Re:夜の剣士   作:graphite

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戦闘と思わぬ出会い

 

 

「ここだッ!」

 

「キシャシャァ──!!??」

 

洞窟内でキバオウらが会敵した女王クモに対しレイルは投剣スキルでタゲを取る。

 

レイルの作戦はキバオウらの避難経路をマップから予測し、その道中でキズメルのマントの力で隠れタイミング良く飛び出しタゲを取って、騎士団の遺品を拾った大部屋までプルして戦うと言ったものだ。

 

「上手くやれたわね」

 

「あぁ、ミト達は先に行って準備を」

 

「了解」

 

ミト達を先に行かせ、俺は引き続き女王クモをプルして後退を始める。

 

この中で唯一敵を釣り、尚且つ引き付けて移動するのに適してるのは投剣スキルを有したレイルだ。女王クモには移動阻害系の攻撃を持つため、ある程度距離を取りながら引き付けることができるのはレイルだけなのだ。

 

「そこッ!」

 

「クシャッ!?」

 

女王クモ...........固有前は【Nephila Regina】。意味は《ネフィラ女王》と言ったところだろう。そのネフィラ女王は足を地面に打ち付けることで二層のトーラス族のそれと似た移動阻害系攻撃である衝撃波攻撃を放とうとする前兆を見せた瞬間に、それを発動する前足部の付け根目掛けて投擲し攻撃を潰し更に憎悪値(ヘイト)を稼ぐ。

 

憎悪値(ヘイト)が上がれば上がるほどバーサク状態に近くなるが、その分動きが単調になる。そうすれば引き付けやすい上──

 

(ここだな)

 

ある程度までゆっくり引き付けてきたところで、レイルは背を向け一気に走り始める。そしてそれを怒り狂ったような唸り声をあげてネフィラ女王もレイルの追跡を開始する。

 

「(よし.....)カウント!3.....2.....1、今ッ!」

 

レイルは大きな声でカウントを開始し、1のタイミングで大部屋に滑り込むように駆け込むと直ぐに──

 

「キ──「「はあああぁぁぁ!!!」キシャ!?」

 

レイルが部屋に滑り込んで間髪入れずネフィラ女王も大部屋に突入したのも束の間、現パーティーにおける火力ツートップのミトとキズメルがネフィラ女王が部屋に入ると同時に、それぞれの武器スキルに応じたソードスキルを不意を突く形で畳み込む。バーサク状態に近い分、憎悪値(ヘイト)が集中している相手にくみったけになるため不意打ちに弱くなる。レイルの想定通りの展開だ。

 

二人はすぐさま後退し、部屋の中央に左からレイル、キズメル、キリトと言う前衛の形と身とアスナを後ろにした簡単な隊列を組んで構える。俺達にとって一番慣れ親しんだ男性陣が攻撃を捌き、女性陣の攻撃の隙を作るやり方.........今回はこの中で総合的にも一番強いキズメルこちら側に回っている分俺やキリトは普段より攻撃にも出れる為攻撃も防御も高いレベルでこなせる強力な布陣になっている。

 

「突き下しの二連撃は先っぽが震えたほうの脚からだ!必ず避けないと二撃目を喰らうぞ!」

 

初見がいるので注意点を言い放つとすぐにその前兆を見せる。

 

左側に構える俺をターゲットに左前脚を振り下ろしたので俺は左前方へ跳躍すると、先程まで自身が立っていた場所に左前脚の鈎爪が突き刺さる。そこから俺を追って右前足で二撃目を放とうとするが、初撃での自身の脚が邪魔して追いきれない。

 

しかも、レイルは左前方へ避けたために女王クモの体勢はかなり悪い状態になる。つまり───

 

「らァ!!」

 

レイルは回避して二撃目とほぼ同じタイミングで単発ソードスキル《ホリゾンタル》を左側の二本目の脚へと叩き込む。不安定な状態に一撃いれれば、その巨体が故に体勢は簡単に崩れる

