Re:夜の剣士   作:graphite

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覚悟と為すべきこと

 

 

殺し合い──────

 

一方的ではあるがプレイヤー同士の命がけの戦いを乗り終えたレイルはキリトと共に森エルフのキャンプに潜入を試みていたのだが──────

 

(難しいって............そう言う事かよ)

 

レイルとキリト両名は森エルフのキャンプのある丘の死角に姿を潜め、とある集団たちの言い争いに耳を傾けていた。その集団と言うのが...........

 

「これ以上言い合っても埒が明かない!ルールに則り、先についた我々がクエストを進めさせてもらう!」

 

「先ゆうてもほんの何十秒やろうが!!!」

 

一つは、同じくこのキャンペーンクエストを進めているDKB。そしてもう一つの集団は.........ALS。この時点でレイルはモルテについての考察に結論が出た。

 

モルテは両ギルドにキャンペーンクエの事をガイドしたのだろう。何せ奴は片手剣に片手斧と二つの装備を使い分け、顔を隠している。しかも、アルゴが姿を見なかった理由も単に隠し玉というだけではなくこの工作を悟られないようにするため。

 

それに、ALSは早すぎる。このキャンペーンクエストを熟知している俺達βテスターはともかく知識のない筈の彼等にこの時点で此処までクエストを進めることは不可能だ。

 

(だが、理由は?候補として考えられるとすればレアアイテム..........いや、モルテの奴から察するにそれは違う..............まさか嘘情報を掴ませたか?)

 

レイルが考えをまとめていると、その答えは意外にもすぐにわかった

 

「それにアンタはずーっと隠しとったやろ!!このエルフクエが、ボス討伐に必須やっちゅうことをな!!」

 

(チィ..........そう言う事かよッ!?)

 

モルテはALS側にボス攻略の必須アイテムをキャンペーンクエストの報酬にあると言っただけじゃなく、それをDKBが隠していると言う嘘に嘘を重ねた。β時代、確かに貴重なレアアイテムを入手出来はしたが、少なくともそんな必須アイテムの存在はなかった。確かに否定はできないのかもしれないが、明らかに意図的に二つの集団を争わせるためだ。

 

しかも.............

 

「違う!我々はそな話知らない!!我々は単に報酬アイテムや経験値目的だ!言うまでもないから言わなかっただけだ!!」

 

しかもモルテの奴はDKBにはボス必須アイテム云々の話はしていないのだろう。仮に俺がモルテの立場なら俺だってそうする。何せDKBはALSに対して『知らない』或いは『違う』としか言えない。そしてそれは統率が取れたある種のエリートさを持つDKBに対し、連体力の強さと感情的な人間が多いALSからすればしらばっくれてる様にしか受け取られない。

 

火と油のような関係だからこそモルテのやり方は本当に悪辣だ。話し合いに持ち込むことさえも難しい。下手すればこのまま完全に二分してしまう。

 

(こうなったら............一か八かだ)

 

レイルはある決断をするとキリトに指示を出した

 

 

*************************

 

 

後から聞いた話だが結局DKBとALSは我先にと森エルフのキャンプ地に突っ込んで行こうとしていたらしい。そう、らしい(・・・)のだ。ことはつまりレイルとキリトはその場を見ていない何せ───

 

「悪いな俺達が先にクリアさせてもらった」

 

「最近見かけん思ったら、お前ハン達も大方そこのチョンマゲと同じでボス攻略に必須ちゅうことを知っててだまっとたんやろ!」

 

レイル達は最速で別ルートから潜入してクエストを終了させるという手段に出た。キャンペーンクエストの特殊マップ、キーとなるスポットはどこかしらのプレイヤー或いはパーティーがクリアすると消え、どこかで新たに生成される。一先ずは目先のキースポットを消さなければ落ち着いて話し合いもできやしない。

 

そしてここからはレイルの仕事。キリトはしっかり潜入を成功させた。ならばギルドマスターとして、両ギルドには落ち着くところに落ち着いてもらう必要がある。

 

「まず、β時代は少なくともそんなものはこのクエストの報酬に存在しない。それは断言する」

 

