紡がれる『帝』の血脈   作:シントウ

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そこまで間を空けないで投稿!


帝の取材/三冠の称号を持つ豪傑たち 後編

初めまして皆さん。

私は乙名史悦子、月刊トゥインクルの記者をしております。

 

本日は錚々たるメンバーを集めた特別な取材となっており胸を躍らせてきたのですが……

 

「ミカド、余と走れ。いつかの決着をつけるぞ。」

「今はそのことについて言うような場ではない。大人しくしろ暴君。貴様の戯言に付き合う気は毛頭ないのでな。」

「貴様はやはり面白い。余の忠言を戯言と申すのは貴様かジェンティルぐらいだが…貴様の方が世の好みだ。」

「ふざけてないで座れ。他に迷惑だ」

 

とんでもない光景が目の前で繰り広げられています…

 

片や『暴君・オルフェーヴル』さん、片や『希望の帝・ノゾミミカド』さん。お二人はトゥインクルシリーズでかつて鎬を削った仲。オルフェーヴルさんの姉であるドリームジャーニーさんと仲がよろしくないことは聞いていましたがまさかオルフェーヴルさんも…

 

「あ〜らら…やっぱりこうなった。あの二人いつもああだよね?」

「二人の仲がそこまで良いものではないことは聞いていたが、考えなくてもこうなる可能性になるのは自明の理だった…」

「だから言ったんだぞ私は…『責任取れるのか?』と…こうなるのは火を見るよりも明らかだったぞ」

「……仕方ありません。先輩方、少々お待ちを…」

 

他に待機していた方の中で小柄な鹿毛の黒く長い髪を靡かせるウマ娘さんが前に出る。

 

「あ、あなたは…!?」

「乙名史記者、少々お待ち下さい。」

 

そのお方は睨み合うお二人の前に出る。身長が高めなお二人(ミカド:163cm、オルフェ:167cm)と並ぶとさらに際立つ。

 

「御二方。」

 

「ん?」「はい?」

 

 

「これ以上は乙名史記者にも迷惑がかかりますのでやるのであれば外でやって下さりますか?」

 

ゾクっ!

 

そんな擬音が聞こえるくらい部屋の温度が一気に下がる感覚に襲われた。

 

声色も態度も口調も何も変わっていない。しかし纏う雰囲気は先ほどまでとは別物。

 

(こ、これが近代日本レースの結晶と言われたウマ娘……『ディープインパクト』さんの覇気……!)

 

無敗三冠を成し遂げ、GⅠ7勝をも達成したルドルフさんの再来と呼ばれた最強のウマ娘。そんな方から放たれた覇気を真正面から受けたお二人も冷や汗をかいているのがわかる。関係がない私ですら震えが止まらない。いやむしろ真正面から受けて冷や汗で済んでいるお二人も凄い!

 

「……っ。興が醒めた。今は貴様に従ってやろう『英雄』」

「………申し訳ございませんディープインパクトさん。」

 

「いえ、わかっていただいて何よりです。」

 

いつの間にか元に戻ったディープインパクトさんに促されながらもお二人は席に着く。

 

(やっと取材ですね。おっと、私も座らないと……!?)

 

振り返って私は再び凍りつく。そこには…

 

「へぇ……」

 

「ふむ……」

 

「ほう……」

 

 

まるで獲物見つけた肉食獣のように目をギラつかせた三人がいたからです。

 

(無事に終わると良いのですが…)

 

今までにないタイプの緊張とこれから始まる素晴らしい回答への高揚感に挟まれながら取材を始める私だった。

 

 


 

 

「そ、それでは三冠ウマ娘たる皆さんに取材をさせていただきます。ご存知かもしれませんが一応自己紹介を。私は月刊トゥインクルの乙名史悦子と申します。本日はよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。では我々も、トレセン学園生徒会会長のシンボリルドルフと申します。」

「……副会長のナリタブライアンだ。」

「生徒会の書記兼経理のノゾミミカドです。お願いします。」

「ミスターシービーだよ。よろしくね♪」

「ディープインパクトです。先程はお騒がせしました。」

「……オルフェーヴルだ。」

 

「はい、よろしくお願いいたします。ではまず最初に皆さんは『三冠ウマ娘』という称号をどう感じていられますか?」

 

「ここは私から行こうか?この中じゃ私が最初に取ったわけだし。」

「そうだな、では頼むよシービー。順番は世代順で行こう。」

「任された。まずそうだな…凄い栄誉なことであることはわかっているよ?でも私はそういう栄誉みたいなものには興味がなかったからね。私が好きなように走っていたら手にした称号みたいなものだから…強いて言うなら『私が自由に走った結果手にした証』かな?」

「なるほど…」

 

シービーは自由をこよなく愛するウマ娘。強制されることや束縛されることを誰よりも嫌がり自由にターフを駆けることこそが彼女の目的。だからこそ三冠というもの自体にこだわりを持たないのだろう。

 

 

「次は私だな。私は『全てのウマ娘の幸福のため』にその前線に立つものとして、皇帝として、シンボリの名に恥じない走りをすることが第一にありました。三冠も結局はその目的を達成するために手にする必要があったから手にしたに過ぎません。勿論素晴らしい栄誉であることは重々承知しておりますが三冠は手段であって目的ではないのです。ですので私にとって三冠は『己が存在の証明』だと思っています。」

 

ルドルフは日本レース界で初の無敗三冠を成し遂げた存在。そんな偉業を成し遂げた彼女はその栄誉がどれほどのものかを理解し、己の目的のために利用する。圧倒的強者として、後輩たちの目標として存在するために。

