ウマ娘になりました。全距離芝ダート重賞目指して頑張ります   作:ウマ娘に転生しててぇてぇを見守り隊

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未勝利でも…

メイクデビューで3着に敗れた私は、マスターに負けた理由とこれから勝つための方策を講義されていた。

 

「…つまり、お前が負けたのは痩せすぎだ」

「……やっぱりエナジーバーをもっと食べるしか…」

「………確かに真面目に考える必要があるな」

 

私はこのひと月、かなりハードなトレーニングを積んだ。その代わり失ったのは体重だった。夏を終えてちょっとは朝方が涼しくなってきたにも関わらず体重は戻らず。

痩せすぎによるスタミナという意味ではなく『体力』がすり減っていたのは確かだった。

 

「まぁそれだけが理由ではないが…まず、お前は走り終えて感じたことはあるか?」

「そうですね…正確なラップタイムが分からないことでしょうか。今私が走っているのは果たして12秒台なのか13秒台なのか…」

「それは正しい認識だな。高速で走っているウマ娘の思考は細かいことを考えるのが難しい。だからこそ逃げは難しいんだ。対比する相手がいないからね」

 

マスターは笑った。

 

「今回の敗因はスタミナ不足と体調不良だ。スタミナ不足は本格化してないこともあって、短距離でもとにかく周りの本格化したウマ娘と比べれば少なすぎる。そこにさらに夏バテときたもんだ。勝てるわけがないな。

 だが、私は体調が万全でも、スタミナがある程度付いていてもあのレースは勝てなかったと断言しよう」

「どういう?」

「心技体の全てにおいて周りのウマ娘に負けていた。技と体は仕方ない。ジュニア級で本格化もまだなのにデビューさせた私の判断だし、2年目デビューだからね。

 だけど、1番まずいのは必ず勝つという気迫…心が足りない。マルゼンスキーやシンボリルドルフやオグリキャップを見ればわかる通り、GIや重賞を勝つウマ娘はオーラが違う。そのオーラの初期段階である気迫はウマ娘なら誰しもが持ち使う代物だ。他者にプレッシャーを飛ばしたり、他者からのプレッシャーに負けない守りの気迫もある。

 君にはこの気迫が薄い。ウマ娘のこの手の気迫は天性のものだ。これがないと差しウマ娘になるのは難しいと言われている。気迫のないウマ娘が勝つための必勝法をこれからひと月で学んでもらう。いいね」

「は、はい!」

「あぁそれとね…」

 

マスターがめちゃくちゃ怖い笑顔なんですけど!?

 

「歌の練習も増やそうか」

 

 

……音痴すぎて私のソロパートで大爆笑が起きたのは事実です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1ヶ月。私はまたしても「明後日レースね」と言われてターフに立っていた。

 

『京都レース場、本日の第8レース、500万以下特別レース《なでしこ賞》。現在出走するウマ娘14人が周回運動やストレッチなどを行っています。さて、このレースの1番人気は―――』

 

そう、私は何故か格上挑戦である。

 

『大外8枠14番、ハッピーシュガー。3番人気です。先日のメイクデビューでは3着と好走しましたが…』

『《あの件》でファンが増えましたかね。実力以上にファンが多い様です』

 

うるせぇー!

こうなったら実力を証明しないと…!

 

 

『1番、粘る!ハッピーシュガー、並びかけるが…1番粘りきった!1着は1番…!』

 

 

 

 

 

なお、私の名前を呼んで大歓声が起きた。私2着なんだけど…そんなに音痴が面白かったか!?クソが!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なでしこ賞で使った戦法は先行。だけど、逃げウマ娘を捉えきれず典型的な前残りのレースにしてしまった。

 

「やっぱりまだ1,400は長かったか」

 

ぶつくさ独り言を呟くマスター。

そして、私は少し前世のコラムで読んだことのある調教を思い出した。

レースを調教に使う…ということがあるらしい。マスターはその手の調教を私に施しているように見えた。

 

「ダートだったのもあるか。まぁとにかくまた次を走ってもらおうか」

 

 

2戦0勝。私の重賞…GIへの道のりはまだまだ遠そうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに2ヶ月が経ち、私はよく坂路で一緒になるウマ娘とそれなりに仲良くなっていた。

 