そう断言するが、当然頭に血のぼったALSのメンバーは喚き声を上げる。勿論想定内。なので、俺は納得させるに足る反論は用意している。

 

「そもそもの話、俺達のギルドは1層にとどまっているプレイヤーやミドルレベルの支援、並びに情報屋の支援をしている。仮に知っているなら何よりも先に共有する。そんな重大事項を隠蔽していたら信用に関わる問題だ」

 

そう、レイル達のギルドはレイル達4名を除き支援に徹して動いて貰ている。最もクライン達にはいつかは前線出てもらいたいとは思っているがそれはしばらく先でいいし、今は関係ない。重要なのはギルドとしてのスタンス故に信頼を損ねられない事。これから先の事も踏まえても絶対にやってはならなことだけは理解しているつもりだ。

 

「.................せやな。少なくともお前さんの言葉は筋が通っとる。だが、β時代はやろ?」

 

レイルの言葉を受け、流石はギルドの長と言うべきかキバオウは自身の感情を飲み込んで冷静さを取り戻す。が、当然の疑問だ。β時代は確実にボス攻略に必須なアイテムの類はなかった。β時代(・・・)は、だ。もしかすると今は本当にあるかもしれないというのは否定のしようがない。

 

「あぁ。今の確証はない。検証の必要があるだろう」

 

此処からが難しい...........何せ───

 

「せやな。可能性がある以上は確証はとらんとあかん。やけど、どうするんねん?こうも毎度毎度コイツ等と顔合わせとたらいつ終わるかわかん」

 

そう、正直このままDKBとALSの両ギルド............そして俺達。この三組がこのまま続ければまたどこかで衝突が起きるし、今度こそ取り返しがつかなくなる可能性もある

 

「........キバオウさんつまり貴方は我々か彼等にクエストを中断しろと言う事か?」

 

それを理解したリンドやDKBが苛立ちを覚えて声を上げようとする。だが、ここでそうさせては折角冷静になりつつあるにも拘らずまた激しい言い争いになってしまう。だから──────

 

「リンドさん。キバオウさん。正直俺はどっちが情報の裏取りをしようがどうでもいいと考えてる」

 

「なんやて?」

 

主導権をレイルは常に握りつ続けることを意識する。一度でも手放せば再び争いが始まる。今度は止められない。

 

「つまり、リンドさんかキバオウさんの納得するやり方でどちらが裏を取るかを決めればいい。その間に俺は..............俺達は勝手に迷宮区を突破させてもらう」

 

レイルはここで大きな爆弾を投下する。両ギルドは結局のところは攻略の為に動いている。なら、どんなにこれが無謀であても食いつかざる負えない。

 

「なんやて?」

 

「だから俺達で人を募って迷宮区を突破してボスを撃破する。俺とキリトはβテスターだ。宝箱も鉱石も何一つ取りこぼさずに駆け上がる。俺達は俺達のやるべきこと、俺達の方針に従って先を行く」

 

「それはつまりここまで進めたクエストを放棄すると言う事か?」

 

リンドの言葉に俺は頷く。我ながららしくない手段の選び方だが、そうも言えない。ここで誰かが迷宮区に行こうとしなければ両ギルドは話し合いをしざる負えないはずだ。

 

「あぁ。俺達のギルドの目的はこのゲームをクリアすること。そのために必要なら努力は惜しまない。だからこんなところで争いに介入することも仲介もしない。争いたいだけなら好きにすればいい。俺は先を走り続ける。例え................例え俺一人だけだとしても。ボスに挑み続ける」

 

そう、走り続ける。

 

誰かに理解されたいわけじゃない。誰かに認められたいわけじゃない。ただ、自分と『本当』に大事なものを守りたい。ただ俺はその為にやってきた。だから例え守りたい者にも理解されなくても決して................

