紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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今回はウマ娘編。

あの馬たちが出ます。


帝のトラブル/ライバルたちの争い

聖蹄祭が近づくにつれて、騒がしい学園内は更に騒がしくなって行く。

 

「ミカドさん、この資料とインタビュー映像はどうしましょうか?」

「それはフランスエリアに置いておいてください。後でジャスが編集して、まとめますので」

「わかりました。では引き続きアメリカエリアの資料をまとめます。」

 

「ミカドさん、この資料ってどうしましょうか?日本のレースですけど海外の方が勝っているのでなんかこんがっちゃう気がして…」

「今回はレースで纏めますから日本エリアに置いといてください。」

「分かりました。ポスターの写真のチェックをしてきますね!」

 

「ミカド〜この香港スプリントの映像載せる〜?」

「載せてください。龍王の連覇を載せないとまた本人がうるさくなります」

「その場合はいっつもカレンチャンに『オハナシ』されるのにね〜」

「あの娘もしかして、それ目当てで言っていない?」

 

「ミ、ミカドさん…ドバイエリアの編集…終わりました…」

「わかりました。ジャスは少し休んでから今度はフランスエリアの編集お願いします」

「いや、結構大変なんですよ…フランス語の実況とかも訳さないといけませんし、ドバイも現地実況が何言ってんのかさっぱりで、父の知り合いの協力を得て終わらせたんですし、今日はもう終わり「ここにこの間家のパーティで撮ったオグリ先輩とライン先輩の芦毛ツーショット写真が」すぐに取り掛からせて頂きます!!!」

 

「イギリスの方は問題ないわ。最終チェックが入れば後はOKよ」

「わかりました。キングはしばらく休憩してからこっちを手伝ってくれますか?何分量が多くて…」

「分かったわ…それにしても案を出した身ではあるけどここまで大規模になるなんて…」

 

キングが周りを見渡すと資料を整理しているリオとプレストン。写真の斡旋をするクラフト。パソコンの前でエナドリをストローで飲みながら編集しているジャス。そして、資料の山に囲まれている私という状態だった。

 

「日本のウマ娘を対象に多くのレースを紹介することになるんですから当然です」

 

我々チームヘルクリスがやる展示『古今東西記憶に残るレース展』は現在ラストスパートに差し掛かっていた。

チーム全体で資料を集め、それを元に解説や出走者のインタビューをしに行くなどかなり大変だった。インタビュアーはプレストンさんとリオが担当し、映像や画像の選別は写真が趣味のクラフトが担当。資料のまとめは主に私とキングとジャスが担当。特に父親がテレビ局の編集者であるジャスはそのノウハウのような物を父に聞いておりかなり頑張ってもらっている。

解説も映像を使い分かりやすくしており、私たちが声を入れているので見ていて飽きないように作っている。*1

 

「ジャスタウェイさんの仕事量が一番多いけど、大丈夫なの?もう空元気でやっている感じがするけど…」

「細かい編集はジャスにしか出来ませんからね。フランスの展示が終わればひと段落つきますし、そしたら彼女の仕事は終わりです。もう少しだけ頑張ってもらいましょう」

 

かくいう私もジャスほどではないがかなりキツい状態である。映像などの編集はジャスにしか出来ないけど、流石に頼りっぱなしは出来ないためポスターや紙資料の編集は私が一任している。

 

「この後は生徒会の経理管理や他のチームの出し物の見回りにも行かないといけませんから少しでも終わらせないと」

「頑張ることはいいことだけどあまり無理はしないほうがいいわよ」

「ありがとうございますキング。取り敢えず、このジャパンカップの資料をまとめれば後は大丈夫ですから。」

 

笑いながらそう返すと、廊下からかなり焦った様子の足音が聞こえてきた。そしてドアが勢いよく開く。

 

「ハァ…ハァ…の、ノゾミミカド先輩はいらっしゃいますか!?」

 

扉を開けてきたのは別のチームのウマ娘だ。

 

「どうしたんですか?そんなに慌てて?」

「じ、実は、ドリームジャーニー先輩とセイウンワンダー先輩が…!」

「!!」

 

その名前を聞き、私は直ぐに立ち上がる。

 

「キング、この後の指揮は副リーダーのあなたに任せるわ。」

「ええ、分かったわ」

「プレストン、リオ、クラフト、ジャスはキングの指示に従うこと。いいわね?私はあのバカどものところに行くわ。案内して!」

「は、はいこちらです!!」

 

たく、今世でもアイツは私に迷惑かけてくんのか!

