エギル達らお世話になっている人たちに挨拶を済ませたレイル達は、ミト達女性陣の精神的な影響も考慮して圏外へのゲートをくぐりダークエルフの野営地に戻るつもりでいるのだが...............
「...............なぁ、キリト。もしかしてだけどついてきてるか?」
「...............多分」
「「?」」
少し歩いたところで立ち止まってから、レイルとキリトのやり取りを疑問に思うミト達。一体何の事だろうと思案しているとキリトがいるはずのない彼女に呼びかける
「いるんだろ、キズメル?」
「え?」
アスナのそんな戸惑う声とともに、ミトもならって辺りを見回す。しばらくは小鳥のさえずりや木々の葉擦れ音が聞こえていたが、それとは異色の布切れ音が真後ろからする。
「気づかれてしまったか」
後ろを振り返れば、長いマントを背中に振り払う美しきダークエルフの姿が現れた。その騎士の瞳にはきらきらと悪戯心が輝いていた。
「気づくも何も.............」
キリトの言う通り、そちらから話しかけておきながらと言う感じだ。もっとも確信はなかったのだが、一度意識してしまえば、周囲に対する注意度が上がって僅かに........本当に僅かだが気配を感じたためあてずっぽうではあるがキリトと共に今のような答え合わせのような形に至った
「一体何時から............まさか宿の時も?」
確かにそれは疑問だ。なにせ声をかけられさえしなければきっと今の今まで気づかなかった。
「いや、そなたらを見つけたのはあの街の集会場でだよ。それにしても............レイルの主張は素晴らしかったな。正しく仲間を導く長の風格があったな。レイルはいい指揮官になれるだろう」
「うっ.......聞いてたのか............そう言ってもらえるのは嬉しいが、恥ずかしいから触れないでくれ」
あの場では一人のギルマスとしてリンドらに舐められる訳にはいかないので意識して強気な態度をしてはいたが、格好つけているようなものなので改めて第三者にそう言われるとくるものがある。
「そうか?私は誇るべきだとは思うが、レイルがそう言うのであればこの会話はここまでにしよう」
「ねぇ、キズメル。なんで..........えっと人の街に来たの?」
キズメルがそう言ったのにレイルがほっとしたところで、アスナがキズメルに対しどういった理由で此処に来たのかを訪ねる。
「あぁ、それは任務だからな」
「任務?」
「うむ。私が今司令から与えられている任務はそなたらの世話と護衛だ。今朝野営地を出たそなたらが中々戻らなかったので、少し様子でも見に行こうと思ったまでだ」
「ま、までって..............その、もしも隠れ身のまじないがバレたらヤバくないか?」
例えばなのだが、プレイヤーが街までmobに追いかけられ侵入してしまった場合、それはそれは強い衛兵NPCがたちまち退治してしまうのだ。レイルの懸念はまさにそこなのだが、キズメルの強さは知っているので退治されるまではいかないとは思うが、確かにリスクはあるはずだ。
それに特にレイルに関しては衛兵の強さをよく知っている。
何せ───
「そういやレイルはβの時街の衛兵に..........「その話はいいだろキリト」.........悪い悪い」
「何かあったのか?」
βテスト時代。レイルは一度だけ衛兵に喧嘩を売ったことがある。
と、言うのも普通に喧嘩を売ることは出来ない。なのでキリトに協力してもらい、一時的にオレンジプレイヤーになり街へ入って衛兵が集まて来たところで戦ってみたことがある。今思い返せば我ながら馬鹿なことをしたと思うが、滅茶苦茶強い相手にワンちゃん勝てたり?とかそう言うのを試したくなるゲーマーの性は理解してもらいたいところだ。
「き、気にしないでくれ。それより大丈夫なのか?」
とは言え、ミト達に知られれば呆れられるのは目に見えている。それに割と一方的にやられて黒歴史みたいなものなので触れられたくないため、話をそらすためにキズメルにもう一度尋ねる。
「この《朧夜の外套》のまじないは、陽と月の光が入れ替わる夕刻と夜明け前に最も強くなるのだ。ちょっとやそっと触れられたくらいでは破れないさ」
「へぇ~..............」
レイルが感心していると、キリトの方はアスナとの間で何やら不穏な感じだが、いつものことなので無視する。
今後の予定としては、ボス戦が想定される6日後まで野営地を拠点にすることにした。アスナたっての希望でもあり、彼女たちは先の件で街にはいたくない様子なので彼女たちの精神衛生上...........それもあるが何となくキリトもレイルも野営地での暮らしを気に入っているのもあり夕暮れ時の森を談笑しながら野営地へと帰るのであった。
「で、街の衛兵と何しでかしたわけ?」
「黙秘権を......「どうせ喧嘩売って返り討ちにされたんでしょ?」.........はぃ」
「レイルは時々馬鹿なのか頭がいいのかわからなくなるわね...........」
なお、ミトに何故か簡単に衛兵の件を言い当てられて呆れられた目で見られたのであった
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「バレてそうで怖いなぁ..............」
「何がだよレイル?」
レイルは久しくキリトと二人だけでフィールドに出ていた。
時間は深夜で、野営地から抜け出して今はとある人物と会うために二階層との往還階段に向けモンスターの気配を避けながら移動していた。
「ミトには事前に端からバレると思ってたから〝アルゴ〟に会う事は言っているんだけど.............」
「ならなんで?」
深夜の活動はミトに心配をかけるためどうすべきか悩んだがアルゴが相手ならばと思い、その旨を伝えたのだ。アルゴは情報屋として人目に付きにくい場所での情報交換を望む場合がある事をミトは理解しているため嫌そうな顔はされたものの納得してもらったうえで行動してるのだが...........
