それから、小人の王が座していたであろう玉座に腰掛け、パーソナルコンピュータの使い方を学んでいった
……とは言うが、ちゃんと使えるようになるまでどれだけの時をかけたことか
子供が生まれ、そして死ぬ程の時はかけたような気もする
ただでさえおかしい時の流れが、特にめちゃくちゃになったこの地では不毛な考えではあるのだろうが
まず、コードという線に竜狩りの剣槍を巻きつけるだけで動く、ということが分かるまで何度コンピュータを黒コゲにしてしまったことか
それでもようやく電源をまともにつけられるようになったころに、マウスで動かす、という言葉がソウル内に現れた時は、不死街の大ネズミを瀕死にして無理矢理ソウルに入れ連れてきたものだ
その後、当然のようにコンピュータは壊されたが
その度にグレイラットから修理の光粉を買い求めた
今では私の顔を見るなり、何も言わず光粉の山を積み上げてくる
その数はよく覚えてはいないが、少なく見積もっても2万以下ということはないだろう
よくもまあそれだけコンピュータを壊したものだと自分に呆れると同時に、それだけ調達するグレイラットにも驚かされる
ファーナム装備一式を身に纏っていたと言われている、絶望を焚べる者
彼は、ただ莫大なソウルを集めたことで、薪の王たる資格を手にしたと伝えられている
そのまま彼は結局そのソウルを持ち逃げして世界を周ったらしいが、修理の光粉を買い求めるため私が捧げたソウルがあれば、今のグレイラットを最初の火の炉に焚べることで、王の薪が無くともきっとまた最初の火が燃え盛ることだろう
「……あんた、なにかろくでもないことを考えてるんじゃないかね」
「いやいや、まさかまさか」
どうやら、私がグレイラットの頭巾越しに彼の表情がわかるように、グレイラットも兜越しに私の表情が見えるようだ
しかし、使いこなすことができれば、コンピュータとはまったく素晴らしいものだと思い知らされる
そこから流される音楽
言葉はほとんど分からないが、複雑で美しい旋律を聴いているだけで私のソウルは震え、枯れ果てたとばかり思っていた涙を何度も流すこととなった
何千枚とある絵画
私の知らない世界の風景、ダークリングの影もなく、平和そうな街を歩く楽しげな人々
そして多くの絵画にある、一片の陰りなく世界を照らす太陽
このコンピュータができるまでにどれだけの時が流れたか、私には知るすべはない
だが、はるか未来の世には、すばらしい父のような、でっかく熱い太陽が輝いている
それが、私にはたまらなく嬉しかった
「太陽万歳!!」
太陽をこよなく愛したと伝えられる戦士の鎧に身を包み、私は初めて心からの太陽賛美を行うのだった
……余談だが、コンピュータの中の数千枚の絵画の半分ほどは、女性の扇情的な絵だった
それを見たとき、無くなったとまで言われた、私の二度と動かないはずの、折れたグルーの腐れ短刀は、みるみるうちにグレートグラブ、レドの大槌、大竜牙と化した
「よっしゃぁぁぁぁ!!!!」
コンピュータは私の擦り切れた心を震わせ、涙を溢れさせた
もしもこの世界が終わったとしても、また太陽は輝き、人の営みを照らすのだという希望をくれた
そして、灰としてでも、不死としてでもなく、ただ一人の男としての自信も蘇らせてくれたのだった
しかし、一つ大きな不満がある
それというのも、文字がろくに読めないのだ
ときおり読める文字もあるが、主として使われている文字が読めないのでは話にならない
私は(ロクに使えないが)、奇跡などの物語を読むのが好きであり、点字聖書を手に入れるたびにイリーナに読み聞かせをせがんだものだ
物語を聞きたいあまりに、なにか禍々しい点字聖書を読んでもらおうとしたら、イーゴンにバクスタでどつかれたこともある
あの野郎、少しは手加減しろ
他にも、ファランの城塞でホークウッドに竜の力をくれと言われたので、光る竜体石と光る竜頭石と交換で、不死隊に伝わる深淵の魔物を討滅した騎士アルトリウスの逸話を聞かせてもらった時は興奮したものだ
アンドレイからは、はるか昔に武器を鍛えてやったという、大きく燃え盛る始まりの火を継いだ、ロードランの不死の英雄の話を教えてもらった
道で偶然出会った名も知らぬ不死からは、亡者狩りの大剣を振るい、当時の亡者に恐怖を刻みつけた英雄、ミラのルカティエルの伝説を教えてもらった
その不死は別れ際に、彼女の伝説を興味深く聞いてくれた礼だ、と言って数百万ソウルを惜しげもなく私にくれた(そのほとんどは修理の光粉代に使ってしまったが)
ミラのルカティエルの話ばかりで自分のことを語らなかったため、そのまま名を聞きそびれてしまったが、その気前の良さを見るにきっと名のある不死なのだろう
話が長くなったが、とにかく私は物語を読むのが大好きなのだが、このコンピュータに収められているであろう物語を読めない、というのが非常に残念なのである
おそらくは物語なのだろうと思われる長文を見るたびに、なんとかして読めないか苦心するも、こればかりはどうにもならない
困ったら、貯めたソウルで筋力を高め、重厚な半葉の太刀を振るって何度も挑戦すれば道が開ける、という類の話ではないのだ
もっとも、そういった類ではない悩みなど、あまり見られない世界ではあるのだが
その世界の火を灯すか、消すかと奔走している私が言うのもなんだが、改めて本当にろくでもない世界だなと痛感する
「何か、私でも読めるような話は無いものか
………ん?」
フォルダの海をかき分け、なにか面白そうなものは無いかと探していた時、なんだか妙に気になる名前を見つけた
「Doki Doki Literature Club?」
ドキドキ文芸部
文芸、とはなんなのか
いまいちピンとこないが、おそらく文章を紡ぐ、物語のような事だろうと脳内補完した
願わくば、私の分かる言葉で書かれているといいのだが
そう思いながら、ファイルをクリックする
〜〜〜〜♪
新しい画面が出た?
これは音楽だったか?
いや、文章も出てきたぞ
ふむ、音楽と文章を同時に流すという手法か
なるほどなぁ、これは面白い
しかも出てきた文章は私でも読むことができる
これは期待できそうだ、なになに………
[このゲームには子供に相応しくない内容、または刺激の強い表現が含まれています
また、不安やうつ病に苦しんでいる方はこのゲームをプレイするべきではないかもしれません]
………これは、大丈夫だろうか?
イルシールの地下牢や罪の都地下の猛毒沼、アリアンデル絵画世界のハエ溜まりで怖気づいて死んだ私だが、読んでも平気なんだろうか
不安はある
しかし、未知の物語に対する好奇心の方がずっと上回った
万一怖気死んだ時のため、残り火を準備して、話の続きを読むことにするのだった
発掘されたパソコンはなんの事はない、現代日本のオタクの物
そして灰の人は英語は読めますが、日本語はからっきしです
日本語吹き替えのある狩人様、もともと日本人のチワワなら読めていたことでしょう
ここからプレイを始めるドキドキ文芸部は英語のゲームです
ですが、わかりやすさを優先するため(と言うよりも私が英語がからっきしなので)に、文章は日本語で書きますので、日本語を知らない灰の人が日本語を分かっているような描写になることもあるかもしれませんが、すみませんがそこは脳内補完をお願いします
それでは、今回も読んでいただきありがとうございます