「5~6階層レベルの装備だとぉッ!?」
「そうだぞ、そうだぞ!キリト君よ!どうだ?羨ましいか?羨ましいだろ!」
あのミトの新たな武器を求めて挑んだクエストの3日後............
あぁ、因みにその3日間はアスナとミト、またはミトと二人で新しい武器の慣らしとレベリングをしてた。だが、その3日間の間何故かキリトを見かけなかった。一応何かあったらと思い、フレンドの追跡機能でキリトの場所を特定して向かうと、キリトは破壊不能オブジェクト一歩手前の代物を馬鹿みたいに殴っていた。
「.........岩を連打しながらそんなこと言っても決まらないわよレイル」
............まぁ、俺もキリトのせいで巻き込まれてその謎の特訓、エクストラスキル《体術》の修行を敢行することになったわけで............
そして、付き添いのミトのツッコミに俺は今一度逃避していた現実に引き戻され、改めて眼前の大岩を見るのだが............
「.........なぁ.......コレ、ホントに壊さないと消せない?」
キリトに頬にかかれたペイントを見せて問う。このエクストラスキル《体術》の習得クエは何故か発注主であるNPCに『
「ぷっ.......あぁ....くっくく.......そう、みたい.......だぞ?」
「お前..........後で覚えとけよ..........」
髭面の俺はそれは大層面白いらしく、キリトは俺を見るたびに笑い始め、ミトもミトで一向に顔を合わせようとしてくれない..........
「はぁ.........STR上げとけばなッ!」
この世界には痛みはない。だからこうして岩を殴りつけることに痛みはないが..........衝撃と言うのだろうか、嫌な感覚はするもので、今はそれを押し殺して連続で殴りまくっているのだが...........
まぁ、AGI極振りしてないからまだましだが............
「さて、レイル君?さんざん自慢してくれたが俺はこれで........おさらばだぜッ!!」
キリトが思いっきり腕を引き絞って放たれた拳は、キリトの積み重ねてきた努力の証と言う名のひび割れに突き刺さると大きな音を上げて真っ二つに分かれた。
「ふふ~ん..........その分じゃあと数日はここにいることになるぜレイル君よ?」
「数日で済めばいいんだがな............はぁ~」
俺がため息をつくと、キリトは愉快そうに手を振って立ち去る。キリトが三日かかったというのなら俺は長くて4~5日はかかるだろうか?兎に角、相当骨が折れるのは確かだ。
だが、一つ気になるのが...........
「で、ミトは帰らないのか?キリトのせいでこんなことになっちまったからアスナとレベリングでも.........」
切株にもたれかかってこちらを見ているミトはクエストを受けていないので手持無沙汰だろう。ここにい居てもつまらないのではと思いレイルは問いかける。
「いいの。アスナはどうせこれからキリトと素材集めするだろうし、私がいなくても大丈夫よ」
そう言えばここ3日はアスナの《ウインド・フルーレ》の強化素材集めをよくしていた。キリトが帰ることはミトがアスナに伝えてあるらしく恐らくこれからアスナに引っ張られてフィールドに出るのだろう。
「そっか。でも、こんなの見てても面白く...............あぁ、俺の顔は面白いことになってるか。現在進行形で」
「えぇ.......ぷぷっ.......そう、ね..........ふふっ........」
「自分で見たけどそう笑えるもんか?」
レイルも確かに確認したが別にそこまで面白いものに思えなかった。まぁ、確かに絶望的に似合ってはいないが..........
「レイルだからよ」
「そうか?でも、さっきからこっちの顔見てないのにそう面白いことあるか?」
「良いのよ別に.......偶には岩を素手でどうこうしようとする変人を見てくつろぐのも」
「変人って...........まぁ、俺もはたから見ればそうだとは思うけど」
会話を続けながらも連打を止めずにいると、ほんのわずかだがひびが入る。レイルは確かにSTRこそキリトと比べて低いが、キリト以上に次の攻撃に移るまでが早い。手数でどうにかキリトと同じ三日で終えたいところだ...............
「でも元々、変人だと思うけどねレイルは」
「ひっどい言い草だな~」
どこか皮肉を言い合える関係が心地よい。切株にもたれかかるミトはそんな風に思いながら目の前で手を止めることなく岩に立ち向かうその背を見ていた。どこか子気味いいリズムで岩とレイルの拳が直撃するたびに生まれる音がなぜか気持ちが不思議と落ち着いてミトは.............