「誤魔化してギルド回りの情報を直接聞きに行くとは言ったけどそうじゃないことはバレてるだろうなぁって」
今回、キリトとアルゴに会いに行っているのは当然そんなことではない。とあるプレイヤーの情報を買うためだ。そうこうしていると直ぐに目的地までつくと、橋の陰から人影がにじみ出る。
「七秒遅刻だゾ」
「悪い、電車が遅れて」
待ち合わせの相手がにやりと笑いそう言ったのに対し、キリトは精一杯のユーモアで答える。だが、返答は当然わかりきっている。
「ハァ~.......もう少し気の利いたジョークを売ってやろうカ?」
「.........間に合ってます」
当然の如く辛辣な返答を受けたキリトに変わり、レイルは尋ねる
「あって早速で悪いがメッセージで依頼したことは何かわかったか?」
「ミーちゃんに心配をかけるのも悪いからナ」
そう言ってアルゴは半ばから倒れた石柱に胡坐をかいて座るのを見てレイルとキリトもそれぞれ近くの石柱にもたれかかる。
思えばβを通じてもアルゴとの付き合いはキリト以上に長い。もっともアルゴがSAOで唯一にして凄腕の情報屋でもあるため当然でもあるが、デスゲームと化した今でも続く付き合いに何とも不思議な感覚を覚える。
とは言え、それは今考えるべきことではない為思考の隅へと追いやり、ポケットからレイルは情報代である500コル金貨ピンっとはじきアルゴに渡すと、アルゴは器用にそれを掴み話を始める
「まず、三層に来てリンド隊ことギルド《ドラゴンナイツ・ブリゲード》に参加したプレイヤーは一人だけだナ。名前は『モルテ』で片手直剣使いで、街中でも
「そうか...........俺の記憶違いじゃなきゃ攻略会議には参加してなかったよな?」
レイルの問いにアルゴは頷いて続ける
「あぁ。付け加えると前回のボス戦からDKBの面子に変化はなかったヨ。ルー坊は恐らくその理由も知りたいだろうけド.............生憎とその理由まではわからないナ」
「まぁ、それはそうだよな。本人にしかわからないし」
とは言え参加していないと言う事になにか意図を感じざる負えない。勿論偶然の可能性もあるのだろうが、あのキャンペーンクエストに同行していた。その時の面子は少なくとも件のモルテ氏以外はボス戦で見かけたことがある。つまり、彼は恐らくレイル達と同じβテスターの可能性が高い。しかも会議に参加していないのが更にそれを高めてるように思える
「因みにギルドに入った経緯は志願らしいナ。当時はまだギルドではなかったが主要メンバーには《志願してきた新人》として紹介してきたみたいだゾ」
「へぇ.............あのリンドがよく許可したな。それだけそのモルテ氏が強いのか、或いは............」
キリトが呟いたように確かによく許可したなとレイルも感じた。そして理由に関してもキリトの考察と同様に戦力としてはたまた............
