目が覚めたら勇者に憑依していた 作:yuuyyuyuyuyuyu
もうちょっと続くかもしれないし、続かないかもしれない。
それでも良ければ読んでやってください。
今回もゆっくりみていってね!
走る
あてもなく、ただ一刻も早く、あの場から離れたくて。
胸が今にも張り裂けそうな勢いで、肺に酸素を取り込むことすら難しく、呼吸が著しく乱れて
喉の水分がなくなり、カラカラになって口の中に鉄の味が広がって
空っぽの胃から登ってくる何かで嫌悪感に苛まれながら
頭がくらくらと意識が何度も飛びかけることさえ自分の中に押し込んで
限界を迎えた足が痛みより熱を帯びて、今にも崩れ落ちそうな膝を崩れる前に前へと出す。
魔王を倒した後、ボロボロの状態で泥のように眠る三人の元を離れ、休むことなく走り続けた私は、夜が明けその目に正面から明かりが差し込んできたことにより、走ってきたときとは比べ物にならないほどの眩暈に襲われ、足を止めてしまった。
一度止まった足は、再び動くことを許さずその場で崩れ、顔から地面に突っ伏した。
顔面を地面に強打した衝撃で繋ぎとめることもままならず、私は意識を手放した
村に住むナタリーは、今日も朝早くから、いつものように教会へお祈りを済ませ、娘と旦那に朝ごはんを作るために家へと帰るところだった。
「ん?何だい・・・あれ」
家に帰るナタリーの視界に映ったのは、村にある牧場の普段とは違う光景だった。
普段ならばこの時間は眠っているはずの乳牛や、家で飼われている犬や猫などの動物たちが一か所に集まっていたのだ。よく見れば、野生の小鳥なんかも乳牛たちの背に乗っている。
ただならぬ光景に、ナタリーはすぐさま動物たちのもとに駆け寄った。
動物たちは、ナタリーが来たのを確認すると、ナタリーをそこに案内するように、道を開けた。
ナタリーは動物たちが作ってくれた道を歩いていく。そして、彼女を見つけた
動物たちに囲まれていたのは、ボロボロの服を着て、体中傷だらけの腰に剣を差した黒髪の少女だった。そして何より驚いたのは、周りの動物たちが少女を守るようにしていたことだった。
ナタリーはボロボロの少女に近づく、動物たちは普段の彼女の気立てと面倒見の良さを知っているからか、別段抵抗することなく、ナタリーを少女に近づかせる。
少女の傍まで来たナタリーはこのままここに寝かせておくのも忍びなかったので、少女をうちまで運ぶことにした。途中動物たちが少女について家まで来ようとするのをなだめ、少女を家まで運んだ。
家に帰ると娘のリニャが起きており、私が背負ってきた少女を見て目を丸くして声を上げた。
リニャの声で起きたのか、旦那が起きてきて、私を見るなり娘と同じ反応をしていた。
私は無遠慮ではあったが、傷ついた少女の服を剥ぎ、体中にあった傷を濡らしたタオルで拭いていく。泥だらけの服はリニャが洗ってくるというので、その間に家に会った少し大きめの服を着せ、ベッドの上に寝かせた。先ほどより幾分ましな寝顔になったことに安心して、服を洗い終わったリニャに少女を任せ、朝ごはんを作ることにする。
もしかしたら、途中で起きてくるかもしれないので4人分作ることにした、起きてこなかったら、きっとリニャが食べてくれるだろうし。
それにしてもあの子、どっかで見たことがあるような気がするのよね。腰に差してた剣も随分な業物みたいだし・・・って今気にしても仕方ないか。
目を開けると、そこは知らない天井だった。
・・・少し前にも、同じことがあった気がする。
身体を起こして、辺りを見回してみる。日本に戻ってきた・・・わけじゃないみたい。
私はいつも着ていた服ではなく、サイズに少し余裕のある楽に着れる肌触りのいいものになっていて、おそらくどこかの民家の一室に寝かされているであろうことはわかった。
ドタドタと、おおげさに歩く音が聞こえて、一人の少女が部屋に顔を出す、
そして私が起きていることを見るや
「お母さん!起きてる!」
と言って引っ込んでしまった。
そしてすぐに、少女の代わりにおそらく母親であろう女性が部屋に入ってきた。
「目が覚めたみたいだね、あたしはナタリー。色々聞きたいことはあるけど、とりあえず朝ご飯が出来たところだから、食いな。丸一日寝てたんだ、お腹減ってるだろう?」
「まるいちにち・・・」
「そうだよ、ほれ早く来なじゃないとリニャがあんたの分も食っちまうよ」
呆然としていた私の手を引いてナタリーは朝ごはんが並べてあるテーブルへと私を案内した。
テーブルには先ほどの少女と、男性が一人座っており、こちらを見ていた。私は少女の隣に強制的に座らされ、ご飯を見る。
至って普通の、朝から食べるにはちょうどいい量のパンとコーンスープに、ボールに入ったサラダを三人が取り分けていく、少女が私の分のサラダもとりわけ、私はそれを受け取った。
「豊穣の神よ我らに恵をお与えくださり感謝します」
三人は祈りを捧げ、それから朝食を食べ始めた。
どうしたらいいだろうか
あの日から、
食べたものを吐き出してしまうようになってから、ほとんど食べ物を口にしていなかった私は、これらを食べられるという自信が無かった。
口に入れた瞬間、またあの吐き気に襲われるかもしれない。どうしようかと悩んでいると、隣にいた少女から声が掛けられる。
「食べないの?おいしいよ」
少女は不思議そうにこちらを見つめていて、他の二人も、直接的には見てこないが、こちらを気にしているようであった。
