「「....................」」
天幕の布一枚越しにしゅわん、しゅわん、といった音が二つ聞こえてくる。
恐らく...........いや、状況からして間違いなく《武装全解除》と《下着全解除》の音だろう
〝ちゃぽん、ざざ───〟
今度はそんな水音まで聞こえると、よく知った女性のリラックスしたようなため息までが聞こえてくる。
((............休めるか!))
ただいま黒い剣士と紺色の剣士両名は、湯浴み用の天幕の入り口にて心の内で叫ぶのであった
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ご察しの通り、布一枚越しに我らがパーティーメンバーの女性陣が入浴中なのである。キズメルが天幕を出る際に、風呂があると伝えられてからアスナとミト両名はそれはそれは嬉しそうだったのをよく覚えている。
仮想世界だしとか言い出したらあれだが、日本人の習性なのか俺やキリトだって当然風呂があるなら入りたいし、そう言う意味ではミトやアスナたちを否定する気はさらさらない
さらさらないのだが................
「「んんん───ふふ~ふふ~ん♪」」
鼻歌まで聞こえてきたところでキリトが肩を掴んでくると...........
「レイルどうにかならないか!?」ボソボソ
「無茶言うな!?」ボソボソ
わざわざある種変態的なことをしてるともいえる場所に俺達両名がいるのか、それは一応ここは犯罪防止コード圏外だから....................と言うわけなのだがあくまでそれは建前で、ミト達は他男NPCが入ってくることを警戒していたために俺とキリトを配置したわけである。
だが、はっきり言って現状俺達は精神攻撃を受けてると言って差し支えない。
リアルでは浮いた話など一つもない俺にはこの状況は非常にキツイ。今までミト達を除けばまともな付き合いのある女子なんて、下手したら茅場クラスに
どちらも幼馴染と言った関係なので意識したことはないので、この状況は本当に拙いのだ
だが、今一つだけ活路を思い浮かぶ
「良いかキリト...........エギルを思い浮かべろ。多少はマシになる...........はず」
「な、成程...........確かにいいかもしれん」
二人して目を閉じて思い浮かべるはあのガチムチのナイスガイ............
「「.............馬鹿か..........俺達?」」
とは言え、何をしているんだと途端馬鹿らしくなり座禅もどきを組んで精神統一に努めるのであった───
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「.............また、目が覚めちまった...........か」
ミト達の入浴後、俺やキリトも入浴を済ませ食事も済ませてキズメルの天幕に戻ると天幕の主であるキズメルは既にストーブの横で毛皮に身を包み横になっていた。
そのまま俺達も寝ることにし、かなり早い時間ではあったが休むことにした。目が覚めた俺はメニューウインドウを開いて時間を確認すると午前0時15分...........日をまたいだばかり。まぁ、五時間は寝れたのでSAO開始してここ最近の睡眠時間からすればよく寝れたほうだ。初期の方では2,3時間しか寝れなかったが少しづつ睡眠時間が伸びてきたのはきっと今の状況に慣れてきているのかもしれない。
「ちょっくら剣でも振りに....................」
とは言え目がさえて寝付ける気はしない。少し運動でもすれば気もまぎれるだろうと考え、起こさないようにと周囲を伺い立ち上がろうとして、目に入ったのは反対側でこちらに背を向けアスナと隣り合って寝ているミトだった。寝ているのは見ればわかる..............肝心なのはそうじゃない。
「.................横になってるか」
今日も、その前も............彼女には必要以上に心配をかけ過ぎた。狩りに行くつまりこそなくても俺が勝手に出ていけばまたいらぬ心労をかける。
「ホント............そうしてくれれば助かるのよ」
「ぇ?」
横になった状態で寝返ってみると暗がりの中で少し呆れたように微笑むミトがこちらを見ていた。寝ていたと思っていたがどうやら起きていたみたいだが...............
「ふふっ.........どうしたの?そんな間抜けな顔して」
「っ............べ、別にぃ.........ミトも寝れないのか?」
わかっていた事だがミトはどう考えても美人の部類に入る。そんな彼女の凛々しくも美しい容姿が夜の暗がりによく映えて不覚にも見惚れていた。
そんなレイルは咄嗟に誤魔化しながらミトに問う
「ちょっと目が覚めちゃってね...........どこかの誰かさんは外に出ようとしたみたいだけど?」
「そ、それは.............」
「まぁ、ちゃんと横になって休むことを選んでくれたみたいだし.............怒ってないわよ」
「そうか............改めて悪かったよ」
「うん」
「「................」」
しばし無言で見つめ合う。
お互いがお互いの瞳に吸い込まれていく様な........そんな不思議な感覚を覚える。
((何でだろう............不思議と落ち着く))
そして、不思議と気分が落ち着き安らぎを覚える..........