 

「ソードスキル一本!!」

 

体勢が崩れると同時に、キリトの攻撃指示。レイルのとる行動を先読みし、タイミングよく攻撃を指示すると、女性陣が打てば響く反応で各々の武器に必殺の輝きを灯す。

 

そして、直ぐにキリトも続いてソードスキルを放ち、レイルも通常攻撃だが四連撃叩き込んでいく。この女王クモの転倒からの攻撃で容易く二段あったHPバーは最初の不意打ちもあり一段目を通り越してすでに二本目を残り七割まで減らす。ボス相手にこれほどの削れ方はそれだけキズメルの一撃が驚異的なのを示している。

 

このペースなら安全性を重視してソードスキルを単発系のものに絞っても七発........いや、下手したら後五発でも入れれば倒しきれてしまうかもしれない。

 

勿論警戒は怠らない。β時と何か変更があるという可能性は捨てきれない。

 

「跳ぶぞ!着地寸前でこちらもジャンプ!タイミングはカウントする!」

 

警戒していると女王クモはその間で小刻みに足踏みし、八本の脚を一気に縮ませるモーションを見せる。直ぐにレイルはそれが何の前兆かを理解すると指示を飛ばす。

 

「2.....1.....今ッ!」

 

カウントともに跳躍した俺達の足元を波紋状の振動エフェクトが通過していった。

 

そしてレイルはジャンプの時、すでに着地からタイムラグなしにソードスキルを発動できるよう姿勢制御をしていた。その為、相手に対し一切の反撃の隙を与えずにレイルのソードスキルが放たれる。

 

「おらッ!!」

 

レイルの単発突進技《ソニックリープ》が洞窟の闇を裂いて炸裂する。絶妙なタイミングの反撃により、ネフィラ女王はたまらずスタン状態へとなる。

 

「チャンスだ!ソードスキル二本!」

 

レイルが生み出した隙を僅かにも無駄にしないようにとキリトの攻撃指示が響く。すると、流石の反応でそれぞれの武器が鮮やかなライトエフェクトを纏い閃く。

 

(相変わらずこの二人の連携は凄いわね..............)

 

ミトは二人の剣士の指揮による戦闘に内心でそんな感想を抱く

 

敵の特殊攻撃によるものなどの合図をレイル、攻撃指示をキリトとやや変則的ともいえる指揮系統は二人の間でどう行動するかが手に取るようにわかるからこそできる芸当だ。二層でも当然のようにやってはいたが、まるで全てが上手く噛みあっているのは二人だからだと思うと頼もしい反面悔しくもある。

 

何故なら、まるでキリトよりもレイルの隣に立つことに劣っていると言われてるようだからだ。

 

でも──

 

(私だって!)

 

確かにキリトは強い。だが、負けているつもりは毛頭ない。

 

こうして彼女の鎌がその彼女の意志に応える様に、女王クモに最後の止めを刺すのであった

 

 

************************

 

 

 

あの後、俺達はネフィラ女王を討伐してからはキバオウらと鉢合わせすることなく洞窟を出ることができた。戦闘していた時間はおおよそ三分程度だったのに驚いたが、それは一先ず置いておき、俺達は報告のために野営地へと森を歩いていたのだが──

 

「アオォォ~~~~~ン!!!」

 

と、言う犬のような遠吠えが聞こえる。聞こえてきた遠吠えからしてさほど離れてはいない。だが、この遠吠えが意味するのは..............