 

だというのに──────

 

(胸が............痛い)

 

ただの我欲なのにもかかわらず何故痛みを覚えたのだろうか

 

何故、誰かの................いや、彼女(・・)の顔がちらついたのだろうか

 

「う、嘘だ!?だってコイツ等あの女ども連れてないじゃん!!ってことはここで俺達を足止めして仲間に先をやらせる気なんだろ!!!!」

 

すると聞き覚えのある金切り声で絶叫にも似た指摘が入る。それは直ぐにその場全てに波及し、先のレイルの宣言で落ち着きを見せた二つの集団の人々がまた熱をとり戻していく。最もそれはレイルも想定内。

 

「否定はしない...................もしかしたらあっちも独断で進めてるかもしれない」

 

「じゃ、じゃあ「だからどいうした?」......は?」

 

「だからどうしたと聞いている。俺達..............俺とキリトはさっき言った様に今回の件の裏取りの方法やそれに付随する争いに関与する気はない。つまり彼女達は別。それにたとえ彼女達がいなくても俺は希望者を募り、準備を重ね先を進む」

 

「なっ..................じゃあやっぱりだましてるじゃねぇか!!!」

 

「確かに騙したかもしれない。屁理屈かもしれない。だが、俺達は目的のために最善と思った道を進む。そのための手段を取る。でも、俺の仲間は目標としてる地点は同じだとしても俺の考えにただ盲目的に従ってるわけじゃない。俺達はそれぞれが最善だと各々が考え、信じた己の道を進む............いや、進むことの出来る頼もしい仲間だ。俺は彼等(キリト達)彼女等(ミト達)にとっての最善を信じるし、尊重する」

 

「っ!?」

 

その場に居合わせたものは悟った。レイルの覚悟と信念を。この場において彼こそが誰よりも──────

 

「だからどうしたと聞いたんだ。そこがそんなに大切ならそれを想定して勝手に動けばいい。俺にとっては今この場でさほど重要な事には思えない。彼女達が信じたならそれは正しい筈だ。俺は彼女達を信じて俺のやり方で俺が思った正しいことを................βテスターとしての責務を全うする」

 

多分アルゴにとってβテスターとしての責務は多くの情報をプレイヤーに還元、それに負ってプレイヤーの役に立つ事。

 

ならば俺にとっての責務──────

 

身近な存在を守り、先を往く事に他ならない

 

多分それはキリトも同じ。根幹になる理由が違っても間違いなくその責務は同じこと。俺達にとって............いや、俺にとって仲間の命を背負うと決めた時点から、先に進むという事は逃れようのない責任なのだ。

 

「..............レイルさん。貴方達二人の実力は承知してる。しかし、今の攻略に参加してるメンバーほどの水準のプレイヤーをそう簡単に集められるとは思えない。加えてキャンペーンクエで得られるリターンの大きさも貴方達はよく理解してるはずだ。ALSに同調するわけじゃないが貴方達の相棒がいない以上簡単に信用は........」

 

リンドの指摘はごもっともだ。とは言えそれすらも俺は先に言ったように勝手に考えればいい。元より勝手なプレイヤーと言う自覚はあるし、向こうとて勝手に争ってる集団の一つなのだからこちらが自由にやる分に関して文句を言われる筋合いもないだろう。

 

「じゃあ私達は彼らについていくわ」

 

レイルが言葉を発するよりも早く、その場にいるはずのない声が夜闇に響いた

 

「私達のギルマスが決めた事を私達は信じるわ。それが正しいのであれば私達は彼を支えて先に進むだけよ」

 

薄紫の絹の様に綺麗な長髪の流れる様はさながら夜闇に舞う妖精の如く、夜空で銀光を放つ三日月の様な大鎌を携える彼女の赤い瞳は強い意志と共にリンドやキバオウらを睨みつけ悠然とレイルの隣に立った

 

(は?え?なんでここにミトが..........)

 

「確か先にボス部屋に辿り着いた人がボス戦のリーダー........だったかしら?」

 

するともう一人の人物も後ろから現れた。強い存在感を放つレイピアを携えた彼女まで一体どうしてここにいるのかとここまで冷静だったレイルの思考がぐちゃぐちゃになる程の衝撃だ

 

「オレ...........オレ知ってる!!こいつら一層も二層もロクに迷宮区をマッピングできずに余り物の箱をせこせこ開けてたりしたんだ!!そんな奴ら束になったところで迷宮区を突破できるわけがねぇんだ!!!」

 

またも声を上げたのは金切り声の主だ。確かキバオウからジョーと呼ばれていたはずだ。一層の時もそうだが必要以上に喚くので印象深い。ただ、今はフルフェイスマスクで顔を隠しているので一層の時に顔でも覚えておけばよっかったと頭の中によぎる。

 

ただ、いまはそれよりも..........

