紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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三ヶ月も更新ほったらかしにしてすみませんでした。
取り敢えず今回で性転換編は一旦終了です。


帝の事件/薬の変化 後編

「カナロア。」

「ハイ。」

「カレンいつも言っているよね?カレンのかわいさを広めたりするのは別にいいけどあんまり派手にやったり他の娘たちに迷惑になることしないでねって?」

「ハイ。」

「何かいうことは?」

「モウシワケアリマセンデシタカワイイカレンチャン。」

 

昇天したジャスタウェイを保健室にぶち込んだ後、ミカドが戻って来たら、ロードカナロアがカレンチャンに正座&土下座をさせられて怒られていた。

 

「ハァ…とりあえず今回はこれくらいにしてあげるからこういうことはあんまりしないようにね?」

「ハイ、アリガトウゴザイマス…モウシワケアリマセンデシタ……」

「あ、あと…」

 

カレンチャンはカナロアに近づき、耳打ちで…

 

「やり方はアレだったけど、カレンたちを守ってくれてありがとね♪」

 

笑顔でそう言ってカフェテリアを後にした。

 

「ロードカナロア。取り敢えず、今回のことで色々話があるからついて来てくれ。行くぞ……ん?」

 

ミカドがカナロアの肩を叩くが反応がない。正面に回り込んでみると…

 

「…こいつ……!カレンチャンにお礼言われたのが嬉しかったあまりに真っ白になりながら綺麗な顔して死んでいる……!?」

 

急患その二、保健室行き決定。

 

 


 

 

「つ、疲れた…」

 

カナロアを保険室にぶち込み、廊下を歩くミカド。

面白いものが好きとはいえ、流石に大きなトラブルになるものは止めに入る。なんだかんだ前世に引っ張られているとはいえ、メインは今を生きるウマ娘のミカドである。生徒会として面倒事は勘弁してほしい気持ちもあるのだ。特にシャレにならない奴らが起こすトラブルは…

(例:マックイーンとゴールドシップの爺孫コンビ)

 

「先にその辺りのトラブルメーカー共を抑えてから行くか……ああ、だるい…」

 

面白いものは見たい、でも面倒事は勘弁。そう思っていたミカド。

 

しかし、彼はこのとき思いもしなかった。まさか自分がその『面白いもの』と『面倒事』、両方になる事には…

 

 


 

 

一方その頃野外のコースでは…

 

「あら、ルドルフ?どうやら貴方も巻き込まれたみたいね?」

「ラモーヌ、君は変わりないようで安心した。不易流行。例え姿は変わったとしても本質は変わらないさ」

 

メジロ家の一人。日本史上初のトリプルティアラを制したウマ娘『メジロラモーヌ』。トレセン学園生徒会長。史上初の無敗三冠を制した『シンボリルドルフ』。

その二人が話し合っていた。互いにトレーニングの為かジャージを着ている。

 

「ここは本当に面白いわ。突飛な事が日常の様に起きるのだから。毎日が飽きないわ」

「飽きないということは同感だ。だが応接不暇。鎮静化させる身としては毎度の対応で忙しくて仕方ない。」

「ふふっ…ならここで私なんかと喋っている暇はないんじゃないかしら?おサボりはいけませんわよ?」

「いやなに、エアグルーヴから『これを機会に少しは休んで下さい』と言われてしまってね。追い出されたんだ。やることもなくコースで走ろうと思ったら君がいたものだからね。一蓮托生。せっかくだから一つ。並走でもどうだい?」

 

ラモーヌに向かって手を差し出すルドルフ。そこだけ見ればまるで舞踏会で美しい女性を誘う美麗な王子様の様に見えるが、それにしてはルドルフから発せられるのは獲物を喰らおうとする獅子の如き覇気。手を取ろうものなら相手の全てを喰らい尽くすだろう。

 

「貴方にしては随分と物騒なものを出しているじゃない?それもその体になったから?」

「さあな?だが、今の()は飢えている。延頸挙踵(えんけいきょしょう)*1。この姿になってからはそれが常にやって来る。君は()を満足させられるか?」

 