 

 


 

 

案内された場所は中庭、そこでは二つのグループが向かい合うように並んでおり、まるでヤクザの抗争開始前のような雰囲気だった。

 

「何度も言いますがジャーニー先輩。ここは元々私たち『チーム・スコルピィ』が取っていた場所です。お引き取りください」

「はっ!何言ってんだここは俺様たち『チーム・アルスハイル』のシマだ!そっちが引け!」

 

いや、片方完全にヤクザだ。

 

「何がどうしてこうなったんですか?」

「えっ、えっと実は…」

 

要約するとこうだった。まず聖蹄祭での出し物で外の敷地を使うことになった両チームはそれぞれ場所を申請。しかし、その段階で何か手違いが起き、場所が被ってしまい、本来は一つのチームが使う場所に二つのチームが入ることになってしまった。そして、今こうして争っているらしい。

 

「なんでそんなことに…」

「すみません!すみません!今年は例年よりも場所の申請をする方が多くてそれで…」

 

完全に落ち度は委員会や私たち生徒会側だ。解決策を見つけなくてはいけないがまずはこの場を修めなくては。ドリームジャーニーは、トレセン学園一の暴れん坊。問題行動が多いこともあり、学園内では要注意人物として知られている。ただし、身内には甘く、妹のことを特に溺愛しており、妹のいうことは7割ぐらいの確率で聞いてくれるらしい。(因みにトレーナーはぶっ飛ばす)

 

「そこまでにしなさい。」

 

「「!!!」」

 

私が声を出すと集まっていた野次が道を開ける。それに入って行き、二人の間にはいる。

 

「ワンダー、ジャーニー先輩。これ以上騒ぎを大きくするのならば生徒会としてあなたたちを注意しなくてはいけません。」

「だけどミカド。これは簡単に引き下がれるものではありません。」

「そうだぜ。この場所は立地的にも目立つ場所だからな。俺たちの屋台をやるにはちょうどいいんだよ!」

「分かっています。しかしここで問題を起こせば、あなた方に処分が下り、最悪聖蹄祭に参加することができなくなります。」

「っ…」

「チッ…!」

「しかし、これは完全にこちらの落ち度です。代わりの場所は必ず用意します。この場所の使用権に関しては私たちらしいやり方で決めましょう。」

 

 

トレセン学園グラウンド

 

 

『さあ、始まって参りました!!中庭の一角の使用権を巡るチーム・スコルピィとチーム・アルスハイルの全面対決!!実況はこの私サクラバクシンオーがお送りいたします!解説はこの対決方法を立案した生徒会経理兼書記のノゾミミカドさんです!!』

『よろしくお願いします』

 

 

スコルピィとアルスハイルの争いで不公平がない決め方、それがレース。話し合いでも良いが怒り心頭のドリームジャーニーが話し合いが出来るとは思えない。そこで毒抜きも兼ねてレースで決着をつけることにした。

私たちウマ娘は走ることに対して非常に貪欲だ。これが一番分かりやすく、納得しやすい。

 

 

『今回のルールは芝2200m、右回りのチーム戦!馬場状態は良馬場、天気は晴れとなっております!互いのチームから3名が選出され、1着でゴールした方のが所属しているチームが勝ちとります!なお、もしも並んでゴールした時のためにノゾミミカドさんがゴール版前に撮影係の方を配置しておりますから確認可能です。それでは、参加するのはこの方々です!』

 

 

なんか勝手にやって来たサクラバクシンオー先輩がそういって手を前に出すと、体操着に身を包んだ六人のウマ娘が現れる。

 

 

『一枠一番、スコルピィの輝く光!ディープブリランテ!』

『二枠二番、アルスハイルのお転婆魔女!スイープトウショウ!』

『三枠三番、夜を照らす月光!スコルピィ、アドマイヤムーン!』

『四枠四番、雄々しき突風!アルスハイル、ブラストワンピース!』

『五枠五番、仰天動地、末脚ならばスコルピィ1!セイウンワンダー!』

『六枠六番、我が道進む夢の旅路!アルスハイルの怪物、ドリームジャーニー!』

 

