一之瀬さんと少し話してから僕は自分の席を探すために辺りを見渡す。
「あ、もしかして自分の席探してる?それならあそこだよ」
一之瀬さんが指を指す方向を見てみると机の上に狛枝凪斗と書かれているネームプレートが視界に映る。
「あ、あった。ありがとう一之瀬さん」
一之瀬さんに頭を下げてから自分の席に向かう。僕の席は窓側の一番後ろと言ういかにも物語の主人公が座りそうな席・・・・・ではなくその反対の教室の出入り口側の一番端の一番後ろだ。前の席には神崎隆二というネームプレートが建てられていて本人も席に座っていた。
自分の席に座るために椅子を引きながら目の前の神崎くんに声を掛ける。
「よろしく僕は狛枝凪斗だよ。席も近いことだし仲良くしてもらえたらうれしいな」
「―――ああ、俺は神崎だ。神崎隆二」
彼は座りながら僕のほうに体を向けて、目線を逸らしながら自己紹介をしてくれた。どうやら彼は人付き合いがあまり得意ではなさそうだ。
「そんなに畏まらないでよ。僕が君の目を逸らすなら分かるけど、君という素晴らしい生徒さんが僕ごときの目を逸らすなんて他の希望溢れる生徒さんに舐められちゃうよ?ほら自分に自信を持って見て?」
「俺が言えた義理ではないが、お前の方こそ自分に自信を持ったほうがいいぞ」
神崎くんは僕の目を見ながら少し呆れながら答えてくれた。
「よかった。今度はちゃんと目をみてくれたね」
神崎くんは自分でも驚いたように目を見開きやがて、さっきまでの固い表情が緩んでいく。
どうやら神崎は狛枝が自分の緊張を解くためにわざと自虐的な発言をしたとおもったらしい。
「ふっ、すまない。人付き合いはあまり得意じゃないんだ。だがお前となら仲良くなれそうだ改めてよろしく頼む。」
「うん、もちろんだよ」
神崎くんと交友を深めている所でチャイムが鳴った。それから5分から7分ほど過ぎたところで、色鮮やかなピンクの服に教師が着るには短いスカートを着た。女性が少し慌てて教室に入ってくる。
「セ~~~~フ!!」
「5分以上の遅刻なのでアウトです先生!!」
「ごめんごめん!準備に手間取ちゃった!時間も過ぎてるしちゃっちゃと始めようか!」
一人の生徒がセミロングで軽くウェーブのかかった髪型の教師と思われる女の人にツッコミを入れそれに言い訳をする。
「え~コホン!新入生諸君!わたしがBクラスを担当する星之宮知恵です。普段は保険医をしてるからケガや体調が悪くなったら無理しないで私を頼ってくれたらうれしいです。あとこの学園にはクラス替えはありませんので、卒業までの3年間私が担任として君たちと学んでいくと思うよ!これからよろしくね!」
どうやらこの学園にはクラス替えがないみたいだね。ちょっと残念だな来年にはまだ見ぬ希望に遭えると思ったんだけど、まあ、3年間もあれば何かと運が回ってきそうだけど。
星之宮先生の後の説明は、この学校は3年間敷地内の学生寮で過ごし、特例を除き外部との連絡も絶たれる。学校から出ることもできない。ただしその反面生徒たちが苦労しないように娯楽の類の施設が建設されている。まるで小さな町が学校内にできているみたいだ。まあ、ここまでは以前に配られた資料通りだね。そしてSシステム
「今から学生証カード配るよ。それを使って敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店とかの商品を購入することができます。クレジットカードのようなものだと思ってもらえたらいいかな?ただし!ポイントを消費することになるから注意ね!学校内においてこのポイントで買えないものはないよ。学校の敷地内にあるものなら何でも購入可能だよ」
なるほどね。このポイントは現金みたいなものか、金銭トラブルやポイントの消耗をチェックができる。振り込まれた後は、ポイントを自由に使ってもよく他人に譲渡もできる。そして学校側がポイントを無償で提供される。一見夢のような話だけど、学校にあるものならなんでも購入できるてことはひょっとしたらクラスも買えちゃうのかな?後で聞いてみようかな。
全員平等に10万ポイントを支給された。狛枝含めクラスメイト全員が10万ポイントという大きな数字に驚きを隠せなかった。
「流石に、月に10万は多すぎるね」
「そうだな、それも皆平等に10万なんて大金何か裏があるかもしれないから取り合えず来月まで無駄使いはしないほうが良さそうだ。」
「流石は神崎くんだね!僕もその意見に賛成だよ」
星之宮先生は説明を終えて教室から出ていくのが見えたので、僕も先生を追って教室から出ていく。
「あ、星之宮先生少しポイントの事で質問よろしいでしょうか?」