「アルゴはモルテのこと見てどう感じた?」
レイルはアルゴにそんなことを問うと、アルゴは渋面を作り胡坐をかいたまま体を前後に揺らす
「それが、オイラはまだそのモルテ君を直接は見てないんだよナ.............ズムフトでDKBが拠点にしてる酒場に張り込んでもそれらしい奴は現れなかったヨ」
「なら本格的に隠してる説が濃厚だな。アルゴが目にしていないんだとすれば意図的だと考えるほうが自然だ」
キリトが言う様にアルゴが目にしていないとなるとそれは意図的でなければ逆に不自然だ。アルゴの情報屋としての腕はこのSAO内では恐らく俺とキリトの二人がよく知っているため断言さえできる。
「だろうナ。ま、ボス戦に出てくるとは思うカラ、そこでチェックしとくヨ」
「よろしく頼む。あともう一つ聞きたい。モルテはALSの人間とやり取りとかしてたか?」
「いや、そういうのは聞いてないナ。ルー坊の見間違えじゃないのカ?」
わざわざこんなことを調べてもらったのはレイルが森でモルテを見かけたときに感じた違和感の正体..........それは洞窟でALSと出くわしかけた際にも同じように
とは言え、その時のプレイヤーの装備は片手斧に盾を装備しており、モルテの装備構成とは異なる。だが妙に引っ掛かりを覚えたためにアルゴにそんなことを問うたのだ。
「だと思いたいな.............もしALSとも繋がってるのにDKBに所属してるのはあまりに不自然だ」
「ルー坊は二層で強化詐欺を教えた黒幕........ソイツが関わってるかもしれないと考えてるんダロ?」
「あぁ........」
キリトもレイルから話を聞かされたときにもしかしたら、と同じように考えた。何せキリトに関しては強化詐欺で間接的にかかわっているのだ。
「一応報告しとくとキー坊や《レジェンド・ブレイズ》の証言に合うプレイヤーは見つかってないヨ。こっちはモルテ君以上に見つけるのは骨が折れそうダ」
レイルは危険を承知でアルゴに黒幕のプレイヤーを捜索することを依頼していた。勿論、無茶は厳禁と言う条件を付けてではあるが..............
「悪いなアルゴ。こんな危険な依頼を頼んで。何度も言ってるが深入りしすぎることだけは避けてくれよ?」
レイルが他人のなにかをかぎまわればすぐにばれるのは明白だ。何せその手のプロではない。その為アルゴに頼らざる負えないわけだが、相手のことを察するにかなり危険な奴なため罪悪感を禁じ得ない
「あぁ。わかってるヨ。オイラだって死にたいわけじゃないしナ。それにこれに関してはルー坊と同意見ダ。ソイツを放っておくのはあまりに危険ダ」
そう、何せあの黒幕は自分の手を汚すことなく他人に悪意を植え付ける。質が悪い事この上ないし、アルゴもレイルも今後何か大きなことになるかもしれないと言う危機感があるのだ
「..........呼んでくれれば俺は必ず行く。しつこいが無茶だけはくれぐれもしないでくれ」
「俺からも同じだアルゴ。もしもの時は俺達を頼ってくれ」
アルゴの腕とその逃げ足は知っている。かと言ってもし仮に襲われた時本当に切り抜けられるかは誰にもわからない。レイルの念押しにキリトも同じように頼って欲しいと伝える。
「心配してくれるんダナ?」
真剣な空気からアルゴは直ぐに揶揄う様な笑みを浮かべる。何を考えてるがわかるがレイルもキリトも素直に答えた。きっとキズメルなら『想いはちゃんと伝えらえられるときに伝えたほうがいい』と言う気がしたからだ
「当たり前だ。アルゴに何かあったら嫌だからな」
「あぁ。知り合いに死なれたくないのは当然だろ」
「!..........そうカ.............アハッ....わかったヨ。もしもの時はルー坊を呼ぶし、無理はしないヨ。約束ダ」
レイルとキリトの返答にアルゴは驚いたような表情を浮かべ、一瞬俯いた。その時の表情はフードの陰で窺えないがアルゴはどこか嬉しそうで面映ゆいような笑みで約束したのであった。
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アルゴと別れてレイル達は野営地に戻る..............ではなく、《迷い霧の森》のマップ中央部にプロットされた光点に向け慎重に移動していた。
その座標には野営地から逃げ出した偽兵士が森エルフの大型キャンプがある。元々キリトと二人でキャンペーンクエスト第六章《潜入》をやることが今回抜け出してきた最も大きな理由だったのだ。丁度良くアルゴの情報を聞けるというのもあり、二人でやろうとしてるなんてバレると拙いと考えたのでミトには表向きの理由として伝えたのだ。
そもそもこの《潜入》は《命令書》と呼ばれるアイテム奪取が目的で、β時代は複数人のパーティーとダークエルフの兵士十数人と大型キャンプに夜襲を仕掛け森エルフたちを皆殺しにするのがセオリーだったのだが、それをキリトはアスナ、そしてキズメルにやらせたくないと思ってしまったのだ。
