旧世紀エヴァンゲリオン   作:黒山羊

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破-25

 使徒諸共に爆炎に飲まれた筈のエヴァ3号機。だが、爆炎と爆煙が晴れた先に居るのは、体内からの爆発により頭部と上半身を大きく損傷した瀕死の使徒のみ。

 

 流石にN2が至近距離で起爆したとはいえ、特殊装甲に全身を包んだエヴァが跡形も無く消し飛ぶというのは考え難い。

 

 ————では、3号機は何処へ? 

 

 その答えは、すぐに零号機と2号機の眼前へと現れた。

 

 地面から湧き上がる様に現れるのは、青い粘菌状のゲル。それはすぐさまエヴァ3号機へと姿を変え、零号機と2号機を守るかの様に使徒との間に立ちはだかったのである。

 

「アスカ……それ、どうなってるの?」

「アタシと3号機は、あの瞬間、不定形の使徒と一体化してた。それが原因かもね。————アタシとこの機体は自由自在にゲル化出来る。ま、やってみたら出来ただけなんだけど」

 

 ————それは大丈夫な状態なのか? 

 

 そう疑問に思うレイだが、『それを聞かれても答えようがない』と自己判断して口を噤む。

 

 今のアスカはシンジと同様に全く未知のエヴァの能力を引き出しており、その原因や仕組みを答えられる者などこの世の何処にも居ないのだ。

 

「まぁアタシのことは後でリツコにでも訊けばいいのよ。————それより、アイツまだ生きてるわよ」

 

 そうアスカが警告した直後、使徒の身体からボコボコと肉芽組織が盛り上がり、歪な形に再生した使徒は、アスカ達に向けて破壊光線を発射する。

 

 だが、所詮は再生したばかりの付け焼き刃。その威力はアスカの3号機が張ったATフィールドを貫くには及ばず、趨勢はもはや完全にエヴァ3体の側へと傾いた。

 

 ATフィールドを纏いながらプログナイフを構えてゆっくりと歩み寄る3号機の姿に自身の死を悟ってか必死で抵抗する使徒の姿はいっそ哀れですらあり、見守るレイとマリに、アスカの勝利を確信させる光景だった。

 

 

 ————しかし。勝利の瞬間にこそ、捕食者は最も無防備となる。

 

 

 使徒にトドメを刺さんとアスカがプログナイフを振り下ろすその刹那、突如天空から亜光速で飛来した槍が3号機のコアを貫き、先程までの覇気が嘘の様に、3号機はその活動を停止する。

 

 その危機に瞬時に反応したのは、零号機と使徒の双方。

 

 またとない反撃の機会に3号機を喰い殺してしまおうと巨大な大顎を開いた使徒。

 

 その魔の手から3号機を庇うべく、タックルで3号機を突き飛ばした零号機。

 

 その結果、3号機の救出と引き換えに零号機は使徒の大口に丸呑みにされ、搭乗するレイ諸共、使徒の腹の中へと消えてしまう事となる。

 

「姫!? パイセン!?」

 

 そう叫ぶマリの操る2号機がどうにか零号機の弾き飛ばした3号機をキャッチした頃には、零号機は既に使徒へと取り込まれ、装甲板が『小骨』か何かの様な扱いで吐き出されて、使徒はその身を異形の女体へと変貌させる。

 

 そんな中、天蓋の大穴からゆっくりと降下してくるモノが一つ。

 

 紺色の装甲、赤いバイザーの様な眼と、黄色い発光部を持つエヴァンゲリオン。

 

 神の如く光輪を頭上に浮かべるその姿に、マリは思わず息を呑む。

 

「ッ!? エヴァMark.06……! 人造の神か————!」

「そうとも。……どうやら間に合ったらしいね。随分シナリオが狂ったみたいだけど、まだこれなら修正も効く範囲だ。————さぁ、第十使徒。君は君の役目を果たすと良い。僕も僕の役目を果たそう」

 

