ウマ娘になりました。全距離芝ダート重賞目指して頑張ります 作:ウマ娘に転生しててぇてぇを見守り隊
フェアリーステークスを終えて、短期の休養に入った私。
もどかしいけど、身体を休めないと数多くのレースを走り抜けることは出来ない。
ゴルシも本気で走ったことは無いって言ってたし。
休養日は愛車のバイク(原付2種)に乗って銚子へ。
銚子は前世で来たことのある場所だった。
漁港に近いお店でマグロづくしを食べ、店を変えて今度は金目鯛づくし。
銚子の美味しい海鮮を味わい尽くす。
もちろんカロリーや栄養価の調整はしているけど、どうやら本格化の兆しが出てきた私の体はエネルギーを欲している。
そのまま前世でよく来ていた長浜ラーメンのお店へ。
なんと前世と同じように営業していた。
中に入ると、店主のおやっさんが目を光らせた。
「いらっしゃい!ウマ娘ってことは記録に挑戦しに来たのかい?」
「記録?」
「知らないで来たのか?」
「ここのとんこつラーメンは美味しいって聞いたから」
「そいつァ嬉しいな。あぁ、説明するとな、1時間以内にどれだけ多くの替え玉を食べれるかっていう記録を測ってて、ウマ娘と人間の男と女の三種別で記録を争ってんだ。ウマ娘の記録はなんと67杯。ちなみに新記録を樹立かタイ記録を樹立したらお代無料だぜ」
「…そういうの興味無い。満足いくまで、時間も気にせず食べたいから。店主、ベタナマアジタマアオネギキクラゲニンニクオオメで」
「では厨房の方を振り返ります」
「サンドじゃないから」
店主はそのハゲ散らかした頭を捻りながら呟いた。
「なんかお前さんとは初めて会った気がしないぜ…記録更新を狙ってくるウマ娘以外にウマ娘…しかも芦毛なんて全く記憶にないんだがなぁ…」
「まぁいいから。ほら、ラーメンよろしく」
僅かに1分も経たずに出てきたラーメンを、うら若き乙女としてはどうかと思う勢いですする。
そもそも、普通のウマ娘ならきっとこのラーメンを写真でも撮ってウマスタに挙げてから食べるのだと思う。でも、ラーメンだけはダメだと思うのよね。ラーメンってのは、出てきてすぐに食べる1口の衝撃が大事なの。
丁寧な下ごしらえを感じる雑味のないとんこつスープ。いい塩梅のタレの使い方。そして何よりこの青ネギ。
美味い。
「店主、替え玉」
「あいよ」
替え玉をどんどん胃袋へ放り込む。
コレコレ。これこそとんこつラーメンだよね!
数日後、マスターに「ダイエット、しようか」と言われた時、後悔したのは後の祭りである。
さて、短期休養を挟んで次のレースはなんと桜花賞トライアル『チューリップ賞(GIII)』へ。
収得賞金が意外にも1,300万円と高水準なので、抽選や除外されずに済んだ。まだ勝ったこと無いのに……
『5枠8番、1番人気のニシノフラワーです』
『圧倒的な支持に堂々としたレースが期待されます。クラシック級の初戦、無傷での桜花賞へ前進あるのみです』
『7枠12番、ハッピーシュガー。6番人気です』
『未だ勝ちレースの無い4戦0勝ですが、収得賞金は1,300万円とこの時期のクラシック級としては高水準です。好走ウマ娘としての意地で桜への切符を手に入れるか』
『大外14番がゲートに入り、体勢整いました…今スタートです』
『12番ハッピーシュガー、出遅れたか』
『ハナに立ったのは3戦3勝の11番』
『11番はこれまで逃げよりの先行でしたが、今回は完全に逃げています』
『1番人気のニシノフラワー、バ群に埋もれているぞ!』
『順位を振り返ります』
『1番手には11番』
『少し開いて4番、13番が先団』
『少し後ろに1番人気ニシノフラワー』
『それを蓋をするように1番。さらに外に5番。10番追走』
『後方集団の先頭は7番と14番』
『それを見るように3番。その外ならんで6番』
『2番、9番がこれに続きます』
『最後方はここまで無勝、12番ハッピーシュガー』
『彼女は逃げや先行が多かったですが…彼女の二の矢に期待ですね』
『1番人気ニシノフラワー、苦しい表情だ』
『完全に内ラチ側に追いやられました。これは厳しいですよ』
『残り800mを通過…全体的にスローペースの展開です』
『差が詰まって来ています。バ群が一塊です。こうなってくるとまぎれがありそうですよ!』
『11番、逆噴射だ!』
『バ群に沈んでバ群がバラけます!ニシノフラワー、インを突く!』
『ハッピーシュガー、外からハッピーシュガー!』
『最後の直線、バ群の中で脚を溜めたニシノフラワーか、後方待機していたハッピーシュガーか!一騎打ちです!』
『ハッピーシュガーはメイクデビューの借りを返すのか!?それともニシノフラワーが無傷の桜へむかうのか!?』
『阪神競馬場の直線は短くはない!そして最後に坂だ!』
『ニシノフラワー、僅かに前!』
『粘る粘る!ニシノフラワー!ニシノフラワー!』
『桜の切符まで残り100!』
『ハッピーシュガー、坂で逆噴射!これは珍しい!坂を得意とするハッピーシュガーが逆噴射だ!』
『ニシノフラワー!今完璧に走りきってゴール!1着はニシノフラワー!ニシノフラワー!強かった!2着にはハッピーシュガー!』
お、おなじみ2着ぅ…
5戦0勝、収得賞金2,350万円
にしても…ニシノフラワー、かわいいよね。
まさか私の音痴に釣られてて…
チューリップ賞2着の私には桜花賞への優先出走権がある。
「なので、また同じコースだ。お前に足りなかったのはスタミナ…ではなく、賢さだな。足が残っていなかった」
なんと、賢さGだと申すか!?