 

皆さんご存知、馬の『皇帝・シンボリルドルフ』がかなり表面的になっていますので、会長は現在かなり荒々しくなっています。普通なら関わると大変なことになるので(去れることができるのであれば)去るのが安牌です。

 

この時点で周りにいた生徒は恐れ慄く。目の前にいるのは、本当にあの会長なのだろうかと。

普段から近寄り難い人物ではあるが、今の彼は近づこうならばただでは済まないことは直ぐに分かる。いくらあのメジロラモーヌでも今の皇帝の手は取らないだろう。誰もがそう思った。

 

「……ふふっ」

 

しかしラモーヌは皇帝のその手をとる。そして手を引きルドルフを自らに近づける。

 

「今の貴方はいつもと違う魅力があるわ。また違ったレース()を感じられそう。踊りましょうか、永遠なる皇帝様?貴方という獅子(皇帝)は……私を喰べられるかしら?」

「珍味佳肴。君という好敵手(獲物)を逃すつもりはないさ。勿論、リードはするが手加減はしない。ついて来れるか、魔性の青鹿毛殿?簡単に逃げ切れるとは思うなよ…?」

 

不敵に微笑む『魔性の青鹿毛』と豪胆に笑う『永遠なる皇帝』。その日のコースの周りには大量の屍が転がっていた。

 

 


 

 

トレセン学園 階段

 

メジロドーベルはかなり参っていた。その理由は…

 

「男の人…ばっか……!」

 

彼女が男性を苦手としていることだった。

 

彼女はかなり改善はされたが男性が苦手であり、最初は自身のトレーナーでさえ真面に話せなかったほどだ。

そんな彼女が学園内の大半が男性化した今のこの状況はかなり堪えるものがあるのだ。

 

(仲がいい友達もメジロのみんなも殆どが男の子になっちゃったし、ネタの供給としてはいいけど流石に疲れる……それが3日も…)

 

常に気を張りすぎて、足元も覚束ない今の状態はまずいと感じ、寮の部屋に戻って休もうと歩いているが目的地はまだまだ先。階段を降りながら歩を進める。

 

「はぁ……早くもどr(コケッ)……!?」

 

バランスを崩し、体が宙に投げ出される。

 

「えっ!?ちょっ!?」

 

見える景色スローモーションの様にゆっくり動き、地面に近づいていく。このままではまず間違いなく大怪我、少なくともレースに支障をきたす。

 

(もう、最悪……)

 

半ば諦めて目を瞑り、重力に従うまま落ちていくドーベル。

 

「危ない!!」

 

 

「あ、あれ?」

 

衝撃の様なものを感じたが痛みはなく、むしろ何かに包まれている様な感覚に少し呆けているドーベル。

 

「大丈夫ですかドーベル先輩?」

 

声の方へ視線を向けると、ウマ耳、鹿毛の髪に中心に伸びる白い毛、人懐っこそうな顔をした男性。そしてドーベルは彼にお姫様抱っこされていた。

 

(おおおおおお男の人!?いいいいやウマ耳があるってことはTS化したウチの生徒!!??おおおお落ち着け私〜!!?)

 

突然の出来事に脳内大パニックになるドーベルに対して件の生徒は心配そうな顔をしている。

 

「先輩、大丈夫ですか?どこか体をぶつけましたか?」

 

(落ち着け、落ち着けメジロドーベル。この子はウマ娘この子はウマ娘この子はウマ娘この子はウマ娘!)

