ジャスティンミラノ、いい走りだったんですがね…
けどそれはそれ、横山典弘騎手ダービー勝利おめでとうございます!!
武豊騎手もそうですけど、お二人とも普通ならそろそろ一線を退く歳の筈何ですが衰えを見せないのヤバいですよね…
さて、今回は前回のレースによって動く陣営の話です。
それではどうぞ。
『絶景の女王が約一年半ぶりに勝利を掴み、最強の帝を下しました!2着にノゾミミカド。3着に入ったのはセイウンワンダーかペルーサか。』
(最後の最後でブエナに差し切られた…)
ブエナの鬼気迫る気迫に押し切られ、半馬身差の惜敗。復帰戦は見事にコケてしまったというわけだ。
(いけると思ったんだけどなぁ…)
けど俺は前ほど落ち込んではいなかった。
もちろん負けて悔しい気持ちはめちゃくちゃあるが、あの絶不調状態からここまで調子を取り戻しての2着だ。以前の勘を取り戻すこともできたしこれで無敵のノゾミミカドは完全復活という感じだ。
『これなら次のレース、ジャパンカップは問題無くいけるな。』
けど少し気になる部分もあって、最後にスピードをあげようとした時に何故かバランスが崩れかけた感覚があったんだが、あれはなんだったんだ?
「………」
レース後
天皇賞・秋が終わり、雄一はどこか沈んだ様子で佇んでいた。
「どうしたんだ雄一?そんなしょげた顔して」
「松戸さん…」
そんな彼に話しかける松戸。雄一が何やら深刻そうな顔をしていたから声をかけた。
「…今日のレース、差し切られた時のことを少し…」
「なんだそんなことか。まぁ、復帰明けであれだけの走りをすればかなりいい方だろ。」
「いや違うんです。」
雄一のその言葉に首を傾げる。
「違う?何が?」
「今回のレース、ミカドは勝てるレースでした。ブエナビスタに差された時も持ち直すことはできた筈だったんです。」
「…つまり?」
「あの時、ミカドは『殻』を破った。でも、俺が……俺がそれに合わせることができなかったんです。」
ミカドが打ち破った限界の先、その領域に雄一はその時咄嗟についていくことができなかった。
あの時、ミカドがさらにギアを上げようとしたが雄一はそれによって体勢を崩しかけた。互いのリズムがズレたことで減速してしまい、負けてしまったのだ。
「なるほどな…やはりか…」
「やはり?松戸さんはこうなるって分かっていたんですか?」
「ミカドがさらに進化するだろうとは思っていた。そしてそれにお前がついていけるかどうかもな…」
「っ!」
「その予想は…今お前自身が言った通り…だな」
「……はい。今の俺じゃ…ミカドを…今までのように乗り熟すヴィジョンが思い浮かばない……!」
押し殺すような声で答える雄一に松戸は彼の肩に手を置く。
今回のレースで分かったことは2つ。
1つはミカドは今後も問題なくレースに出れるようになったこと。
そしてもう1つは
「雄一…このことは俺から駒沢さんに伝える。一応確認だが聞くぞ。」
「“手がわり”で構わないんだな」
「……えぇ…」
これ以上、現段階での雄一ではノゾミミカドと共に走れないということだ。
駒沢side
「手がわり?要するに乗り替わるということですか?福長さんから?」
「えぇ、本人たっての希望でもあります。」
松戸さんの口から出た言葉に僕の脳は理解が追いつかなかった。
手がわりとは競馬用語で騎手の乗り替えのことを言う。このことは特段珍しいことではない。実際に僕の所有馬も何頭か騎手を替えたことがある。ただ今回その対象となったのがミカドと福長さんのコンビだったことが分からなかった。
「…理由をお聞きしても?」
「今回のレースで負けはしましたがミカドは本調子を取り戻しました。これなら次のジャパンCも問題なく走り切るでしょう。騎手との折り合いがつけばという枕詞が無ければ…」
「どういうことでしょうか?天皇賞では福長さんの騎乗に問題は無かったと思いますが…」
「えぇあいつの今まで騎乗は問題ありません。問題になったのはミカドとのズレです。」
ズレ?一体何のことかと思ったが松戸さんの話は進んでいく。