 

「おいおい..........これって..........」

 

「あぁ、《ロアリング・ウルフ》の仲間を呼ぶやつだな...........アスナは知らないだろうから軽く説明しとくと、《ロアリング・ウルフ》ってのは強さで言えば大したことはないんだけど、HPがイエローまで行くと仲間を呼ぶ遠吠えをするんだ」

 

「厄介ね............今聞こえて来たってことは...........」

 

キリトに答えたレイルは、恐らく知らないであろうアスナに軽めの説明をする。アスナも最悪のケースを想定したのか若干顔を強張らせる。軽く説明をしていたその間にミトやキズメルはこちらにも飛び火しないかを警戒して周囲を見渡す。

 

「.........一応こっちにはこなそうね」

 

「..........あぁ、だがどうするのだ?」

 

キズメルは俺やキリトの方を向きそう尋ねる。仲間を呼ぶ系の能力は非常に厄介だ。それは俺やミトが身をもって経験していることでもあり、安全を考慮すれば助けに行くなどと考えない方がいいのは分かっている............わかってはいるが..............

 

「正直..............万が一を考えると危険だ.............けど、もしかしたら対処が可能かもしれないのに見て見ぬふりをするのは..............気乗りしない」

 

「そうだな..............様子を見るだけ見に行く...........ダメ、かな?」

 

俺やキリトは理性ではわかっていてもここで立ち去ることはしたくないという意思を告げる。下手に危険を冒す必要なんてないが、顔も知らない他人でも見捨てるのは後味が悪すぎるのだ。

 

「二人とも本当にお人好しと言うか............」

 

「全く。二人らしいと言えば二人らしいんだけどね............」

 

ミトとアスナはやれやれと言ったように苦笑する。そしてキズメルは...........

 

「だが、私としてもそれは好ましい。そなたらが行くというのならば私もついていくとしよう」

 

キズメルが言う様にミトやアスナもついてくることに一応は賛成を得られる。厳しい状況ならば...........申し訳ないが見捨てることになるかもしれない。だが、できればそうならないよう祈りながら、遠吠えが聞こえたほうに移動していくのであった。

 

 

 

 

-------------------------------------------

 

 

 

 

6~8体の狼に一人の少女が囲まれていた

 

「嘘でしょ..............くっ!」

 

少女はとある人物を探して三階層にまで来ていた。

 

そのある人物は、このゲームをクリアするために最前線で戦い、そしてその人物が率いるグループはプレイヤー支援にも力を入れているという非常にいい評判をよく聞くのだ。

 

そんな()を誇りに思う反面「最前線でもしものことがあったら?」と、いう想いに駆られ気がつけば三階層に来てしまった。思ったより戦えていたことに油断をしてしまい、まさかいいところまで削ったところで仲間を呼ばれるというのは予期していなかった。

 

(どうしよう!?このままじゃ!?)

 

逃げようにも霧が深いここじゃ、狼から逃げれても他のモンスターに会敵するかもしれない。それにこの数相手に下手に逃げるという選択肢自体も正しいのかも定かではない。

 

死が............死がすぐそこまで迫っていると思うと、酷く体が悪寒に震える

 

怖くて怖くてたまらない..........

 

「.......けて...........た........けて」

 

呻く様にじりじりと後退していくと、狼たちも取るに足らない獲物だと思ったのか、恐怖する彼女を見て愉しむ様に迫っていく........

 

「助けて!〝夜〟君!!」

 

ここにきているはずの幼馴染の愛称を叫ぶ。現れるわけがない............でも、もしも近くにいるなら──

 

狼がその鋭い牙で喰い裂かんと飛び掛かろうとした瞬間、少女は駄目だと目を瞑る。

 

が──

 

「はあああぁぁぁ!!!」

 

「ぎゃるんッ!?」

 

「ぇ............?」

 

飛び掛かってきた狼の悲鳴........そしてモンスターが爆散する音が聞こえ、恐る恐る目を開くとそこには自身を庇うように立つ一人の剣士がいた。

 

その背中は間違いなく──

 

「後は任せろ..........〝悠那〟」

 

「ぁ.......夜........君?」

 

悠那.........そう呼ばれた少女は幻でも見ているのかと思った。

 

こんな都合がよすぎるタイミングで..........会いたかった幼馴染に会えるなんてなんてドラマのワンシーンだろうかと思うほどにタイミングがよすぎる。

 

「久しぶり.........と、言いたいところだがまずはコイツ等を片付けてからだ」

 

ポーションをいくつかその場に置き、夜君と呼ばれた少年.............

