ウマ娘になりました。全距離芝ダート重賞目指して頑張ります 作:ウマ娘に転生しててぇてぇを見守り隊
ジョージライダーステークスから香港へ。
香港のGI チャンピオンズマイルに出走。
これに勝利した。
15戦5勝(GI 4勝)
収得賞金、9億2,280万円
イギリスへ渡り、KGVI&QESの前哨戦たるプリンスオブウェールズステークスに出走した。
ほぼ2,000mの芝であり、中距離戦に分類される。
欧州には運がないのか、私の前5人が転倒。私は障害競走よろしく飛び越えたものの、重い芝での跳躍に足を取られ着地に失敗して転倒。頭を打ち付けたこともあり、万が一を考えてそこから動くのを止め、競走中止。
16戦5勝(GI 4勝)
幸い、その後の検査では骨折等の異常は無く、打撲程度で済んだ。
KGVI&QESに向けて調整を続けることに。
芝長距離(GI)、ダマイル(GI)、ダ長距離(JpnII)、芝短距離(GI)、芝マイル(GI)と勝ってきた私。
まさか、海外でここまで活躍できるとは、最初は思ってなかった。
マスターの指示のおかげだった。
そう、マスターは転々とする戦場の情報をかき集め、それを自らの脳内でレース展開を何通りも描き、私に指示を出していた。私の調教や出走の手続きや出入国の手続きなど、あらゆるサポートを1人でこなしていた。
本来なら海外遠征の場合は、遠征するウマ娘に対して帯同するサポートメンバーが数人帯同し、地元のコーディネーターを雇い、日本にも後方サポートチームを作る。その仕事を全て1人でここ1年半ほどこなしてきていた。
その無理が祟った様に、KGⅥ&QESをマスターの指示通りこなして1着になって、ウイニングライブをキメて、さぁマスターの所に戻ろう…としたところで、見慣れないスーツ姿の男性と女性の2人組が私に話しかけて来た。
……マスターが倒れたと。
その2人のうち男性は日本大使館の方で、女性はこの競バ場の職員の方だった。2人の案内にしたがって搬送先の病院へ駆け込んだ。
救急搬送されたマスター。
既に白い布が被せられていた。
医師の話を大使館の方が通訳してくれたところによると、マスターはだいぶ前から癌を患っていたらしい。正直な話、ここまで世界中を飛び回ってトレーナーとして成果をあげてきたのは奇跡だと。1年前から寝たきりでもおかしくなかったと。
事態を知ったトレセンの秋川理事長はURAと交渉し、事務手続き補助員として駿川たづなさんを私に付けることで、『当該海外遠征を終了するまで』マスターに所属するウマ娘としての出走を認めると言ってきた。
そのおかげで、私はマスターを欠く状態でも次の目標レース…パシフィッククラシックへ出走した。
結果は18頭立ての17着と、中止以外で初めて複勝圏どころか着外…それもボロ負けを喫した。
マスターの指示のない状況では周りのスタミナやスピードを削りきれなかった。
そんな時、マスターから手紙が届いた。
手紙を読んでから気が付いた。
マスターは自分が死んでから私がどうなるかまで全て予測していたのだと。
―――私はこれまで、お前に競バの勝ち方を教えるようにレースを走らせてきた。お前がもし私が死んでからボロ負けしたなら、それはただの腑抜け。お前がきちんと本気で走れば、トウカイテイオーだろうとメジロマックイーンだろうと、エリシオだろうと負けはしない。
―――いつかお前が生涯をまっとうしてあの世に来た時、私に叱られない走りを願っている。
私は悲劇のヒロインぶって、腑抜けてたらしい。
そうだった。私はいつまでも挑戦者。勝利があれだけ遠かった時を思い出せ…
もう2度と腑抜けたレースはしない。
米国GI ジャッキークラブゴールドカップ。
手紙に書かれていたパシフィッククラシックに負けた時の指示レース。
2,000mのダートレース…ここで勝てば、あとはダートの短距離だけになる。
アメリカのダートも、マスター仕込み。慢心はしないけど、負けるとは一切思ってない。自分が勝つという強い想いこそ、
より貪欲に、でも冷静に。それが勝つ秘訣。
何度もマスターの下で走ってきた。マスターの支配は身体が覚えてる…はず!