「だ、大丈夫よ。特に怪我はしていないわ。助けてくれてありがとう。えっと……」

「あっ、このかっこじゃわかりませんよね。僕、『スペシャルウィーク』です!」

 

ドーベルを助けたのはチームスピカの一等星の一人、『日本総大将・スペシャルウィーク』である。

 

(スペさん!?男の子になるとこうなるんだ…素朴な感じに見えるけど溢れ出るイケメンオーラ凄い…人懐っこい感じが残っていて甘えさせたくなる感じが出てる…)

 

少しの間惚けていると、どこからか声が飛んでくる。

 

「スペちゃ〜ん!どうしたんデスか〜!?」

「急に走り出したら危ないですよ〜?おや、その方は…」

 

やって来たのは鹿毛の髪にしっかりとしたガタイと顔に目のまわりを覆うマスクを着けたウマ耳の男性と栗毛の長い髪に小柄な体型のウマ耳の男性だった。

 

「えっと…もしかしてエルコンドルパサーさんとグラスワンダーさん?」

「そうデース!俺こそが世界最強、エルコンドルパサーデース!」

「はい、グラスワンダーです」

 

スペと同じ学年であり、『黄金世代』と言われる世代の二人。『怪鳥・エルコンドルパサー』と『不死鳥・グラスワンダー』だった。

 

「ごめん二人とも。ドーベル先輩が階段から落ちそうになっていたから」

「全然問題ありまセーン!むしろグッジョブデース!」

「間に合って良かったですね〜。ところでスペちゃん、なんで露骨に僕から距離をとっているんですか?」

「ご、ごめん!?なんかよく分かんないんだけど無意識に距離をとっちゃうんだ!?」

 

(・・・・・なんかもうどうにでもなれ…)

 

色々と限界が近かったドーベルは考えるのをやめた。

 

 


 

 

中庭

 

 

「・・・・・・・・」

 

中庭で一人、ベンチで死んでいる者がいた。ノゾミミカドである。

 

(ルドルフ会長とラモーヌ先輩の並走(という名の一騎討ちレース)による被害者の対応…やばかった…全員倒れてんだもん…鼻血出していたり吐血してたりするのにみんな幸せそうな顔しているし『尊い』とか言っているピンク髪の勇者もいたし…当の本人たちはいい顔でバチバチにやりあっているし…取り敢えず保健室と予備の部屋に全員運んだけど…)

 

保健室の先生方、お疲れ様です。

 

「………帰ろうかな…」

 

流石に精神的にも肉体的にも疲れたと感じたミカド。携帯で他に何か起きていないことを確認し帰ることにした。

 

「ミッカドぉー!」

 

そんな彼に後ろから抱きついて来たウマ娘が一人。

 

「!?ブ、ブエナっ!?」

「どうしたのミカド?すごい疲れているみたいだけど?」

 

ミカドの同期であり、ルームメイトのブエナビスタ。ミカドとは前世の頃も同じ厩舎に所属していた。そのためなのか彼女との仲は良好である。

 

「い、いや…大したことはないよ。ただこの体に中々慣れないだけで…(それに加えて普段は起きない様なことが起きたりしているからな…)…あとブエナ…?」

「?な〜に〜?」

「近い」

 

この間、ブエナはミカドに抱き付いたまま。男の体と精神になっている今のミカドにとって女性であるブエナのこの接し方は思春期男子には赤面ものである。特に女性特有なモノが体に密着している状況は非常にまずい。

 

「え〜いつものことじゃん〜」

「今の俺は男なんだよそこを考えろ」

「?ミカドはミカドでしょ?」

 

キョトンとした顔をして首を傾げる。

 

(こいつ……天然無自覚男たらしか……!?)

 

「いいから離せ……って力つよ!?」

「なんでよそよそしいのか話してくれるまで離しませ〜ん♪」

「いいからさっさとはn「随分とおもしれぇことになってんじゃねぇかぁ…帝様?」…この声は…!?」

 

物陰から現れた荒々しい雰囲気を纏ったウマ耳の男。チームアルスハイルの暴君、ドリームジャーニーが現れた。

 

(い、今一番会いたくない奴に見られたぁぁぁぁぁ!!!??)

 

さて、『学園の中庭』、『男女二人(片方元々女)』、『女性が男性に抱きついている』、『あるモノが当たっている』、これらのキーワードに更に『この現場を誰かに見られる』と『その誰かが一番見られたくない人物』が入るとどうなるでしょう?