 

〝レイル〟は幼馴染を守るために突っ込んでいく

 

「大丈夫?貴女?」

 

するとすぐに紫色の髪を靡かせる凛々しい女性と栗色の気品ある女性、そして浅黒い肌の美女が駆け寄ってくる

 

「あ...........えっと...........大丈夫です」

 

「良かったわ............それにしても............」

 

「?..........どうかしましたか?」

 

「........いえ、何でもないわ。一先ず、敵は彼らに任せましょ」

 

最初に声をかけてきた紫色の女性が何か微妙な表情をして私を見ていたが、直ぐに彼の方を向いて戦況を確認していた。私もつられるようにそちらを見ると、彼ともう一人の少年が凄まじい勢いで剣を振るっているのであった。

 

「かっこいい............」

 

幼馴染はまるで誰に囚われることもない、風の如く狼たちを翻弄してるかと思えば、目にもとまらぬ攻撃速度はさながら流星群の如く敵に降り注いでいき掃討していっている。そんな様子に、思わず素直な感情が口から零れていた。

 

「....................」

 

ただそんな様子をどこか面白くなそうにしていた少女が一人いるのであった。

 

 

***************

 

 

襲われている相手を見て、レイルは思わずすぐに飛び出していた。

 

冷静に見えた反面、内心ではかなり焦っていた。

 

それも当然だ。誰しも身内に危機が迫っていれば慌てる。

 

「ラスト!!」

 

カウンター気味に斬り込んだレイルは鋭く狼の首を刎ね、倒しきる。

 

あれからさらに援軍は呼ばれなかったことで、どうにかさほどの危険を感じずに倒しきることができた。とは言えキリトがいてこそだ............一人だったら手古摺っていただろう

 

「お疲れキリト」

 

「あぁ..........でも驚いたぞ?いきなり囲まれてること見たら何も言わず突っ込んでいくんだからな」

 

「悪かった。彼女は俺の幼馴染でつい冷静さを欠いた」

 

「そうだったのか..........それならあの状況じゃ仕方ないか」

 

そんな具合にキリトと軽く話し、彼女の方へ振り替えると直ぐに──

 

「夜君ッ!!!」ダキッ

 

「って、おい!?」

 

いきなり衝撃を覚えるとレイルの胸元に頭を押し付けて抱き着く幼馴染がいた

 

「会いたかった............会いたかったよぉ..........夜君!うぅっ............グスっ..........」

 

嗚咽交じりに泣いている幼馴染に突き放すことなどできるはずもなく、努めて優しく接する

 

「まさか、こっちで会うとは思わなかったよ」

 

なだめるように頭を撫で、落ち着くのを待つことにしたのであった

 

 

 

 

 

 

悠那が落ち着いた後、野営地に一度戻り、報告を終えた俺達は食堂を借りて自己紹介をすることになった。道中で悠那が何故こっちに来ているのかと聞けば、親父さんがプレゼントしてくれたそうだ。

 

因みに、何故俺のプレイヤーネームを悠那が知ってるかと言えば幼馴染と言うこともあり、俺がゲームでよく使うハンドルネームを知ってた上、以前のβ時の時の思い出を話した際に教えていたことを覚えていたからだそうだ。

 

「えっと.........私はユナです。夜........レイルとは親同士が仲良くて、幼馴染なんです」

 

「夜でいいよユナ。意味としてはどっちで呼んでも変わらないし、ユナにレイルって呼ばれるのはなんか違和感あるしな」

 

座席順は左からミト、レイル、ユナとテーブルを挟んで向かい側にアスナ、キリトと言った席順。最初にレイルがミト達を紹介してユナについての話が始まったのだが............