また、いつの間にか遠のいた眠気もまた───
「ふふっ.........眠そうねレイル?」
「.........そっちこそ」
お互いの瞳が少しずつ蕩けてきたようになるのがわかる
「お休み.........ミト」
「えぇ、お休み。レイル」
そして二人はそのまま───
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「キリト達の方はポーションの在庫大丈夫か?」
午前三時.............まだ夜中の森をキズメルを含む5人で移動していた。
ミトと少し話してから1~2時間して俺の隣で寝ていたキリトの気配がなくなったことに気が付いてまた目を覚ますと、ミトやアスナの方もキズメルがいないことに気が付き同じく目を覚ましていた。恐らくは出発の準備か何かだろうと考え装備を整えて待つと何やら薄着のキズメルと特に装備を整えていないキリトが戻ってきた。
まぁ、普通に夜遊びにでも出てたような感じにしか見えずやや女性陣のキリトに対する視線が厳しいものになっていたが一先ず今は《翡翠の秘鍵》に続き司令官から引き受けた《毒蜘蛛討伐》に向け移動中だ。
俺やキリトにミトはβ時に経験していることなのでどんな相手かわかっている。そのために、一度街に行っていたミトと俺は少しだが多めに普通の回復・解毒ポーションは仕入れていた。
「俺は大丈夫だ。アスナは?」
「私も大丈夫よ」
「そっか。一応ミトと街に戻った時に少し多めに仕入れといたから足りそうにないなら行ってくれ」
レイルが在庫がある事を伝えると、ミトはキズメルに対して準備が大丈夫か問う
「キズメルの方は?」
「念のためいくらか持ってはいるが、基本的には必要ない。私にはこれがあるからな」
気のせいか少し自慢気な様子でキズメルはレザーグローブを外し、右手にはまっている指輪をミトや俺達に見せる。朧な月光の下でも強く輝く宝石は解毒ポーションとよく似た緑色。
「これは私が近衛騎士に叙任された折、剣と共に女王陛下より賜ったものだ。十分間に一度、解毒のまじないが使えるのだ」
「...........すっ..........」
キリトはそれを聞いて叫びそうになるのをどうにか抑えた様子だった。
とは言え、俺やミトも同じで正直なんて代物だと驚きを禁じ得ない。β時代もクルータイムがあるとはいえ無制限に毒を消せるアクセサリーなど聞いた覚えはない。もしこれがレベル5の毒でも解毒できるものならその価値は計り知れない..............
「そんな顔をされてもこれを譲るわけにはいかん。第一、この指輪は、我らリュースラの民の血に僅かながら残る魔力をまじないの源泉としているゆえ、おぬしら人族には使えぬよ、恐らくは」
恐らく?
俺は咄嗟に聞き返しそうになるが、まるでどうしても欲しいという風に見えかねないと思い黙り込む。
キリトはそれから言い訳じみたように解毒の準備があるならいいと話したり、アスナがそこに口をはさんでキリトがまた余計な事を言ってアスナを少々怒らせたりと気の抜けるやり取りをしていると............
「.............おい二人とも来てるぞ」
レイルは背中の剣を鞘から引き抜き構えながら二人に忠告すると、漸く戦闘準備を始める。索敵スキル持ちのキリトが反応を示さなかったことにやれやれと思いつつ敵を睨む。
此処で出る《シケット・スパイダー》は二階層でのあの洞窟蜘蛛のように固い外角を持っていないためかなり戦いやすい。つまりは大した脅威ではないが油断は禁物だろう
「さて.........やりますか」
前方と左右からそれぞれ二匹づつ........
「レイル左の奴やるわよ」
「了解。キリト達は前方の方頼むぞ」
担当は前方をキリト、アスナの二人で右をキズメル、そして左の担当をレイル、ミトと分担する。
「作戦は?」
「いつも通り」
ミトの確認短くそれだけ答える。いつも通り...........つまりは俺が適度に削り隙を作ったうえでミトがとどめを刺す。俺たち二人のコンビにおいて一番効率がよく、一番戦いやすい。
なので最初に動いたのは当然俺だ。一気にmobに肉薄すると、mobは飛びつくように噛みつきで応戦してくるのでそれをあえて突っ込んでいき............