 

登場と同時に歓声が挙がる。会長や各トレーナーに許可やらなんやらとっているうちに噂が出回って観客が集まって来ていた。

 

 

『以上の6名のレースとなります!それでは解説のミカドさん!どの様なレースになるんでしょう?』

『今回出走するウマ娘は差し・追込みが多いですから位置取りが重要になってくると思われます。先行で行くのはおそらくディープブリランテさんだけでしょうね。』

『なるほど!おっと、どうやら出走準備が整った様です!』

 

 

ゲート前に並ぶ六人。一人、また一人と入って行き、全員がゲートに収まった。(この時、スイープさんだけが中々入らずブラストワンピースさんとドリームジャーニーが頑張って押し込んで、不機嫌顔。)

そして…

 

ガゴンッ!

 

 

『さあ、始まりました!全ウマ娘綺麗なスタート決めました!先頭を行くのはやはりディープブリランテ!その二身後ろにブラストワンピース!一身後ろにスイープトウショウ!外にいるのはアドマイヤムーン!一身にセイウンワンダー!最後方、内側にドリームジャーニー!こういった展開です!』

『ディープブリランテとブラストワンピースが前にいます。レースの形を作っていくのはこの二人になるでしょう。』

 

『1000mを通過し、先頭は依然ディープブリランテ!その後ろにブラストワンピースが付いています!スイープトウショウ、少し落ち着かない感じです!アドマイヤムーンがここで三番手に上ります!セイウンワンダーとドリームジャーニーは依然最後方で走っています!』

『あの二人は最後の直線で一気に抜き去るタイプですから今は互いに足を溜めつつタイミングを測っているんです。』

 

 

あの二人が動くなら直線、または四コーナー中盤から終盤のどこか。先に動くのはどっちか…

 

 

『第三コーナーに入り、いまだ大きな展開は起きておりません!まだまだどうなるのか分かりません!』

『いえ、そろそろ…っ!動きます!』

 

 

「ここらで行きますか!」

 

 

『おっと!?ここで動いたのはアドマイヤムーン!三コーナー中盤で動いた!まだ少し早いのでは!?』

『いえ、恐らくこれは…』

 

 

「な!?待ちなさいよ!?」

 

 

アドマイヤムーンさんが急に動いたことでスイープさんがつられて加速。これはスイープさんの性格を知っての動き。

今回のレースはあくまでチーム戦。例え自分が1着になれなくても相手を翻弄してスタミナを削る。アドマイヤムーンさんは後々厄介になりそうなスイープさんを抑えるために前に出た。

 

「スイープさん!?抑えなさい!それは相手のブラフよ!」

「ムーンさん…私も自分の役割を果たさなくちゃ!」

 

 

『ブラストワンピース、スイープトウショウが暴走したことに焦っています!それを抜いてアドマイヤムーンとスイープトウショウは現在二番手三番手!第四コーナーに入り、レースも終盤に近づいて来ました!』

『こっからあの二人も本格的に動きます!』

 

 

「さて…」

「そろそろ…だな…」

 

「ふんにゅ〜…!!」

「そろそろ限界ですかね?」

 

「やばい…スイープさんが完全に垂れている…!」

「私の仕事はここまで…後は…」

 

 

『直線に入りますが、スイープトウショウは完全にガス欠ですが意地でなんとか食らいついています!アドマイヤムーンが現在先頭!ブラストワンピースも猛追!ディープブリランテは三番手!ここでやはり動いた!ドリームジャーニーとセイウンワンダーが動きました!一気に加速して差を詰めていきます!』

 

 

ドリームジャーニーが内から、ワンダーが外から、それぞれの末脚で加速する。

しかし…

 

「なっ!?オイブラスト!どけよ!」

「あっ!?す、すみません!?」

 

『ドリームジャーニーのルートにウマ娘が固まっています!これはいったい!?』

『スコルピィの作戦でしょう!ドリームジャーニーが通るであろうルートにウマ娘を固めたんです!』

 

 

「後はお願いします!」

「お任せを!」

 

 