 

「..........」

 

「な、なぁ............ミト?」

 

「.........何?」

 

「なんか機嫌悪い?」

 

「..........ふん」

 

隣りに座るのはやはりミトだが、何故だか視線と態度が冷たい.........

 

「え、えっと.........レイル。意味的にはどっちも変わらないってどういう事だ?」

 

キリトが雰囲気を変えようと、レイルにそんな質問をする。

 

「え?あ、あぁ..........レイルっていうプレイヤーネームはアラビア語で『夜』を意味してるんだ。そんで元々俺の本名に夜が入るからそこからとってユナは俺の渾名にしてるから意味的には変わらないってわけ。まぁ、表記自体はローマ字表記で《Reiru》にしてるけど」

 

因みに他候補では英語で安直にナイトや妹分繋がりでロシア語のノーチとかも候補ではあったが何となくレイルの方が語感もいいし、かっこいい感じがすると言う理由で使っている。

 

「へぇ...........それでユナ......さんはどうしてこんな早くにあそこにいたんだ?」

 

「ユナでいいわ。目的は夜君を探してたの..............幼馴染だったから心配で思わず.............迷惑をかけてしまってごめんなさい」

 

「あっ、いや............それはいいんだ」

 

キリトは非常に申し訳なさそうにするユナに自分が責めたように思えて罪悪感を感じテンパった様子になる

 

「まぁ、確かにちょっと考えなしで危なっかしいとは思うけど..............俺もまさか知り合いがこっちに来てるとは思わなかったから完全に失念してた。それによく考えればユナならこっちに来てても〝何もおかしくなかった〟だけにユナの責任じゃないさ」

 

「どういう事?」

 

アスナが妙な言い方に疑問を持つ

 

「あぁ..............えっと、ユナの親は茅場昌彦のある意味では師みたいな人でな。その繋がりでナーブギアとカセットの用意ができても不思議じゃないんだ」

 

「そうなのか!?」

 

キリトが驚いた表情を浮かべるのも無理もない。ここは幸い他プレイヤーがいないから言える話だが、黒幕の師の娘と言う話は非常にデリケートな話題だ。

 

「あぁ...........勿論だがこの話は内密に頼む。後これはユナのことを話したからってわけじゃないが俺の親も茅場の知り合いだ。俺の親父はアメリカに研究所を持つそれなりに名の知れた脳科学者で、BMI........ブレインマシンインターフェイスの理論的な部分でよく意見を出してたりしたんだ。だから、この状況になったのは.............」

 

ウチの親がこんな事件に関与していた............それは絶対に無いといえる。科学者の癖してといううか、よく非科学的な精神論を語ったり、情に熱いうちの両親なだけにこんなことをするわけがないと断言できる。

 

だが、茅場とは繋がりがあった。よく両親から聞かされていたし、俺も幼少期に一度顔を合わせているらしい。だからとは言わないが、茅場に対して尊敬もしていたし憧れだって抱いていた。だからか、いつかは謝るべきだと感じていた。無関係とも言い切れないからこそ、改めて口にしてそう思えた。

 

「..........はぁ、レイルは悪くないでしょ?私達は別にそんなこと気にしないわよ」

 

そう呆れてように微笑みかけるのはミトだった

 

「レイルは何も悪くない。罪悪感なんて感じる必要は全くないの。違う?」

 

「だ、だが.............」

 

「全くもう.............私達は気にしてない。レイルは頼りになる仲間............そうでしょ?みんな?」

 

相変わらず面倒だと言う様にミトはキリトやアスナに問うと二人とも笑顔で頷いた。

 

「馬鹿なこと気にしないで頼むわよギルマスさん?」

 

「..........ミトにはかなわないなぁ........変なこと言ってすまなかったよ」

 

「わかればよろしい」

 

改めて叶わないと思うと、何故かドヤ顔でそう言う彼女が可笑しくて笑みが零れる

 

「何だよソレ......ははっ」

 

「ふふっ......そうね」

 

するとミトもまた自然に笑っていた。ちょっとの間不機嫌そうだったのが嘘みたいに、ミトと笑いあう。レイルはそれにどこか安心と何故か温かみを覚えていると.........

