トレセン学園って普通の学校じゃなかったんですか!? 作:普通のモブ娘
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とあるウマ娘は激怒した。必ず、あの邪知暴虐のトレーナーを除かねばならぬと決意した。ウマ娘には政治……どころか二次方程式もわからぬ。英語もできぬ。歴史もできぬ。このウマ娘はバ鹿である。
そして、このウマ娘、トレーニングが嫌いである。
「やだやだやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
走ること自体は好きであったし、朝に軽くランニングするとか、体育の授業とかはむしろ率先して取り組むタイプではあるが、勝つために厳しい練習を乗り越え、勝利を目指すようなスポ根は大の苦手であった。
「駄々こねてもダメだ。ほら練習行くぞ」
無知なウマ娘はトレセン学園をウマ娘が『通わなければならない』学校だと勘違いして入学した。つまりレースに出るとか速くなりたいとかではなくウマ娘はトレセン学園に入らないと最終学歴が小卒になってしまうのだと思っていたのだ。
「騙されないよ!どうせ練習という名の拷問なんだ!」
そのためレースに意欲的ではなく放課後も遊びまくっていた。他のウマ娘達の練習風景を遠目に見ながら部活動が盛んな学校なんだなと呑気に思っていたことは内緒である。
「何言ってんだ。俺も一緒に付き合ってやってるだろ? ヒトが耐えられるメニューをウマ娘である君が耐えられないわけがないだろう」
つまりこのバ鹿はトゥインクルシリーズを部活の公式大会だと思っていたのだった。
「トレーナーがおかしいだけだよぉぉ!ダメだ、殺される!たづなさぁん!ルドルフゥゥ!!」
しかし、バ鹿にとっては不幸なことにウマ娘には才能があった。毎朝のランニングの成果なのか、はたまた天性のものなのか、それは本人すらもわかっていないが、中央のトレセン学園に入学できてしまっていること自体がその証明と言えるだろう。
〜1か月前〜
トレセン学園理事長室。ここでは今まさに問題児に対する議論が行われていた。
「疑問!中等部からホープとして期待されていたトワイライトアサヒは何故未だ出走登録をしていない!」
「それが、そういうスポ根は向いてないの一点張りでして……」
「むぅ……しかしだな、同時期に入学したシンボリルドルフも7冠達成という快挙を成し遂げ、前線を退いている状態。流石にもう色々と限界ではないか?」
お察しの通り、先のおバ鹿なウマ娘のことである。名前はトワイライトアサヒ。シンボリルドルフと同時期に入学していながら、模擬レースに1回出たきりろくに走っていない、ゴールドシップとは別の路線でトレセン学園きっての問題児である。
「それはつまり……」
「走らなければ退学措置も視野に入る!聞けばテストも常にギリギリ、普通の高校なら留年しているレベルと聞くしな!」
「……本音は」
「退学なんぞ以ての外である!彼女の足を埋もれさせるのは実に惜しい……しかーし!1回崖っぷちまで追い詰めないといつまで経っても走らんだろう!模擬レースで見せたあの走り……必ず我がトレセン学園の宝となる!」
「では成績不振で退学になる可能性が高いからレースに出てくれ……という形でよろしいでしょうか?」
「うむ!トワイライトアサヒには直々に理事長室に来てもらい、私から話そう!その方がより危機感を持ってくれるだろうからな!ではたづな、今すぐ校内放送だ!」
「今は授業中です……」
◆◆◆
ごっはん!ごっはん!ごっはっんー!
いやぁ、授業中はもう眠過ぎてヤバかったなぁ。一瞬意識飛んじゃったもんね。あー、でも途中で先生がブレイクダンスし始めたのはビビったね!最後には羽を生やして窓から飛んでっちゃったし。
「やっほー!遊びに来たよー!」
「やぁアサヒ。その手に持ってる弁当箱を見るに、一緒に昼食をといったところかな?」
「そゆことー!今日は手作り弁当なんだぁ。食堂もいいけどたまには花嫁修業もしないとね!」
「先輩。生徒会室は遊び場ではないのですが」
「まぁまぁ、私達も食べようかと言っていたところじゃないか」
「会長は甘いんです!」
エアグルーヴは相変わらず厳しいなぁ。最初は凄いルドルフと同じくらいの勢いで尊敬されてる感あったのに、いつの間にか世話の焼ける子どもみたいな感じになってたんだよなぁ。そりゃルドルフと同じくらいしっかりしてるとは言わないけどさー。
「なんですか。その物言いたげな目は……」
「なんでもないですぅー!んじゃご飯食べようよ!」
「とりあえず食堂に移動しようか。私とエアグルーヴは弁当ではないからね」
その言葉を待っていたァー!このカバン重かったんだから!
「ふっふっふ……実はねーみんなの分も作ってきたんだよー!」
「じ、重箱……」
「これは……相変わらず凄いな」
今回は相当張り切ったからね!!不本意にもおバ鹿と思われがちな私だけど、料理はすぐに嫁ぎに行けるレベルだと自負しているよ!
「ブライアンもいたら良かったけどいないみたいだし食べちゃ……」
んあ?校内放送?
『トワイライトアサヒさん。秋川理事長がお呼びです。理事長室までお越しください。重要なお話ですので、大至急。お願いします。』
「ええー!?今からご飯なのにぃー!エアグルーヴの度肝を抜いた反応が見れるところだったのに!」
「理事長室……先輩何をやらかしたんですか」
心当たりなんてないけどなぁ……ゴルシと一緒に学園の敷地内に畑作ったこととか?それともこの前の休日にオグリと一緒に街のバイキング食べ尽くしたこととか?
でも理事長に呼ばれるほどではないよなぁ……
「いや、私は心当たりがある」
「え!ルドルフ何か聞いてるの!?」
「まぁ、理事長も痺れを切らしたということだろう。大丈夫、悪いようにはならないさ」
ホントかなぁ?嫌な予感しかしないんだけど……
「じゃあ大至急って言われちゃってるし行ってくる!先に食べてていいよ!感想よろしくね!」
「あぁ、ありがたくいただくよ」
はぁ、足が重いなぁ……
◆◆◆
「会長。それで心当たりというのは?」
「ふふ。すぐに私達にも知らされるさ。まぁさっき言った悪いようにはならないというのも、私にとってはの話だけどね」
「……?」
昼休みも終わりに近付き、生徒が授業の準備をし始める頃……
理事長室から
絶叫が
鳴り響いた。
需要あったら続きを書く可能性が無きにしも非ずんば山の如し