5話を出したら、書き溜めてから投稿します。
学校二日目、授業初日ということもあって、授業の大半は勉強方針等の説明だけだった。先生たちは進学校とは思えないほどフレンドリーに接してくれたおかげで、Bクラスの皆も遠慮なく質問がしやすかったみたいだ。正直、もっと強面な先生が厳しく指導してくれるのかと思っていたので、僕としては拍子抜けだった。
クラスの皆は集中して、先生の授業を真面目に聞いてノートを取る者も居れば、携帯を弄りながら授業を聞くものや隣同士で話すものも数は少ないがいないわけじゃない。悪く言えば、僕も集中せずに周りの授業風景を観察しているので不真面目と言ってもいいだろう。そう思い、僕も意識を先生に向けようとした瞬間ある違和感を覚えた。
「誰かの視線?」
当然僕なんかを見ている生徒は誰一人としていない。僕は気のせいだと思いノートを取ることにした。
―――昼休み
クラスの皆も続々とグループを作ってるみたいで、お昼を共にしている生徒もいれば、ひっそりと一人で食事をしている生徒もいる。僕は、神崎くんとおしゃべりをしながらおにぎりをかじっていると一之瀬さんが僕たちのいる空いている席に座ると携帯をとりだす。
「そういえば、狛枝君や神崎君と連絡先交換してなかったよね?よかったら交換しようよ。今クラス全員の連絡先集めようとおもってるんだ」
「いいよ僕なんかでよければ」
「―――俺もかまわない」
僕は急いで携帯を取り出し、神崎君は緊張しているのか目線を合わせずに携帯を取り出しお互いの連絡先を交換しあった。もちろんこの後に神崎君の連絡先も僕の連絡先に登録済みだ。
「それにしても、二人は仲がいいね。昨日も一緒に帰ってたでしょ?」
「まあ、そうだな何かと気が合うな」
「そうかな?僕なんかが神崎君と友達になれるなんて思えないけど...」
十分友達だと思うよ?と一之瀬さんが言葉にすると同時にスピーカーから音楽が流れ始めた。
「本日、午後5時より、第一体育館の方にて、部活動の説明会を開催いたします。部活動に興味のある生徒は、第一体育館の方に集合してください。繰り返します―――」
可愛らしい女性の声と共にそんなアナウンスがされた。
「部活動の紹介だって、僕はちょっと興味があるな」
「お?狛枝君って中学で何かやってたの?」
「まさか、僕は帰宅部だったよ。入れそうな部活は囲碁や将棋ぐらいかな」
「入るのか?」
「まさか、入るつもりはないよ」
なんで興味があるの?と僕に質問をする一之瀬さん。
「才能だよ、部活を紹介するってことは才能を披露してくれる場ってことだよね?ここは進学校であると同時に部活も全国クラスで有名だからね。きっと楽しいと思うんだ」
「なるほど!確かに興味出てきたかも!」
「見学するのも悪くないかもな」
「じゃあ、3人で見学しようよ」
一之瀬さんが、僕と神崎君にそう提案してきたので僕はその言葉に甘えて放課後3人で部活の見学に行くことになった。
――――
「ごめんね!私のせいで二人を待たせちゃって」
「気にしないでよ、付き合わせてるのは僕なんだしさ」
僕と神崎くんと一之瀬さんは放課後に部活の説明会に行く約束をしていたのだが、一之瀬さんがクラスメイトに捕まり、少し遅れることになっていた。
「それにしてもすごい人気だなまだ2日目だというのに」
「皆気さくないい子たちだからね~この調子だとクラスメイト全員と仲良くなることも実現できそう!」
「素晴らしいよ!それでこそBクラスを纏め上げるリーダーに相応しい。流石は一之瀬さんだよね」
「私はそんな大したにんげんじゃないよ」
「いや大したことはあるぞ、俺にはない才能だ」
「希望が溢れてる...」
狛枝くんと神崎くんは私を凄いって褒めてくれるけど、私本当にそんな大したにんげんじゃないのにな...