『サラトガ競バ場より、国際重賞競走、ジャッキークラブゴールドカップをお送りします。本命はURA所属ウマ娘、ハッピーシュガー。我がアメリカのウマ娘たちの奮闘も期待したいところ』
『ハッピーシュガー、前走では17着と大敗を喫しましたが、どうでしょうか』
『大外枠がゲートに入って…スタートしました。ハッピーシュガー、いいスタート。ダッシュ良く前に飛び出して、そのままハナに立ちます』
………
『なんとなんと!残り200!ハッピーシュガーの脚色は衰えないどころか、さらに伸びた!後続は遥か彼方!なんなんだ!日本のウマ娘は化け物か!見えるだけで既に15バ身は離れている!差しや追込のウマ娘も距離が縮まらない!今1着でゴールイン!ハッピーシュガー、1着!これは極東の悪魔だ!』
仕込みは簡単だった。
まずはこちらのマスコミ相手に、私が超長距離を得意とする…というか超長距離のGIを勝てるスタミナ系のウマ娘であることを印象づける。ただそれだけ。別に嘘は言ってないし、事実。だけど、それを印象づけることが大事。
逃げはあらゆる位置にいるウマ娘から見える。3,000mオーバーの距離のGIを勝てる私のスタミナを信じて開幕から大逃げ。私が2,000のダートをあのペースで走りきれると思った眼のあるウマ娘はハイペースに飲まれ、走りきれないと思ったウマ娘は気付いた頃にはもう取り返しのつかない距離。
大逃げのお手本のような…走り。マスターが最終的に完成させようとしていた走りに近い走り方だ。
18戦7勝(GI 6勝)
収得賞金 9億9,233万4,910円
そして次はBCスプリント。
ダートの1,200。
これは1番苦労した。
GIのスプリントともなるとスピードが違う。これは差し足では負けるのは確実なのでやはり大逃げを選択する。ただし、距離適性外なので、GIウマ娘としてはただでさえ見劣りするスピードがさらに出ない。
そんな私の策はたったひとつ。
『最初から最後までのロングスパート』だ。
スプリントで勝てる要素があれば、それは絶対的なスタミナだけ。それを存分に使い切る…簡単に言えば『バックシーン!』である。
バクシン!で知られる彼女の血統は中距離血統のはず。そのスタミナを短距離に1点集中させたのが彼女だと言われている。つまり、スタミナの消費の多い戦法だって短距離に限ればこなせる。
芝ダート全距離重賞勝利に王手をかけている。
結果は……1着。
マスターが目標としていたBCシリーズでの快挙。
夢朧気に長い…本当に長い海外遠征の最後を迎えたのだった。
19戦8勝(GI 7勝)
収得賞金 10億5,213万4,910万円
12月。
有馬記念の人気投票は流石にGI 7勝(海外GI 6勝)とシンボリルドルフに並んだ…それどころかシンボリルドルフが出来なかった海外GIを獲った私が選外となることは無かった。
だけど、そんなことどうでもよかった。
BCスプリントの記念に貰った優勝トロフィーのレプリカ…レプリカで悪いんだけど、これを持っていくことが最も重要だった。
マスターの墓へ。
マスターが、おくびにも出さなかったけど、最も心待ちにしていた報告…BCシリーズに勝ったことと、全距離バ場重賞制覇…それも、ダート長距離以外は全てGIという偉業の報告だ。
とっくに日本で火葬・納骨されていたマスターに、ようやく報告しに行ける。
あなたのウマ娘が歴史に名を刻んだのだと。