星之宮先生は僕の声に気付いてくれたようで、振り返り笑顔で足を止めてくれた。
「君はBクラスの...狛犬くん!」
「狛枝です」
「ごめん...」
星之宮先生は申し訳なさそうに顔を伏せるので大丈夫ですよと声を掛けながら本題に入る。
「それよりこのポイント学校内にあるものならなんでも買えるんですよね?」
「うんそれは説明した通りだよ」
「じゃあさ、【クラスを変更する】ことも可能ってことですか?」
星之宮先生は驚いたように目を見開いて僕に質問を返す。
「どうして?クラスを変えたいと思ったのかな?」
「え?この学校クラス替えがないみたいですから、来年あたりに別のクラスに移って他の希望溢れる生徒ともお近づきになりたいと思いまして」
「あ、あ~なんだそういう事か」
星之宮先生は少し落胆しながら端的にポイントでクラスを移動することができると答えた。ただし2000万ポイントというとんでもないポイントを要求されるみたいだ。
「2000万ポイント...月に10万もらったとしても120万...3年間使わずにいたとしても360万...てことは、ポイントを増やす機会みたいなのがこれから学校行事で行われたりします?」
「詳しくは説明できないけどあるよ」
「なるほどね」
続けて過去にクラスを変えたことのある生徒について質問した。惜しい所までポイントをためた生徒はいたけどそれも詐欺まがいの事をした不正行為。つまりポイントを他人から譲渡できるが、騙したり奪ったりすることは不可能。バレなきゃできるんだろうけど、クラスを変えるなんて大規模な事必ず足がつくのは明白だ。つまりこの質問で分かったことは、クラスを変えるという行為は大変なことだという事だ。
「わかりました。僕なんかのために時間を使わせてしまって申し訳ありませんでした。星之宮先生」
「そんな畏まらなくていいのよ。貴方も私の可愛い生徒なんだから質問があったらいつでも聞きに来てね」
ありがとうございますとお辞儀をしてから星之宮先生に背を向けて教室に戻る。どうやらこのクラス配属には何か裏がありそうだね。考えるにしても情報が少なすぎるし考えるのはまた今度にしよう。
「狛枝凪斗くん。流石はAクラス候補に名前が挙がるだけのことはあるわね。期待できそう!」
星之宮知恵はるんるんな足取りで職員室に足を運んで行った。
―――――
「あ、狛枝くんどこに行ってたの?」
「星之宮先生とちょっと世間話をしてたんだよ」
一之瀬さんはふ~んと何か言いたそうだ。
「言っておくけど星之宮先生みたいな女の人がタイプって訳じゃないからね?」
「あ、バレてた?」
にゃははと誤魔化すように彼女は笑うとちょうどいい所に戻ってきてくれたと言う。
「今ね、クラスのみんなで自己紹介してたところなんだ!狛枝くんも自己紹介して」
「あ、そういう事か。わかったよ」
緊張をほぐすため、息を吐いてから自己紹介を始める。
「僕は狛枝凪斗。好きなものは綺麗なもので苦手なものはうるさい場所かな。趣味は希望の観察。特技はこれといってないけど強いて言うなら【幸運】かな。まあ、ゴミみたいな才能だけどこれから3年間よろしくね」
僕が自己紹介を終えるとクラスのみんなが僕に群がり始めた。
「希望の観察って何?」
「幸運が特技ってどういうこと!」
「その髪型どうなってんだ?」
「身長かなりあるな!バスケとかやらないのか?」
など、次々と僕なんかに興味を持ってくれているみたいだね
「落ち着いてよ、僕は聖徳太子じゃないから僕レベルの人間じゃ聞き取れないよ」
僕が周りに囲まれてあたふたしていると一之瀬さんがみんなに割って入ってくれた。
「皆落ち着いて!狛枝くん困っているから一人ずつ質問してあげて」
「ありがとう一之瀬さん」
一ノ瀬さんはいいんだよと一言いうと僕は一人ずつ質問に答えた。
「とりあえず僕はね少しだけ運には自信があるんだよ。このクラスに入れて神崎君や一之瀬さんのような素敵な人とも出会えたからね」
「狛枝くんは口がうまいなぁ」
一之瀬さんはご満悦なようだ。神崎君も自分の席に座りながら満更でもなさそうにしていた。
「希望の観察というのは、神崎君や一之瀬さんのような希望溢れる素敵な生徒さんたちを卒業するまでじっくりと観察することだよ。叶うなら24時間みんなを見守り続けていたいぐらいだ」
「それはちょっと気持ち悪いよ狛枝くん!?」
一之瀬さんはあわあわしながら僕の前で慌てている。神崎君は顔引きつらせながら僕を見ていた。そんなに見つめられると照れるね。
他のみんなも僕の発言が気持ち悪かったのかそそくさと自分の席に戻っていく
あれ、失敗したかな?