「ッ!!」
寸前で剣を逆手に持ち替え、柄頭で口を無理やり閉じさせ、敵の体を跳ね上げる。
「シィッ!!」
そこからまた閃く様に順手に持ち替え振り下ろし一撃。そして、続けざまに《バーチカル・アーク》の要領で地面に振れる寸前で跳ねるように二撃の振り上げを叩き込み、そこから間髪入れず中段から虚空に〝∞〟を描くように三撃目と四撃目を叩き込む。
この間僅か数瞬──
夜空で星が舞う如く剣閃にmobが為す術を持つわけもなかった
「ミト!!」
カウンター直後の続けざまの攻撃は敵のHPを激しく削り取り、残り四割までに持って言った所で、レイルはこの戦闘初めてのソードスキルを使う
後方宙返りと同時に体術スキル《弦月》を使い後方で構えるミトの方へオーバヘッドの要領で敵を蹴り飛ばす。
そしてミトはそれに顔色一つ変えずに対応する
「やあぁぁぁ!!」
夜闇にソードスキルのライトエフェクトが煌めくと同時に必殺の刃が振り下ろされる。3連撃から成るソードスキルにたまらずmobの残りHPは吹き飛びガラス片の様に砕け果てる。
そしてその頃にはレイルは既に2体目へと突っ込んでいた。まるでミトが倒しきれないわけがないと確信したような動きだ。いや、様なではなく、実際にそうなのだろう。
レイルが突っ込んでいくと2体目のmobはケツから粘着糸を放つ。だが、これも2階層の時同様。放たれる速さは何も脅威でもない。
「.........!」
レイルは一切加速を緩めず舞う様に回避し、一気にゼロ距離まで詰めると敵に攻撃姿勢に入られる前に連撃で畳みかける。
「ハァッ!!」
瞬間、5つの斬撃によるダメージエフェクトがmobの体に刻まれるとHPは残り5割にまでなる。やはりと言うべきか、通常攻撃のみでこの攻撃力は如何に剣のスペックの高いかが伺える。
〝〝きしゃああぁぁっ!!〟〟
だが、怯むかと思われた敵はまるでこのタイミングでの反撃のために耐えていたと言わんばかりに鳴き声と共にレイルに飛び掛かる、が──
「おらッ!!」
当然読んでいたレイルは当然の如く完璧なタイミングでカウンターに水平2連撃技《ホリゾンタル・アーク》を叩き込んでいく
カウンターによってmobに致命的な隙ができれば当然.........
「スイッチ!!」
カウンターによって後方へ押し返されたタイミングでレイルの隣をミトが駆け抜けると、止めの必殺の威力を誇る大鎌が閃き──
「相変わらず変態的に器用ね」
「ミトさんや?それ褒めてないよね?」
「あら?ちゃんと誉めてるわよ?」
くすくすと悪戯っぽく笑うミトにやれやれと思いつつも答える
「さいで...........合わせてくれてありがとさん」
一体目の変則的なやり方に対して合わせてくれる相手など恐らくはキリトかミトくらいだろう。ミトならできるとは思ってはいたがそこはしっかりと感謝しなくてはいけない。
「どういたしまして」
──〝ぱんっ!〟
お互い特に示し合わず、さも当然のようにハイタッチをすると丁度キリト達が倒し終わったころだった。
だが一つ...........キリトに気になる点があった。
「そっちもお疲れ.............と言いたいところだけどキリトお前気ぃ抜いたな?」
この程度の相手と言えばそうだが、油断は禁物なのは当然だ。
戦闘中僅かに周囲に他の敵がいないか確認した時、キリトは敵から視線を外しており初動が明らかに遅れていた。何を見ていたかまではわからない。だが、単に警戒を怠っていたように見えた。
「あ.........え、えっとぉ..............」
誤魔化す様に言葉を探すキリト。その時のキリトの視線は泳ぎに泳いでいたが大体アスナに向いていた。それが意味することは.............
「(あぁ、成程ね).........大方アスナが蜘蛛に対して怯えず戦えてるのが不思議ってとこか?」
確かにアスナは見た感じ..........いや、十中八九いいとこのお嬢様だ。俺自身がそう...........と、まではいわないが親の立場や関係なんかで〝そう言う相手〟との付き合いはかなりある。だから、そこには確信に近いものがある。キリトも観察眼は鋭い方だし、そうでなくてもアスナの所作からそれは何となく感じていただろうから当然と言えば当然な疑問かもしれない。
とは、言え今更ではないだろうか?
「はぁ!?貴方そんなこと考えていたわけ!?」
「は、ハイ!?で、でも........レイルもわかるよな!?」
キリトはレイルに助けを求める。確かに理解はできるが.........