僕たち3人は遅れたこともあり、後方の位置に立つと、3人で体育館に入る前に配られたパンフレットを開く。
「へえ~色々あるね」
「野球やバレーなどには他の名門校に一歩及ばないけど、それでも全国レベルの選手が多いみたいだし、それなりに部活も充実しているんだろうね」
「部活入りたくなっちゃうな~」
「一之瀬も入るつもりはないのか?」
「う~んどうしようか悩み中!」
一之瀬さんは腕を組みながらどうしようかな?と悩んでいる。
「一之瀬さんは自分の希望を信じればいいんだよ」
「希望...?」
一之瀬さんの話題で僕たち3人が盛り上がっている中、生徒会の書記である橘という先輩が舞台の上で司会の挨拶の下、体育館の舞台上に、ズラッと部の代表者が並んでいく。
屈強そうな柔道着を着た先輩から、きれいな着物をこなした先輩まで様々だ。
「わぁ、あの先輩凄いガタイがいいよね」
「そうだな、どれだけの鍛錬を積んだらあれ程までの筋力を身につけれるんだろうな」
「二人とも静かにしないとダメだよ。今は先輩方の見せ場なんだから」
二人に注意すると、神崎君も一之瀬さんも「はい」と一言だけ謝罪する。暫くたって、よくよく考えたら僕みたいなゴミが注意だなんておこがましいよね。後で謝っておかないと。
二人に申し訳ない事をしたと反省するや否や、隣の生徒は説明会が始まっているにも関わらずうるさい。
隣を横目で見ると、冴えない顔つきの少年と黒髪の性格がキツそうな少女がじゃれあっている。まったくありえないよね。見た感じ何の才能も持たない凡人が先輩たちの希望溢れた紹介を邪魔するなんて...
彼らに一言だけ言ってやろうと声を掛けようとしたとき一之瀬さんに肩を叩かれた。
「狛枝くん、あの人がこの学校の生徒会長だよ」
一之瀬さんは小声で僕に指を指しながら教える。僕は一之瀬さんが指を指す方向を見てみると、身長は170センチと僕より低めで、細身の身体に、さらりとした黒髪。シャープなメガネから、知的さを覗かせる。
普通の人なら、勉強ができそう、まじめそう。なんてくだらない言葉しか出てこないだろうでも僕は違った。圧倒的なまでのその存在感は僕の身体に鳥肌を立たせるのには十分だった。今まで出会ってきた人が霞んでしまうような絶対的なオーラとでも言うのかな?僕は彼に夢中だった。
その生徒は一言も言葉を発しないので、周りのガヤがカンペ持ってないのとか馬鹿にし始める。だが、彼は動かない。僕も何もしない彼から目が離せなくなっていた。
そんな中さっきまで騒がしかった二人組がやけに静かだからちらっと僕は横目で見ると、隣の女子生徒も食い入るように生徒会長を見つめていた。瞬きを忘れてしまっているんじゃないかと思えるほどに。
僕はその目を、彼女の感情を僕は知っている。それは―――
――――【希望への強い憧れ】
「私は、生徒会長を務めている、堀北学といいます」
彼女に余所見をしているせいで、生徒会長の言葉を聞き逃してしまう所だった。僕は意識を再び生徒会長に向ける。
「生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、1年生から立候補者を募ることとなっています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えている者が居るのなら、部活への所属を避けて頂くようお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは、原則受け付けていません」
口調は柔らかかったけど、この圧倒的な存在感がこの体育館にいる全体の空気を支配していく感覚、これがこの名門校の生徒会長の持つ才能か。あれだけ騒がしかった生徒を一呼吸の内に黙らせちゃうんだから僕は感動しちゃったよ。
彼は、淀みなく演説すると、真っ直ぐに舞台を降り、体育館を出ていった。僕たち1年生は誰一人言葉を口にできなくなっていた。そう思わせてしまうほどの緊張感だった。
その後、説明会は終わり生徒も続々と体育館から立ち去っていく、未だに放心状態の少女が少し気になったけど、二人を待たせるわけにはいかないので、僕は一之瀬さん、神崎君と共に寮に帰ることにした。
――――
入学式から1週間が過ぎた頃、嫌でも気づく、校内には至る所に監視カメラが仕掛けられている。僕は気になってこの一週間部活動見学、校内見物を日課としていた頃、クラスの男子の熱気はいつもに増して凄まじいものだった。
「今日は待ちに待った男女合同の水泳大会だ!!」
一人の生徒がそう叫ぶと連動するかのように他の生徒も奇声を発している。正直うるさいからやめてほしいけど、気持ちは分からなくもない。この世の中、水泳は男子と女子で分けられていることのほうが珍しくないが、この学園ではどうやら合同らしい。
「神崎くんも楽しみだったりするのかな?」
「べ、別に期待何てしてないぞ!そういうお前はどうなんだ!?」
そんなムキにならなくてもいいのに...