 

「............突破できないと思うならそう思ってもらって構わない。さっきも言った通り俺達は迷宮区を目指すだけだ」

 

今は俺の仕事を全うするだけ。兎に角落ち着くところに落ち着かせることが今自分に求められることだ。

 

「キバさん!もうこんな奴ら放っておいて次を早く.......「ジョー。しばらく口と閉じとけ」

 

喚くジョーと呼ばれるプレイヤーにドスの利いた声で一喝し冷たく睨みつけると、こちらに向き直り特徴的な髪をかきながら続ける

 

「...............ワシには、なんやもうわからんわ。報酬がボス攻略に必須ちゅう可能性がちっとでもあるんなら、それを確認してからでも遅くないやろ」

 

「あぁ。でも、DKBとALSがこれからも検証の為このキャンペーンクエを進めていけばまた必ず衝突する。話し合いで両者納得のできる形に合意できるのであればそれを俺達も待つ。けど、出来ないなら俺達は出来る限りの準備をして先に行く」

 

「レイルさん。それは無理な話だし、レイルさんの言う迷宮区の突破もハッタリとしか受け取れない。迷宮区はそれほど甘くない。いくら貴方達4人でも難しいだろう。.........それにもう意地を張るのは限界じゃないか?こんなタイミングであれだが、その人数で攻略と支援のどちらもやるのは無理があるだろう?戦力の関係上4人全員をウチで引き取れないが、さきの会議の件も十分に努力すると約束する」

 

確かに現行の体制では無理がないとは言わないが、言い出すタイミングからして信用できるわけもない。それにこの話題は正直ミトとアスナにとって地雷でしかないので呆れと同時にヤバいと内心青ざめる

 

するとミトがやはりと言うべきか一歩踏み出し発言する。

 

ただその内容はまるで予想外のものだった

 

「4人じゃないわ...........5人(、、)よ」

 

キリトのすぐ隣。そこから布様なもののこすれる音がかすかに聞こえると、確かに存在する誰かが横切って俺の隣にまで来てその姿を現した。

 

「我が名はキズメル。リュースラ王国エンジュ騎士団に所属する近衛騎士である!」

 

あの日の夕方と同じマントの効力だと分かったが本当に予想外な展開が過ぎる。とは言え、ギルマスとしてレイルは努めて冷静であろと再度また平静に戻る

 

「盟約により、我、人族の剣士レイル、キリト、アスナ、ミト共に《天柱の塔》に赴かん!我が刃の前に、例え塔の守護獣であろうとといえども朝露の如く散り果てるだろう!」

 

《天柱の塔》──────つまりは迷宮区の事。キバオウらもここまでキャンペーンクエを進めたのであればその言葉の指す意味を知っているだろう。

 

ただ、キズメルを前に両ギルドの長含めあの良く喚くジョー氏さえも両目を見開いてキズメルの美貌か、或いはレベル16のエリートモブから放たれる圧倒的なオーラからか..........理由はともかく戦慄している様子だ。

 

「そ、そこにいて大丈夫なのか.......レイルさん」

 

「え?なにが?」

 

「そのダークエルフ、カーソルが真っ黒だぞ..........クエストの最初のエリートmobよりもレベルが高いんじゃないか?」

 

『あぁ、成程』、と一歩二歩と後ずさったリンドを見て内心で頷いた。すっかり忘れていたが彼女はクエストを通じてレベルは上がってる。しかも森エルフ側で進めてるリンド達にはキズメルのカーソルは敵mobのそれと同じように見えているはずなのでレベル15に近いであろうリンドでもそう見えるのだろう。

 

「カーソル黒いって、ほんまか」

 

「あぁ...............もし戦闘になって全員で戦っても勝てない」

 

