今回は三冠ウマ娘の対決です。
「さあさあ!!誰が一体予想したでしょうか!?トレセン学園始まって以来の大レースにこの場にいる全員が胸を高鳴らせております!!」
トレセン学園の芝コース周辺に溢れんばかりの人やウマ娘たちが集まった。
その理由はもちろん、今から始まる世紀の大レースが行われるからだ。
「なんでこんなことになったのよ…?」
「まあ…あんなメンバーを一塊にしたのが運の尽きだと思うぜ俺は…」
頭を抱える女性は『東条ハナ』。トレセン学園の一流とも言えるメンバーが揃う『チームリギル』を担当するトレーナーだ。
隣で飴を舐めている男性トレーナーはクセものだらけだか実力はピカイチの『チームスピカ』を担当する『沖野』だった。
「ルドルフが止めるかと思っていたんだけど…まさか助長させるとは思わなかったのよ…あとはノゾミミカドとか…」
「ルドルフはどっちかっていうと我慢できないタイプだろ。ノゾミミカドもオルフェーヴルが相手だとムキになるから今回はなるべくしてなったようなもんだ。」
二人が話している間に周りが盛り上がる。どうやら騒動の張本人たちが現れたようだ。
『おおっと!遂に選手たちが現れました!歴史に名を残した勇士たちの登場です!!』
1枠1番、数多の記録を打ち立てる帝
ノゾミミカド!!
2枠2番、自由にターフを駆けるエンターテイナー
ミスターシービー!!
3枠3番、近代日本レースの至宝
ディープインパクト!!
4枠4番、史上初の無敗三冠を成し遂げた皇帝
シンボリルドルフ!!
5枠5番、ターフを蹂躙する一匹狼
ナリタブライアン!!
6枠6番、全て破壊する金色の暴君
オルフェーヴル!!
勝負服に身を包んだ6人の三冠ウマ娘の称号を持つウマ娘たち。
ある者は余裕な表情でファンサービスをし、ある者は瞳を閉じて精神を統一し、またある者は深呼吸をして心を落ち着かせるなど全員がパドックで己の姿を観客たちに魅せる。
『この史上最強ともいえるメンバーたちのレースに私も心がバクシンしています!!おっと自己紹介がまだでしたね!?実況は模範的学級委員長、サクラバクシンオーが、解説は月刊トゥインクルの記者、乙名史悦子さんでお送り致します!!』
『よ、よろしくお願い致します…』
『それではコース紹介です!!コースはこのトレセン学園芝コース距離2400となります!!』
「まあ、こうなったらもう仕方ない。それでおハナさん、誰が勝つと思う?」
「……分からないわ。安定が売りのルドルフ、追い込みで一気に抜き去るシービー、ディープ、オルフェーヴル、差しで溜めた足を直線で爆発させるブライアン、そして逃げでペースを操り最終局面で更にスパートをかけるミカド…全員があのメンバー相手でも勝てるビジョンが浮かぶのよ…」
「なるほどな…」
「しかし同時に全員が負けるビジョンが浮かばないのも事実だ。」
「荒れに荒れますよ、このレース…」
二人の後ろから現れた二人の男。
一人は鍛え抜かれた体に白のジャージを身に纏い、黒の帽子とサングラスをした強面の男、『黒沼』。
もう一人は痩せ型でスーツを着た一見普通に見えるが雰囲気が掴みにくい男、『チームカノープス』のトレーナー『南坂』だ。
「おたくらも来たのか?まあそうだよな…」
「今後の糧としてこのレースは見逃せない。」
「敵情視察にもなりますから。」
トレーナーとしては一つの頂きに到達した彼女たちの走りを見ておきたいと思うのは当然の考えだ。
現に別のところでも…
「いいですかダイヤさん、クラウンさん。あの方々の走りをしっかり目に焼き付けておくのですよ。」
「はい。勿論です。」
「我明白。」
「ミーク、私たちもしっかり見ましょう。これは今後見ることが叶わないレースになるかもしれませんから。」
「……はい。」
「全く、生徒会が3人もいてこのような事態になるとは…そしてそれを了承した理事長も…しかし、トレーナーとして三冠ウマ娘の走りを見逃す訳にはいきません。リトルココン、ビターグラッセ、目を離してはいけませんよ。」
「「はい!」」
新人からベテランまで多くのトレーナーやウマ娘たちが集まっている。全員、このレースの行く末がどのような結果になるのか気になっているのだ。
『さあ、出走者たちがゲート前に集まりました!まもなくレーススタートです!』
ゲート前に集まった三冠ウマ娘たち。しかしその一部は…
「なんでこんなことになったんでしょうね…?」
「すまない、自制が出来なかった…」
「少し気分が高揚してしまい…」
こんなことになってしまった若干後悔しているものが3名(ミカド、ルドルフ、ディープ)がいた。
