シン・ウルトラマンやシン・仮面ライダー、楽しみですね。シン・ゴジラやシン・エヴァンゲリオン同様の上質なエンタメを期待してしまうのは、おそらく皆同じでしょう。
ところでシンジ君のあだ名はシンちゃんな訳ですがこれってつまりシンジ君はウルトラマンで仮面ライダーでついでにゴジラかつエヴァンゲリオンだという事なんですよ(支離滅裂な思考・言動)
序-1
特別非常事態宣言の発令により、箱根湯本駅で停車した電車。そこからただ1人、スタン、とスニーカーの音を響かせてホームに降り立ったのは、ともすれば少女にも見える中性的な顔立ちの美少年であった。
「困ったな。もう少し早く先生のところを出ればよかった」
そう呟く声色は未だ声変わりを迎えていない。しかし、そのハキハキとした口調は、彼が間違いなく『少年』であることを主張している。
「くよくよしても仕方がないか。第3新東京市まで行くとなると……138号線で行くのが早いかな」
そう呟いて『ヨシッ』と一つ気合を入れた彼が目をつけたのはバイクだ。
災害時や非常事態宣言時には、クルマもバイクもキーをつけたままの避難が原則。それを守っているお利口なバイクをちょっとばかり拝借し、メットも付けずに138号線をかっ飛ばす。
それを咎める警察などはこの状況で居るわけもなく、彼はリミッター一杯の180km/hで猛進する機体を見事に操り、箱根の外輪山を越えて第3新東京市を目指してひた走る。
が、その途中、すれ違った青いルノーの運転席に尋ね人を見つけた彼は、慌ててバイクを横滑りさせ、スニーカーの底とバイクの両輪をアスファルトに擦り付けながら車体を急停車させた。
幸いそれに気づいたルノーの方も急ブレーキを踏んでおり、すれ違いの憂き目は避けられたようである。
そして派手にタイヤ痕を残したバイクを路肩に乗り捨ててルノーに駆け寄る少年は、映画張りの派手なアクションを決めたとは思えないほど気軽な調子で、車中で呆然とするサングラスの女性に声を掛けた。
「すみません、葛城さんですか?」
「えーと……そういう貴方は、碇シンジ君、で良いのよね?」
「はい。すみません驚かせて。電車止まっちゃったんで、バイクを借りたんです」
「借りたにしては随分と派手に乗り回してたけど……まぁ良いわ! 話は中で聞きましょ、乗って!」
そう告げて助手席にシンジ少年を迎え入れた美女の名は、葛城ミサト。
再びアクセルを踏み、大きくUターンして第3新東京市を目指してルノーを駆る彼女は、サングラスの奥の眉根を悩ましげに寄せて、先日の出来事を振り返るのだった。
* * * * * *
「ちょっとリツコ、何よこの出鱈目なプロフィール」
「出鱈目とは随分な言いようね。何かミスがあったかしら?」
ミサトからの苦言にそう涼しい顔で返答したのは金髪の美女博士、赤木リツコ。
2人が所属する国連直属特務機関NERVのカフェテリアで行われたその会話の焦点は、ミサトの持つ人事ファイルに記載されたとある少年のプロフィールだ。
「碇シンジ14歳。NERV総司令碇ゲンドウの息子にして、知能指数600、スポーツ万能の男。3歳で『先生』の下に預けられ、その超人的頭脳で6歳までに高校課程を完了し、6歳から12歳まで京都大学に在学。博士前期課程の在学中に論文博士号を取得した為卒業。専攻は形而上生物学。その後は『同年代の友人を作る為』中学校に進学。部活動は各部活のピンチヒッターとして野球、バスケ、吹奏楽、バレー、テニス、サッカー、軽音楽、柔道、水泳、陸上、カバディ、ラクロス、ボクシング、レスリング、美術、手芸部の補欠部員を務める。趣味はピアノとチェロと読書と料理。————どこの主人公よ! しかも昭和の特撮とかアニメ!」
