初日
―――――いきなりで悪いんだけど、僕から皆に質問してもいいかな?
問い・人は平等であるか否か
ていう質問を受けたら皆ならどう答えるかな?まあ希望溢れる皆なら考えるまでもなく答えを導き出せるよね!でも念のため答え合わせをしようよ
答えは平等な訳がない
この世界に生きる全ての人間は才能を持つものと持たざる者の2種類しかいないんだから考えるまでもないよ。
例えば彼の有名な発明家トーマス・エジソンは電球を発明したよね?過去に発明したものが未来にまで影響を受けるなんてすごい才能だよ!では質問。電球を発明したエジソンとなにも生み出せない発明家。同じ発明家だけど二人は平等?
ちょっとイメージが付きにくいかな?じゃあ質問を変えるよ。同じ時期に野球を始めた二人の少年がいました。二人は同じ分だけ練習に励み片方は見事レギュラーになれたが、もう片方はベンチにすら入れない補欠。これは平等?違うよね?平等な訳がないんだよ。
つまり努力が成功を産むなんてとんでもない誤解なんだよ。世界がそんなに単純な訳がないでしょ?天才とはなるものじゃない生まれた瞬間からそれだけの器を持って生まれてくるものなんだよ。
小型犬がどれだけ頑張ったところで大型犬にはなれっこない。ペンギンがどれだけ頑張ったところで空を飛ぶことが出来ないように、ダメな人間はなにをやってもダメなままなんだよ。
―――――この世界は才能に愛された【希望の象徴】がこの希望溢れる現代社会を引っ張っていくようにできているんだ。だから才能を持たないクズと希望と
そう、本来ならね。だが実際は残念ながら才能を持つ素晴らしい人たちよりも圧倒的に僕のようなくだらない人間のほうが数が多い。
その結果、才能に恵まられた人間は妬まれ、寄生され、利用されていき、世界が腐っていく。【絶望的】なまでにね。
こんな事許されていいはずがないでしょ?だからこそ僕は思うんだ!
この世界には【絶対的な希望】が必要なんだって。
―――ね?そうでしょ?
ガタガタと揺れるバスの座席で僕は身体を揺らしながらくだらない脳内会議をしているとどうやら、目の前での争いが終わったようだ。
先ほどまで目の前のOLとガタイのいい金髪のオールバックの少年は老婆に席を譲るか譲らないかで言い争いをしていた。どうやら少年は席を譲る気は一切ないそれどころか少年に言いくるめられ、反論できずに諦めておばあさんに謝罪するOL
「私も、お姉さんの言う通りだと思うな」
思いがけない救いの手が差し伸べられた。その声の主はOLさんの横に立っている僕と同じ高校の制服を来ている。
へえ、誰もが見て見ぬふりをする中、勇気をもって立ち上がれるなんて中々できることじゃないね。
「今度はプリティーガールか。どうやら今日の私は思いのほか女性運があるらしい」
よくみたら目の前のオールバックの彼も只者じゃないねオーラが違うもん。先ほどからの力強い発言や唯我独尊な横暴な態度も説明がいく。きっと素晴らしい才能を秘めてるんだろうなぁ
うん!僕は本当にツイてるよ!まだ学校の門すら通ってないのにこんなにも希望が溢れる生徒に2人も出会えるなんて!この学校に入学してきてよかったなぁ!!
【東京都高度育成高等学校】。日本政府が作り上げた、未来を支えていく若者を育成する全国屈指の名門校。希望する進学、就職率がほぼ100%といった楽園のような学校に僕みたいなクズが受かっちゃうなんて【幸運】でしかないよね!