 

・・・・・・チーン!

 

A .ネタにされる、面倒なことになる。

 

「あっドリジャさん。」

「よう、絶景さん。あとその呼び方はやめろ。さぁて、お前らは一体ナニをしていたんだ?」

 

ニヤニヤと面白いモノを見る様に聞いてくるジャーニー。ミカドは汗ダラダラで、ブエナはあっけらかんとした態度で…

 

「別に?ミカドに抱きついているだけだけど?」

 

そのままストレートに言った。

 

「へぇ〜へぇ〜へぇ〜」

(クッソ…いい笑顔でこっちみんなこのチビ……!)

 

「でもミカドいつもに増して素っ気ないんだよ?ひどくない?」

「そりゃあこんな姿になっちまったんだ。それなりに変わるもんじゃねぇか?そ・れ・よ・り・も…」

 

ジャーニーはブエナをミカドから引き離し、そのアゴに手を添え少し上にあげる、いわゆる顎クイをした。

 

「お前もこんなつまんねぇ野郎よりもオレ様と遊ばねぇか?ちょうど退屈していたんだよなぁ?」

 

いつもと少し違うジャーニーの行動に流石に鈍いブエナも違和感を感じ始めたのか、「あ、えっ?」と困惑した声を出す。

 

「この体になってから色々と激って来ていてなぁ…拒否権は勿論無いぜぇ…」

 

ブエナの腕を掴み、そのまま連れて行こうとするジャーニー。

 

 

しかし…

 

 

「あまり手荒なマネはよした方がいいと思うぞ、ドリームジャーニー」

 

ブエナの腕からジャーニーの手を離させ、ブエナの体を自らの元に寄せた者_ノゾミミカドが動き出した。

 

先ほどまでとは違い声のトーンも少し落とし、いつもよりも鋭い目付きでジャーニーを睨みつけている。

ブエナもここまで来て少しだけ気が付いた。

 

いつものミカドと少し違う。

 

「アンタの言い方は人によっちゃアウトな言い回しだ。並走を頼むんだったらニシノフラワーさん(年齢的に初等部)に教わって来たらどうだ?あの子の方がお前より成績良いからなぁ。今なら頼もしいセコムが3名ほどついてくるぞ(愛が重バ場になった青雲、今回の発端のマッドサイエンティスト、アメリカンな多分銃も出来るカウボーイ)」

「へっ…テメェこそ先輩を敬う態度を芦毛電車オタク(ノゾミライン)に習って来たらどうなんだ?敬語を使え、敬語を?」

「ご心配なくともアンタ以外にはこんな態度とらねぇから安心しろこの黄金チビ」

「そりゃあ安心したぜ。今からテメェは安心できるモノがナニもなくなったけどなぁ?」

 

声に怒気が混じり始めたジャーニーにミカドは腕の中で混乱しているブエナに耳打ちする。

 

「ブエナ。」

「ふぇっ!!?////」

「今から逃げるけどじっとしていろよ?」

「えっ?」

 

ブエナを抱え(お姫様抱っこ)、向きを180°反転、そのまま猛ダッシュでその場を離れた。

一瞬何が起きたか分からなかったジャーニーだが、すぐさま切替えて二人を追いかける。

 

「待ちやがれこの鹿毛共ぉぉぉぉ!!!!」

 

「うわぁwあいつの顔見てみろよブエナ。真っ赤になって追いかけて来てるぜwウケるwww」

「み、ミカド!私、走れるから!下ろして!////」

「多分下ろす間に追いつかれるから却下!少し我慢しな!」

「で、でも私を抱えたままだと追いつかれるかもだし…!」

「ブエナ。」

 

声のトーンをまた落とし、ブエナに声を掛ける。

 

「俺を誰だと思っている?日本が誇る無敗の三冠バだぜ?ただガムシャラに走っているわけじゃ無い。あの旅路の路を悪路に変えるルートは既に構築済みだ。」

 