 

「.........夜君のばか」

 

「ユナさん?俺は罵られて喜ぶ変態じゃないですよ?それと脚を踏まないでもらえます?」

 

「知らないわ........ふん」

 

今度は右隣りのユナが拗ねたように足を踏んで罵る。人によってはご褒美なのだろうが生憎、そんな特殊性癖は持ち合わせてはいない。

 

それから、ユナにもギルドに加入してもらうことにした。一応短剣スキルである程度は戦えるそうだが、俺から強くディアベルらの方に回るよう頼み込んだ。と言うのも攻略ペースが上がってきているため、急ごしらえな形で戦闘指南してもかえって危険だ。

 

最も自分自身の戦わせたくないという願望も無きにしも非ずだが、それ抜きにしてもリスクがある事は避けるべきだろう。

 

そうして俺はキリト達と別行動をとって、一旦ミトと共にユナを一層にいるクラインらの下に送ることにした。若干クラインがユナと会った時の反応が不安だが、ディアベルもいるし大丈夫だろう.........大丈夫、だよな?

 

「ねぇ、夜君」

 

そして現在。主街区に向け森の中をはぐれないよう注意しながら歩いてると、隣に並んだユナが呼びかけ上目遣い気味にこちらを楽しそうに見つめてきた。

 

「どうしたユナ?」

 

「ふふっ♪こっちでもよろしくね!」

 

「あぁ、よろしくな」

 

幼馴染とまさかの出会いに驚きつつも、こんな世界だがこれからが楽しみに思えてしまう。不謹慎かもしれない。だが、それでも先を楽しみと思えている内はまだ十分に戦える。そんな気がするのであった。

 

 

 

 

 

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おまけ『お願いとライバル』

 

「ねぇ、ミトさんはレイルとどんな関係なの?」

 

野営地にて、ミト達が出発する前。レイルが二人を残して席を外したところでユナはそんな問いをミトにに投げかける

 

「ミトでいいわ..........どんな関係、ね............」

 

ミトはその問いに「頼れる大切な仲間」と答えようとしてやめた。

 

何故やめたのかはわからない。だが、それは何故か正しくもあり、間違いでもある。そんな不思議な感覚を覚えたからだ。

 

「.............夜君はミトのこと凄く信頼してるみたいだよ」

 

「え?」

 

「だって、あんな心の底から楽しそうにする夜君は相当レアよ?いつも夜君は周りからの期待に応えるための自分を演じてたから」

 

幼馴染と言っても学校は違うし、年も一応一つ上な為しょっちゅう会えるわけじゃない。それでも、レイルがどんな風にリアルで過ごしていたかは悠那(・・)は知っている。

 

「夜君はさ...........強がりなんだよ。小さい頃から両親が忙しいくて寂しくて辛くても一人で耐えて一人でどうにかしてしまう。だから、皆が皆夜君なら大丈夫って無責任な期待をしていた」

 

それはミトもわかる気がした。レイルは賢く強かで、一人でも大抵のことはこなしてしまえる。だから、ミト自身頼ってる部分がないと言えば嘘になる。

 

「その上勉強も運動も家事も基本的になんでもそつなくこなすし、たぶん天才っていうんだと思う。でも、一つしか違わないのに、誰にもそのうちに秘めた苦悩を窺わせないよう仮面を被っている夜君は痛ましかった...........」

 

幼馴染だからこそユナは気づいて気にかけることは出来た。それでもレイルは強がるようにしていたことを覚えている。彼の両親はいい人達だが滅多に合わないから気がついてなかった。けれど、幼馴染だから気が付けたのは申し訳ないけどちょっぴり特別な気がして嬉しかったりもした。