「いや、わかるけど..........ネペントやらなんやら相手にしたのに今更じゃないか?」
ネペントの見た目もアレで結構エグイ見た目していると思うしそれに普通に対応できるのならと考える。それに本当に虫がダメなら森に入る時点で何かしらのアクションがあってもおかしくないだろう。
「そうよ..........全く」
「そ、そうっスか」
レイルの正論とアスナの呆れた表情に微妙な面持ちでキリトは申し訳なさそうにする。
「頼もしい事だな。あの子.........私の妹のティルネルも実体ある怪物なら虫だろうとウーズだろうと苦ともしなかったものだ」
どこか昔を懐かしむ..........それでいて寂しそうにするキズメルにどう反応したものかと言った空気になる。キリトから道中彼女の妹のことは聞いている。
すると、キズメルは俺達の表情を見て「すまん、余計な事を言った」と小さく謝罪すると、この雰囲気を変える様に右手を持ち上げる。
「ところでレイルとミトが行ったこの仕草は、一体どういう意味なのだ?」
持ち上げた右手を振る動作に、ハイタッチのことを指しているのは分かった。俺とミトは顔を見合わせどう伝えたものかと言葉を探す。
「ん~...........お互いの健闘をたたえ合うみたいな?」
「そうね.........付け加えるなら何かを達成した時の喜びや達成感........後は感謝なんかを共有するとかかしら?」
ハイタッチの意味を説明しろ.........と言われても案外難しいもので、何気ない行いに今説明した言葉ほどの意味はないのかもしれない。勿論、ハイタッチの大義としてはそうだろうと思うがそれはきっとそれをする人の数だけ理由があるのだろう。
とは言え、今はミトも俺ももう一度右手を上げキズメルの右手と合わせる。俺達がそうするとまじまじとその感触を確かめるようにキズメルは右手に視線を落とすと
「ふむ............我らエルフはあまり他者との接触はせぬが....................悪くない挨拶だな」
そんな事をして再び森を歩き始める。mobが出てきたほうへと歩いていけば、そちらが目的地だろうとキズメルの予想に従っていくとその予想が正しいものだと証明するように、《シケット・スパイダー》やその上位種との戦闘を4度ほど繰り返し、目的の洞窟に辿り着く。
横穴から入り、天然洞窟内と言うこともありあまり明るくなく、松明を持つ必要があるのが面倒だが、順調に探索を進めてしばらくして余裕がダイブモテてきたところであることに思い至る。
「なぁ、ミト。三階層が開通してどのくらいたった?」
「多分14時間くらいな筈よ............あっ、そう言う事ね?」
レイルはある懸念を洞窟内を見て思い出す。そしてミトもレイルの質問で何を考えているか察すると、遅れてキリトも思い出したようだった。
「なぁ、レイル。ここって確かそうだよな?」
「あぁ。俺達はβ時代の最短のやり方でこなしたけど大体の奴らはこっちに来ると思う」
アスナには恐らく何のことだという話だが、正直鉢合わせするかもしれない相手が相手だからやり過ごしたいところではある。
すると僅かな金属音が聞こえてきて、やはりかと思うとキズメルも他のプレ..........人族がここにきているという。俺達は出来ることなら関わるのが面倒な相手だと予測できるのでやり過ごしたいところだが............
「なぁ、キズメル。実は出来ることなら彼等とは顔を合わせたくないんだ」
そんなキリトの言葉にキズメルはにやりと笑うと
「ほう、実は私もだ」
そう答えるとキズメルは洞窟の大きめのくぼみを指すと「そこに隠れよう」と言う。だが、松明で照らせばどう見ても丸見え.............アスナもそれを懸念して問うが──
「我ら森の民には色々と手妻があるのさ」
そう言うと俺達は背中を押されるままに窪みへと身を寄せ合うことになる。正直...........その感触なんかがあれでハラスメントコードでも出されてヤバいんじゃないかとかいう懸念もあったが一先ずは隠れるという意識に切り替える。
キズメルが俺達全員にマントを覆いかぶせるようにすると、驚くことに《隠蔽》スキルも使用していないのに、視界下側に《隠れ率》インジケータが表示されたうえ、なんとその数値が脅威の95%と来た。指輪と言い、なんとも羨ましいものを.............