どうやら僕の自己紹介は失敗に終わったらしい。ま、当然だよね。僕なんかが皆に認められるとも思えないしね。
一之瀬さんや他の数人だけは拍手をして迎え入れてくれたけど何とも空しい結末だ。
そしてクラス皆の自己紹介が終わるころには昼前になっており、一之瀬さんの指導の下解散となった。初日にしてクラス皆の心を掴んで、指揮を執る。やはり僕の目に狂いはなかった!彼女こそがこのBクラスをまとめ上げるのに相応しい希望なんだって僕はそう確信しているんだ!
――――
「狛枝今から帰りか?」
「うん、ぼくもそろそろ寮に戻ろうと思ってね」
「―――なら、一緒に帰らないか?」
「僕を誘ってくれるなんて嬉しいよ!そうだ帰る前にコンビニでも寄らない?日用品や晩御飯を買っておきたくてさ」
「構わないぞ」
神崎君と楽しくおしゃべりをしながらコンビニに向っているとコンビニの前で誰かが揉めているようだね。品性を疑うよ...
「2年の俺たちに対して随分な口のききようだなぁオイ。ここに荷物置いてんだろ?だからどけよ」
「いい度胸じゃねえか、くそが!」
ガタイのいい赤髪の生徒は上級生に殴りかかる寸前だった。
「おー怖い。お前クラスなんだよ。なんてな。当ててやろうか?Dクラスだろ?」
だったらなんだと赤髪の少年が答えた瞬間ドっと上級生が馬鹿にしたように笑い始めた。
話しを聞く限り、Dクラスというのは不良品クラスとして、上級生に見下されているらしい。
上級生も場所まで奪ってやるのは可哀そうだと馬鹿にしながらDクラスの生徒たちに言ってから立ち去って行った。
「―――地獄を見るねぇ」
上級生は意味深な言葉を最後に放って行った。僕は少し星之宮先生の質問から得たヒントを元に繋げてみると、おそらくこのクラスというのは上からA~Dのランク制なのかもしれないと言うことだ。その仮説が正しければBクラス全体がAにもCにもなる可能性が出てきたということだね。それならさっきの質問でクラス変更に2000万ポイントというほぼ不可能なポイントがいるというのも説明がいく。まぁ、まだ確信は持てないし、あくまで、可能性の一つと考えておこう。そういえば、今朝に合った櫛田さんはDクラスだったね。
「狛枝?」
「ん?ああ、ごめんね神崎君入ろうか」
コンビニに入りシャンプーなどの日用品を買い込んでから神崎君と共に寮へと向かった。
――――
コンビニで買い物をして寮につく頃には1時半を過ぎていた。僕は1階のフロントの管理人から505と書かれたカードキーと、寮でのルールが書かれたマニュアルを受け取り、エレベーターに乗り込むとマニュアルに目を通す。
「どうやら電気代やガス代まで学校側が負担してくれるみたいだね」
「てっきりポイントで支払うものだと思っていたが、あまりにも緩すぎるな」
「そうだね」
こんな楽な暮らしで、本当に社会に役立つ希望の象徴と呼ばれる生徒を育成できるとは到底思えない。星之宮先生は最後に、【この学校は生徒を実力】で測るとも言っていた。きっと厳しい試練がこの先用意されてるに決まっている!!才能も何もない生徒に試練を与えるのは不毛でしかないけど、才能を持つ生徒には必要なことだよ!
強くなるためにはそれ相応の敵を倒してレベルを上げるのはお約束な展開だしね。きっとこれだけ素晴らしい学校なんだから厳しい試練を与えてくれるに決まってるよ。
神崎君は4階で降りていき僕は5階の505号室の扉にカードキーを差し込み自室に入る。僅か8畳ほどのⅠルーム。今日からここが僕の部屋だ。僕は用意されていたベットに体を横にすると、にやけてしまう。別に一人暮らしに憧れていたわけじゃない。小さいときに両親はある事故に巻き込まれて死別した。両親が死んだことで手に入れた莫大な遺産を手に入れてからずっと一人暮らしで慣れている。
「わくわくが止まらないよ」
僕は一言だけ呟くと緊張が解けたかのように少しだけ眠りについた。
これで僕の初日は終わった。
それは違うぞ!と指摘してくれる日向くんがいれば、遠慮なく感想に書いてください。できる限り治します。私も自信を持ってにわかじゃないとは言えないので...
次回は金曜日の夜です