「ふぅん。ブルボンちゃんはクラシック三冠路線を目指してるんだ」

「肯定。次走は朝日杯FSを予定しています」

「骨膜炎から復帰したばっかりなのにすごいね…連戦連勝で。私なんてメイクデビューもなでしこ賞も入着こそしてるけど…ね」

「慰撫。音痴も魅力的だったと思います」

「ぐっ…」

「事実。オープンクラスと同格のウマスタフォロワーがいますよね?」

「それは…まぁ」

 

ミホノブルボンは薄く微笑む。

 

逍遥バ道を下る私たち。

次で4本目である。

ミホノブルボンが澄ました顔をしているのに、私がへばってるのを見せるのはなんか負けたみたいなので、根性で堪えているところである。

 

 

 

勘弁して欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私は11月の第5回京都のファンタジーステークスに格上挑戦。

またしてもおなじみ3着…かと思いきや。

 

1着入線のウマ娘は差しウマ娘だったのだけど、中団を4コーナー出口で捲った後、内にヨレたことを裁決委員が問題視して降着処分となったことで、着順が繰り上がり、2着となった。

この時点で、ファンタジーステークス(GIII)の2着となったことで収得賞金が600万円加算された。

 

3戦0勝、収得賞金600万円。

 

 

 

 

 

さて、この頃から私は坂路を離れ、ひたすらにプールを泳ぎまくる日々。

足の負担を抑えつつもスタミナトレーニングだそうで。

 

 

「次のレースはマイルに挑戦だ。もっとスタミナつけないと勝てないぞ?」

 

 

 

 

そのレースは年明けそうそう…クラシック級になってすぐのレースだった。

 

 

 

フェアリーステークス(GIII)

 

マイル距離の重賞で、2月のクイーンカップ(GIII)と並んで桜花賞トライアルへ繋がる大事なレース。

 

 

『2枠2番、ハッピーシュガー。2番人気です』

『3戦0勝ですが、前走ファンタジーステークスで2着と既に収得賞金が入っているため未勝利・500万下を上回るクラスです。これまでよりも長いマイルで本領発揮となるかがポイントですね』

『実力以上の人気を誇るウマ娘です』

 

実力以上とか余計なことは言わんでいいわ!

 

 

14頭立てのこのレース。

内枠だし…逃げよう。

 

 

 

 

 

 

 

『14番がゲートに入り、職員が離れます。今スタートしました!1番、9番、出遅れたか!?』

 

『ハナに立ったのは…2番ハッピーシュガー』

 

『すぐに続いて4番。11番、追走』

 

『3番、6番、10番、14番、一塊だ!』

 

『その後ろに1番人気の13番。期待通りの結果が出せるか!?』

 

『さらにその内に5番。その後ろに8番。2バ身離れて7番。そこから1バ身はなれて1番、12番』

 

『最後方に9番という隊列です』

 

『ハナに立ったハッピーシュガー、加速していく!かかってしまったか!?スパートにはまだ早い!まだハロン棒にも到達していない中で2番手の4番とは3バ身から4バ身のリード!さらに広げていく!』

 

『ハッピーシュガー!予想を覆す大逃げだ!マイル走で5バ身程のリードができるのはとても珍しい光景です!』

 

『さぁ、残り1000メートルを通過して、ハナは譲らない大逃げ、ハッピーシュガーを捉えるべく後方が少しづつ加速しているぞ!』

 

『だが、ハッピーシュガーも加速している!差が縮まらない!残り600!』

 

『このままハッピーシュガーの独走を許すのか!?』

 

『さぁ、最後の直線!リードは8バ身ほど!これはセーフティーリードか!?』

 

『最後の坂で減速!だがまだリードはあるぞ!』

 

『残り200メートル!9番が凄まじい足で上がってくる!』

 

『ハッピーシュガー粘るか!9番差すか!もつれあったままゴール!』

 

『3着には13番!』

 

『今、写真判定の文字が表示されました!』

 

 

 

 

 

走りきったところで、観客席がいつもと違う。

 

「これは…写真判定…」

 

 

その後、私たちは20分もの間待機していた。そして、ようやく結果が表示された。

 

 

 

 

 

 

 

『今掲示板が確定の表示!1着は9番!ハナ差で2着はハッピーシュガー!』

 

 

 

 

………3着、3着、2着、2着……

 

 

ブロンズ・シルバーコレクターね、これじゃあ。

 

 

はぁ…とため息を吐いた。

 

よし、9番の子に賛辞を送りに行こう。

 

 

4戦0勝、収得賞金1,300万円。

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