「まぁここで言う賢さっていうのは走ってる時にどこまで冷静に思考できるか…というものだから、普段が賢さGと言ってはいないからな」
鍛え方は…
「走りながら計算問題を解いて貰う」
……暗算にがてなのにぃ!
私完全文系なんだよ!
『トリプルティアラの一冠目、桜花賞』
『トリプルティアラを夢みる数多くのウマ娘たちの中でもひと握りしか出走出来ません。しかし、勝ちを取れるのはさらに少なく、たった1人。GI…トリプルティアラの冠を取得するのは誰だ!』
『圧倒的1番人気はこの子、5枠9番、ニシノフラワー』
『ここまで無敗。同じコースで走った前走のチューリップ賞は圧倒的な力量を見せました』
『続いて5枠10番、ハッピーシュガー。8番人気です』
『未だに勝ちを拾えないものの、2着3回、3着2回と複勝率は100%。初の勝ちをGIの桜で彩るのか』
桜花賞……おなじみ3着。
優先出走権を得たオークス。
2着。
7戦0勝、収得賞金4,550万円。
「……そろそろだな」
「何が」
勝てなすぎて少しやぐされ気味の私はマスターにそう言い返す。
「夏は休養なんて無しだ。サマー2,000シリーズの優勝を狙う。ついでに重賞初制覇だな」
「ついでって…」
「賞金稼ぎもしたかったんだろ?今までは本格化が微妙だった上にちゃちな重賞しかなかったからな。サマー2,000シリーズなら優勝でさらに賞金も出るし箔付にもなるだろう」
「……意図してたんだ」
「トレーナーってのは何手も先を読まなきゃやってられねえよ」
「あれ?でもサマーシリーズって斤量のハンデが…」
「確かに、お前の収得賞金じゃ4~5キロ…もう少しか?ハンデが付く。だが、それを推してもお前は勝てるよ。そうなるように調教してきたし」
とっても疑問だけど、トレーナーは何十年も競バに携わってきたのだから、信じてみよう。
この日から私のトレーニングがとても軽くなった。
「こんなに軽いトレーニングで…」
「今のお前ならGIIIクラス…それも夏競バなら勝ちはたやすい。だが、夏は去年お前がバテてた様に夏の難しさがあるからな。疲労を溜めるのは良くない。あと、明日から私の別荘へ行く。1ヶ月は帰らないから、その準備を」
だから、そういうのは早く言え、アホ。
マスターの別荘は道東にあった。ちなみに私とマスターはバイク移動です。大洗のサンフラワー。
一周1,200mの本格的なニューポリトラックとその外に一周1,400mのダートコースを持つ本格的な調教施設を備えたその内にあったのがマスターの別荘であった。
「昔、担当してたウマ娘のために作ったコースだ。今はホッカイドウローカルのウマ娘や個人的な付き合いのある中央のトレーナーに無償で貸してるくらいだがね」
さて…と、別荘にバイクと荷物を置いた私に、マスターは早速トレーニングを開始すると言った。
「夏に狙うのは七夕賞と札幌記念だ。特に札幌記念は勝ちたい。そのうえで、札幌記念を目標レースとするならば、北海道の重い芝に対応出来るパワーが必要だ。そうなれば、ダートでトレーニングを行い、パワーとスタミナの両立したトレーニングを行う」
1ヶ月後、七夕賞。
………2着。
8戦0勝、収得賞金5,350万円。
おいこら。