よくよく考えてみると、冬の夜は他の季節と比べると、最も騒がしいのでは無いだろうか
例年、この時期は窓を打ち付けるような風と雪で、ほとんど毎夜、激しく吹雪いている
さらに、流氷が波で擦れ、不快な音を大きく響かせる
ーーーしかし今年は何か
この時期になると、騒がしいあの嵐のような風も、全てが埋まってしまうような雪もーーー
時々、思い出したように風がそよそよと吹いたり、しんしんと雪が降ることはあっても、驚くほど静かなのだ
どうやらアンタークの伝達日誌によると、日中も曇る日が多く、気温の下がりも緩やかで、例年に比べるとそこまで寒くなってないのだ
今この瞬間も、例年は響いて皆の眠りを妨げるような、あの流氷が波で擦れて、割れる不快な音のほとんどが、しんしんと降る雪に阻まれ、学校まで響いてこない
ーーーードタドタ、ガチッバキャ!
『…アハハ。脆いなァ。壊れちった~☆』
ーーーーガッ!バターン!
「…来たか。アズライト…いや、
先生が扉を蹴破って入って来た宝石を見て、そっとため息をつく
そこには、昼間のふわふわした、おしとやか系お姉さん(自称)…の見る影も無い前髪をオールバックにした彼女が、先程外したドアノブのL字になった部分を、左の小指に引っ掛けて、ゆらゆらと揺らしたり器用にくるくる回しながら、右手を白のホットパンツのポケットに入れ蹴倒した扉を踏みつけるように立っている
そして彼女は昼間は絶対見せないような、険のこもった
『金剛おはよ~☆』
などと、他の宝石が居たら粉にされるようなフランクさで先生に声をかけた
先生は特大のため息を何回かついて、しばらく考えたあと絞り出すように一言
「…
ーーーーー
『…チッ。面白くねー。』
先生は青筋をたてながら厳しい表情で目を閉じている
『チッ…アァー。ハイハイ。報告ね。報告』
手で弄っていたドアノブを真っ二つにへし折り、その辺に投げ捨てる
『ァー。例年に比べ気温が下がらず冬の担当に懸念が生じる。さらにお荷物、もとい新人が冬の担当の足枷になり被害も拡大する可能性強し。』
「…アイリスクォーツ、お前にそんな分かりきった事を、この私が聞くと思うか?大切な予知夢を見たんだろう?だから、起きた。そうだろう?」
『…あぁ。
『冬の担当が月人にバラバラにされ月に連れ去られて、あの残酷な程美しい月を彩る一部になり』
『あの新人が自壊を繰り返し』
『この地上にいる宝石達が全てバラバラにされ』
『それでも、お前は祈れない』
『いや。何とも思ってすらいない。ただ、疲れたと繰り返す』
ーーーーヒュゥ
先生の息をのむ音が静かな夜に響く
『フッ。傷付いたフリなんか、今更されてもなぁ』
『ただ俺は冬の担当が居なくなるのも、新人が自壊するのも、見たくない。
本当にそれだけだ。だから。』
ツカツカと彼女は先生の元へ近付く
『俺は、全てをかけてでも、絶対にこの冬を
『…じゃ、おやすみ先生☆
また、明日とか。』
スキップするような軽さで扉を踏みつけながら、彼女は
「…はぁ。困ったものだ…あの子もーーー」
ーーー私も