確かに俺もこの階層に来た時、エリートMobである彼らを倒したいと純粋にゲームの敵として見ていた。だが、キズメルと関わり何故かそんな無意味ともいえる感情を覚えてしまった。キリトも同様で今夜中にβ時代の剣による略奪ではなく隠密潜入を選択したのだ。
正直ミトを騙す様な真似をしてしまって心苦しいが、今回に限っては俺は少なくとも悪くないと思う。何せ───
「頼むから後のことは頼むぞキリト?怒られんのは絶対俺なんだからな」
「わかってるって。でもレイルがこのキャンペーンクエストをソロでやっていたとはな...........」
今回本来キリトは一人で行動するつもりで、当時ソロでクエストを進行していたレイルに相談していたのだが、いくら何でも今のSAOでソロでこのクエストをさせるのは拙いと、一応はソロでの攻略法を知っているレイルがミトに対しては非常に申し訳ないが、仕方なく同行することにしたのだ。
「まぁ、当時の三階層じゃあプレイヤースキルを高めることに重点を置いてたからこの階層では出遅れたからな。一人でやらざるおえなかったんだよ」
レイルはβ時代の三階層では主にプレイヤースキルを高めることをしていたのでボス戦以外は常に一人で実戦と練習を繰り返していた。その為レイルは比較的三階層の知識はキリトらに比べ少ない。だが、一人でこのクエストを進めていた分効率的な進め方などには詳しい。
「とは言え、今潜入できるのはキリトだけ。バレた時は俺も突っ込んで混乱に乗じて離脱する手筈だが気をつけろよ?」
とは言え、このソロ攻略は隠蔽スキルがほぼ必須だ。なくてもできなくはないが、はっきり言って成功率が段違いなのは言うまでもない。今レイルのもつスキルは《片手直剣》、《索敵》、《投剣》、《体術》の四つなので当時は体術の枠が隠蔽だったわけだが、流石にこのためだけに苦労して習得した体術は捨てられないし、かと言って索敵を捨てるのも不便なのでついてきてはいるもののレイル自身出来ることは少ない。
「あぁ。油断せず慎重にだろ?」
そんな会話をしながらレイルの先導の元ソロで隠密に侵入できる地点に向け移動していく。すると大小異なる岩が転がる河原を前進しようとしたところでレイルとキリトは同じタイミングで立ち止まる。
「キリト............」
「あぁ..........レイルもとなると気のせいじゃ............」
二人して誰かに見られている感覚を覚える。だが、このSAOではそんな筈はないのだ。現実とは違い視覚又は聴覚、あるいは嗅覚からナーブギアに信号が入力されなければプレイヤーのようなムービング・オブジェクトを感知できない。
つまり、誰かの視線を感じる.........誰かに見られていることを感知することは不可能なのだ
理性では二人ともそんな事よくわかっている。しかし、体が動かない。デスゲームになってから幾度も感じた悪寒が背中に張り付いたまま離れない。二人は周囲を注意深く伺う
この時、もしかしたら俺達の命運を分けたのはつい先日ほぼ同じタイミングで熟練度100になった索敵スキルのmod《看破力ボーナス》だった。これはハイディングしている相手を見破りやすくする強化だ。
右から左へと二人の視線がゆっくりと流れると、対岸の暗がりにおぼろげな輪郭の揺らぎを捉えた。もしもそこに誰かが潜んでいるのなら二人で睨み続ければハイド・レートが低下する。もしも検討違いなら..............いや、その心配は無用だろう。何故なら俺とキリトの二人でいる。俺とキリトの二人ならまず問題ない。
すると不意にじわりと色彩が歪む。崖下から滲み出すように人影が一つ現れる。視界に表示されたカーソルはmobのそれではない。緑色のプレイヤーを表すそれだ。
「お前は──────」
カーソルに続いて見えたのはダークグレーの
「モルテ」
その名をレイルが呟くと目の前の...........モルテは悍ましい笑みを浮かべるのであった
大変長らくお待たせしてすいませんでしたぁ!!!!!!!!!!
すいません。完全にサボってました。書けそうな時間使ってモンスターを狩ったり最近はインクを塗りたくってました。楽しみにしてくれた人にはすいません!
さて次回はお察しの通りレイルVSモルテを書いていこうと思います!レイルのもつ強さをうまく描いていきたいと思います!
さて、皆さんは今日公開の映画冥き夕闇のスケルツォを見られたでしょうか?自分は今日あさイチでライブビューイングで見てきました。ネタバレしないように感想を言うと控えめに言っても最高でした!ミト推しの自分としても非常に満足できる内容だったと言う事は明言しておきます!戦闘シーンなんかは特に激しく、間違いなく劇場で見るべき作品だと思います!まだ見てない人がいればぜひ劇場に足を運んでみてください!
それではまた次回を楽しみにしていただけると嬉しいです!今回はここまで読んでくださりありがとうございます。沢山のコメント、お気に入り登録、評価をしてくださりありがとうございます!多分次はそんなに長くならないうちにSAOを更新していくと思います。