「............い..............い...........おーい、ミト」
「ふぇ............?もり?なんでここに...........」
辺りは真っ暗で見渡しても近くの木々しか見えない中で目の前の男性がどこか呆れたように見ていた。
「随分とぐっすり眠ってたな?やっぱり、退屈だったんじゃないか?」
「れいる?」
まだ寝ぼけてるようで若干呂律が回っていない様子だ。
「おぉ、そうだぞ。今日はいい加減疲れたからここで雑魚寝でもしようと思ってね」
レイルは手を休めずに拳を打ち込み続け、それなりに罅を入れることは出来た。だが、ミトが寝てしまっていることに集中していたせいで気づかず、気が付きその頃にはもうすでに夜になってしまった。
「へぇ...........スー.......スー......」
「おう、だからミトは.............って、おーい」
起きたのはいいのだが、ミトはどうやらまだ寝足りないのか舟をこぎ始めたなと思うとまた夢の世界へと旅立ってしまった。
「ん~困ったな..........あの時は咄嗟とはいえ抱えたけど..........流石になぁ?」
蜘蛛との戦闘で毒により動けなくなったミトを抱えたが、正直言って色々とヤバいことをした気がする。もう一度やっているのだから、今回も抱えてNPCの住まう場所に行けばいいかもだが、何と言うか寝ている女の子を運ぶのはちょっと.........いや、大分犯罪臭がする。
「まぁ、コートでもかけておけば寒くはない、か?」
俺は来ていた一層ボス戦でのドロップ品である《コート・オブ・ミッドナイト》をかける。その後俺は隣の切り株にもたれかかって上を見上げる。
星は見えないが、個人的にはアインクラッドの夜は好きだ。山中だからか街にいる時よりも綺麗に見える。
(リアルでもいつも夜に空を見上げてったっけ)
小さい頃から両親が忙しくて一人で家にいることが多かった。俺の親はきっと大丈夫だと思ってただろうが、夜は星を見て寂しい思いを紛らわしていたのを思い出す。今は唯、夜空が........星が綺麗で好きだから見ているがその時の名残も確かにあるのだろう。
そんな事を考えていると妙にリアルでの出来事が懐かしく感じる...........
きっとここですごした短い時間が、今まで生きてきたリアルでの時間以上に濃いから余計にそう思えてしまう気がした。
(他人とここまで本心で向き合うなんて............いつ振りかな?)
キリトは不思議と気兼ねなく接することができたので肩の荷が下りた気分で楽しいと思いながら冒険してきたが、SAOがデスゲームになってからはキリト以外でも不思議と取り繕うことをしなくなっていた。特にミトやアスナの前では素の自分でいることが多かった。
だから余計にリアルですごした自分が希薄に思えてくる。仲間が死んだら自分じゃなくなってしまうと思ったが、そうでなくても今は自分が自分でなくなってしまったように思える。いや、そもそも自分とはいったい何を指すのか..............
でも───
(..........まぁ、そんな事はどうでもいいか)
今は唯、このゲームを攻略すること。そしていつか皆とリアルで祝勝会をすることを目標に突き進むのみだ
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「んん................アレ、私何でこんなとこで........」
ミトは目を覚ますと朝霧に包まれた森の中だった。レイルの大岩砕きを見ていたら不思議と眠くなって気がつけばこんな長時間寝てしまっていたとは..........
「あれ?このコートはレイルの...........」
すると体を伸びをしたと同時にずり落ちたものを見ると彼のコートがそこにはあった。どういうことだと思うと直ぐに隣に人の気配を感じた。
「って........レイル?」
この間のクエストで手に入った《アルタイル・ブレード》を抱えながら眠っているレイル。
どこか気持ちよさそうに眠るレイルをミトは唯じーっと見つめる。顔立ちは.........キリトよりは全然大人っぽいし男の人なんだなと思わされる。けど、寝てる姿は何と言うかあどけない。同い年なのに、どこか年下にすら見える。
「.........................」
少し魔がさして、彼の頬を指で突っつく。
そこにはペイントで描かれた髭があり、やっぱり似合ってなくて面白い。
「.......................」ツンツン
そして頬を突っつくのも...........なんか面白い
「ふふっ............」ツンツン
ひたすら食い入るようにツンツンしていると.............