『セイウンワンダーが外から一気に抜き去った!ドリームジャーニーもなんとか無理やり群を抜けて、二番手に着くが間に合うか!?セイウンワンダー更に加速!しかしドリームジャーニーも追いすがる!その差を縮めていきます!果たして勝つのはどっちだ!?』

 

 

「「ハァァァアアア!!!!」」

 

 

『並んだ!並んだ!並んだままゴールイン!!』

『これはどちらが勝ったのか…少々お待ちください。』

 

 

私は放送席をたち、ゴール版前にいる撮影係の子の元に向かった。

 

「どうでした?」

「はい。こちらです!」

 

渡されたビデオカメラの映像をスロー再生で見る。

 

「これは……」

 

ゴール直後で映像を止め、確認する。殆ど同じタイミングでゴールしているがワンダーの方が僅かに後ろにいる様に見える。

 

 

『判定結果、一着は…ハナ差でドリームジャーニー!よってこの勝負チームアルスハイルの勝利!』

 

 

結果を言うと観客から歓声があがった。

 

「ハァ…逃げ切れなかったか…」

「当たり前だ!オメェなんかに負ける様なジャーニー様じゃないってことだ!そんで?あの場所は俺らが使って良いんだよな?」

「約束は約束です。貴女たちのご自由に。」

 

そういって互いに手を出し、握手する。中は悪い二人ではあるが別に嫌いというわけではないからね。

 

こうして今回の騒動は大団円で終わったのであった。

 

 


 

おまけ

 

アルスハイル部室

 

「それでね?ジャーニーちゃん、ブラストちゃん、スイープちゃん?なんでチームリーダーのデュランダルさんと副リーダーのカレンに今回のこと報告しなかったの?」

 

部室の真ん中で、ドリームジャーニー、ブラストワンピース、スイープトウショウの三人は正座をしていた。笑顔ではあるが目が一切笑っていないカレンチャンの前で。

 

「あっ、いやその…」

「大方、交渉とか色々面倒臭いから殴り込みに行ったって感じでしょ?」

「………」(図星)ダラダラダラ

「しかもレースをする許可をお兄ちゃんからもらう時にお兄ちゃんのことまた吹き飛ばしたでしょう?」

「い、いや、でも姉御!それはアイツが許可を「ん?」イエ、ナンデモアリマセンカワイイカレンチャン!!」

 

カレンチャンの鋭い眼光によって萎縮してしまったドリームジャーニー。先ほどまでの強気の態度はどこへやら。

 

「よろしい。……二人は何かいうことはある?」

「ジャーニー先輩に言われて参加しました」

「ケーキくれたから…」

「情状酌量の余地はありかな…今回は見逃すけど、次は無いって思っておいてね?」

 

「えっと…俺は…?」

「うん?何いってるのかな?カレンは一言もジャーニーちゃんを許すとは言っていないよ?」

「え…」

「お兄ちゃんに迷惑かけた分、スコルピィに迷惑かけた分、ノゾミミカドさんや生徒会の方々に手間をかけさせた分、お兄ちゃんを吹き飛ばした分、カレンに知らせなかった分。取り敢えず、一緒に『オハナシ』しようか?」

 

 

「ぎ、ギィイィイィイィやぁぁぁぁぁぁあああああああぁあ!!!!!!!???」

 

この後、ドリームジャーニーは翌朝まで「カワイイカレンチャン」しか喋れなくなった。

 

アルスハイルの権力

一位:カレンチャン・デュランダル

二位:オルフェーヴル・ドリームジャーニー

三位:スイープトウショウ

四位:トレーナー

五位以下同列

 

*1
内容の原稿はリオが作成




チームスコルピィ
デルタブルースをリーダーとする、ストイックなウマ娘が多いのが特徴的なチーム。

所属ウマ娘
デルタブルース
セイウンワンダー
アドマイヤムーン
ディープブリランテ
他多数

チームアルスハイル
デュランダルをチームリーダーとする、気性難なウマ娘が多いことで有名なチーム。ただし、実力は折り紙つき。

所属ウマ娘
デュランダル
オルフェーヴル
カレンチャン
ドリームジャーニー
スイープトウショウ
ブラストワンピース
他多数

今回は各トレーナーは出てきませんでしたが、ウマ娘を見れば多分誰か分かると思います。特にアルスハイルの誕生星を調べれば…
スコルピィは関係ありません。星言葉似合うと思って…
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