「ミカドは分かりやすく言えば今までの限界を超えたんです。ルドルフやテイオーと会って何かを吸収し、今回のレースでそれを完全に自分のモノにした。
だが同時に覚醒したミカドの動きに雄一がついていけなくなった。あいつは自分があの時すぐに対応できれば勝てたとも言っていました。」
「いやしかし、ここまでミカドに乗ってきたのは彼の実力があってこそです。そんな急に乗り替えなくても「今のままでは人馬共に危険だと言ったら?」…何ですって?」
もう話の全てが理解できない。ただただ困惑する僕を置いて松戸さんは続ける。
「確かに時間をかければ雄一の腕なら乗り熟すことができるようになるかもしれない。しかし、間隔が一ヶ月もない秋の古馬戦で、今までのミカドに慣れてしまった雄一がそんな短期間で今のミカドに無理に合わせようとすれば…」
「……最悪の結果を招くことになるかもしれない。」
黙って頷く松戸さん。ここで僕も混乱しながらもようやく理解することができた。
人はクセを直すのに莫大な時間と労力を使う。それが長い間染み付いてきたものであれば尚更だ。
しかも人は慣れたことと似ていることをしようとするとその慣れが邪魔をすることがある。
今回の件でいえば、今までのミカドを知っている福長さんでは新たな領域に入ったミカドに返って振り回される可能性があるということ。
「…福長さんは、なんと?」
「『今の自分じゃミカドを乗りこなせない』だそうです。」
「……分かりました。オーナーとしてノゾミミカドの主戦騎手から、福長雄一騎手を外します。」
『……えっ…今なんて?』
「ごめんなミカド。俺は次のレースお前とは乗れないんだ。」
今日、雄一さんが俺の馬房の前に来てこんなことを言ってきた。
出れない?雄一さんと?レースを?
『ちょちょっ待って待ってどういうこと!?』
「今日は、まあ暫くの間はお前とはこうして会えなくなるからその挨拶だ。」
「福長さん、本当にいいんですか?別にこの間負けたからってそんな…」
『そっ、そうだよ!雄一さんは別にヘマしたわけじゃ…!』
「いいんだ真司。レースが終わって調教の時もコイツに乗ったが、やっぱり本気のコイツに俺が合わせられなかった。」
『えっ…あん時の?確かになんか今日は合わないな〜とは思っていたけど…』
「今の俺じゃミカドの動きについていくには騎手としてまだ実力が足りない。ここで俺が我儘言って乗り続ければ、最悪事故を起こす。それは絶対に避けないといけない。」
そう語る雄一さんだが、拳は力強く握っていてもの凄く悔しがっていることが分かる。
「だからな、ミカド。今は少しお前から離れる。俺以外の人が乗るからって舐めた態度取るなよ。騎手の中にはおっかない人がわんさかいるかな。」
力なく笑うその顔の雰囲気は、ダービーの後に俺の骨折を知った時に会った顔と似ていた。
自分の不甲斐なさを痛感しているあの時の顔と、とても…
『…雄一さん……』
「…そろそろ時間だな。じゃ真司、ミカドをよろしくな。」
「はい、もちろん。」
そうやって去ろうとする雄一さん。
『……!とりゃ!!』
「どっわぁ!?」
俺は彼の背中を頭で思いっきり押した。押された雄一さんは転びそうになるが何とか耐えて俺を見た。
「ミカド?」
『……また、俺に乗ってくれますよね?雄一さんが納得できるようになったら…また……俺、その時まで待ってますから!!』
俺はそれだけ言って馬房の奥に引っ込んだ。どうせ俺の言葉は人間である雄一さんには届かない。
でも言っときたかった。あの人は絶対にまた俺の背中で共に走りにきてくれる。
だからこれは俺からの激励だ。
不屈の魂を持つ、最高の騎手への…
「……ああ。俺もお前とまた走りにくる。必ず!」
初めて会ってからずっと共にいた相棒との別れ…
初GⅠ制覇、波乱のダービー、三冠達成、有馬同着、ドバイ勝利、初の敗北…全てを共にした相棒が去り、ミカドはどうなるのか今後も引き続きお待ちください。
因みに作者の中で既に次の騎手は決まっています。
皆さんもコメントで自分の予想を書いていってください。
作者は単純なのでコメントがあると子供のように喜びモチベがぐんぐん上がります。
それではまた…