キバオウがキズメルに困惑の視線を向けながらライバルのリンドに尋ねるとリンドも信じられないようなものを見るようにうなずいて答えた

 

「んなアホな...........なんでや、なんでそんなえげつないもんが連中の味方してんねん」

 

キバオウの呻きにも似たその声がキズメルにも聞こえたのだろう。近くにいた俺に少し顔を寄せて囁く

 

「人族の言葉は、思っていた以上に複雑なのだな」

 

恐らくキバオウの関西弁の事をいているのだろう。この世界の言語プログラムは恐らく標準語にのみ対応しているから半分も理解できてないはずだ。

 

するとキバオウらは一旦少し離れてお互い何やら話始めるようだ。恐らくはこれからの指針についてだろう。キズメルと言う自身にとっても彼等にとってもイレギュラーな存在が...........いや、それを言えばミト達もそうだ。彼女達の存在が彼らの暴走しかけた感情に驚きと冷静さを与えてくれた。勿論迷宮区に行く姿勢を崩さなければ強制的にこうなていたとは思いたいが、それでもやや分が悪い賭けだったのも事実。彼等がある程度の冷静さをもってこうなったのは彼女達のおかげだ。

 

「レイル」

 

「えっと.........ミト。お叱りに関しては今回はキリトの責任と言いますか...........」

 

キリト達もキリト達でキズメルと何か話している間、ミトがこっちに向けて何とも言えない表情でこっちを睨みつけてきたので即キリトを売ることを選択した。

 

「それは詳しいことを聞いて判断するわ。最も仲間の失態は上司のレイルの責任よね?」

 

「わからなくもないけど理不尽」

 

不敵な笑みでミトは理不尽にそう言うのでこちらも笑みが零れる

 

「..............それと貴方を一人でボスに挑ませる気なんてないから。絶対に私達が支える。レイルが私達全員の命背負ってると思ってるなら思い上がらないで。自分の命ぐらい自分達で私達は守るわよ」

 

「...........わかってるさ頼りにしてる」

 

そう、信頼してるからこそこの選択を取れた。例え道が分かれようともきっと彼女達は正しい道を行きいつかこの世界から出る。俺にできるのはただ俺のやり方で前に進むだけ。

 

例え、アイツ等(モルテ達)を──────

 

 

「レイルさん」

 

すると話がまとまったのかリンドが声をかけてきた

 

「結論から言うと..........俺達《ドラゴンナイツ・ブリゲード》とキバオウさんの《アインクラッド解放隊》は両方ともこのキャンペーンクエを放棄する」

 

何と..........コレは少々予想外だ。顔には出さず続きを待つ

 

「ただ、このクエストがボス攻略に必要だという可能性がある以上情報の裏取りは必須だ。そこでその役割をレイルさん達に任せたい」

 

「.........それは構わないけどそっちはどうするんだ?」

 

その問いに答えたのはキバオウだ

 

「決まっとるやろが!ワイらは迷宮区をマッピングするんや、アンタ等に任せて事故死でもされたら寝覚めが悪いやろ!」

 

「なるほど」

 

物は言いようだが、ひとまず落ち着くところに落ち着いたことに内心一安心する。モルテの事もあるし、これが最善に思える。

 

「了解した。今日が19日でボス攻略の予定は21日だから.........20日の夕方までにこの階層のクエストを終えて結果を報告する。勿論俺達の情報を信じてもらうってのは大前提だけど」

 

俺の軽い皮肉にも似た言葉に口端に苦笑を浮かべリンドは応える

 

「今更そこにケチはつけないさ。...........レイルさん。さっきの言葉。自分たちのやるべきことをやる............悔しいが俺はその言葉でディアベルさんを思い出したよ」

 

表情を改め続けた

 

「確かにディアベルさんはレイルさん達にやったことは一歩間違えてればレイルさん達を殺すことになってた。けど、あの人の攻略に対する姿勢は本物だった。その意志だけは継いで..........あの人が作るはずだったギルドを作て最強に育て上げて..............それが俺の責任だと思った」

 

