旧世紀エヴァンゲリオン   作:黒山羊

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幕間-4

「ええい面倒くさい!」

 

 そう咆哮するアスカ。その周囲に積み上がるのは髑髏頭の死屍累々。

 

 ベタニアベースの内部で大暴れするレイとアスカの最強美少女タッグを前に、本来量産型如きは物の数ではないのだが、問題なのは今回積載している『荷物』である。

 

『ごめんね、レイ、アスカ』

「別に良いわよ。ゲル化出来なくたってコイツらぶっ倒すぐらい訳ないし! ……面倒ってだけで」

 

 そう答えながらV3は手刀1発でMark.07を2枚に下ろし、回し蹴りで複数纏めて機体を上下に泣き別れさせているあたり、実際面倒はあっても無理は無いらしい。

 

 だが、アスカの『面倒くさい!』という思念を読み取れるレイは、その煩わしさをどうにかしてやろうと思考を巡らせるだけの優しさを持ち合わせていた。

 

「アスカ」

「何よレイ————ふぅん? 流石はバカシンジの妹、悪くない案じゃない」

「出来そう?」

「モチのロン! V3はアンタに任せるわよレイ!」

『ちょっと待って!? 何する気、レイ、アスカ!?』

「こうすんの、よッ!」

 

 そう言った直後、アスカは自身のプラグを排出し、単独操縦となったエヴァV3を駆るレイが、群がるMark.07の一体を組み伏せて、その脊髄からダミープラグを力業で引っこ抜き、代わりにアスカのプラグをねじ込んでしまった。

 

 息の合った連携によって奪取されたMark.07。その首筋から青く輝くゲルが噴き出して髑髏の機体を侵蝕し、アスカに『取り込まれた』Mark.07はその姿を赤と金の装甲板を纏う黄金髑髏へと変化させる。

 

『随分派手だなそりゃ。黄金バットか?』

「敵味方はハッキリしといたほうが良いでしょ。こうも暗いとこだと、赤より金のほうが目立つしね。……ところで黄金バットって何?」

 

 そんな疑問を述べながら、金ピカMark.07を駆るアスカは敵の攻撃をゲル化で透過しつつ一方的かつ圧倒的に周囲に群がるMark.07を蹂躙し、屍山血河の地獄めいた光景を生み出しながらベタニアベースの奥へと進撃する。

 

 その後を追うV3の中で、加持はアスカの疑問へと回答した。

 

『今のアスカみたいな、強い! 絶対に強い! って感じの日本のスーパーヒーローだな』

「ふぅん。————しっかしマジでキリがないわね。加持さん、エクセリヲンはこの先にいるわけ?」

『ああ。この地下だな。この先のメインシャフトを降下すりゃ直ぐなんだが……』

「なるほど。で、エクセリヲンは仕組みとしちゃめちゃくちゃデカいエヴァで、エヴァを動力に動くってことで良いのよね?」

『そうだが……何する気だ?』

「アタシちょっと先に見てくる! レイ、ついてきなさいよね!」

『おいおい、どうやって————』

 

 そう言い始めた直後、敵の群れの中に金ピカMark.07を突っ込ませたアスカは自爆システムを起動させるとプラグを射出し、更にプラグのハッチを空中で開けて飛び出すと、自身をゲル化させて床の隙間へと浸透する。

 

 そんな彼女が乗り捨てたプラグを回収して自機に挿入するレイの手際は、まさに阿吽の呼吸と言えよう。

 

 そして、V3は眼前で派手に爆発した金ピカMark.07が産んだ火球の中を突っ切って、アスカを追うようにメインシャフトに飛び込み、自由落下を開始する。

 

 それを追うMark.07の大群が滝のように降り注ぎ、同時に進行方向からも噴火の如く飛び出してくるが、空中戦であってもV3に隙はない。

 

 レイが操るその機体は見事な体捌きで髑髏の軍勢の中をすり抜け、回避不可能な機体は残らず無敵の力で粉砕し、一切速度を落とすことなく下へ下へと落ちていく。

 

 その先。ベタニアベースの地の底から、突如響くのは凄まじい地鳴りの音だ。

 

『アスカは何をやったってのよ!?』

「大丈夫」

『レイ? 状況がわかるの?』

「アスカがエクセリヲンでこっちにくる」

 

 そう述べたレイがV3に着陸姿勢を取らせた直後、何もかもを吹き飛ばしてその下から現れるのは、全長数キロはあろうかという化け物じみた空中戦艦。

 

 まだ未完成なのか、生物めいた骨格が剥き出しのその機体はしかし、反重力力場によりベタニアベースそのものを持ち上げる様にブチ壊して、力技にも程がある『発進シークエンス』を開始しているのだ。

 

 そんな機体から響くのは、それに融合しているらしい式波・アスカ・ラングレーの声。

 

「レイ、甲板に乗りなさい! 飛ぶわよ!」

「わかった」

『こりゃ何もかも滅茶苦茶だなぁ!?』

 

 加持がそう叫ぶ中、艦首に仁王立ちで着陸したV3を乗せたエクセリヲンは、ベタニアベースを瓦礫の山へと変えながら、真実本当に『飛行』を開始する。

 

 瓦礫の山から巨大戦艦が発進するその光景は、味方に圧倒的な希望を、敵には圧倒的な絶望を叩き付ける大迫力。

 

 アスカが一体如何なる術理でこの巨大な艦を単独操縦しているのかは一切合切不明だが、日本に向け一路南進する空中戦艦。

 

 その船体は航行しながら徐々に変質し、剥き出しの骨格には肉が乗り、血が通い、装甲板が生成されていく。

 

 その装甲は赤いド派手なカラーリングを船底に施し、甲板や艦橋は青紫ベース、そして各所に黄色いラインという、シンジ、アスカ、レイのパーソナルカラーで彩られており、大変に目立つ代物だ。

 

 それが大空を征く姿は控えめに言ってロマンの塊でしかない。

 

「アスカ、V3はどうしたらいい?」

「そのまま甲板に乗ってなさい。この船の主機はアタシでなんとかなるみたいだし」

『アスカ、瓦礫を持ち上げていた反重力は恒常的に発生可能なのかしら? であればベタニアベースの封印柱を全機回収したいのだけれど』

「あら、遅いお目覚めねリツコ。……封印柱ってあの赤黒いやつ? 良いわよ、引き上げてみる!」

『ありがとう。うまくいけば、この封印柱で一定範囲のコア化を還元できるかもしれないわ。————それと、帰りは安全運転でお願いね』

「誰に言ってんのよリツコ。アタシのエヴァパイロット以外のもう一つの肩書き、忘れたとは言わせないわよ?」

『そうね。よろしく、式波・アスカ・ラングレー空軍大尉殿』

Jawohl, doktorin(了解、博士殿)

 

 そんなリツコの要望に応えたアスカが駆るのは、鯨の如く歌うエクセリヲン。ベタニアベースの封印柱を根こそぎ引っこ抜いて掻っ払って、悠々と空を泳ぐ大鯨は、日本に向けて緩やかに加速を開始する。

 

 後にNERVと神への叛逆を志すWILLEの旗艦となるエクセリヲンの処女航海は、NERVに対する初勝利の凱旋として、永く語られる事となるのであった。

 

 なお、その際に艦首甲板に仁王立ちのままのV3を載せていたせいか、ご利益に肖ろうとWILLEの艦艇に仁王立ちエヴァの船首像をつけたりするのが流行ってしまうのだが、それはまた別の話である。




皆さま来年も良いお年をお迎えください。
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