比較的常識人であるが元々オルフェーヴルが苦手な上に挑発されたら乗ってしまうミカド、立場故の責任感を持つがその内情は全てを喰らうが如くレースに貪欲なルドルフ、レース以外では温厚で常識的だがレースになると抑えが効かなくなるディープ。
全員ある意味爆弾を抱えているこいつらが比較的まともな方なのだ。
因みに順にルドルフ→ミカド→ブライアン・ディープ→シービー→オルフェーヴルといった感じで問題行動が多い。
「しかしこうなっては仕方ない。力戦奮闘、このレースを全力でやりきろうではないか」
「えぇ…恐らく遅かれ早かれこの様な結果になっていたでしょうし、今は楽しみましょう。」
「…(ハァ…)それもそうですね。では…」
全員に向けてミカドが覇気を放つ。
「全員捻り潰しましょう」
「まとめて撫で切ってやろう」
「豪快に楽しもうか♪」
「素晴らしいレースを…」
「ブッチ切る…!」
「余の力で貴様らを支配してやる」
『全ウマ娘ゲートに入りました。……スタートしました!!』
ゲートが開くと同時に大歓声が巻き起こる。
『先頭を進むのはやはりノゾミミカド、2番手に付いたのはナリタブライアン。一バ身離れてシンボリルドルフ、更に二馬身離れてディープインパクト、先頭ノゾミミカドが第一コーナーを通過!そのすぐ後ろにミスターシービー、シンガリにはオルフェーヴル、こういった展開です!!全員自分達が動きやすい位置につきました!!』
『後方勢が多いこのレース、恐らく最終局面で大きな展開が起きそうです!』
『先頭を悠々と進むノゾミミカド、現在2番手とは2バ身半の差をつけて独走中!ナリタブライアンは落ち着いてその後に続きます。先頭勢は第二コーナーに入りました。シンボリルドルフは中段枠に陣取りレースを見ていますね。ディープインパクトは少し前に出ました。ミスターシービーは変わらずディープインパクトの後ろに、オルフェーヴルはその1バ身後ろ。向正面に入ってノゾミミカドが依然先頭。後方との距離を計りながら進んでます!』
「ノゾミミカドの逃げはスズカともツインターボとも違う『幻惑逃げ』に近い走りだ。並のウマ娘には奴の走りについて行こうとすればすぐに潰れる。」
「それが分かっているからこそ皆無理には攻めずに各々の今のペースでできる走りに徹しているわ。」
「2400をあのメンバーから逃げるにはノゾミミカドにとって少し辛いからな」
「逆にあのペースで2400をノゾミミカドに着いていくのは彼女たちもきついと思いますよ。」
トレーナー勢の解説が進むなか、いよいよ最初の1000mを通過する。
『最初の1000mのタイムは58秒2!?かなり速いペースで進んでいます!!』
『ノゾミミカドさんはまだ余裕があります。恐らく彼女にとってはこのタイムは理想通りのものなのでしょう。』
『このハイペースで後続勢は追いつけるのか!?脚は残っているのか!?第四コーナーに入りまだ動かな……いやここで動いた!!『ミスターシービー』!!』
「さぁ、始めようか!」
誰よりも自由を愛し、タブーも恐れぬ彼女のことを稀代のエンターテイナーと呼ぶものは多い。
誰にも指図されず緑のターフを彼女は自由に駆ける。
『ここで動いたミスターシービー!シンボリルドルフを躱し、ナリタブライアンと並ぶがすぐに抜いた!全く予想がつきません!?』
「くっ…!あの人がこうも早く動くとは…!」
「ふふっ♪今日の気分的に早めにいったけど上手くはまったかな?」
動揺を隠せないミカドに余裕な笑みを浮かべるシービー。そんな二人の距離が残り一バ身、第四コーナーの中盤になった時…
「ここだっ!」
「参りましょう!」
怪物と英雄が動き出す。
ハイペースだろうが、距離が延びようが、どれだけ離されていようが、この二人には関係ない。
片や三冠レースで全て圧勝どころか距離が延びるたびに着差を広げた『怪物ナリタブライアン』。
片や皐月賞で出遅れながらも豪快の末脚で他を圧倒させ勝利をもぎ取った『英雄ディープインパクト』。
異次元とも言える脚で二人は差を縮めていく。
『ここで動いたナリタブライアンとディープインパクト!全てを喰らう怪物が地を駆け、英雄は翼を広げて飛翔する!!先頭との差は既にあってないようなもの!!』
大歓声が巻き起こるトレセン学園レース場。世代は違えど彼女たちはその時代に全てのウマ娘たちの頂点に君臨した王者たちだ。その走りを魅せられては盛り上がらない筈がない。
『盛り上がってきたこのレース!!第四コーナーも終わり直線に差し掛かります!!』
しかし
「誰か」
「忘れておらぬか?」
ゾワッ…!