「あのぅ..........もういいか?」
「えっ!?」
レイルは途中から何かこそばゆいと思い、細目で伺えば俺のコートを羽織ったミトが何を思ったか微笑みながら頬を突っついてくるのだから驚きと羞恥心で黙ってされるがままになるのに耐えられなくなったのだ。
「ん~............で?ミトは何がしたかったわけ?」
伸びをして体をほぐすと見た目に似つかないテンパりようを見せるミトに核心をつく質問をする
「いや.........えっと.......その........気持ちよさそうに寝てる.......から..........悪戯しいたくなった?」
ミトは視線を逸らし、髪をいじると言ったいじらしい姿に可愛いという感情が半分、少し揶揄いたくなる感情が半分になり...........
「へぇ~」
「な、なによ.......含みのある目でこっち見て」
内心を誤魔化す様にしつつ、含みのある目を向けて意地悪なことを言う。
「ふふっ...........いや、何?意外とミトも子供っぽいとこあるよなぁ~って、さ?」
それに対してミトはまるでどこか年下の悪戯を笑って済ませるような余裕を見せられた気がしてこっちがやったこととはいえ気に食わない。
「.............大人ぶってるから老けて見られるのよ」
「..........ミトさんや?割と気にしてることを貴女の鎌みたいにバッサリいかないでくれません?」
しばらくお互いジト目で睨み合っていると思えば..............
「「................ぷっ.......」」
「「あははははは!!」」
朝の森に2人の男女の笑い声が響く
「さて、俺はまた殴り始めるけどミトはどうする?」
「そうね...........一旦街に戻って食べ物でも取って来るわ。昨日一日は非常食で済ませちゃったし何かちゃんとしたもの食べたいもの」
それから三日間。何とかレイルはキリトと同じく岩を破壊し《体術》を習得。ミトは別にこのクエストを受けているわけではないが三日間何故か食糧を仕入れる以外は基本山で一緒にいた。何度も戻っていていいと言ったのに気にするなと言われたが............まぁ、この苦行をするうえで話し相手がいてくれたのは非常に大きかったと記しておこう。
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俺とミトが最前線の村まで行く頃には迷宮区はほとんど攻略されていた。だが、そんな事よりも驚いたのはアスナが強化詐欺に巻き込まれると言ったトラブルがあったらしい。幸い、アスナの武器は無事でその上詐欺をしていたものとは対話してもうしないと約束させたらしい。
だが、キリトからその件の黒幕の話を聞かされてまだこの件には根深い悪意があるのだと思わされ、とても油断できる状況ではない。
とは言え、だ。もう二層のボス戦は直ぐだ。それに今は──
「フッ!スイッチ!!」
「はああああぁぁぁ!!」
現在はミトと二人で迷宮区に来ている。キリトとアスナはクエストで少し離れている間に《体術》スキルの習得で遅れた分を取り戻すために迷宮区に現れる《レッサートーラス・ストライカー》と戦闘を繰り返していた。
二層の厄介な点はトーラス族共通の固有デバフ付きソードスキル《ナミング・インパクト》だ。範囲が広く、一度くらえば《
丁度今もその《ナミング・インパクト》の発動兆候を見てレイルがソードスキルで放たれる前に相殺し、体勢を崩したすきに、ミトがいつも通り攻撃を決めトーラスは爆散する。
「これで10体目ね」
「だな。武器の性能が高いからかサクサク倒せて気分がいいな」
「あら?武器だけかしら?」
「なんだ?ミトがいるからって言って欲しいのか?」
「さ~ね?私はレイルと組んでるからかなり楽だと思ってるわよ?」
「.........それで揶揄ってるつもりならまだまだだぜ?」
「あら、それは残念」
適当な軽口を言い合いながら先を進んでいく。
高効率な狩りができているおかげでいい具合に熟練度も上がってきている。この分なら片手剣もすぐ熟練度も100になるだろう。とは言え確かに武器の性能も一つの要因だが、当然一番この狩りの効率を上げている要因は............