ミカドの言葉に頭を傾げるがブエナはミカドが走っている方向とこのまま進めば何処に辿り着くかを考えた。

 

「………まさか…?」

 

そしてミカドがある場所で足を止める。ジャーニーもワンテンポ遅れて到着した。

 

「フゥ…なんだぁ?諦めたのか?」

「いや、別に。」

 

ニヤニヤした顔でジャーニーを見るミカドにジャーニーは再び顔を歪める。

 

「何がおかしい?」

「いやなに、ここまで上手くいくとは思わなかったもんでな。まだ居るかどうか少し賭けだったからな。」

「あん?さっきから何を言って………(ゾワァ……!)!?」

 

何か悪寒を感じ取ったジャーニー。覚えがあるのか、その顔はどんどん青ざめていく。

 

「ジャーニー?」

 

彼の背後から聞こえる可愛らしい声。普通ならなんてことない声だが今のジャーニーには死神の声だった。錆びた機械の様なギギギという音を出しながら首を動かし背後を見る。

 

「なんか騒ぎになっているみたいなんだけどぉ、知らない?聞いた話だとぉ…」

 

 

「荒っぽい口調の背の低い男の子が生徒二人を追いかけ回していたらしいんだけどぉ?知らない?」

 

チームアルスハイルの副リーダー、可愛いの権化カレンチャンがそこにいた。

そう。ここはアルスハイルのチーム部屋に近い廊下。そしてミカドは少し前にカレンチャンのウマスタの投稿バナーを偶然目にした。

 

《チーム部屋でお兄ちゃんとミーティング♪》

 

そしてジャーニーが絡んできたのはそのすぐ後。逃げ切るのは難しい。ならば、

 

相手が自分たちを追いかけ回さない様にすれば良い。

 

「あ、姉御……これは…その…」

 

「はいこれな〜んだ?」

 

彼女が見せたのは携帯の画面。そこには…

 

 

アルスハイル

 

オル:すまん、兄が暴れ回っているらしい。

 

スイ:なんか騒ぎになっているっぽいわ

 

ブラ:自分も見かけたけど追いかけていたのって生徒会の子じゃ…

 

トレ:ジャーニーのバカは何処だ!!あのバカは何処に行った!!

 

デュラ:カレン、リーダー命令だ。バカを捕らえろ

 

は〜い♡

 

 

「弁明は?」

 

「…………!?!???!」

 

正にヘビに睨まれたカエル。ジャーニーは恐怖のあまりに震えている。

 

「オ・ハ・ナ・シ…しよっか?」

 

「\(^o^)/」

 

 

ギィヤァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

 

=⏰=

 

 

「ご迷惑おかけしましたぁ♪」

 

「いえいえ……ふぅぅぅ…」

 

ドリームジャーニーが連行され、なんとか無事に乗り切ったことに安堵したミカドは大きなため息をはいた。

 

「ミ、ミカド…その…」

「ん?……ああ悪りぃ」

 

未だにブエナを抱えていたことを思い出し、彼女を下そうと顔を見た。

 

「………////」←恥ずかしさの余りに顔が紅い+抱えられて走った事がないので少し恐怖を感じて若干涙目。

 

「……………」←背後に雷が落ちる。

 

そっとブエナを下ろすミカド。

 

「ありがとうミカド。じゃあ私はこれで…」

「待て」

「えっ?」

 

ドンッ

 

という音と同時にブエナの動きが止まる、否、止められた。

 

「………へっ?」

「……お前さぁ…それは反則だろ…」

 

壁ドンである。

 

「ミ、ミカド?どうしたn……!?」

 

先ほどジャーニーにやられた様に顎クイをされ、思考が停止するブエナ。

 

「今の俺は男なんだよ。正直いうとお前の行動にさっきから結構理性が限界に近いんだわ」

「はっ、えっほえ…?」

 

互いの顔が近づいていく。ブエナの思考は未だに纏まっていないがこれだけは分かる。

 

色々とヤバイ状況だと。

 

「文句は受け付けないし拒否権もないからな?」

 

互いの顔が重なるまで後少し…

 

 

「お前ら押すな少し離れろ!!」

「上手く見えないんですよ我慢してください!」

「お前さんら騒ぐな!気づかれるだろうが!」

「やめましょうよぉバレたら大変ですよぉ」

「私もやめた方が…あ」

 

ドンガラガッシャーン!!!