 

「さ、さすがですねシンボリルドルフさん…!」

「いえ……私もこれくらいにしておこう。時は金なりだ。時間は有効(・・)に使ってゆうこう(・・・・)ではないか。」

 

・・・・・・・・

 

 

「チッ…!さっさとやるぞ。私はただ強い奴と走りたかったからだ。以上。」

「……ブライアン先輩、もう少し、もう少しだけコメントお願いします!」

「……私は常に渇きを感じていた。だがその渇きが癒える瞬間がレースではあった。強者との戦いでは特にだ。だからクラシックレースに参戦した。三冠には強者が集うからな。そしたら手にしていた。私にとって三冠は『強者を追い求めた道』だろうな。」

 

三冠に挑む度にブライアンは着差を広げていった。怪物と称される彼女にとっては三冠など微々たるもの。強きものたちに出会い挑むために手っ取り早いから挑んだまで。全ては渇きを癒すため。

 

「強者を追い求めるその姿勢、素晴らしいです!!!他にも聞きたいですがここは堪えて……ディープインパクトさん、お願いします。」

 

「はい。私は先程の皆さんの話が混ざった感じになりますが、私も走ることが大好きで特にレースで強い方と走ることが堪りません。三冠も強きものと相見えるために目指しました。ライバルたちと出会い、競い、その戦いを勝ち抜き、己の力を証明しました。レースはライバルたちとの雌雄を決する場であり、あの三つのレースは最高の舞台でした。私の三冠は『戦友たちとの決戦の場』といったところでしょうか?うまく説明できなくてすみません。」

 

圧倒的な走りはかつて走っているのではなく飛んでいるかのようだと称えられたその豪脚。彼女にとって最高のライバルたちと競い合ったあの舞台は掛け替えのない存在となったのだろう。

 

「いえ、熱い気持ちがヒシヒシと伝わってきたので無問題です!」

「そうですか、ありがとうございます。ではミカドさんどうぞ。」

 

「承りました。私がレースに憧れを持ったのはシンボリルドルフさんのレースを見た時でした。三冠を取った菊花賞を見て、胸の内側にあるものが溢れ出しそうになるくらい高揚したことをはっきり覚えています。そしていつかあの舞台に、私が三冠を取って立ってやると目標を掲げました。皐月賞で三つ巴になり、ダービーで囲まれたのちに骨折が発覚、そして調整不足が言われる中での菊花賞の出走、全てを乗り越えて手にしたこの称号はかけがえのないものになりました。私に取って三冠は『憧れを追い、逆境を乗り越えて手にした冠』です。」

 

三冠ウマ娘の中でも特に波瀾万丈ともいえる経歴をもつミカド。前4人は圧倒的な実力を三冠路線で見せたが彼女だけはどのレースでも接戦を演じた。どんな不利な状況になろうと最後まで足を止めず、生来の諦めの悪さで冠を手にした彼女にとって三冠は憧れを自らの手で掴んだ何よりも変え難いものだろう。

 

「どのレースでも苦境に立ちながら最後まで諦めずに走り切ったミカドさんのその思いは素晴らしいものです!!さてでは最後にオルフェーヴルさん、よろしくお願いします!」

 

最後の1人、金色の暴君オルフェーヴルが口を開く。

 

「我は我の好きなように走った。もとより三冠は元々我のもの。故に我の手で取り戻したに過ぎない。あれに触れることは誰であろうとこの我が許さん。三冠は『我の所有物』…これは決定している」

 

天上天下唯我独尊を貫く彼女にとって三冠は最初から己の所有物。だから取りに行ったに過ぎない。シンボリルドルフのごとくカリスマを持ち、ナリタブライアンのごとく闘争心を合わせ持つ彼女は正に暴君。乙名史もそのカリスマに惹かれてしまう。

 

「はわわ…!最初から決まっていたと言わんばかりの自信…これがオルフェーヴルさんのカリスマ性につながるのですね…」

 

「だからこそ」

「へ?」

 

「我の所有物を掠め取った此奴らが気に食わん」

 

オルフェーヴルの空気がまた変わる。

 

「我こそが真の三冠ウマ娘。貴様らなど雑兵に過ぎん」

 

「あ、あのその辺に…」

 

これはまずいと思った乙名史だが…

 

「ほう…ならば…」

 

もう遅い

 

「貴様は七冠を手にすることが出来たか?」

「タブーを起こすことが出来た?」

「3000mを七バ身の差で勝てるのか?」

「無敗でその称号を手にしましたか?」

「骨折明けの短い間隔で長距離レースを勝てるのか?」

 

既に全員、普段は見せないような好戦的且つ僅かに怒りを含ませた表情でオルフェーヴルを見つめていたからだ。

 

「ならば全員掛かってくるがいい…!貴様らなど我の敵などではないことを教えてやろう!!」

 

かくして、取材はいつの間にか『三冠ウマ娘たちによる夢(地獄)のレース』に成った。

 

「……なんでこう成ったんでしょうか?」




補足
オルフェーヴルとミカドは基本的に仲が悪いです。これは競走馬編でいずれ語ります。

最後のシーンではシービー以外少しだけ怒ってます。シービーは雰囲気に乗っただけ。

CB「だってそっちの方が面白いでしょう?」

もちろんこの中で一番イラついてるのはミカドです。
というか基本的にミカドフェスタ以外のステゴ産駒と仲がよろしくないです。
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