旧世紀エヴァンゲリオン   作:黒山羊

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破-26

 シンジ達がターミナルドグマに到着したその頃には、既にMark.06は最後の仕上げに取り掛かっていた。

 

 ネルフ最奥のその場所で、リリスを求めて腕を伸ばした姿のまま、槍に貫かれて静止した第十使徒。

 

 その体を踏み台にし、リリスに突き刺さる槍に手を掛けたMark.06が勢いよく槍を引き抜けば、封印の軛を逃れたリリスは下半身を再生させてその巨体を着地させる。

 

 明らかにヤバい状況。そう判断した瞬間のアスカとシンジの行動は早かった。Mark.06に初号機が手にした剣で切りかかると同時に、3号機が使徒から槍を引き抜きつつ、その巨体を壁まで蹴り飛ばし、槍をリリスに刺し直す。

 

 完璧に息の合った連携により、再び活動を停止するリリス。

 

 そして硬直する白い巨神の眼前では、自然と初号機 VS Mark.06、弐号機 & 3号機 VS 第十使徒という対戦がマッチングされ、戦いの幕が上がる。

 

 人類の存亡を賭けた決戦は、いよいよ最終局面へと達しつつあった。

 

 

 * * * * * *

 

 

「————シンジ君、君はなぜ他人の為にここまで戦うんだい? 君は、君自身の幸福の為に生きようとは思わないのか?」

「知ったような口をッ————!」

「知ってるさ。君のことなら何だって!」

「僕はお前なんて知らないッ!」

「だろうねッ————!」

 

 言葉を交わす以上に剣と槍を交え、互いを蹴り飛ばし、隙あらば殴りつける。

 

 完全に互角の闘いを繰り広げる初号機とMark.06の姿は、ともすれば演舞を舞うかのようにすら見えるほどに噛み合っている。

 

 初号機と完全融合を果たしたシンジが握る光の剣は、エヴァンゲリオン数万体切りを達成してなおその輝きが鈍らない必殺の刃。

 

 それに応じるMark.06の振るう真紅の槍は、神殺しの武器であり、貫かれればあらゆる生命が問答無用で封印される必殺の一刺し。

 

 それらによって交わされる無数の剣戟の余波はターミナルドグマを揺るがし、高速で移動する初号機の首から噴き上がる赤いオーラとMark.06のバイザーから輝く紅の光が、残光となってターミナルドグマを縦横無尽に駆け回る。

 

 

 そんなエヴァ同士の激しい闘いの一方で、使徒とエヴァ2号機、3号機の戦いもまた、苛烈を極めていた。

 

 ただ、それは外見上は使徒対エヴァ2号機の戦いだ。3号機は戦いが始まるや否やゲル化して使徒の体内に侵入を果たしており、2号機の役目は3号機が零号機を救い出すまでの間、使徒を抑え込む事にある。

 

 と、言えば簡単そうに見えるが、此方はトドメを刺せないのに相手は容赦無く殺しにくるという戦いは2号機にとって不利そのもの。

 

 ゲル化した3号機の一部がコアに纏わりついている事で苦しみ悶えている使徒だが、その分外敵への殺意も濃厚になってしまっているのだ。

 

「姫ぇ! 巻きで頼むよマジで! ————モード反転! 裏コード:666(The Beast)!」

 

 そんな殺意に対し、マリの選択はエヴァのリミッター解除による獣化第二形態の解放だ。

 

 ヒトを捨てケダモノへとエヴァを堕とし、引き換えに莫大な戦闘力を得るこのモードは、シンジやアスカの『エヴァとの合一』とは対極に位置する手法。

 

 シンクロによってエヴァを従えるのではなく、エヴァを解き放ちそれにシンクロする。

 

 しかしどちらも理外の外法である以上、その結果は何れの手法であっても同じ事。

 

 ————真希波マリもこの瞬間、シンジやアスカと同様に、ヒトを辞めたのだ。

 

「やっちゃおうかァッ! 2号機ィィィィ!」

 

 エヴァに呼応する様に凶暴化するその姿は、まさに魔獣。獣染みた咆哮とともにリミッターが外れ、驚異的なビルドアップを果たした2号機は、その口を耳まで裂けるほどに大きく開いて、使徒の腕へと齧り付く。

 

 この使徒の強みの1つであるATフィールドは体内に寄生した3号機により封殺されており、残るは異常なまでの素の物理耐久力。

 

 それを突破するだけの膂力を2号機が得たことで、事態は一気に血腥いダメージ交換レースへと変貌する。使徒とエヴァ、どちらかが倒れるまでの、果てのない肉体破壊の応酬。右腕の対価に左腕を奪う様なその戦いは、どちらが勝つのか想像もつかない接戦だ。

 

 ————だからこそだろう。

 

 その激戦は、もう一方の戦いにも自然と影響を及ぼす事となる。

 

「ッ! リリンの王の被造物達がここまで優秀とはね……」

「其処ッ!」

「————しまったッ!」

 

 第十使徒の消息を、一瞬でも気に掛けたMark.06の腕が初号機に切り飛ばされて宙を舞い、槍を失ったその機体は、即座に初号機によって残る四肢を切り飛ばされて、無力化される。

 

「ぐぅッ! ————流石はシンジ君、エヴァの操縦じゃ君には敵わないか……」

「君には聞きたいことが山ほどある————でも今は後だ」

 

 そう言い残した初号機が2号機を救援するべく使徒との戦いに向かう姿を見送るMark.06のパイロット。だが彼は、通信回線を切ったプラグの中で、先の言葉の続きを紡ぐ。

 

「だけどシンジ君。エヴァ以外なら、僕だって君に負けないさ。————君を救う為なら、何だってする。どんな手も使うさ。……君に嫌われるとしてもね」

 

 その呟きと共に、エネルギーダウンしたMark.06の暗いプラグの中で、赤い2つの光が灯る。

 

 ————突如シンジの前に現れた敵対者は、未だその野望を諦めてはいなかった。

 

 

 * * * * * *

 

 

「マリさんッ、アスカッ!」

「初号機! ワンコ君ッ! 姫は使徒の中だ! 零号機を助けるって!」

「分かった!」

 

 そんな短い会話と共に、参戦した初号機によって一気にエヴァの側に傾いた対使徒戦。それによって余裕が生まれたアスカとのテレパシーにより使徒体内の現状を教えられたシンジは、ある推論を下す。

 

「————綾波さんの魂が、弱い?」

 

 それは、常人には想像もつかない様な思索の果てに生まれた仮説。形而上生物学への造詣の深いシンジだからこそ、導き出せた仮説。

 

 綾波レイの魂の出力が異常なまでに低いが故に、使徒の魂の持つ引力に屈して、そこから逃れられないのだ。

 

 イメージとしては、地球と月。月の如く儚く輝くレイの魂は、地球の重力の如き使徒の魂の引力に囚われて、グルグルと堂々巡りに陥っているのである。

 

 だがしかし。もしその仮定が正しいのならば、碇シンジの脳内に方策は存在している。

 

 それは、先程の例に則れば、地球と月の話に太陽を持ってくる様な話。より強力な魂の力で、綾波レイを引っ張り上げるのだ。

 

 そして。その為の魂は、既にこの場に揃っている。

 

『————アスカ!』

『シンジ———— ? 良いわ、やってみようじゃない!』

 

 そんな会話が2人の脳裏で交わされたその直後。

 

 ————初号機の光の剣が、深々と使徒のコアを貫いた。




しばらく続きそうな不定期更新……ボルg、読者の皆様、お許しください!
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