そうこう考えているうちに僕と同じ制服を着た女の子が席を譲ってほしいと周りの乗客に訴えかけている。
正直おばあさんに席を譲るつもりはないけど。もし他の希望溢れる生徒さんが席を譲って、僕のようなどうしようもないゴミクズが席を譲らずにのうのうと座ることになったとしたら僕には耐えられないよ...よし!彼女の勇気ある発言に敬意を表して僕は席を譲ることに決めた。
「僕なんかが座っていた席で良ければ譲るよ」
耳元に纏わりつくようなねっとりとした甘い声が彼女の耳を通り抜ける。彼女は一瞬思わぬ声に呆気を取られるが瞬時に正気を取り戻す。
「―――あ、ありがとう!」
彼女は満面の笑みを浮かべながら僕にお礼を言うと、おばあさんに席をどうぞと声を掛ける。
おばあさんは少女と僕に頭を下げてありがとうと一言だけ言うと席に座り安堵したように落ち着いた表情を見せる。
僕は仕方なくバスに取りつけられている手すりを掴むと先ほどの少女が僕の隣に立つと笑みを浮かべてきたので、僕も笑みを返しておいた。そうこうしている内にバスは目的地に着いたようだ。僕は会計を済ませてバスから出る。
「あの!さっきはありがとう!」
バスから降りると先ほどの少女は僕に再びお礼を言ってきた。
「あはっ!お礼を言われることなんて何もしてないよ!当然の事をしただけだからね」
「それでもお礼を言っておきたかったんだ!」
少女と少年の【当然の事】は全くの別物だ。世間一般的な考えのおばあさんに席を譲るという行為は自分は正しいことをしていたいと思う正義感や可哀そうと思う偽善だろう。
だが、この少年の当たり前は典型的な自己肯定の低さや目の前の少女の才能に経緯を評するというおばあさんに対する思いやりが一切ない行動である。それが当然のことだと信じているのだが、乗車していた人間からは彼の行動は偽善や正義感に見えるのだろう。
「私は櫛田桔梗て言うんだ!今日から新入生なんだけどあなたも?」
「そうだよ僕も今日からこの希望溢れる高校に入学することになってるんだよ。それとよろしく僕は狛枝凪斗だよ」
狛枝凪斗と名乗る少年の特徴はまるで白い炎が揺らめいているような個性的な髪型に中性的な顔立ちで笑顔を浮かべている。他の人が見れば彼の人懐っこい笑顔は好印象を受けるだろう。だが、目の前の櫛田桔梗という少女にはどこか虚ろで薄っぺらい笑顔に見えた。
「―――狛枝凪斗くん、狛枝くん、うん!覚えた!良かったら一緒に体育館に行かない?」
「体育館?ああ、そういえば合格通知と共に送られてきた予定表に入学式は体育館で行われると書かれてたね。僕でよければ一緒に行こうか櫛田さん」
「うん!」
僕たちは並んで同じ方角に歩き始めた。
「そういえば櫛田さんは何処のクラスの生徒さんかな?僕はちなみにBクラスだよ」
「私はDクラスなんだぁ。そっかぁ狛枝君はBクラスなんだね!ちょっと残念だなぁ」
「残念?」
彼は不思議そうに首を傾げる。どうして私が残念がっているのかこの少年には理解できなかったようだ。
「だってせっかく狛枝くんと仲良くなれたのに別のクラスだったなんて悲しいじゃない?でもたとえクラスが違っても仲良くしてくれたらうれしいなぁ...なんて...」
櫛田さんの横顔から見える頬は少し紅潮している。流石だね!
「僕なんかと仲良くなりたいなんて変わってるね。もちろん仲良くしてくれたらうれしいかな」
櫛田さんと仲良く話しながら歩いているとあっという間に目的地である体育館についた。櫛田さんとはここで別れて僕は自分のクラスであるBクラスの列に並び、やがて入学式が始まった。
入学式が終わりいよいよ自分のクラスの教室に入る事になる。このBクラスではどんな才能あふれる人と出会えるんだろう!教室のドアを開けるのがこんなにわくわくする日が来るなんて夢にも思わなかったよ!
勇気を振り絞りBクラスの扉に手をかけドアを開いて教室を見渡す。思わずにやにやと口元を緩めてしまった。
「おお!随分と楽しそうだね!何か面白い事でもあった?」
教室を入ってすぐ不意に声を掛けられたので声のするほうに顔を向くと、薄ピンク色の髪をしたきれいな少女が笑顔を向けながらぼくにおはようと声を掛けてくれる。
「おはよう別に面白いことがあったわけじゃないよ?初めてのクラスにわくわくしてたら思わずね?」
「あ~わかるよ!うれしくなっちゃうよね!あ、私は一之瀬帆波きみは?」
「僕は狛枝凪斗だよ」
「狛枝君か!よろしく」
「うん、こちらこそよろしくお願いするよ一之瀬さん」
―――――僕の
これが僕と一之瀬さんとの初めての出会いだった。
完成してから気づいたのですが、入学式は教室の説明を受けてからでした!すみません!!ですが、物語に影響はないのでこのまま進めます。
4話まで完成してます。