「確かに
そう苦笑するリツコだが、彼女の聡明な頭脳は、このミサトの反応こそが正常なのだと理解して居る。
だが、リツコにとって碇シンジという少年のポテンシャルに驚くという過程は随分と過去の出来事なのだ。
「まぁ、彼とはペンフレンドの仲だし、良い子なのは保証するわよ」
「え゛。リツコ、16歳差は流石に犯罪過ぎない?」
「……はぁ。誰がボーイフレンドって言ったのかしら。ペンフレンドよ、文通相手。シンジ君、昔は司令とユイさんに連れられてNERVによく来てたの。私も母さんに連れられてよく来てたから、歳の差はあっても『子供同士』仲が良くなっただけ。それに、彼はその時点でもう天才だったからあんまり歳の差は感じなかったし」
知能指数600。それが意味するのは彼が2300億無量大数阿伽羅人に1人の超天才だという事だ。今までの人類の累計人口はおよそ1080億人とされて居る為、再び彼と同等の天才が現れるには人類史をさらに2無量大数阿伽羅回繰り返してもまだ足りないという事になる。
そんな超天才である上に、身体面でも抜群のスペックを誇る超人的少年に触れて、人生観が変わる程の驚愕を抱いたのはリツコにとっては懐かしき過去であり、ミサトにとっては未来の話となるのだろう。
故にリツコは、あえて普段のお気楽なミサトのように、努めて明るく声をかけた。
「まぁ、まずは会ってみればわかるわよ」
* * * * * *
そして、実際に会ってみたのが現在、という事になるのだが、ミサトは碇シンジという少年を未だに量りかねていた。
「さっきは驚かせてすみません、葛城さん」
助手席できちんとシートベルトを締めたあと、そう言って頭を掻く少年の所作にはミサトが何となくイメージしていた『生意気な天才』の気配は感じられない。
むしろ印象としては『素直な良い子』とでもいうべきだろうか。実父である筈の『碇ゲンドウ』の様な威圧感もなく、苦笑しながら「事故ってないし、無免許運転は父さんには内緒にして欲しいんですけど……あはは」などと言う姿には年相応の子供っぽさも感じられる。
だからこそ、ミサトは会話によって彼の本質を掴むべく、『明るいお姉さん』として振る舞うことにした。
「大丈夫大丈夫、バイク乗ってたぐらいならNERVの特務権限でなんとでもできるわよ。……それと、私のことはミサトで良いわよシンジ君」
「よかった……ありがとうございますミサトさん。そういえば、僕ってやっぱりNERVの用事で————」
そう、シンジ少年が言いかけた直後。
第3新東京市へと向かうルノーの遥か後方、箱根湯本駅方面から突如襲って来た猛烈な閃光と、それに遅れて来た轟音が、彼の言葉尻を吹き飛ばした。
「
「この距離でこの爆風、まさかN 2を使ったっての……!?」
「N 2ッ!? あの東京を消し飛ばしたって爆弾ですか!? ————ッ! 『葛城』ミサト、NERV、N 2そうか、そういう事なのか父さん……ッ! ミサトさん、早くNERVへ!」
「ど、どうしたってのよシンジ君!?」
「乗れるのは僕しかいないんでしょ!? 初号機に! 父さんなら初号機は絶対に手放さない! 早く!」
そう断言する少年の雰囲気は、先程とは一転、碇ゲンドウの子であると初見で確信出来るほどの威圧感に満ちており、ある種のカリスマを帯びている。
無論、一般人であるはずの彼が極秘情報を知り得た経路はミサトも気になるところだが、彼女の『信念』と『使命』が、その疑問を棚上げにしてシンジの言葉を飲むことを選ばせた。
「飛ばすわよ! 舌噛まないでね!」
景気良くそう告げたミサトのルノーは、アスファルトにタイヤを切り付けながら、第3新東京市への道を驀進するのであった。