 

廊下の陰から大きな音が聞こえ、二人は反射的にそちらの方を見る。そこには…

 

「いてて…」 押しつぶされているノゾミフェニックス。

 

「誰ですか押したのは!」 フェニックスの上で倒れているノゾミライン。

 

「すまん俺だ。足滑った。」 二人の上に乗っているノゾミレオ。

 

「だ、大丈夫ですかぁ〜!?」 オロオロと慌てているノゾミカンパネラ。

 

「あ〜あ〜何してんだか…」 呆れているノゾミナチュラル。

 

ノゾミのウマ娘(大半が男体化)が陰から先ほどまでのミカドとブエナのやり取りを見ていたのだ。

 

「………」

 

「あっ、ミ、ミカドこれはだな」

「フェニックスが貴方がジャーニー君に追われていたのを見て野次ウマとして面白がって見ていました」

「おいライン!?テメェも『少しだけですよ』とか言ってノリノリだったじゃんか!」

「いやぁ〜ミカド、少し爪が甘かったな。俺らが人払いさせといたからよかったけど、ここ廊下だから普通に見られる可能性あったぞ。まあ、それはそれで面白そうだけどなw」

「ナチュちゃん。レオ先輩が火に油どころか業火にガソリンポリタンクレベルに注いでいる気がするんだけど気のせいかな?」

「カン先輩大正解〜。………バカ三人生贄に捧げて逃げるよ」

「Ho capito(イタリア語で、了解)」

 

そそくさと離れて行く二人に気付かないバカ三人衆(フェニックス・ライン・レオ)を絶対零度の眼差しで見つめるミカド。

 

「おい」

 

「あん?」「ん?」「ヤッベ」

 

三人(バカ共)が声の方に顔を向けると…

 

「貴様らは如何やら死にたい様だな。」

 

悪鬼羅刹が居た。

 

「堂々とやろうとした俺にも非があるのは認めよう。油断大敵。気を抜いていたのも事実だ。」

「だが貴様らは俺の逆鱗に触れた。怒髪衝天。ここまで怒りを顕にするのは久方振りだ。」

 

表情は見えない。しかし鋭い眼光だけははっきりと見える。誰が如何見ても分かる。

 

(((物理的にくびだっちされる)))

 

三人の心が一つになった。

 

「ミ、ミカドさん…申し訳「誰が話していいと言った?抗拒不承*2。貴様らに拒否権も生存権もない。」

 

レオの言葉を遮り一蹴。そして何処からか取り出した刀を手にし、鞘から刀を抜く。

 

「えっ本物?」

「模造刀だと思います。そうでなくとも刃引きされているでしょうし…」

「すまん、二人とも。あれ正真正銘のガチモンの日本刀。」

「「えっ?」」

 

「首を差し出せ。不埒者共!!」

 

 

この日、三人のノゾミの者がダートに埋められた。

 

埋めた張本人は冷静になった後なんてことをしようとしていたんだとパニックになり、宿敵とも言えるセイウンワンダーに介錯を頼み切腹しようとするが頼まれた本人と同期、チームメイト、そして色々やろうとしていた張本人に止められ、元に戻るまで反省文50枚と奉仕活動に精を出すことになった。

 

「あの三人を始末したことについて?微塵も謝る気なんてありませんよ。」

 

*1
人やことの到来を待ち望むこと。また、優れた人物の出現するのを待ち望むこと

*2
相手の依頼・要求を激しく拒否して認めない事




因みにミカドの刀はグラスが固有で出す薙刀と同じ扱いです。
次回は競走馬編に戻ります。ミカドの勇姿にご期待を!
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