「..........まぁ、ミトのおかげで助かってるよ。色々とな」
「あれ?きかないんじゃないの?」
ニヤニヤと揶揄う様な笑みを浮かべるミトの視線にこそばゆくなる。
「うっせ...........ほら、また出たから行くぞ」
揶揄われたことに拗ねたようになるレイルは視線の先の敵に向け駆けていく
「ふふっ.......了解!」
こうしてまた二人は敵へと..........先へと駆けていくのであった
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おまけ【ヤキモチ】
体術スキルを習得してから、いつもの四人で俺達は迷宮区に来ていた。先日はミトと二人でだったが、四人出来たためにかなりの効率で迷宮区を進んでいた。
「二体か............俺が片方やって良いかキリト?」
「アスナ、私もいいかしら?」
レイルとミトが視線の先に現れた二体の《レッサートーラス・ストライカー》の相手に名乗りを上げる。
「二人とも武器更新したばかりだしな............いいよ」
「えぇ、どうせまだしばらくは籠るつもりだもの」
2人の了承が得れれたので、俺とミトは同時にトーラスに迫る。
トーラス二体は《ナミング・インパクト》発動モーションを見せる。
「「フッ!」」
振り下ろされたと同時、俺とミトは迷宮区の壁へ飛び、そのまま壁面を蹴り後ろを一気にとる。2人の武器の特殊効果によるステイタス強化によってできるようになった芸当だ。補正の値も驚くべきもので、多少の無茶も行えるようになるほどだった
「セリャァッ!!」
「ハアアァッ!!」
後ろを取るとそれぞれ更新された装備を振り下ろし、以前の装備とは見違えるほどの攻撃力を示す。そのまま二人は流れる様に追撃していくとみるみる二体のトーラスのHPは激減していく。
トーラスは最後の力を振り絞る様にハンマーを振り上げる、が............
「フッ!」
レイルもミトもそれは読んでいた。レイルが最速で駆け抜けると同時に、キリトも目視できるギリギリの剣捌きで二体のトーラスの脚の付け根と足首に攻撃し、姿勢を崩しそして...........
「はあああぁぁぁッ!!!」
姿勢を崩したトーラス二体は、まるで自身からミトの攻撃に向かっていくように倒れ込んでライトエフェクトを放つ鎌に斬り刻まれ爆散する
「お疲れ」
「そっちもね」
いつも通りの連携で一分とかからず倒しきる。武器の手応えも変わらない連携にも満足してキリト達の元に戻る。
「聞いてはいたが.........改めてすごいなその剣.........トーラスは別に耐久が極端に低いってこともないのにえげつない削り方だったな」
「あぁ.........使ってる俺もびっくりだからな」
「装備も凄いけど二人とも相変わらず凄く息の合った連携ね」
「レイルと私は正反対なスタイルだけど、その分お互いの足りない部分が補えてるからね」
「あぁ、俺の弱点をうまく補ってくれるから助かってるよ」
二人はアスナの言葉にそう返す。確かに、ミトは一撃の威力が高いパワータイプでレイルは変則ではあるが基本的には手数で押すスピードタイプ。正反対なバトルスタイルだが、ミトの言葉通り小回りが利きにくい鎌の弱点をレイルの速さと技でカバーし、レイルの足りない火力をミトの高い火力で補うといったお互いの弱点をカバーし合える理想的なコンビである。
と、そんなレイルとミトのやり取りに2人は............
「............ふ~ん」
「............へぇ~」
「な、なんだよ二人とも..........?」
「そ、そうよ...........何か言いたいことがあるなら言ってよ」
キリトとアスナは二人の答えを聞いたら何か含みのあるような視線を向けてくる。一体何がなんやらで、居心地が悪く変な気分だ。
「.........レイル次は俺とやるぞ」
「.........ミト今度は私とやりましょ」
「「え?まぁ、いいけど............?」」
キリトとアスナは互いの友人が奪われたみたいで少し複雑な気分だった。
キリトにとっても対等に付き合える同性の友人は少ないので、こうもレイルとうまく連携を取れている姿を見せられるところに思う所があったのだ。そしてそれはアスナもで、こんな世界で唯一のリアルでも友人であるミトがここで出会ったばかりなはずの相手にこうも打ち解けているのを見て焼きもちを妬いたのだ。
しかも、アスナはレイルと同じスピードタイプでキリトもどちらかと言えばミトと同じくパワータイプだ。自身と似た要素があるせいで余計にそう言った感情が出てしまった。
とは言え、とうの二人.........レイルとミトは何のことやらと言ったものなので2人して顔を見合わせ頭に疑問符を浮かべるのであった。
体術スキル習得回でした。ただ、書くことがなくて逆に悩んだ末に特に進展なしでちょっと甘めな感じになりました。強化詐欺事件を省略してなるべく早く先に進めようとしてるんですが、逆にちょっと攻勢が難しいですwとは言え、一応次回は二層ボス戦になるので楽しみにしていただけると嬉しいです。
また、お気に入り登録、コメント、評価をしてくださり本当にありがとうございます!ただ、コメント返信が遅くてすいません。ですが、とても励みになっているのでこれからも頑張るのでどうかよろしくお願いします!