 

「でもね?そんな夜君もゲームをしてる時や私の歌を聞いてくれてるときは本心から楽しそうにしてくれたの」

 

唯一、レイルが心の底からの反応を示したのはその二つだけだった。自分の歌なんてアマチュアなのになんて楽しそうに聞いてくれるんだろうと凄く嬉しかった。それが、ユナの〝大きな舞台で歌を歌いたい〟...........レイルにその最高の舞台で歌う自身の歌を届けたいという夢を抱くきっかけだった。

 

「だからね?それが嬉しくて..............ミトと楽しそうにしてるのに嫉妬しちゃった」

 

頬を赤らめ恥ずかしそうにはにかむ彼女にミトは同性でありながら不覚にも可愛いと感じた。そんな様子を見ればユナがレイルに抱いてる感情の正体に察しが付く。

 

「私は.........「ねぇ、ミト。一つお願いがあるの」.........お願い?」

 

何とも言えない感情を抱いたミトは、どう言葉にすればいいかわからないままに口を開こうとしてユナに遮られる

 

「うん。私は弱いから今は夜君と一緒に戦えない......だから夜君のこと頼むわね」

 

此処までユナが話してきたのはすべて幼馴染を支えて欲しかったから。レイルはここにきて変わったのをユナは直ぐに気が付いた。だから一人で背負い込んで勝手に解決して............疲弊していくリアルでの彼に戻って欲しくない。

 

そして...........悔しいけどレイルを変えたのはミトなのだろうと言う事もユナは気が付いていた。だからこそミトに頼んでいるのだ。

 

「.............わかった。任せなさい。今のレイルの事なら多分一番(・・)わかってるから」

 

どこか誇らしげにミトはそう伝える。一番わかっているだなんて傲慢かもしれない。けれど、ミトは心底そう思えるのだ。

 

「うん、よろしくねミト」

 

満足そうにユナは笑うと自然と手を差し出していた。そしてそれはミト同じで、二人はそのまましっかりと握手をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ..........そうだ!ミトにはもう一つだけ言っておかくちゃね」

 

「?」

 

ふと思い出したかのようにユナはそう言うとミトは何のことやらと頭の上に?を浮かべる。

 

それに構わず、ユナはとびきりの笑顔で宣言する

 

「私、絶対負けないから♪」

 

「へ?」

 

今はまだ(・・)目の前の彼女も彼もそう言う感情を持っていない。又は自覚していない...........けどきっとユナにとってミトは最大のライバルになる。そんな確信に近い予感があった。

 

だから、今はただそのライバルになる相手にとびきりの笑顔で宣戦布告をする

 

 

〝彼の心は譲らない.......彼の心を射止めるのは私だ〟と

 

 

 

 






今回はここまでです!そして最初の設定では載せてはいませんでしたが、当初から自分の中でヒロイン候補にして幼馴染ポジションとしていたユナの登場です!本来はもうしばし先の話で、ノーチラス共々出す予定でしたが............ユナ/重村悠那の声を担当されていた神田沙也加さんの訃報があり、急遽登場させることにしました。

突然のことに自分もニュースを見たときはにわかには信じられませんでした............なので、神田さんが演じたユナは自分やファンの心の中でずっと生きているという事を形にしたくて急ですがユナを登場させることにしました。勿論、神田さんはユナ以外にも多方面でご活躍された方ですが、あくまで自分にとってはSAOのユナと言う印象が大きくあります。ユナや悠那の引き込まれる演技や歌..........どれも忘れられないほどに鮮烈な記憶を残してくださった神田沙也加さんのご冥福を心からお祈りすると同時に、彼女の演じたユナを生き生きと描いていけるよう頑張っていこうと思います。

それでは今回もここまで読んでくださりありがとうございます。また、コメントやブックマーク、いいねをしてくださりありがとうございます。

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