「「「「…!!」」」」
このレースは6人で行われている。
そして動きがなかったのは『あの』二人。
「さあ…皇帝の走りをミセテヤロウ!!」
「王の走りに屈服するがいい!!」
『皇帝シンボリルドルフ』
『金色の暴君オルフェーヴル』
ある意味三冠ウマ娘として真っ先にといっていいほど名前が挙がるのは彼女たちだろう。
無敗の三冠、絶対的存在として語られる皇帝。
圧倒的な走り、永遠に色褪せぬ輝きの王者。
反逆者を、演出家を、幻の三冠を、不沈艦を、絶景を、シルバーコレクターを、
数多の名ウマ娘たちを屠った強者。
それが彼女たちだ。
『ここで遂に来た来たシンボリルドルフとオルフェーヴル!!!!最後方に位置していた二人がここで己の牙を剥く!!直線コースに入りって怒涛の展開が続いています!!先頭はノゾミミカドがまだキープしていますが接戦の2番手』たちはもう半バ身もないこの直線で……遂に並ばれたぁぁぁ!!』
遂に捉えられたノゾミミカド。逃げウマ娘は捉えれればもう終わり。あとは使い果たしたスタミナに従うかのように失速するのがオチだ。
「誰が…」
「誰がここで終わるかぁぁああっ!!!!」
だが此処にいるのは史上三人目の無敗の三冠ウマ娘。
決して先人たちのように圧倒的な差をつけたわけではない。順風満帆な道ではない。全てが綱渡り。踏み外せば終わるギリギリの勝負をしてきた。
それでも彼女は持ち前の勝負根性で粘り、走り、栄光を掴み取った。
『帝ノゾミミカド』の最強で最後の武器はこの『粘り強さ』。例え相手が誰であろうとどれだけ不利な条件だろうと彼女は先頭を譲らない。
『ノゾミミカド、失速はしません!!むしろ加速を続けます!!それに釣られるかのように全てのウマ娘が加速します!!なんという速さ!!勝負は全く予想がつきません!!』
歓声がさらにあがり、誰もが釘付けとなる。このレースで勝者となるのは誰か。それを見届けるために。
「ハァァァ!!」 稀代のエンターテイナーが
「ダァァァ!!」 絶対を知らしめる皇帝が
「アァァァ!!」 全てを喰らい尽くす怪物が
「ヤァァァ!!」 天翔る英雄が
「ルァァァ!!」 全てを支配する暴君が
「ウァァァ!!」 希望を魅せる帝が
全員が、並ぶ。
『三冠の称号を持つ六人、誰もが一着を譲らない!!!!誰が勝利するのか、誰が敗者となるのか、今全員が流れるように揃ってゴールイン!!!!!!』
sideノゾミミカド
「そしてその後全員で色々迷惑かけた穴埋めとして奉仕活動やら反省文やらトゥインクルへの謝罪をしにいったってわけ…」
「いや何してんの?」
あのレースからしばらく経った日、私はある人物と学園の中庭のベンチに座りながらその時のことを話していた。
「もう…乙名史さんもだいぶ困っていたでしょ?三冠ウマ娘たちが揃って、しかも半分が生徒会のメンバーがいてなにしてんだか…」
「おっしゃる通りで…」
呆れ顔をする彼女に私は苦笑いでそう返した。
「でもね、あの人たちと本気のレースをしたことに後悔はないし、他のみんなもそう思っていると思うわ。」
「……まあ気持ちは分かるよ。私もその場にいたら走りたくなるし。」
そういってお互いに笑う。私とよく似た笑い方をするウマ娘。
「さて、それじゃあ行くね。」
「もう?もう少しゆっくりしておけばいいじゃない?」
「これでも色々忙しいんだよ。
「はいはい、かわいい
論争が起きそうなので誰が勝ったかは明記しません。ご了承下さい。
コイツが勝つだろうと言う方は他の方と喧嘩にならない程度でコメントしていってください。
因みに最後に出てきたキャラの詳細もまだ明かしません。
因みに帝の勝負服は和服をベースにしたもので、作者が勝負服の見た目として参考にしたのはアズレンの扶桑で検索してください。
調べている中でイメージに一番近かったのがこのキャラの服でした。
そして馬の方の勝負服はこちらです。
【挿絵表示】
この配色とアズレン扶桑の服をベースに皆さんの中でイメージしてください。