「僕は、皆の泳いでいる姿を見れるだけで幸せだよ」
「お前はそういうやつだったな」
2限目の授業が終わり、いよいよ水泳の授業が始まった。僕たちBクラスの生徒は男子更衣室と女子更衣室に分かれて着替えを始める。
「わあ、流石はサッカー部に所属してるだけはあるね」
「ん?まあ、トレーニングで毎日鍛えてるからな!」
僕が話しかけた生徒は柴田颯くんサッカー部に所属しているBクラスの生徒で身体能力はおそらくBクラスで群を抜いている。
「お前は体が細すぎないか?ちゃんと飯食ってるか?」
「あはは、一応食べてるんだけどね」
柴田君は僕の身体が細すぎると指摘するけどそんなに細いかなぁ?確かに身長180センチにしては体重65キロだけど...
着替えを済ませて、神崎くんに先に行ってると告げてから更衣室を出た。
「流石は名門校と言ったところだねプールも大きいや」
「町のプールよりもデカそうだよな!」
僕と柴田君は50Mプールを見て目を大きく輝かせていると神崎君が遅れてやってきた。
「女子はまだみたいだな」
そう神崎くんが口にする。やっぱり楽しみなんじゃないか。そういうと慌てそうだから何も言わないでおこう。
「なんだよ神崎、意外にわかる口か?」
「ち、違う俺はただ」
「ダメだよ柴田くん。神崎くんはムッツリなんだからそんなストレートに聞いちゃ」
「誰がムッツリだ!」
柴田君と神崎君をイジっていると、女子生徒も更衣室から続々と出てくる。
「よかったね神崎くん。女の子だよ」
「だからちがうって!」
「何の話?」
気が付いたら一之瀬さんが僕たちのすぐそばまでやってきていた。
「聞いてくれよ実はかんざ、むぐ」
「なんでもないぞそれより先生が来る前に整列しておいた方がいいんじゃないか?一応授業中だしなお前が言えば皆従うと思うぞ!!」
神崎君は柴田君の口を手で塞いで一之瀬さんに早口でそう言うと一之瀬さんはそれもそうだねと言い、クラスメイト全員に指示を出していく。あんなに早口な神崎君は初めて見たな。
―――――
一之瀬さんの指導の下Bクラスの生徒は男女別に整列していた。
暫くすると以下にも体育会系の担当教師がやってきた。
「ほう、流石はBクラスだ。集合を掛ける前に整列とは感心したぞ」
「神崎くんのファインプレーだね」
「うるさいぞ狛枝」
「見学者は4人か、まあいいだろう」
見学していたのは男子1名に女子が3人その中には見知った人物もいた。
【白波千尋】よく一之瀬さんと行動を共にしている女子生徒だ。正直彼女自体には興味ないんだけど、彼女が一之瀬さんを見る目には少しだけ気になってるんだよね。
その後準備運動をしてから生徒の水泳の実力を測るため50mほど流して泳ぐよう指示を出された。僕は運動は苦手だけど泳げないわけじゃないので、息が切れない程度に軽く泳いだ。その後は全員が泳ぎきるまで待機だ。
「神崎くんもだけど柴田くんすごく速いね、見ていて気持ちよかったよ」
「へへ、そうか?あれでも全力じゃないんだぜ?」
「ほう、では早速だがこれから競争をしてもらう。男女別50M自由形だ」
「競争か、大丈夫か?狛枝。見ていた感じだとあまり得意じゃないだろ?」
「あはは、そうだね。やれるだけ頑張ってみるよ」
そういった矢先に先生が1番速かった生徒には5000ポイントが支給されて、1番遅い生徒には補習を受けさせるという爆弾を持ってきた。