ここまで内心を顕わにするリンドは珍しく、あのALSメンバーも黙ってその言葉を聞き入ってた。

 

「ディアベルさんは今.............いや、俺はレイルさんの言葉通り俺のやるべきことをやる。みんな!我々DKBは夜が明け次第迷宮区の攻略を始める!次の会議は20日の17時にズムフトの会議場にて!それでは」

 

そう言うといつものエリート然とした騎士に戻りDKBのメンバーを引き連れてその場を去っていった。残されたALS、そしてそれを引いるキバオウはメンバーに発破をかけるとそのキバオウは微妙な表情で何か言葉を探すようにレイルの方を見ていると、まとまったのか口を開く。

 

「おい、小僧............いや、レイル...........はん」

 

その言葉は流石に驚き、俺は目を見開き、隣にいたミトも同様で呆気にとられたような表情を浮かべていた。

 

「結局ジブンにはクエストをもってかれたんやから礼は言わへんぞ。................けどな、アンナの言ったやるべきことをやる。ワイもあの生意気なガキの言う通りディアベルはんの顔が頭よぎったわ。ワイもワイのやるべきことをやる。そんだけや」

 

それだけ言うと先に行かせた仲間を追って立ち去っていくその背中に俺は一言だけ声をかけた

 

「次はレイルでいいよ」

 

返事代わりに右手を軽く振りかざすとそのまま彼も立ち去って行った

 

全員の気配が遠ざかっていくのをスキルと自分の感覚で感じ取り一息つく。この後はきっとミトから、そしてアスナやキズメルから俺とキリトはお説教をけることになるのだろうが一先ずは大きな衝突はなく収まったので甘んじてそれを受け入れることにしようと心中で決意したのだった

 

 

****************

 

 

あの後の事を簡単に話していこうと思う

 

まず、キャンペーンクエについて。ボス攻略に必要な情報、アイテムが手に入ったかと言えば正直微妙な所と言わざる負えない。と言うのもわかったのは司令官が言った『毒を用いた攻撃に気をつけろ』と言ったものだけだったのだ。

 

確かにこの階層のボスは毒を使う。とは言え、言うほど派手な攻撃ではなかったので恐らくそこが大きな変更点だと予想をつけ、下層などから十分以上の解毒potをかき集めボス戦に挑んだ。因みにボス戦の結果は損害ゼロで突破。ボスは広範囲の毒攻撃を頻発していたが大量に用意していた解毒potは底を尽きることなく攻略できた。

 

今回のボス戦もミトの火力、そしてアスナが俺やミトと同レベルの装備を得たことで一際強い存在感を示した。最もLAボーナスは彼女の相方兼俺の相棒であるキリトが持っていった。

 

加えてモルテの件についてだが結局これと言ったものはつかめなかった。攻略会議は勿論、ボス戦にも顔は見せず終いで新たな情報は得られなかった。

 

そんなこんなで今はキリト達と共に4階層に続く階段を上っている途中だ

 

「ねぇ、レイル。もう一層のこと貴方が攻略組の指揮をすれば?」

 

「勘弁してくれ........あのメンバーをまとめて平等に攻撃機会を考えてローテを回すなんて面倒なことやりたくない。ただでさえギルド運営も最近加入希望者云々の話も捌かないといけないのに」

 

ミトのその言葉に心底嫌そうに返す様子を見てミトは「それもそうね」と笑みを浮かべた。彼女からすれば半分冗談で半分本心だ。ギルド運営はディアベルがいるが近頃加入を希望するプレイヤーもいるという話を聞いているためレイルも階層を行き来して実際に見に行ったりと忙しくしてるのを知ってるのでこれ以上の負担を強いるつもりはない。ただ、それと同時にレイルに身についてきたパーティーの統率力と元々のセンスなのか指揮や作戦立案を活かす方がいいのではと思ったりしてるのも事実だ。とは言えこちらに関してはキバオウ等よりもはるかに信頼できるというのが大きい

 

「............でも、いつかきっとレイル攻略組を率いることになると思うわよ」

 

「ないない。それを言うならアスナの方がよっぽどありえるだろうさ。その時はミトはさしずめアスナの右腕と言った所か」

 