「ねぇ、三人とも一体何があるっていうのよ?」
するとアスナが極小のボリュームでβ組である三人に問いただす
「私達が昼間にこなした《ギルド結成クエスト》よ。ここにそのキーアイテムがあるの」
「!」
それからすぐに近くを5~6人ほどだろうか..........あまり無理に詮索してバレていしまうのを避けるために足音と等でそう推察すると、ある意味では聞きなれた関西弁の声が木霊す
「何でや!なんで宝箱が片っ端から開けられ取るんねん!」
誰と確認するまでもなく、いささか仰々しい名前を冠したギルドを結成しようとする男..........キバオウのもので間違いないとすぐに確信した。それに此処からでも特徴的な髪形が見える。
此処で顔を合わせれば間違いなく、宝箱のことで嫌味を言われることは間違いないだろう。確かに道中で開けてきたわけだが、早い者勝ちなのだから仕方ない。
それから、キバオウにこちらを一度一瞥され隠れ率が90%に下がった時は一瞬ひやりとはしたもののそのままやり過ごすことができた。
「まぁ、これでひとまずは面倒事は避けれた感じかな」
「だな。見つかっても戦闘にはならないだろうけど宝箱のアイテムくらいは山分けしろ位はいいそうだもんな」
俺とキリトが愚痴る様にそう話しているとキズメルが問いかける
「あの小隊の中に知り合いでもいたのか?」
「え?あ、あぁ..........とは言っても仲は良くないけどな」
レイルは確かにボス攻略なんかでは一応は認めてもらえてるようだがと考えながらキズメルの言葉にそう返す。
「ふむ............この城に暮らす人族は長く平和を保っていると聞くが?」
「別に戦いになるってわけじゃないんだ............なんていううか価値観の相違........って感じかな?」
「成程な.........私の所属するエンジュ騎士団と、王都を警護するビャクダン騎士団みたいなものか」
エンジュにビャクダン...........どちらも樹の名前と言うのが実にエルフらしい。
キリトは分かっていないようだが、アスナとミトもそれに気が付き話が盛り上がっているところで軽くキリトにそう言う気があるのだと説明しながら俺達はまた再び探索を開始した。
*******************
それからも順調に洞窟内のマッピングを推し進め大方は埋め尽くし、残すところはあと二箇所..........一か所はキバオウら目的のキーアイテムのある場所で、もう片方が恐らく目的地ではないだろうか。
俺達は先にキバオウたちとは反対の目的地に向かうとそこには、キズメルが所属するエンジュ騎士団の徽章があった。それはすなわち持ち主はもうこの世界にはいないことを示している。傍らのキズメルの沈んだ様子に、どこか罪悪感を感じたのだが..........
「あ...................あんな大きなクモがいるなんて聞いてへんぞ!!どないなっとるへん!!」
十数分ぶりぐらいに聞くキバオウの関西弁は憤りと焦りのようなものを伺える。それ以外にも彼の仲間の狼狽した声と足音が聞こえてくる。
相当な焦り様に俺とキリトは咄嗟に女性陣に尋ねようとすると──
「「どうするの!?キリト君(レイル)!?」」
「ここはそなたらに任せる!」
「「.......」」
((いつの間にかパーティーリーダー扱いですか?))
いつの間にか指揮する立場が当然のようになってることに俺とキリトは二人して顔を見合わせ悩み込む。とは言え、俺に関してはギルマスだ。そう言う意味ではまぁ..............納得するしかない。
さて、ひとまず現状での理想は俺達は隠れてこのままやり過ごし、キバオウらも無事に洞窟を抜け出し、デカいクモ..........恐らくこのダンジョンの主である女王クモの事だろうが、そいつが定位置に戻る事だが、それははっきり言って望み薄だろう。
まず、洞窟内のmobがいい加減再ポップする頃だろうし、そうなればすぐにキバオウらが洞窟外に脱出するのは厳しい。その上、逆にキバオウらが倒すことにしたとしても冷静に対処できればさほど脅威ではないが、彼らは女王クモは初見の相手であることは察しが付く。反βテスターを掲げている彼らがそんなモンスターの情報を持ち合わせてるとは思えない。
となれば自ずと方針は定まってくるわけで...............
「戦おう」
キリトの言葉に俺は続く様に方針を伝える
「まずパーティーが通り過ぎるのを待ってから、後から来るクモをすぐそこの大部屋まで引き連れそこで戦おう。広さは十分足りているはずだ」
三人の返答はすぐに帰ってきた
「了解よ」
「指揮は任せたわよ」
「そなたらが戦うと決めたのなら」
こうして俺達の洞窟の主との戦いが今、始まろうとするのであった。
今回は一先ずここまでです!次回は洞窟の主である女王クモ戦に加え、予定より早いですがあるキャラを出そうと思います。因みに設定などでは上げていませんでしたがオリ主側のヒロインの一人です。そのキャラと言うのは..............恐らく察しがいい人なら気が付いているでしょうがそう言う事です。本来は戦闘まで書いて区切る予定でしたが、そのキャラも踏まえて次回に回したいと思います。
それでは今回もここまで読んでくださりありがとうございます!また、コメントやお気に入り登録、評価をしてくださりありがとうございます!