺が奪い獲る…!』

 

 


 

 

『……全頭ゲートに入りました。永栄を手にするのは三冠馬か?女王か?古馬か若馬か?第142回天皇賞・秋……』

 

 

ガッゴン!

 

 

『スタートしました!ペールサが僅かに出遅れたか?先行争いはやはりこの馬三冠馬ノゾミミカド。それをシルポートが追いかける。ブエナビスタは中団に構え、セイウンワンダーは後方に下がりました。向正面にこれから入ります。順に追っていきましょう。先頭を走るのは17番ノゾミミカド、一馬身後ろに8番ペルーサ、外から16番キャプテントゥーレ内には12番アーネストリーが1馬身後ろ。5番手には6番スマイルジャック。その後ろに2番ブエナビスタここにいます。外から13番ヤマニンキングリーが並んできた。外から14番ネヴァプション、内から4番エイシンアポロンが同時に上がっていき、10番シンゲンと3番ジャガーメイルがその後ろ。向正面に入ります。内から1番ショウワモダン、15番スーパーホーネットが外から詰める。5番セイウンワンダーはここで控え、7番ペルーサその後ろ、最後方11番アクシオン。こういった展開で進んでおります。』

 

 

 

「東京競馬場は日本の競馬場の中で直線が長いことで有名なコース。故に定石では差し・追い込みといった後方からレースを進める馬が有利だと言われている」

「どうした急に」

「天皇賞・秋は逃げが非常に不利だと言われており、過去のこの天皇賞で逃げで勝利した馬は1987年のニッポーテイオーと1991年のプレクラスニーしかいない。さらにノゾミミカドは東京はダービー以来約1年半振り、さらにその時はトラブルがあったとはいえ差しで走っていた。勝てる見込みが薄いとも言える」

「加えて今日の人気馬は中団から後方に構えているからさらに不利になるってことか…」

「いやあんたらなんで解説風に話してんの?」

 

観客席では翔一、一真、巧がレースの動向を見守っていた。

 

「それで?ノゾミミカドっていうのはあの一番前で走っている子?速いわね」

「あの馬は馬なり…要するにその馬の走るペースみたいなものが速いからな。ペースコントロールも上手いし、今回逃げで行ったのも何かあるんだろう」

「あとは一番人気と二番人気の同期二頭が後方にいる。そいつらとの差をなるべく広げておきたいってのもあるかも」

 

競馬談議で盛り上がる二人を尻目に巧はレースに集中する。

 

「……よく分かんないわね…」

 

競馬初心者の巧は2人の話についていくことがあまり出来てない。馬券を買うのも今回が初めてなのだから仕方ない。

 

「でも…」

 

「この熱気みたいなのは嫌いじゃないかも」

 

 


 

 

「よし、このペースのままでいくぞ。後ろは気にするなよ」

 

スタートから1000m通過までのミカドの走りに問題は無し。

後ろを気にする素振りもない。

 

(やっぱりあの二頭から何か吸収したなミカド…本番までどうなるか分からなかったが取り敢えずここまでは今までよりもいい走りをしている。問題があるとしたら……最終直線…)

 

この東京競馬場は直線が異常に長い。ミカドのペースやスタミナを考えるとどうしても直線の途中で差し・追込み馬たちに並ばれる。

 

だが俺たちはいつものミカドの走りを選んだ。

ルドルフとテイオーに出会ったことで、トレセンに戻ってきてから今までの不調かを感じさせない動きで調教を進めることができた。

 

そして今、テキ曰くミカドは『殻』を破ろうとしている。

 

(…もし、もしもミカドが殻を破ってその先に進んだとして…その時俺は…ミカドのことを支えられるのか…?)

 

 

『先頭を意気揚々と走るノゾミミカド。間も無く第三コーナーに入ります。』

 

 

(!ダメだ、今はレースに集中だ。コイツに不甲斐ない走りをさせないためにも…)

 

レースのことに頭を切り替え、俺は手綱を握る手に少し力を入れて前を見る。

大欅を通過するのを横目で見つつ、ミカドにいつもの指示を出すタイミングに備えた。

 

 


 

 

『欅を超えたっていうことはもう直ぐ第四コーナーが来るな。脚はまだいけるしスタミナも問題なし…いい感じに進められてんな』

 

ブエナとワンダーは後方でまだ脚を溜めているがアイツらが出てきたら一気に余裕がなくなる。特に府中は長い直線のせいで後方勢の方が有利なんだよなぁ…

おまけにブエナは府中での戦績は全勝中だ。アイツは父親と同様でここが得意っぽい感じだしなおのこと気をつけないといけない。

 

『まぁ、気にしていても仕方が無い。ただ突っ走るのみだ』

 

 

『先頭を走るノゾミミカド、第四コーナーに入り、2番手との差はおよそ三馬身。ブエナビスタとセイウンワンダーはまだ後方。』

 

 

四コーナーに入った!てことはもうそろそろだな…視界に「6」と書かれたハロン棒が入ってきた。

 

そしてそれを目にした瞬間…

 

「よしっ!行くぞ、ミカドっ!!」

 

雄一さんの鞭が走った。毎度同じみのギアチェンジ開始の合図だ!!

 

『よっしゃあ!!ぶちかましてやる!!』

 

芝がえぐれるぐらいの力を脚に込め、それを爆発させる。

 

ドンッ!!という音を残し、俺たちは加速し前に進む!