アスナがこのままキリトの教えやこのパーティーで自発的に得た知恵などはきっといつか彼女の中で実を結び、攻略組を引っ張っていく存在になるという確信があった。そして、その時ミトはきっと彼女の傍にいるのだ。

 

「..................いつか私達は別々の道に行くってこと?」

 

「そうなるかもって話さ。.....................大丈夫だ。俺はギルマスとして前を進んでいく。必要ならいつかはボス攻略の指揮も取れるように勉強してくつもりだ」

 

もしかしたらこの先、DKBでもALSでもない新たなギルド、それもソレを率いる凄腕のプレイヤーが現れるかもしれない。そうなったとき俺達はどうなってるかなんて誰にも分らないしそう言う未来だってあるだろう。

 

いや、この予想はいずれ──────

 

「へぇ..............結局ボス戦の指揮はやる気あるんだ」

 

なんだかんだ言ってレイルはそこら辺の勉強やイメージトレーニングは陰ながらしていたりする。と言ううのもミトにも言ってないが一度だけリンドに指揮をやってみないかとは聞かれたことがあるのだ。勿論その場で断ったが、二つのギルドが対立構造を取ってる以上いつか中立のレイルに白羽の矢が立つかもわからないので備えているのだ。

 

「やりたくないのとやらなくちゃいけないのは別だしな。それにミトが言った通り俺はみんなの命を背負ってるつもりだからな」

 

「レイル」

 

怒ったように言うミトに続ける

 

「当然だろ?ギルマスってのは...........この世界でのそれは詰まるとこそういう事なんだよ。大丈夫、必要以上に気負ってるわけじゃない。ミトの事を..........ユナにキリトやアスナの事を信頼してるから」

 

「それは.............」

 

どこまで言っても負担を背負おうとするレイルに何と言うべきかと言葉に悩む。確かにレイルは正しいのだろう。けど、心がそれを受け入れがたい

 

「それにミト。俺はそんなに弱いか?」

 

「!.........それは卑怯よ」

 

レイルは強い。きっといずれこの世界で最強の剣士になるのは彼だ。この世界..........剣に彩られしこの世界の全てを体現し、誰よりも巧く、速く、美しい剣技を振るっていつか彼は最強になる。ミトにはその予感があった。

 

そんな彼の隣に私は立ちたい。立っていたい。

 

「俺は強くなる..............絶対に、だ。だから大丈夫」

 

そう強くなる。モルテとの決闘(デュエル)。確かにモルテは対人慣れしており、強敵であるのは認めるところだ。しかし、自分にだって対人が得意だという自負はあった。その上で勝ちきれなかったのだ。いずれまた刃を必ず交えることになりだろう............そして、モルテの背後にいる黒幕とも必ず。

 

人を殺すことに恐らく躊躇いのない彼等に勝てるよう強くならねばいけない

 

「私もレイルが頼れるくらいもっと強くなるわ.............絶対」

 

二人はまた再び強くなると誓い、更なる階層へと歩み続けるのであった。

 

 

 

 





大変長らくお待たせしました。これにてプログレッシブ第二巻のお話は終了です!気づけばもうスケルツォまで映画の公開が終わり、円盤が届くこの日まで更新が遅れてすいません。次回以降は第三巻の内容か..........或いは飛ばして四巻に進めて話を大きく進めようか悩んでます。と言ううのも第四巻は丁度映画の内容でもあり、SAOと言う物語で欠かせないあの人物の登場回でもあるんですよね。SAOの物語を語っていく上であの人物との因縁の始まりとかはどうしても書きたいので四巻の内容は絶対やりますが、反面三巻の4層の話はどうしようかな悩んでるんですよね。勿論三巻の内容も大変面白くて好きなのは当然なのですが更新スピードがここまで遅いとどうすべきか悩むので良ければ意見を聞かせていただければ幸いです。

では今回もここまで読んでくださりありがとうございます。またいつもお気に入り登録、評価、コメントをしてくださりありがとうございます!

今後の内容について

  • 三巻の話に行く
  • 飛ばして四巻に行く
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