 そう告げるのは謎の少年の声。エヴァMark.06のパイロットと思しきその声の主の意図は判らずとも、その敵意はありありと感じ取れる。

 

 その害意にマリが反応するより早く、文字通り2号機と3号機の眼前に『転移』したMark.06は、乱雑に3号機から槍を引き抜くと2号機諸共に大きく蹴り飛ばす。

 

「泥棒猫達に用はないよ」

「何を……!?」

 

 その直後、エヴァ2体に向けて放たれたのは、使徒からの破壊光線。

 

 明らかに回避不可能なその攻撃をモロに受けた3号機と2号機はさらに吹っ飛んで地を転げ回り、使徒はその様に満足した様に彼らに背を向けると、NERV本部へと破壊光線を打ち込んで、メインシャフトを露出させる。

 

「————さぁ、行こうか、第十使徒」

 

 そう呟く様に語る少年を乗せたMark.06と第十使徒はドグマを目指し、メインシャフトへと降りていく。

 

 一瞬の惨劇によって何もかもが覆されたそんな中で、逆転の目はもはや完全に断たれたかの様に思われた。

 

 だが。

 

「————カフッ、ゴホッ」

「姫!?」

「————コネ、メガネ? 何が……?」

「エヴァMark.06、魂と槍と2つの実を併せ持つ真のエヴァ。そいつが姫を襲って————」

「————アタシ、負けたんだ」

「一瞬だった。光みたいな速さで槍が飛んできて、それで……全部ひっくり返った。パイセンが姫を庇って使徒に喰われて、使徒と融合してドグマに行っちゃった……!」

「————そう。レイ、あの子、前ボコボコにするって言ったのにね。バカなんだから……」

 

 ゆっくりと、血反吐を吐きながら立ち上がるエヴァ3号機。不甲斐ない自身への怒りをATフィールドの奔流として噴出するその機体は、見る間に傷を再生させて、メインシャフトへと向けて歩き出す。

 

「いくわよ、コネメガネ」

「無茶だよ姫! 槍がある限りアイツは無敵じゃん! アレを刺されたらエヴァだろうが使徒だろうが完全に機能を停止するんだから!」

「そりゃ良いこと聞いたわね。そのマークなんちゃらから槍ってのをブン取ってブッ刺せば、後は使徒をブッ殺してレイを助けりゃ勝ちってことじゃん」

「それはそうだけど!」

 

 そんな会話を交わしつつメインシャフトを覗き込む3号機は、その身をゲル化させて2号機を取り込み、シャフトの壁を伝う様に降下しつつ、希望に繋がる更なる言葉を告げる。

 

「それに大丈夫よ————シンジが来たわ」

 

 ————その直後、ATフィールドと呼ぶにはあまりにも巨大な覇気を纏った赤黒い機体が天蓋の大穴から直接シャフトへと飛び込んでくる。

 

「ごめん、遅くなった。————綾波さんを、助けに行こう」

 

 数百、数千、数万のエヴァMark.07を鏖殺し、全身を隈無く返り血に染め上げたエヴァ初号機。

 

 先程3号機を貫いた槍とは似て非なる剣を手にしたその機体は、アスカの駆る3号機がゲル化を一部解いて差し出した手に捕まり、彼女達と共に、NERVの深奥、ターミナルドグマを目指して降下する。

 

 全ての役者が揃い、舞台は整えられ、リリスとの契約の時は間近に迫る。

 

 ————現れた謎の少年とエヴァMark.06。

 

 ————零号機とレイを捕食した第十使徒。

 

 ————怒りの戦姫と化したエヴァ3号機。

 

 ————混乱する2号機とそのパイロット。

 

 ————並み居る敵を討ち果たし、怒りと悲しみ、そして愛と勇気を胸に立つ、碇シンジとエヴァ初号機。

 

 

 全ての役者は今、セントラルドグマへと降り立とうとしていた。

 

「「————綾波さん(レイ)を返せッ!」」

「来たね、シンジ君。さあ約束の時だ。————今度こそ、君を幸せにしてみせるよ」

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