 

 

『ノゾミミカドがここで加速!!府中の長い直線でも早め後方を引き離す!!二番手にいたシルポートにも鞭が飛ぶが追いつけない!速い速い、四馬身、五馬身と差を広げていく!!不調という噂を掻き消す走りで先頭を行く!!後方からセイウンワンダーとブエナビスタが上がってきたが間に合うか!!?』

 

 

『やっぱり…強いな君は!!だが…!』

『私だって、負けられないんだぁ!!!』

 

ワンダーとブエナが馬群から抜け出して来た。高威力の末脚を俺より長い時間使い続けることができるアイツらは確かに脅威的だ。

 

『でも、俺も負けられねぇんだよ!!』

 

 

『先頭を行くノゾミミカド!二馬身後ろにセイウンワンダーとブエナビスタ!ゴールまであと200を切った!!逃げ切るか!?追いつくか!?』

 

 


 

 

私、ブエナビスタは今第三コーナーに入る黒鹿毛の馬を目で追っていた。

 

彼の名前はノゾミミカド。

 

私と同じ厩舎の同期で…私が一番大好きな馬で…超えたい目標でもある。

 

初めは知らないことをたくさん知っていて、人の言葉も解っているみたいで、すごいなって思っていた。けどなんかホワホワしていたり人にイタズラしたりであんまり速くなさそうって思った。

 

でも、初めて一緒に走ったとき、その考えは一瞬で粉々に砕かれた。

 

『シャァッ!行くぜ!』 ドンッ!!

『っ!?』

 

踏み込んだ脚は地面にめりこみ、僅かな減速も感じさせない超加速を目の前で魅せられた。

 

凄かったの一言しかでなかった。

 

それから私は彼に夢中になった。彼が勝つと私も嬉しかった。彼が落ち込むと私も悲しかった。な何故か彼が他の雌と話していると黒いものが内側から湧いて来たりもした。(これに関してはまだよく分かんない)

 

そして彼とレースをして彼が勝つと、私も嬉しかったけどモヤモヤした。それがなんなのかはすぐに解った。

 

”勝ちたい” ”負けて悔しい” ”もっと速くなりたい”

 

”あの走りに追いつきたい” ”あの背中を追い抜きたい” ”彼に勝ちたい!!”

 

『追いつきたい!!あの背中に!!』

 

未だ少し先を行くあの背に食らいつく。いづれ追いつくだろうがこのままでは間に合わない。

 

『ヤダヤダヤダっ!!絶対に追いつきたいのに!勝ちたいのに!!またなの…!?また追いつけないの!?』

 

青毛が彼に勝って、私はまだ勝ててない。ライバルは私のはずなのに、彼の一番は私が取りたいのに!

 

『なんでよ……追いつきたいよ……』

 

涙で前がよく見えない。遠くに見える背にまた先を行かれるのかと思った…

 

 

『アンブラスモア先頭だ、最内を突いたのがキングヘイロー、それからサイレントハンター、外を通ってエアジハード上がってくる エアジハード、それからステイゴールド、その外からはスペシャルウィークだ!』

 

 

『?』

 

その時、私の目には知らない馬たちが透けて私の前を走っていた。

 

 

『さぁセイウンスカイ、スペシャルウィーク!スペシャルウィーク、セイウンスカイ!スペシャルウィーク!スペシャルウィーク先頭に立った!』

 

 

『……スペシャル……ウィーク…?』

 

聞いたことがある名前だった。私の前を走る鹿毛の馬。額から一直線に伸びる白い流星を持つ馬。初めて見るのに初めてに感じない。

 

 

『スペシャルウィーク! そしてステイゴールド! スペシャルウィーク最後は先頭1着!』

 

 

外から周りを一気に追い抜いて突き離すその末脚。どこか私に通ずるものを感じられた。

 

『あの走り……っ、私も!!』

 

そうだまだ終わっていない。レースも私も終わっていない。私が憧れた彼も、そりが合わない青毛も、お父さんも!みんな最後まで諦めなかったから勝てたんだ!!なら弱音を言うなアタシ!!

 

お前は誰だ?

 

『アタシは…誰もが見惚れる……』

 

 

『絶景の女王だ!!!』

 

 


 

 

『直線勝負はノゾミミカドが先を行く!!セイウンワンダー追い縋るが届くか!?外からブエナビスタ!?ブエナビスタが加速する!どんどん差を縮めてあっという間に並……ばない!!』

 

 

残り100を切ったところでブエナが急に現れた。

 

『あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁ!!!』

 

けどそう思ったのも束の間、ブエナは俺を抜かして先頭に立った。

 

『なっ!?負けるかぁぁぁ!!!』

 

驚く俺にも目もくれず、ブエナは前を走る。荒々しく、けどどこか優美に駆ける。

 

 

『っ、でぇいやああぁぁぁぁ!!!』

 

「っ!?ミカド!?」

 

前は譲らないと俺は一心不乱に加速してブエナに追いつくこうとするが差は縮まれどゴールまで間に合わない。そして…

 

 

『ブエナビスタがゴールイン!!ノゾミミカドにクビ差で勝利を掴みました!!嘗て、父スペシャルウィークがこの天皇賞を制覇した時の再現とも言えるレース運び!!勝ち時計は1:57.1!!レコードタイムを記録しました!!帝下した二頭目の刺客は我々に絶景を見せつけた女王でした!!!』

 

 




ウマ娘も三周年になって色んな娘が追加されましたね。そのためウマ娘編の一部を描き直しました。そちらもご覧になってみてください。

それでは。
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