僕は補習を受けてもしょうがない程のどうしようもないクズだけど、黙って補習は受けたくないな。そう思ったので自分の出せる全力で挑むことにした。
まずは女子からスタートすることになったので、男子生徒は女子には聞こえないほどの声量で盛り上がっている。やっぱり女子の中でも一之瀬さんの人気は凄まじい、やさしくて顔がよくおまけにスタイルまで良いと来たら、そりゃ人気にもなるよね。
「やっぱ安藤さんが一番クラスでデカいと思うんだよなぁ」
「一之瀬のロケットおっぱいに勝てるわけねえだろ!」
「俺は断然姫野のスレンダーな体系の方が萌えるね」
「い~や!こずえちゃんのほうが断然萌えるね」
など男子生徒は意見を飛ばしあいヒートアップしていく。
安藤紗代さん、確かうちのクラスのバレー部員だね。バレー部なだけあって女子にしては身長がデカい。まだ一週間しかたってないからあまりわからないけど優秀な逸材だと僕は思うな。
姫野ユキさん、Bクラスでは珍しくグループに所属していないボッチというやつなんだろう。おそらくクラスの団結力が煩わしく思ってるかもしれないね。
南方こずえさん、僕はあまりこの生徒の事詳しくないんだけど、泳ぎを見る限りだと女子の中ではトップクラスの運動神経とみてもいいかな。
男子の水泳レースも始まりいよいよ大詰め。僕は最終レースの第5コース、僕が競う相手の中にはあの柴田君も含まれていた。正直勝てる気もしないし、全てのレースを見たところ男子の中では僕が一番遅そうなんだよね...これは補習かもなと考えているとき柴田君に声を掛けられた。
「お互い頑張ろうぜ!まあ、1位は俺だけどな」
「うん、僕も頑張るよ」
どうせなら適当にやって終わらせようと考えていた自分が恥ずかしいよ。柴田君は僕に期待してくれているというのに手を抜こうだなんて...僕はなんて最低なヘタレだったんだ。
僕は勝つつもりで、レーンに並び先生が笛を吹く瞬間に事件は起こった。
「おい!女子がポロリしかけてんぞ!?」
な、なんだってえええええええええ!!!?
レーンに並んだ僕以外の生徒が声をする方向に一斉に見る中僕だけが笛の指示に従い、プールに飛び込んだ。
「ちょ、ふざけんな!なんなんのよこのでっぱりは!?」
クラスのボッチ姫野ユキが、壁から出た謎の出っ張りに水着が引っ掛かり、控えめな胸が見えそうで見えない角度で今にもポロリしてしまいそうになっていた。
オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
「何がオオオだ!見てんじゃねえブッ飛ばすぞ!?」
男子が盛り上がる中、姫野の怒りは頂点に達していた。だが動くに動けない状態から女子たちが姫野を囲、ガードする。中には【男子最低】という声も多数見られた。
そんな中狛枝だけ一人ゴールにたどり着く。
「ぷはぁ、ハア...ハア...あれ?みんなは?」
「狛枝凪斗記録40ジャスト、男子にしては遅い方だが間違いなくお前はこのレースで1位だ」
「僕が1位?」
疑問を抱いて後ろを振り向くと、柴田君たちは未だにレーンで何やら賑わっている。ふと先生を見ると握りこぶしを作り、額には青筋を浮かべながらあいつらには必ず補習を受けさせてやると怒りを露にしていた。僕には何が何だかわからないけど。
「僕なんかが1位を取れるなんて、やっぱり僕は運がいいな」
こうして水泳授業は幕を閉じた。何故かは分からないけど男子生徒の何人かが女子に袋叩きにされており、それを一之瀬さんが仲裁していた。
4話は明日です!