「・・・いただきます」
意を決し、呟くようにそう言って、私はパンを手に取ってかぶりつく。
おいしい
一口、また一口とパンを口に入れては噛み続ける。
「あっ・・・」
いつの間にか、パンを食べきってしまった。すると、再び隣から
「えへへ、おいしいでしょ、私の分もあげるよ」
そう言って少女が私にパンを手渡してくる、私は受け取っていた。
そしてまたパンにかぶりつく
今度は何だか、暖かかった
一口、また一口、食べれば食べる程、私の胸の内から温かいものが湧き上がってきて、胸がキュッとして苦しくて、必死になってパンを噛んでそれを押し込めようとするけれど・・・
「だ、だいじょうぶ?」
隣にいた少女が急に慌て始めて、気付けば、ポロポロと、涙が流れていた。
隣にいた女の子の目から、急に涙が流れ始めて、私はすっごくびっくりした。
「だ、だいじょうぶ?」
慌てて声を掛けると、女の子はそれまで自分が泣いていることに、気付いてないみたいだった。
「えっ、あ、・・・あ、れ」
何が起きているのかわかっていない様子で、女の子が何度も涙を手で拭っているけど、
全然止まらない
「ぅう・・・な、んで、とま・・らな、い・・」
大粒の雫が、ポタポタと流れ落ちる、その姿をみて、私はいつの間にか、女の子を抱きしめていた。
「んぶっ・・・ぇ」
びっくりしたのか、一瞬涙が止まった。私は女の子の背中をさすって頭をポンポンと撫でる。
「ぁ・・・、っぁあ!」
女の子が声を上げて泣き始めた、小さくてか弱い泣き声が、部屋の中で静かに木霊する。女の子は縋るように私の体にしがみついて、泣き続ける。
その姿がなぜだか、とても愛おしく思えて、私は女の子を抱きしめる力を少し強める。
女の子はひとしきり泣いた後、再び眠ってしまった。
私は、眠った女の子の頭を撫でてあげる。そうすると、女の子の顔が少し和らぐから。お母さんにも、女の子のこと見ておくように言われたし、いいよね。
私はついでと言わんばかりに女の子の体を濡れたタオルで拭くことにした。凛とした顔つきとは対照的な、病的なまでに青白い肌と、力を入れれば今にも折れてしまいそうなほどにやせ細った腕と足は、今までちゃんとしたご飯を食べてこなかったことを如実に物語り、体中に付いている生傷は、ここに来るまでにどれだけの危険を冒していたのか想像することは難くない。
心が苦しくなった。
そんな感情に苛まれながらも、女の子の体を拭う手は少し汗ばんでしまう。
憐憫と熱のこもった視線を、女の子の身体に向けながら、リニャは女の子の体を余すことなく拭いていく。
「っあ、の」
「へ?」
上半身を拭き終わったリニャは今度はつまさきから拭いていき、太ももを拭こうとした時だった。
不意に声を掛けられ、思わず声の方を見ると、すっぽんぽんの女の子が上半身を服で隠すようにしながら起きていた。
「えっと~、身体、拭いちゃうね」
「えっ、あ、ありがとうございます?」
私は何事も無かったかのように話しかけた。
よし、許可も取ったし、拭いちゃおう。
「んっ・・・、ぁ」
女の子が起きたことで、先ほどまで身体をこする音だけだった部屋に女の子の小さな声が混じる。流石にさっきまでのようには拭けないと感じたリニャは、急ぎふとももを拭き終え、女の子の下着に手を掛ける。
「っ!あ、のそこは自分で」
「・・・あー、そ、そうだよねー」
下着に手を掛けたところで女の子からそういわれて、私は若干の悔しさを感じながら、タオルを手渡す。女の子はタオルを受け取ると、後ろを向いて、身体を毛布で隠しながら、タオルで身体を拭う。
「えっと、これ洗いますね」
「あぁ、私がやるよ」
身体を拭き終えた女の子から、半ば強引にタオルを取り上げて、用意していた新しい水の入った桶にタオルを入れ、外に出る。女の子も、服を着た後私の後をついてきて、タオルを洗う私のことを見つめている。何もしていないのも退屈だろうから、私は女の子に話しかけることにした。
「私はリニャ、あなたの名前は?」
「なまえ・・・」
そう、小さくつぶやいた女の子に、やっちゃったかも、と思って振り返る。
「つばさ、みよく つばさ。つばさが名前」
振り返った私に、女の子、もといつばさははっきりと自分の名前を教えてくれた。珍しい名前にだったけどその目に嘘偽りがあるようには思えなかった。そのことに、私の心は否応なく嬉しくなる。
「そっか!つばさちゃんだね!よろしく!」
「うん・・・、よろしくリニャ」
少し照れた様子で私の方を見るつばさ、めちゃくちゃ可愛いじゃん!!
タオルを洗い終えた私は、つばさの事を聞くのは後にして、この村について、話すことにした。もちろんまだ本調子じゃないだろうから、家のベッドに座ってね。
もちろん私はつばさの隣に座ることにした。
つばさは私が隣に座った時、ちょっと驚いてたけど、別段いやそうじゃなかったから、私は調子に乗って、つばさの手を握ってみたりする。
流石にいきなり距離が近すぎたかなってやってから反省したけど、つばさは何も言わずに握り返してくれた。
明らかに照れてるのが見ていて可愛かった!!
それからは、私が今まで村であったいろんなことを話して聞かせた。つばさは、それを聞いて質問してきたり、感想を言ってくれたり色んな反応をしてくれて、喋っていてとっても楽しかった。
そろそろお昼を作るのに、お母さんが帰ってくる時間かな